弊社Daisybell Japanの菅沼は、商社の電子部品営業、レノボの法人営業を経て、現在は営業統括責任者として、商談から契約後の顧客対応までを一貫して担っています。
営業責任者へのインタビュー、全3回の最終回をお届けします。(聞き手:Daisybell Japan 広報担当)
目次
1. 契約後の最初の仕事── 会社の暗黙知を、形式知に変えていく
── 最終回もよろしくお願いいたします。契約後、菅沼さんとチームは具体的に何をされるのでしょうか。
菅沼:最初にやるのは、お客様の業務のブレイクダウンです。営業の段階では「故障受付をAIにしたい」という粒度でお話をするのですが、これだけではAIは作れません。電話が来たときに何を、どの順番で聞くのか。
聞き取れなかったらどうするのか。FAQで解決する範囲はどこまでか。AIで判断できなかったらどこに転送し、転送先が不在だったらどうするのか。電話を切った後、どのシステムに何を入力するのか。ここまで1つずつ分解して決めていきます。契約後に作っているのは、AIの会話ではなく、AIを含めた業務フローそのものなんです。
── そこで重要になるのが、お客様のマニュアルやFAQなのですね。
菅沼:はい。ただ「マニュアルを読ませれば、そのとおりに答えてくれるんですよね」というほど単純ではありません。実際の資料は、同じ内容が何度も書かれていたり、資料Aと資料Bで回答が絶妙に違ったり、新旧のマニュアルが混在していたりする。マニュアルには書いていない、ベテラン担当者だけが知っている答え方もあります。
人間なら経験で使い分けられますが、AIに任せるなら「正解はどちらか」を決めなければいけない。つまり、導入の段階でやるべきことは、会社の暗黙知を全部、形式知に変えていくことです。ここまでやって初めて、企業にとって「使えるAI」になると思います。
── 営業をされたご本人が契約後も担当されることには、どのような意味があるのでしょうか。
菅沼:営業のとき、お客様が「なぜこのプロジェクトを始めたのか」という背景を聞いているからです。「問い合わせを減らしたい」という要望でも、本当の目的が本部の人員不足なのか、店舗スタッフの負荷軽減なのかで、優先順位は全く違います。商談から本番稼働まで、お客様の背景を知る人間が情報を途切れさせずに伴走できるのは、Daisybellの導入スタイルの特徴だと思います。
2. つまずきやすいポイントは3つ── 「AIに任せないこと」を先に決める
── 立ち上げ初期に、お客様がつまずきやすいポイントはどこでしょうか。
菅沼:1つ目は、AIに「何を任せるか」よりも「何を任せないか」が決まっていないことです。最初はどうしても「全部AIにしたいです」という話が出てくるのですが、実際の業務には必ず例外があります。
クレームだったら、本人確認ができなかったら、緊急だったら。ここでAIが頑張り続ける設計にすると、お客様の体験はむしろ悪くなってしまう。だから私たちは、「どこで人に渡すのか、どこで折り返しにするのか」を先に決めることを重視しています。この境界線が明確なお客様ほど、導入はスムーズです。
── 「何を任せないか」から決める、というのは目から鱗です。2つ目のつまずきは何でしょうか。
菅沼:会社の中に「正解が1つではない」ことです。「この問い合わせが来たら、どう回答しますか」と確認すると、Aさんは「こう答えます」、Bさんは「いや、私はこう答えます」と。どちらもベテランの方なんです。今まで曖昧でも回っていたから表に出なかっただけで、AIに任せる前に、会社としての正解を決める必要があります。AI導入が業務の標準化のきっかけになる、よくあるケースです。
── どの会社にもありそうなお話です。3つ目は、いかがでしょうか。
菅沼:電話の会話だけを設計して、電話の「後ろ側」が設計されていないことです。AIが完璧に会話できて、電話を切りました。では、その報告はどうしますか?と。CRMへの入力、メール送信、SlackやTeamsへの通知など、人間が自然にこなしていた一連の動作を業務フローとして明文化する際、エラー処理も含めて抜け漏れが生じやすいポイントです。
電話の前と後まで、一連の業務として見ていく必要があります。この3つを最初に丁寧に整理すると、本番後のトラブルはかなり減らせます。
3. 改善のサイクル── AIを直しているつもりが、業務を直している
── 導入後のチューニングは、実際にはどのようなサイクルで回っているのでしょうか。
菅沼:一番大事なのは、本番の通話ログを見ることです。テストは、する側が正解を知っているから成立します。本番は予期しないことが起きる現場で、名前を伺うと会社名から症状までまとめて話される方もいれば、「はい」としか答えない方も、無言の方もいる。周囲がうるさいことも、方言が入ることもあります。
どの質問で離脱しているか、固有名詞で引っかかっていないか、失礼にあたる挙動をしていないか。こういう観点でログを徹底的に見て、プロンプトや質問の順序、言い回しの改善を続けます。
── 地道な積み重ねですね。その改善を続けていくと、何が起きるのでしょうか。
菅沼:面白いことが起きるんです。最初はAIを改善しているつもりなのに、途中から「そもそもこの質問って必要ですか?」という話になる。人が昔から聞いていたからAIにも聞かせていたけれど、実は後続処理でその情報を使っていなかった、ということが見つかる。
AIをチューニングしているつもりが、お客様の業務をチューニングしている状態になることが多々あります。稼働初日と3か月後を比べると、会話の品質だけでなく、業務としての完成度自体が大きく変わっている。AIは「導入する」というより、「運用しながら育てる」という表現のほうが近いと思います。
4. 目指すのは、人が「人にしかできない仕事」に戻ること
── AIと人の役割分担は、運用の中でどう変わっていくのでしょうか。
菅沼:多くのケースはスモールスタートです。一次受付はAI、最終判断は人から始めて、「この問い合わせはほぼ同じ回答だからAIで完結できるね」と分かれば移していく。
ただ、私はAIは100%を目指す必要はないと思っています。複雑な交渉、お客様が強く感情的になっているケース、企業として責任を持って判断すべきこと──AIがやるべきでない2割ほどを、正しく残すことが大事です。
「人をAIに置き換える」という言い方はあまり好きではなくて、目指しているのは、人が、人にしかできない仕事に戻ることです。高いスキルを持った人が、電話を取って担当者を探すことに時間を使っている状態のほうが、本当はもったいない。
そこをAIが担うことで、人は判断、交渉、お客様へのフォローに時間を使えるようになる。この仕組みを作るのが私たちの仕事だと思います。
── 契約後もお客様と長くお付き合いされる立場から見て、Daisybellの一番の価値は何だとお考えですか。
菅沼:入社したときは音声品質が一番の魅力だと思っていましたが、今は少し答えが変わります。AIをお客様の実際の業務の中に入れて、成果が出る状態まで一緒に作れることです。実際に動かすと、「この問い合わせもAIにできそう」「別の部署でも使いたい」という話が必ず出てきて、代表電話だけだったのが時間外対応、店舗問い合わせ、アウトバウンドと用途が広がっていく。
お客様がAIを「サービスとして使っている」のではなく、業務インフラの一部として使い始めている状態が、一番理想的です。
ベンダーとお客様というより、AI活用を一緒に考えるパートナーになる。数年後にお客様から「Daisybellの音声AIを使っています」ではなく、「Daisybellと一緒に業務を変えてきました」と言っていただけるのが理想です。
── 最後に、導入を検討されている企業のご担当者へ、メッセージをお願いいたします。
菅沼:AI導入をあまり大きくお考えいただくなくてもいい、ということです。
「会社の電話を全部AIに」となると大きなプロジェクトになって、「もう少しAIが成熟してからにしましょう」となりがちです。でも、その間も人手不足は続きますし、電話は鳴り続けます。だからまず、1つの業務からでいいんです。
毎日同じ問い合わせが20件来ている、時間外の電話が取れていない──こういうところを探して、AIに実際にやらせてみてほしい。デモでもPoCでも大歓迎です。
そしてもう1つ。AI導入の成功の鍵は、AIモデルの性能だけでは決まりません。どの業務を任せるか、どこで人に渡すか、本番のログをどう改善に使うか。
こちらのほうが最終的な成果に大きく影響します。だから製品スペックの比較だけではなく、自社の業務を一緒に理解して、一緒に作って、一緒に改善してくれる会社かどうかを見極めていただきたい。
AIに任せられるものはAIに任せて、人は人にしかできない仕事をする。その役割分担の土台を、今から一緒に作っていければと思います。
Daisybellの音声AIは、Webからその場で体験いただけるライブデモをご用意しています。まずは、AIとの会話をぜひ一度体感してみてください。
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