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Learning by Doing-体験型研修-

現在のビジネス社会では、専門分野に限った知識やスキルだけでは十分な競争力を維持することができません。変化の速いグローバル市場の中で様々な問題に対処するために、組織は柔軟でクリエイティブな人材を必要としています。組織のどのレベルにおいても、視野を広げ、より複雑なビジネス環境に立ち向かうための学習の機会は必要不可欠です。

経験型学習が「経験-省察-自己(他己)評価」のプロセスを通して対人コミュニケーションスキルを高めることは、多くの調査研究で言及されています (Lesley, Hyde, McPherson, & Simposon, 2016)。 そもそも経験型学習とはどのようなものでしょうか。また「経験」と経験以外のものを分けるものは何でしょうか。

経験型学習とは?

2013年以降の5年間で、「経験型学習」についての専門誌は25以上[1]、また正式な審査を受けた論文は数百にのぼります。経験型学習は成人教育の最も重要な新しい研究分野として注目されています[1]。

しかし、経験型学習についての研究、実践が多岐に及ぶため、この用語を正確に説明することは難しいと言われています。また、企業や教育現場における「経験」の定義も多種多様です。中には、経験を通した学習という一般的な考え方と、「経験型学習」を別のものとして捉える必要はないと考える研究者もいます(Fenwick, 2003:87)。

加速学習、問題解決学習、共同学習など既によく知られた参加型の学習法を「経験型学習」の一部として位置づけています。それぞれの学習法を個別に、または複数の組み合わせで用いることで、よりインタラクティブで参加者中心の学習機会を提供できると考えています。 

経験型学習を説明するうえでのフレームワークとしてよく知られているのが学習サイクルモデル[1]です。これは成人教育や企業研修をデザインする際に用いることができる比較的シンプルな循環論で、暗記や抽象的な知識の蓄積ではない、日常の直接経験に根ざした学習に焦点を当てています。

この学習サイクルの一部に「経験」と「省察」があります。「経験」とは個人が環境や状況に積極的に働きかけることをいい、何かを行うことで起こる自分と他者(環境)との相互作用です。次に「省察」のプロセスで自分の行為・経験を振り返り意味づけを行います。この経験-省察が学習材料そのものとなって、学習者の記憶に残る効果的な学習体験を作りだすことができるのです。

企業研修プログラムでの経験型学習

重要な問題に対して敏感になる 意識を高め、耳を傾ける

既存の思考と行動のパターンについてよく考え、自己意識を高める

成功パターン(認知力、原動力、感情)を強化する

「試行」の段階で新しいアプローチを実行し、洗練させる

失敗や満足できないパターンを検証し、改善させる

研修で得たことを実際の業務に導入し、生かす

[1] 他にも多くの出版物があるが、特にJournal of Experiential Education、Asia-Pacific Journal of Cooperative Education、Universal Journal of Education Researchが、経験学習に関連する研究を発表している。完全なリストはこちらを参照: https://eric.ed.gov/?q=experiential+learning&pr=on&ff1=dtySince_2013