沖永良部島でのプロジェクト立ち上げに挑む川西さんの【インタビュー後編】をお届けします!
Vol.2では、2027年度に向けて島外の生徒を迎える「受け入れ体制づくり」のリアルな舞台裏に密着。 島の人々や行政、高校と信頼関係を築きながら、一体となってプロジェクトを動かす秘訣とは何なのか。
現場に寄り添い続ける中で見えてきた「地域×教育」の可能性と、そこで感じるやりがいを熱く語っていただきました! 未知の環境で挑戦を続けたい方、地域に関わる仕事に興味がある方必見の内容です!
「生徒募集」だと思っていたら「暮らし」をつくる仕事でもあった
沖永良部島へ行く前は、現地プロジェクトリーダーの仕事について、島外から入学する生徒を募集する「生徒募集」が主な仕事だと想像していました。
もちろん生徒募集は重要です。しかし、着任すると「暮らし」をつくる仕事の比重も実は大きいことに気づきました。どれだけ高校の魅力を伝えても、「子どもはどこに住むのか」「食事はどうなるのか」「何かあったときは誰が対応するのか」に答えられなければ、保護者は安心して子どもを送り出せません。
島外から高校生を迎えるには、生徒募集と同時に「安心できる暮らし」という受け皿をつくる必要がありました。
来年4月受け入れに向け、生徒募集と住まい整備を同時に進める
現在のミッションは、2027年4月に目標とする人数の入学者を迎えることです。
地域みらい留学のイベント出展・パンフレット制作・学校詳細ページ・SNS発信といった生徒募集の仕事と、住まい(住居整備、食事提供、見守り体制づくり等)に関する仕事を同時に進めています。
関係者は多岐にわたります。知名町役場・沖永良部高校・町の商工会・地域住民のみなさん・保健所・外部アドバイザー、そして県外の中学生と保護者です。
例えば食事提供では、商工会を介して複数の地元飲食店から弁当を提供してもらう仕組みを構築しようとしています。
見守り体制については、地域住民のみなさんから「縁側で話すような、緩やかな関わりができたらいいな」という声もありました。安全性や責任範囲は明確にする。一方で、管理しすぎて島らしい人と人の関わりを失わせない、そのちょうどいい塩梅を探っています。
そして、基盤として「沖永良部高校で生徒を迎え入れどのように育ってほしいのか」という共通ビジョンを、役場・高校・地域住民のみなさんと一緒に考えることもめちゃくちゃ大切です。島外から生徒を集めることだけが目指すゴールではありません。
これまでの経験が、沖永良部島でつながり始めた
未経験のことばかりの日々ですが、これまでの経験が活きる場面もあります。
中学校営業で身につけた、初対面の相手に短い時間で価値を伝える力は、イベントでのブース対応に活きています。撮影のディレクション経験は、先生や高校生から魅力を引き出す場面でとても役に立っています。
LINEやCRMの経験は、イベントで出会った中学生と保護者を現地訪問へつないでいく導線づくり、前職で保護者と向き合った経験は子どもを外へ送り出す不安に寄り添うことに。
一方、新たに学ぶ必要があったのは行政の仕組みです。
住まい整備には、建築基準法や建物用途変更の話が出てきます。食事提供は保健所への相談が必要です。自治体の補正予算のスケジュールも踏まえて動かなければいけません。この辺りは役場のみなさんや外部アドバイザーに教わり、覚えながら必死に走っています (笑)
そして、報告書づくりは議事録や音声メモを素材に AI の活用を組み合わせています。苦手なことは根性だけで乗り越えず、仕事の進め方を工夫しています。
“よそから来た人” から、“一緒にやる人” へ
着任して間もない頃、沖永良部高校で知名町の施政方針を題材とした授業に同行しました。
大人から高校生へ説明する時間が多く、このままでは一方通行になってしまい高校生から意見が出にくいかもしれないと感じました。そこで、即興のグループワークをその場で提案して実施しました。
生徒同士が話し始めると、教室の空気が変わりました。次第に会話が活発になり、町の課題に対する疑問や意見まで出てきました。
その様子を見ていた役場の担当者や先生方との距離が縮まり、授業の後「川西君がいてくれてよかった!」と言ってもらえました。島へ来たばかりの “よそから来た人” から、少しだけ “一緒にやる人” になることができた瞬間でした。
地域では、肩書や正論だけで信頼を得ることが難しいと思います。分からないことは正直に伝え、「教えてください」と相手を頼る。こちらが答えを持っていくのではなく、みなさんで一緒に答えをつくっていく。そんな姿勢を大切にしています。
正しいことを言うだけでは、地域は動かない
この仕事の難しさは、関係者それぞれに異なる事情と優先順位があることです。
自分にとって、生徒募集や住まい整備の仕事は本業です。しかし先生には授業があり、役場の担当者には他の行政業務があります。「今月中に進める必要があります」とこちらの正しさだけ伝えても、それだけで相手が動くとは限りません。なぜそれが必要なのか、どのような負担がかかるのか、セットで考える必要があります。
例えば意見が対立したとき、どちらか側に立ったりすぐに正しさを判断したりしないよう心がけます。まず、双方の主張の背景を聴く。同じ場で話せる場合には、間に入って問いを投げかけ、互いの背景を聴き合える状態をつくる。
この仕事は、自分の正しさを通す仕事ではありません。高校・行政・地域・保護者など、異なる立場の人たちを繋いで、共通のゴールへ進んでいく状態をつくる仕事だと思います。
中学生の表情が変わる瞬間がある
大阪で開催された『日本まるごと高校フェス』では、想定を超える数のご家族がブースを訪れてくれました。連れていった高校生たちが、自身の言葉で島や高校の魅力を語る。その話を聴いている中学生の表情も、少しずつだけれど変わっていきます。
「ここなら、自分にも何かできるかもしれない」
中学生のそんな気持ちが芽生える瞬間に立ち会えることが、この仕事の醍醐味です。
沖永良部島・知名町での試行錯誤を、全国の地域へ
島外の高校生を受け入れることは、ゴールではなくスタートだと思っています。
島の外から生徒が新しい視点を持ち込み、それを見た島内の生徒にも「一歩踏み出してみよう」という空気が生まれ、高校が変わり、地域も変わっていく。そんな明るい循環をつくることを目指して頑張ります。
また、知名町で得た住まい整備・生徒募集・行政との連携の知見を、全国の地域へ共有していきたい。一人の挑戦は「点」ですが、仲間が増えれば「面」になります。私の失敗や試行錯誤が、次に地域へ入ってくれる人にとって活かされる学びになれば良いと思っています。
この仕事に向いている人、逆に苦しくなりやすい人
この仕事に向いているのは、特定の業界経験がある人よりも「現場」「現物」を大切にできる人です。
まず会いに行く、話を聴く。中学生、校長先生、役場のみなさん、地域の住民、異なる立場の人と同じ目線で関係をつくる。そして、みんなで一緒に正解のないものを形にしていくことを楽しめる人が向いていると思います。
反対に、明確な指示や決められた正解を待つ人は苦しくなりやすいかもしれません。まだ完成されたマニュアルなど無く、成果はすぐ数字にあらわれない期間があるはずです。
「今日は何が決まったか」だけでなく、「誰と何を一緒に進められたか」を自分で見つける必要があります。私自身、行政の知識も島で暮らした経験も、充分に揃ってから赴任したわけではありません。足りないまま飛び込んで、色んな方に教わりながら歩んでいます。
すべてを一人で背負う必要はありません。分からないことを認め、相手の話を聴き、周囲に頼りながら、ちょっとずつ前へ進めることが肝心です。こんな仕事について気になった方はまず話を聴きにきてほしいと思います。うまくいっていることも、まだ答えのないことも、率直にお話ししますよ!