【役員インタビューvol.3】「エンタメで人を熱狂させたい」――AIという荒波を乗りこなし、物語の力で音楽ビジネスの新たな出口を創る
日本コロムビアグループ株式会社(以下:NCG)は、2025年10月1日に株式会社フェイスから新設分割により設立された、AIを核とした次世代型クリエイティブプロデュースカンパニーです。
今回は、グループ会社のコロムビア・マーケティング株式会社の取締役にインタビューしました。数々の事業の立ち上げや起業を経てNCGへ参画した取締役が、AIを駆使した最新のマーケティング戦略から、あえて困難に挑むことで自分を更新し続け「人を熱狂させる」ための独自の仕事哲学までを語り尽くします。
コロムビア・マーケティング株式会社 取締役 冨樫 忠幸
2002年、USEN(現:U-NEXT HOLDINGS)入社。NIKKO(現:GMO NIKKO)にて営業成績トップを記録し、F1メディア(現:W TOKYO)では『東京ガールズコレクション』(以下、TGC)のプロジェクトを牽引する。 MIXIでの広告統括等を経て、SNS関連企業の代表取締役として経営キャリアをスタート 。2014年には自身のマーケティング会社を設立し、延べ50社以上の事業支援を経てトランスコスモスへ売却(バイアウト) 。以降も複数のスタートアップ創業に参画し、新規メディアの立ち上げやビジネスモデル構築を推進してきた。 広告・SNS領域に20年以上携わり、デジタルからマスメディアまで一気通貫の統合プロデュースを強みとする。
ーーQ1.これまでのご経歴など含め、自己紹介をお願いします!
私のキャリアの原点は「エンタメで人を熱狂させたい」という強い思いでした。 新卒では、今のU-NEXTの原点となるサービスに携わりました。当時は、まだ珍しかった映画見放題付きマンションを世の中に広める仕事です。その後、ビジネスの収益構造を学ぶために広告代理店へ。そこで「マーケットシェアをどう獲るか」という視点を養いました。
その後、TGCの創業期に参画しました。目の前で数万人の心が動き、会場全体が熱狂に包まれる。その光景を見て「これこそがエンタメ体験だ」と確信しました。そこからSNSマーケティングの世界にのめり込み、複数の会社創業に関わるなど、ライフワークとして「人を熱狂させる仕掛け」を作り続けてきました。
そこから、NCGに参画したのは、代表のCEOセオさんとの縁にあります。彼とはこれまでに4社ほど仕事を一緒にしてきました。彼からの誘いがあったことはもちろん、「まだ実現できていない、やり残したこと」を形にしたいと思ったからです。
今は、コロムビア・マーケティング株式会社の取締役として、グループが持つ圧倒的な歴史と資産を、デジタルやマーケティングの力でどう再定義し、新しいモデルを作れるかという「仕込み」の真っ最中です。これまでの経験すべてを注ぎ込み、伝統あるこの場所から、次の時代のエンタメを仕掛けていきたい。そんな思いで日々向き合っています。
ーーQ2. NCGのMVVに基づき、AIが音楽業界に与える影響を教えてください。
正直、今は「AIを使わないで」と言われたら、仕事が立ち行かなくなるほど私自身AIに助けられています。 今の状況を見て思い出すのは、かつてmixi時代に経験したガラケーからスマホへの転換期です。当時はまだガラケーが収益を支えていましたが、確実にスマホの波が来ていました。この波は、AIも全く同じです。CEOセオさんがAI活用を強く説くのは、その波を誰よりも早く掴むためです。
115年以上の歴史を持つ伝統的なレコード会社だからこそ、既存の収益を守るチームと、AIを駆使して新しい事業をつくるチームの両輪が必要です。 AIのアイデア出しや叩き台を作るスピードは圧倒的です。瞬時に80点のアウトプットを出す。この数をこなすことで、圧倒的なスピードで進行することができます。知見も蓄積される。 ただ、最後に人の感性を震わせる「想像力」や「戦略のコントロール」は指示出ししている人間にしかできません。「2〜3歩先を想像し、AIを活用する。1歩先にアジャストして実行する。」このバランスこそが、これからの次なるビジネスの勝機につながると考えています。
ーーQ3.仕事に没頭する瞬間はどんな時ですか?
意図的に「コンフォートゾーン(居心地の良い場所)」を抜け出す瞬間ですね。
人は慣れると、大抵のことは片手間でできてしまいます。でもそれは、成長が止まるサイン。だから私は、既存の安定した仕事(8割)に対し、常に2割は「全く新しい仕込み」に充てるようにしています。
忙しくても、無理にでも2割の挑戦を並行させる。そこで新しい人と話し、新しい問いを立てる。そのプロセスが思考を広げ、新しい自分を発見する喜びとなり、やがて「熱狂」へと変わっていくと思ってます。
ーーQ4.これまでのご経験で、最も大きな失敗は何でしたか?そして、そこから何を学び、今の仕事にどう活かされていますか?
経営を経験していれば、避けられない失敗はあります。時には何を信じていいか分からなくなるほどの不義理を経験することもあります。しかし、そうした苦い経験こそが、自分の優先順位を研ぎ澄まし、自分を強くしてくれる「修行の場」なのだと考えています。
実は私、その精神を鍛え直すために、毎年一度はフルマラソンを走っています。それも、「ほぼ練習なし」の状態で。5キロ走るのがやっとのコンディションで、42.195キロの地獄に飛び込むわけです。医学的には決してお勧めできませんが(笑)、極限まで自分を追い込むことで、「大抵のことは、あの地獄に比べれば楽だ」と思えるようになります。その経験で培った圧倒的な「打たれ強さ」が、今の仕事における粘り強さの源泉になっていますね。
ーーQ5.働く上で、大事にしている価値観はありますか?
プロダクトアウトとマーケットイン、その両者を繋ぐ「ストーリーテリング(物語づくり)」を何より大切にしています。
どれほど優れたサービスであっても、そこに物語がなければ人は心を動かされませんし、熱狂も生まれません。例えば、オーディション番組がこれほど支持されるのは、デビュー前の葛藤や夢という「物語」に、視聴者が自分の感情を重ね合わせることができるからです。
私はこれを「コミュニケーションデザイン」と捉えています。制作者が抱く「なぜこれを作ったのか」という強い熱量を因数分解し、今のマーケットに響く言葉で接続していく。この物語を設計できる人材は、世の中に多くありません。私はその領域の唯一無二のプロでありたい、そう思っています。