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アーキタイプ公式blogにて「メガスタートアップリサーチ:Trax」を公開しました!

“商品棚のヘルスチェックにより店舗を改善する” Trax

今回は、小売店舗に並べられている商品の欠品状況や陳列状態等を可視化・分析することで、商品棚の状態を健全化するサービスTraxをご紹介します。

コンビニやスーパーなどの多様な商品を扱う小売店舗では、POSやハンディターミナルで取得した販売データや在庫データを分析することで、商品の売れ行きや在庫の最適化を図っています。これらのデータにより店舗と店舗外の商品の出入りは把握できますが、実際の商品棚に商品がどのように並んでいるか、何が足りないかは、人が直接見ないとわからないため、店員が目視でチェックする必要があります。

また、店舗に商品を卸すメーカーとしても、商品棚に自社商品が正しく並べられているかによって売上は大きく変動するため、陳列状態は大きな関心事です。そのため、営業担当者が定期的に店舗を訪問して陳列状態をチェックすることが多いのですが、その作業に多くの時間が割かれています。

こういった商品棚の状況を即時に可視化するのがTraxのソリューションです。

Traxは日本での知名度はあまり高くはありませんが、既に50数カ国で事業を展開しており、世界トップの消費財メーカーの2/3が活用しています。2019年7月に日本への本格参入を発表したばかりで、今後の日本国内での展開が注目されるサービスです。


ビジョン・目的

小売店舗・メーカーの業務効率を高めることで、買い物客に快適な体験を提供できるようにする

ターゲット

・スーパー、コンビニ、ドラッグストア等(多くの商品を陳列する小売店舗)
・小売店舗に商品を卸しているメーカー

対象課題・ニーズ

商品棚の商品陳列状態や品薄状況について、人間がマニュアルで確認するため、時間・労力がかかる(結果、商品の売れ行きにも影響)

ソリューション・プロダクト概要

商品棚を撮影した画像を解析し、棚が正しい陳列状態に保たれているかを即時検知してくれる、商品棚のヘルスチェックサービスを提供。

商品の品薄/品切れ状況、表示価格、プラノグラム(売り場の活性化を意図した棚割りの最適化計画)の遵守状況などを評価し、改善点がまとめられたレポートを即時生成、ダッシュボード上に可視化される。

これにより、店舗で商品がどのように陳列され、補充され、売れているのか、リアルタイムでの情報把握が可能になる。また、分析結果を踏まえた対応アクションが店舗スタッフに自動送信されるため、商品棚が常に健全な状態に保たれるようになる。

なお、商品棚の撮影は、店舗スタッフやメーカーの営業担当者がスマートフォンで行うことも可能だが、棚に取り付ける専用小型カメラも提供している。

Traxを導入することで、小売店にとっては店員による棚割・在庫チェック作業が、メーカーにとっては対象の小売店舗における営業担当者による自社商品の陳列・在庫状況のチェック作業が軽減され、販売機会ロスを軽減させることができる。

これらを、Trax Retail Execution・Trax Retail Watchを中心とした6つのSaaS型ソリューションの組み合わせによって実現している。

Trax Retail Execution管理画面(メーカー向け)

メーカー本部が、モバイルアプリで撮影した画像をもとにした商品棚分析結果をWebレポートで確認し、各店舗における店頭施策が上手く機能しているかを評価できる。なお、各店舗の営業担当者のモチベーションを上げるために、店頭施策に関連する特定のタスクを行うと、ポイント等を獲得できるゲーミフィケーション機能も備えている。

Trax Retail Watch管理画面(小売店舗向け )

小売店舗の本部が、画像をもとにした商品棚分析結果をWebレポートで確認できる。分析結果は店舗側のアプリにも同時に通知されるため、即時に棚を改善するアクションを取ることができる。

Traxコンセプト紹介動画



ビジネスモデル

導入費用や料金プランは非公開だが、SaaS型ビジネスであるということと、業務フローへの組み込みにコンサルティングが必要と考えられるため、初期導入費用 + SaaS利用料で収益を得ていると推察される。

競合サービス

USのGoSpotCheckやイギリスのYOOBIC、トルコのVispera等が有力な競合として挙げられる。いずれのサービスも、店舗内の商品棚をカメラで撮影することで棚割チェック作業のコストを削減したり、画像を分析した結果をもとに直すべき陳列を指摘することができる、という点では同種のサービスだが、Traxは以下の点で優位性が高い。

・棚に取り付けるための専用小型カメラを保有(GospotCheckやYOOBICはスマートフォン撮影のみ)
・画像認識アルゴリズムの精度(速さ・正確性)が非常に高く、世界で豊富な実績(学習データも膨大)
・提携する大手調査会社ニールセンの外部小売店データを活用することで、より精度の高い商品棚の設計プランを提示できる

Traxの商品棚専用小型カメラ

なお、国内ではNECが2018年よりTraxと同様の売場情報解析ソリューションを展開しており、キリンビールやカルビー等に採用されている。

考察

Traxは、今でこそ競合も多くなってきていますが、店頭の商品陳列オペレーションにおける非効率というクリティカルな課題と、精度の高い画像解析技術によるソリューションがうまくマッチしてスケールしているサービスです。課題の重要度と、ソリューションの実現性のバランスは、サービス検討の観点として参考になるのではないでしょうか。

また、創業者のDror Feldheim氏によると、Traxは最終的にエンドユーザー向けのサービスを展開していく方針とのことです。2019年8月に来店ポイントアプリを提供するShopkickを買収はそれを体現しています。こういったビジネス領域の広げ方、自社以外のアセットの活用の仕方も、事業を大きく拡大していく際に参考にすべき点でしょう。

参考

Trax
Parh to ParchaseIQ
The Traction Stage
IT media
KrASIA
IoT M2M Council
crunchbase


<メガスタートアップリサーチ:Trax>
URL:https://www.archetype.co.jp/trax/

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