弊社Daisybell Japanの星野は、建築系専門商社、リクルート(ホットペッパービューティー)で営業経験を積み、立ち上げ期のDaisybell Japanに初期の営業メンバーとして参画。新規開拓から契約後のカスタマーサクセスまでを一貫して担当しています。
営業の最前線から見た音声AIのリアルを、全3回にわたって聞くインタビューの最終回。テーマは「お客様との伴走」です。
AIは導入して終わりではなく、そこからが本番──。契約後に何を決め、どうつまずき、どう改善サイクルを回すのか。3〜4ヶ月で約200件のフィードバックを製品に反映してきた現場の実例と、成果を出す企業の共通点までを聞きました。(聞き手:Daisybell Japan 広報担当)
目次
- 1. 契約後こそ本番── 電話業務そのものを一緒に整理する
- 2. つまずきやすいポイントは3つ── 範囲・完璧主義・接続
- 3. 3〜4ヶ月で約200件── フィードバックとバージョン管理
- 4. 成果を出す企業の共通点── AIに「向き合う」かどうか
- 5. AIと人の役割分担、そして「導入後も変わり続ける」価値
1. 契約後こそ本番── 電話業務そのものを一緒に整理する
── 契約後、星野さんとチームは具体的に何をするのですか。
星野:契約後は、まずAIに何を任せるかを具体化します。キックオフを行い、実際の業務の中で、Daisybellにどこまで任せるのかを細かく整理していきます。
インバウンドなら、どんな問い合わせが来るのか、AIが回答していい内容とそうでない内容、どのタイミングで転送するか、折り返しでいいか。アウトバウンドなら、誰に電話し、何を伝え、どこまでヒアリングし、何を取得できれば成果とし、どの状態になったら人へ引き継ぐか。そこまで決めます。単にマニュアルを読み込ませるのではなく、現在の電話業務そのものを一緒に整理していくイメージです。
── マニュアルが整っていない会社も多いのではないですか。
星野:意外とあります。その場合は、実際の通話の録音音声をいただいたり、チャットボットを導入していればそのやり取りを抽出していただいたり、メールのやり取りを送っていただいたり。そういった素材をAIの学習に活かせるので、あるものから一緒に作り込んでいきます。
── チーム内の連携は、どうしているのですか。
星野:私は営業として契約前から関わっているので、何の目的で導入するのか、どこで困っていたのか、何を成果として期待しているのかを、導入を担う実現チームや技術側、コールセンター・業務改善を専門とするコンサルタントにもしっかり共有しています。営業と技術が別々に動くのではなく、目指すゴールをお客様とDaisybellの双方で把握して、みんなで同じ方向に進めるのが、この体制の良さだと思います。
2. つまずきやすいポイントは3つ── 範囲・完璧主義・接続
── 立ち上げ初期に、お客様がつまずきやすいポイントはどこですか。
星野:主に3つあります。1つ目は、AIにどこまで任せるかを決めきれないこと。最初から「この業務だけ」と決まっている会社はほとんどなく、「AIを使いたい」「人が足りない」「電話に追われている」というところから相談が始まることも多いんです。そこからしっかり顔を合わせて、「ここなら定型化できそう」「今、応答率が落ちているのでまず補いましょう」「ここは人が対応すべきだから、その分こちらの定型的な電話をAIに任せましょう」と、一緒に決めていくことが重要になります。
── 2つ目は何でしょう。
星野:最初から完璧を求めすぎてしまうことです。本番前に100%完成させたいという心理は出やすいのですが、稼働してみないと分からない部分は必ず出ますし、修正が必要な点も必ず発生します。まずは100点を作り上げるのではなく、安全にスタートできる状態を作り、運用しながら改善していく。対象業務をできるだけ絞って小さく稼働し、データを集めて拡大していく使い方が理想的です。
── 3つ目は。
星野:既存オペレーションとの接続です。AI単体では問題なくても、実際には、どのタイミングで人に転送するか、誰がその企業に折り返すか、取得した情報を誰が見に行くか、システム連携ならどう登録するか、を決め切る必要があります。特にアウトバウンドはAIが人では追いつけない量をかけられるので、オペレーションが曖昧だと、かえって人の工数が増えてしまうこともある。AIが電話を受けた後・かけた後に人がどう動くかまで含めて設計することを大切にしています。
3. 3〜4ヶ月で約200件── フィードバックとバージョン管理
── 導入後のチューニングは、どんなサイクルで、どれくらいの量になるのですか。
星野:前回からお話ししている企業の例です。この会社では、社内にAIを担当するメンバーを1人、専任で置いていただいています。AIが日々、人では追いつかない量の架電をしているので、専任の方が通話ログをリアルタイムで確認し、「この回答は少し違和感がある」「ここの切り返しは変えた方がいい」「もう少し踏み込んでほしい」「この場合は人につないだ方がいい」といった気づきを細かく書き出してくださっています。
その量は、およそ3〜4ヶ月の運用で約200件。日々の架電量が非常に多いので、専任の方でもすべては確認しきれないほどですが、それでもこれだけのフィードバックが集まります。
── そのフィードバックはどう処理し、成果はどう確かめるのですか。
星野:いただいたら、まずDaisybell側で内容を確認します。トークの変更が必要か、FAQを追加すべきか、会話フロー自体を調整すべきかを社内で検討し、改善できるものは基本的に即日修正。開発が必要な大きなものも、なるべく早い段階で反映する動きを取っています。
直したら本当に良くなったかまで確認する必要があるので、バージョン管理も行っています。修正を繰り返すだけだと「何を変えた結果、数字がどう動いたか」が見えなくなるため、いつ・何を変えたかを記録した上で、情報取得率や会話の継続率を見て、変更前と変更後で本当に成果が良くなっているかを可視化しています。
── その積み重ねの先に、何がありますか。
星野:約200件のフィードバックを積み重ねることで、その企業様専用のノウハウがAIに蓄積されていきます。最初に作ったAIから、その企業・その業務に合ったAIへ進化させていける。実際に数字にも表れていて、BtoB向けインサイドセールスの情報取得率は、始めた当初の1%未満から、今は平均2〜3%まで上がってきています。
4. 成果を出す企業の共通点── AIに「向き合う」かどうか
── 成果を出している企業に、共通点はありますか。
星野:一番の共通点は、最初から完璧を求めないことです。まず動かして、結果を見ながら改善していく考えを持つ企業が、やはりうまく運用できています。この業務に絞って、この時間帯に絞って、このリストだけにかけて──そこから始めて、改善を繰り返しながら範囲を広げていくことが大事です。
── 企業側の関わり方も、影響しますか。
星野:大きく影響します。専任を置いてくださる、導入後の数字定例を多く設けて現場の知見をフィードバックしてくださる。そういう企業はブラッシュアップの回数も多いので、より業務に合った、精度の高いAIに育っていきます。
逆にもったいないのは、「AIを入れたから、あとは勝手にやってくれるだろう」という状態です。プロダクト自体はグローバルで蓄積される通話データをもとに日々進化しますが、御社の業務に合わせた個別のチューニングは、現場からのフィードバックがあって初めて進みます。目的や評価基準が曖昧なままだと改善もしづらく、放っておいて勝手に「御社仕様」に育つわけではありません。定期的にフィードバックをくださる企業が、着実に成果につながっています。
── お客様の不満や、解約につながりかねなかったケースと、それでも継続いただける理由を教えてください。
星野:AIなので、期待通りにいかない場面は当然あります。思った通りの回答をしない、会話に違和感がある、想定ほど情報を取得できていない、管理画面が使いづらい──そうしたご指摘をいただくこともあります。重要なのは、問題が起きたこと自体より、その後どう対応するかだと思っています。まず事実を確認して改善できることを明確にし、技術的に難しければスクリプトやトークフローの側で変える提案をする。
AIなので、日々何が起こるか分からない部分は正直あります。だからこそ、何かを見つけたら、弊社側で検知して修正する。継続いただける理由は、AIの精度だけでなく、こうしたフィードバックの速さと、プロダクト自体が進化し続けていることにあると考えています。
5. AIと人の役割分担、そして「導入後も変わり続ける」価値
── AIと人の役割分担は、運用の中でどう変わっていくのですか。
星野:最初は、AIに任せる範囲をあらかじめ絞ることが多いです。一次受付だけ、必要事項のヒアリングだけ、定型の回答だけ。その範囲で運用して「問題なく任せられる」とお客様に判断いただいてから、FAQを増やす、有人転送を減らしてAIの応対範囲を広げる、もっと深いヒアリングまで任せる、と段階的に変えていきます。
── 人の仕事は、どう変わりますか。
星野:AIに任せることで、人はより価値の高い仕事に集中できるようになります。アウトバウンドなら、情報収集はある程度AIが行うので、人はその先のアポイントやクロージングに時間をかけられる。それでも人がやるべき領域はまだまだあって、強い感情が伴う場面や、高度で複雑な判断、駆け引きが必要な交渉は人間の方が適しています。初回の接点を作る・情報を集める・次のアクションを見つけるのはAI、相手を理解し提案し最終的な意思決定を後押しするのは人。そういう分担だと考えています。
── 契約後もお客様と長く付き合う立場から見て、Daisybellの一番の価値は何だと思いますか。
星野:導入後も変わり続けられることだと思います。導入時点の音声AIの性能だけが価値ではなく、実際に使う中でフィードバックをいただき、対応範囲を広げ、プロダクト自体も日々アップデートされていく。最初に納品したものをずっと使うサービスではない、というところが大きい。
ツールをただ使っていただく関係ではなく、お客様一緒に、電話業務をはじめ社内のさまざまな業務フローを改善していける関係性を作り上げていける。そこがDaisybellの一番の価値だと感じています。
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