「エンタメを、仕組みで支える。」
そう口で言うのは簡単ですが、その裏側には、華やかなステージとは対照的な「泥臭い現場」が無数に存在します。
今回インタビューしたのは、ファンクラブプラットフォーム『FAM』の立ち上げ人であり、現在はCOOとして事業を牽引する古川。
IT企業でありながら、システム提供に留まらず、グッズ制作や物流、イベント運営という「超・人力」な領域まで踏み込むのか? アルゴリズム全盛の時代に、なぜ今「ファンダム」が必要なのか?
FAMが目指すエンタメの未来と、現場主義のプロダクト開発の裏側に迫ります。
株式会社Nagisa COO兼プロダクトマネジメント室長 古川巧
1つの窓口で、ファンビジネスの全工程を。IT×リアルを融合させたFAMとは
──まずは経歴を教えてください。
2012年にインターンとして入社して、あれこれカメラアプリなどを作っていましたが、2022年に 『FAM』 というファンクラブサービスをリリースしました。
現在はCOOとして、FAMの開発と運営まわり、新規事業開発をしています。
──改めて、FAMがどんなサービスか教えていただけますか?
一言で言うと、1つのIDでファンクラブからEC、オンラインくじまで、ファンビジネスに必要な機能をまとめて提供できるサービスです。
──「何でもできます」系のサービスは世の中にも数多くあると思うのですが……“FAMらしさ”はどこでしょうか?
まさにそこがポイントで、元々はめちゃくちゃIT会社だったので、リリース当初はシステム提供のみから始まりました。
ただ、事務所さんの課題解決を一緒にやっていくうちに気づいたんです。
機能が揃っても、運営が回らないと売上にならないって。
なので現在のFAMは、グッズ製作、イベント制作、物流まで含めて、裏側の運営も1つの窓口で支えるところまでやっています。そこが特徴ですね。
ぱっと分かる差別化になるような機能は、いま頑張って開発しています!
コロナ禍の「無収入」をゼロに。FAM誕生の原点は、クリエイターの生活を守るインフラ作り
──そもそも、FAMを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
元々は 『ONSTAGE』 という舞台俳優さん向けの生配信プラットフォームを運営していました。マネタイズは投げ銭です。そして、コロナが来たんですよね。
──コロナ禍は、エンタメ現場は本当に厳しかったですよね。
舞台って、稽古から本番、精算まで含めると、収入が入るまで半年とかかかるんです。なので公演が止まると俳優さんたちは一気に無収入。本当に死活問題でした。
なので、とりあえず配信をやりまくろう!という流れになりました。
当時は僕も番組にオンラインで帯同していましたが、毎日番組があり、1ヶ月で100本くらい番組に関わっていて本当にしんどかったです。
50日くらい連続で生配信をやっていて、土曜日もやる『いいとも』状態だったんですけど、最終日には僕にも投げ銭してくれる人がいて嬉しかったです(笑)
ですが、コロナが長引く中で、「外は出てもいいけど舞台、ライブは密だから」「1人でも体調不良者が出たら全中止」といった空気が続いて、舞台やライブなど、特定の領域だけエンタメが止まってしまいました。
最初は視聴者さんも「配信で支えよう」ってムードで投げ銭が入ったんですが、外には出れるから、消費がどんどん別のところにも向かっていき、投げ銭が落ち込みはじめて、、、みたいな。
そのタイミングでまた俳優さんたちから「困ってます」と連絡がたくさん来ました。
──投げ銭って、波があるのが辛いですよね。
そう。投げ銭は強いけど、安定しない。
僕らサラリーマンは毎月給料が入るけど、エンタメの現場は出来高制が多く、仕事が0なら収入も0、みたいなことが起きる。
これは仕組みでどうにかしたいな、と思いました。
──そこからどのようにFAMへと繋がっていくのでしょうか?
せっかく番組をたくさん生配信している。
じゃあまず、配信のアーカイブをサブスクで見られる仕組みを作ろうということになりました。
ベータ版として作ったのが最初です。
イメージは「俳優さん1人1人が、自分だけのNetflixを持てる」といった感じです。ありがたいことに、それが思いのほかうまくいき始めて、FAMのきっかけとなりました。
──そこから「ファンクラブだ」となるのが面白いですね。
当時は「自分だけのNetflix!サブスク!革命だ!」って思ってたのですが、よくよく考えたらこれって普通にファンクラブじゃんと。
そこから、僕とデザイナーとエンジニア2人の合計4人で、サービス開発をスタートしました。
「魔法なんてない」350組の信頼を積み上げた、超アナログな突破口
──いまの規模感でいうとどれくらいですか?
いまは350組ほどのファンクラブを運営しています。
一緒に働いてくれるメンバーも、4人から70名ほどまで増えました。
──サービス開始から4年で350組と聞くと急拡大しているように見受けられますが、ここまでどのように増やしてきたのでしょうか?
とても地道です。1件1件、商談するのみ。
魔法なし!
広告もやり方が下手なのか、うまくいきません(笑)
最初は手数料を少し下げたり、頭を下げたり、あとは熱量です。
最初に導入してくれた事務所さんは、とてもリスクある判断だったと思うので本当に感謝しています。
──積み上げ型のモデルが効いて、ここまで拡張できた?
そうですね。サブスク型なので、売上が毎月少しずつ積み上がっていき、気付いたら「人を増やせるじゃん」となり、少しずつ採用を進めました。
これもめっちゃアナログです!
僕自身は芸能界も音楽業界も全然理解していなかったのですが、実際に芸能事務所で働いていたメンバーが入社してくれたのをきっかけに、勘所を教えてもらい、そこから営業も運営も解像度が上がりました。
ファン体験を止めないために。運営・制作・物流まで「責任を持つ」というFAMの覚悟
──FAMは機能提供にとどまらず、イベント制作やグッズ製作、物流まで踏み込んでますよね。正直「そこまでやるの?」と思う人もいると思うのですが、なぜなのでしょうか?
正直に言うと、最初は「やりたくてやってた」というより、機能開発が追いつかなくて、人力でサポートせざるを得なかったんですよね。
ファンクラブを立ち上げたい事務所さんがいて、やりたい施策もあるが、当時のプロダクトだけだと、必要なところまで届かない。
だったら、まずは僕らが手を動かしてでも「回す」ところまでやるしかない、という状態でした。
──結果的に、それが今の「運営までサポートするFAM」に繋がった?
繋がりました。むしろ人力でやったからこそ、課題が全部見えてきましたね。
例えばグッズだと「受注は取れるけど、製作〜納品〜発送〜問い合わせ対応が大変」とか。
イベントだと「告知から集客、当日の導線、現場対応、アフターフォローまで、どこで詰まると炎上するか」とか。
物流だと「倉庫のオペレーション」「在庫の持ち方」「返品・交換」「住所不備」「問い合わせの設計」のように、地味だけど致命傷になるポイントが山ほどあることを実感しました。
──やってみるとボトルネックが分解できる、と。
そうですね。最初は“場当たり”で人力対応してたんですけど、やればやるほど「こう、システム化しないとスケールしない」「ここが詰まると売上も信用も止まる」というのが明確になっていきました。
なのでFAMは、運営・制作・物流まで含めてサポートしつつ、そこで見えた課題を元に、サポートのための機能を開発していけたんです。
言い換えると、現場で起きてる課題から逆算してプロダクトを育ててきた、という感覚ですね。
ファンクラブって機能があるだけじゃなくて、ファン体験が崩れずに継続できることが価値なので、「そこまで含めて責任を持ちたい」という方向に自然となっていきました。
いま「ファンダムインフラ」を目指す理由
──「ファンの20%が80%の売上を作る」といった話はよく聞きますが、古川さんは、そこだけじゃないと言ってましたよね。
はい。もちろん売上の意味はあります。
ですが結論、ファンを増やすためにファンダムを大切にすべきだと思っています。
理由は、DSPやSNSが超アルゴリズム時代だからです。
※DSP=Spotify、AppleMusicなどの音楽サブスクサービス
例えば、TikTokの踊ってみたって、どういう曲が使われると思います?
「キャッチーでノリやすい曲」などそれぞれが思い浮かべる曲があると思うのですが、僕の回答は、「みんなが踊っている曲」 です。
──ずるいですね(笑)
ずるいんですけど、理にはかなっていて、流行っているから題材にする価値があります。
いきなり誰も聞いたこともない音源で踊るのは普通の人は「なんでこれ!?」となってしまうので、勇気のいる作業ですからね。流行っている曲が更に流行る、みたいな“ハメ技”の時代でもある。これがDSPにもSNSにもあるんです。
具体的にSpotifyの話に移ると、Spotifyには曲やアーティストの露出に影響する 内部スコア があると言われています。
これが高いほど、プレイリストに表示にされやすくなって、結果として多くの人に聴かれる構造になっている。
スコアの上げ方は複雑なのですが、ものすごく丸く言うとピュアな再生なんです。
ここでファンダムが大事になります。
──もう少し分かりやすく説明していただいても良いでしょうか?
例えば、1stシングルをリリースする FAM太郎 がいます。
親友に広めて10人が聴いてくれたので、スコアが10でした。
2ndシングルを出すとき、それぞれの親友にCDと一緒に 2人分の高級クッキー を配りました。親友がクッキーを食べるときに、親友の親友に「クッキーをくれたFAM太郎」のことを紹介してくれました。
すると2ndシングルが20人に聴いてもらえて、スコアが20になりました。
そしてスコアが20になったことで、親友の親友の親友が聴いているSpotifyのおすすめプレイリストに、FAM太郎がレコメンドされるようになりました。
親友の親友の親友にも好評だったので更に……というスパイラルになっていきます。
──なるほど。強固なファンダムがあると、スコアが減りにくいですもんね。
そういうことです。
スコアを上げるには、1再生でも多くリリース初期にたくさん再生される必要があります。でも、考えてみてください。さっき、一般の人は流行ってる曲をみんな選ぶと言いましたよね?つまり、一般の人はリリース初期には聞かないわけです。
つまり、わざわざアーティストのページまで飛んで、リリース日に音楽を聴いてくれる能動的なファンダム、いやファンの方々1人1人がめちゃくちゃ重要なわけです。
まとめると、売れているアーティストにファンダムができるのではなく、むしろまだ世の中に見つかっていないアーティストこそファンダムを作るべきなんです。
ファン1人の1再生が、実はそのアーティストのステージを少しずつ上げているという捉え方ですね。
──そのファンダムを作るために、ファンクラブでは具体的に何をすればいいですか?
さっきは高級クッキーを例にしましたけど、基本は GIVE & TAKE だと思っています。まずはギブしまくる。
「これ無料で聴いていいの?」っていうレベルの音源を提供することも大事だし、普段5,000円のチケットをフリーライブにするでもいい。無償の愛でもいいですし(笑)
でも真面目な話、たとえばライブ配信で熱心に悩み相談に答えてくれたら、気持ち的にほろっといっちゃいますよね。そういうことです。
──応援したくなる理由を、積み上げる。
そう。
そんなことしてくれる優しい人の音楽、聴きたくなるでしょ。っていう話です。アーティストだけじゃなくて、俳優やタレントの方々もみんな同じですよね。
FAMが目指す、次世代のファン体験
──最後に、FAMとして、これからどんな構想がありますか?
水道のように当たり前のように使われるファンダムインフラ、、、と言いたいところなのですが、日々エンタメを摂取していく中で、もっと踏み込んだ企画とかが増えて欲しいなって思いませんか?
フリートークさせてください。最近、毎週のようにアーティストさんのライブを見せてもらうんですけど、ライブ中に手拍子でめっちゃ盛り上がるファンとそうでないファンがいるんですよ。
もちろん、アーティスト側の煽りとか楽曲の違いはあるんですけど、僕としては全編ぶち盛り上がっているライブがすごい好きで。
アーティストの性質によってケースバイケースではあるんですけど、仮の話ですよ。
日本人って、前の人がめっちゃ手拍子してたら、それに釣られてめっちゃ手拍子したりするんですよ。で、手拍子がうまくいかないライブは手拍子してくれるお客さんがまばらなんですよ。
つまりですよ。アーティストの性質によってケースバイケースではあるので、本当に仮の話ですよ。
ステージから前方5列、めっちゃ盛り上がる人だらけだったら、会場全体がめっちゃ盛り上がる可能性が上がる気がしませんか?
だとしたらですよ、
① MBTIでEはじまりの陽キャばっかりを前方に固める(偏見アリ)
② ペンライトやタオルを買って、掲げてくれる人を前方に集める
③ ペンライトに加速度センサーがついてて、めっちゃ高速で動いてる人を前方に集める
とか、、、!
極論、こういう施策も打てるわけですよ。加速度の情報勝手にとるなんて危険だ!っていうなら、ライブ中の企画にいれたりね。
──細かい部分は工夫できるわけですね。
そう!工夫できるわけですよ!
まぁ、ちょっと枝葉の話かもしれないですけど、そういった細部の工夫を考えるのが面白いし、アーティストやタレントを育てる人は常にそういうことを考えているわけですよ。
僕としては、そういう部分に貢献したいなと思っていて、その上で僕らは何をすべきかというと、まずはデータをとって提供することですよね。
さっきの施策はデータを集めないと、実行できないので。
公平性とか情報の秘匿性とか、いろいろ議論は山積みですが、面白い企画を考えるためには お客さんの分析がまず不可欠なんですよね。
面白い企画が生まれない理由ランキング第1位「情報不足」。
FAMを見ればファンの情報が全て見られるようになるので、これは事務所さんやマネージャーさんも救いますよ。
面白い企画が生まれない理由ランキング第2位「経済的に成り立たない」。
これを解決するために、マネタイズともしっかり結びついている必要があります。かつシームレスに1IDで決済、ありとあらゆるマネタイズができるFAMが良いプロダクトなんですよね!
あとはですね、推し活って”推し活費”の中から、お金を頑張って捻出しているじゃないですか、それ以外の日常に使うお金が推し活費に転化する仕組みだったり、ファンクラブって、ずっとスマホとかPC上の概念みたいなプロダクトじゃないですか。そうじゃなくて、手触り感のあるようなファンクラブデバイスを開発しています。
最終的には、映画スターウォーズで出てくるホログラムみたいなやつで、アーティストと通信する世界をやりたいと思っていますが、もう少しかかりそうですね(笑)
──最後に、どんな人と一緒にこれからのFAMを作っていきたいですか?
FAMは、完成されたプロダクトというより、現場の課題から鍛えられて育ってきたサービスです。
エンタメの現場って、華やかに見えるけど、裏側は泥臭いし、難しい。
でも、だからこそ面白いと思っています。
ファンの熱量が次のステージを作るという循環を、仕組みとしてちゃんと支える。ここに興味がある人と、ぜひ一緒に働きたいです。
エンタメの裏側は、想像以上にアナログで、泥臭い課題が山積みです。 でも、その課題の一つひとつをテクノロジーと情熱で解き明かし、アーティストとファンが最高に盛り上がれる「インフラ」を作っていく。
そんな、泥臭くも最高に熱い挑戦にワクワクした方は、ぜひ一度カジュアルにお話をしてみませんか?
株式会社Nagisaでは、各職種積極採用中です!
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