「日本の魅力を、世界へ届けたい」
その思いを胸に、金融機関での9年間とITスタートアップでの事業統括・上場経験を経て、SHINN JAPANを立ち上げた代表・佐藤。
今回は、創業に至るまでの経緯やこの事業に込めた思いについて話を聞きました。「深」「真」「心」この三つの漢字に込めた思いを、創業者自身の言葉でお届けします。
—まず、佐藤さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
新卒で金融機関に入社して、9年間、海外事業に携わっていました。資源開発に関する大規模なプロジェクトが中心で、欧米圏を中心としたグローバルのプレイヤーたちと日々シビアな交渉を重ねるような仕事です。シンガポールに駐在していた時期もあります。
そうやって海外の人たちと関わる中で、折りに触れて感じていたこと。それが日本という国が持っている歴史、文化、自然、食といったものの、圧倒的な豊かさと厚みです。
ただ同時に、その魅力がまだ世界に届ききっていないことも感じていました。文化的な深み、地域ごとの個性、そこに暮らす人々の営み。そういったものが、十分に伝わっているとは言えない。いつかこういった日本の魅力を世界に届けるような仕事がしたいと、漠然とですが考えるようになりました。
—その後、ITスタートアップに転職されていますね。
はい。日本の魅力を届けるといっても、思いだけでは形にならない。事業としてつくり、届ける力が要る。その力を身につけたいと考えて、SaaS系のスタートアップに転職しました。
実際に株式上場を経て、事業の統括もする中で、社会に対して価値のある事業をつくるとはどういうことなのか、その価値をどうやって届けるのか。その感覚を掴むことができました。そしてこの経験は、日本の観光産業にもそのまま活かせるのではないかと考えるようになりました。
—SHINN JAPANを立ち上げたきっかけは何でしたか?
コロナ禍を経て、日本の文化や伝統への探求心が海外でさらに高まっていることを強く感じるようになりました。それまで積み重ねてきた自分の思いと世の中の時流が重なって、自然な流れで創業に至りました。
海外から日本を訪れる方々、とりわけ欧米豪の方々にとって、日本はある意味で異世界。自分たちの価値観とはまったく違う文化、伝統、暮らしがここにはある。自分自身もこれまで旅を通じて世界を広げてきた実感があったので、旅という形でこそ日本の本当の魅力に触れてもらえると考えました。
—SHINN JAPANがターゲットとする訪日客について教えてください。
主に欧米豪からの訪日客で、観光庁が「高付加価値旅行者」と定義している層です。一人あたりの訪日消費額が100万円を超えるため「富裕層」と表現されることもありますが、当社ではその言葉は使いません。
「富裕層」と聞くと、いつでも五つ星のホテルに泊まり、至れり尽くせりの旅を好む人たちをイメージされがちです。しかし、当社の海外ゲストはそのイメージとはだいぶ違います。
私が金融機関時代に一緒に仕事をした海外の同僚や関係者が、まさに今の当社のゲストと重なります。彼らは、自分が意味を感じるものにはしっかりとお金をかける。けれども、何でもかんでも贅沢をしたいわけではない。そして、自分のことを「富裕層」だとは思っていない。そういう人たちです。
知的好奇心が旺盛で、本物の体験に対しては対価を惜しまない。そういう旅行者こそが、国が本来求めている「高付加価値旅行者」なのだと理解しています。
—実際にどんな体験を届けているのですか?
たとえば、今なお静寂を保つお寺の町で、僧侶と個別に対話をする時間。全国有数のお茶の産地で茶農家さんの古民家に宿泊する体験。通常は公開されていない伝統工芸の工房訪問。
こうした体験の一つひとつは、インターネットの情報だけではなかなかたどり着けないものです。そして、当社単独の力だけでも成り立たない。それぞれの地域で、本物の体験を守り、思いと誇りを持って届けている事業者さんや地域の関係者の方々がいて初めて実現できることです。
この仕事を始めてから、各地で本当に多くの方々に出会いました。人が減っていく中で地域の歴史を守ろうと本気で闘っている方。伝統を絶やすまいと新しい取り組みに挑んでいる方。そういった方々と一緒に仕事をさせてもらえていることが、この事業の大きなやりがいでもあります。
—事業を進める上で大切にしていることは何ですか?
当社では「現場主義」「迅速柔軟」「価値追求」の三つを行動指針として掲げています。
まず「現場主義」。地域の皆様との関わり方は、当社が特に大切にしていることです。その方々の思いや考え方を無視して、持続的な事業はできません。自分たちの足で現場に行き、その土地の人と話をし、空気感を肌で感じる。そこからしか見えないものがあると思っています。
「迅速柔軟」。旅行者が求めるもの、地域が届けたいもの。そのすべてが千差万別です。だからこそ素早く応え、対話を重ねながら真のニーズを探る。刻々と変わるゲストの要望や現場の状況にも、しなやかに応じ続ける。この姿勢が欠かせないと考えています。
そして「価値追求」。この仕事は、誰にとって、どんな価値があるのか。常にその問いと向き合うようにしています。中途半端にせず、最後まで届けきる。それが当社の仕事の基本だと思っています。
—社名の「SHINN」にはどんな意味が込められていますか?
「深」「真」「心」という三つの漢字を重ねています。奥深さに触れること、本物の価値を届けること、心と心を結ぶこと。この三つが、私たちの事業の根底にある考え方です。
—経営で大切にしている指標について聞かせてください。
当社は、売上や利益といった数字を事業の目標にしていません。もちろん、事業を持続させるために収益は必要です。ただ、それは目標ではなく結果だと捉えています。
当社が重視しているのは、海外ゲストの満足度と、地域の皆さまからの声です。ゲストが日本の本当の魅力に触れて、その人自身の世界が広がったと感じてもらえること。地域の方々から継続的に「一緒に仕事がしたい」と言ってもらえること。そういった積み重ねを、事業がうまくいっているかどうかの判断基準にしています。
—最後に、この記事を読んでくださっている皆さまへ。
当社が求めているのは、まず何よりも、この事業や理念に共感してくれる方です。知識やスキルや経験はもちろん大切ですが、これからのAI時代、それ以上にその人自身の意思や熱量、考え方が重要になると考えています。
当社では生成AIを最大限に活用しています。AIにできることはAIに任せる。その分、人の仕事は現場に足を運び、人と話し、人の気持ちを動かすことに集中する。そういう環境を整えているつもりです。
だからこそ、一緒に働く人に求めるのは、好奇心と行動力があること。そして、人を動かす力があること。別の表現をすれば、ガッツや愛嬌のある人。困難や先が読めない状況を楽しめる人。周囲が自然と協力したくなるような人。
「日本の魅力を世界に届ける」。もしこの言葉に共感していただけた方がいれば、ぜひ一度お話できればと思います。