LINKSには、業務の枠を超え、社員の純粋な「興味」や「関心」を起点に動き出す取り組みやプロジェクトが存在します。
そのひとつが、今回ご紹介する「ブロックチェーンチーム」です。前身会社の時代から続く「社内でブロックチェーン技術に触れる機会をつくる」という取り組みを土台に、2025年のハッカソン参加を機にLINKSブロックチェーンチームとしての活動を本格化させました。
このチームの特徴は、有志メンバーによるオープンな集まりであること。
この1年間で2度の『XRPL Hackathon』に参加し、いずれも受賞という結果につながりました。
開発プロダクトはどのように決まったのか。
未経験のメンバーが混ざる中で、チームはどのように変化していったのか。
本記事では、チームの一員として参画した私・山内の視点も交えながら、1年間の活動とその中で起きた変化を整理してみたいと思います。
すべては「やってみたい」から始まった
LINKSブロックチェーンチームの活動は、社内の定例会での呼びかけをきっかけに始まりました。
「XRPLのハッカソンがあるんだけど、興味ある人は一緒に参加しませんか?」
リーダーである吉田さんのこの一言に対し、「新しい技術に触れてみたい」と感じたメンバーが集まり、チームが組成されました。前身会社の時代からブロックチェーンに関わってきたメンバーもいれば、私のように今回初めて触れるメンバーもいました。
【チームメンバー】
リーダー:吉田さん
メンバー:ピョーさん、村田さん、山内
背景や知識レベルはそれぞれ異なりますが、「実装を通して技術を理解したい」という点は共通していました。
「もともとブロックチェーンには興味がありました。実際に触れる機会として参加を決めました」(山内)
業務外の取り組みとして始まったこの活動は、異なるスキルセットを持つメンバーが、それぞれの関心を起点に関わる形で進んでいきました。
手探りで進めたブロックチェーンへの挑戦
ハッカソンへの参加が決まった後、まず直面したのは、どこから手をつけるべきかを整理するところからのスタートでした。
そもそもXRP Ledgerとは…
XRPという暗号資産を支えるブロックチェーンのこと。送金やトークン発行などができる分散型の台帳システム。
参考:【初級編】XRP Ledgerとは
特徴…
処理速度が早い。ガス代が安い。グローバル。スマートコントラクトがない(開発が簡単)。
XRPLやNFTの基本仕様を確認し、開発環境の構築を進めるところから始めました。リーダーの吉田さんやピョーさんからのレクチャーを受けつつ、XRPLのTestNet(テスト環境)を実際に触りながら、動作を一つひとつ確認していきました。
「トークン(ブロックチェーン上で扱われるデジタルな資産やポイント的なもの)を発行できた」
「NFTをミント(発行)できた」
小さなアウトプットを積み重ねる一方で、XRPL特有の仕様や制約に戸惑う場面も多くありました。
たとえばNFTひとつを作るにも、
- 画像をIPFS(データを一箇所ではなく分散して保存できる分散型ストレージ)にアップロードし、
- メタデータ(データの説明情報のこと)を作成し、
NFTokenMintというNFTをミントするときに使う処理を実行する
といった複数の工程が必要です。
XRPL上の取引履歴の検索サイトであるXRPL Explorer上で、自分たちのトランザクション(ブロックチェーン上での処理記録)を確認できたときは、仕組みの裏側を少しずつ理解できている感覚がありました。
また、この段階で並行して進めていたのが、ハッカソンで開発するプロダクトの検討です。
吉田さんの頭の中には当初から、新機能であるDynamicNFT(状態や条件によって内容が変化するNFT)を使って、たまごっちやポケモンのような分かりやすいアプリをつくるという構想がありました。
これは、DynamicNFTという新しい技術を親しみやすい形で表現し、ハッカソンでの評価にもつなげていくことを意識したものでした。
そのうえで、チーム内でアイデアを出し合いながら、どのテーマに落とし込むかを検討し、最終的にはヘルスケア領域と結びつける形で具体化していきました。
1回目の挑戦と受賞。手探りの中で得たもの
チームとして初参加した『XRPL Hackathon 2025』では、ヘルスケア領域をテーマに、NFTを組み合わせたWebアプリケーションの開発に取り組みました。
プロダクト名は 「D-Pet-chi(ディーペッチ)」。
食事の記録や解析結果をもとに、ペットやアバターの成長を表現する、いわば“NFT版たまごっち”のような体験を目指したプロダクトです。
開発は、調査と実装を並行して進める形となりました。
私自身はNFTのミント機能まわりの実装を担当し、IPFSへの画像アップロードやメタデータの作成、トランザクションの発行といった一連の処理を実際に動かしながら理解していきました。
仕様の理解と実装が切り離せない状態で、「調べて、試して、また調べる」というサイクルを繰り返しながら進めていく必要がありました。
一方で、チームとしての進め方にも課題がありました。
業務外の活動ということもあり、各メンバーの作業時間の確保や進捗のすり合わせには難しさがありました。特にリモートで参加しているメンバーもいる中で、開発状況の共有や認識合わせに時間がかかる場面もありました。
「進捗のすり合わせやコミュニケーションの部分は、自分の力不足もあり大きな課題でした。リモートのメンバーもいる中で、チームとしてどう進めるかは難しいポイントでした」(吉田)
開発終盤まで動作が不安定な箇所が残るなど、決して万全とは言えない状態での提出となりましたが、それでも結果として、「AI Track」と「コミュニティ賞」のダブル受賞という結果を残すことができました。
評価された要因を振り返ると、プロダクトの背景や今後の展開に関する説明、そしてデモプレイを含めた「伝え方」が影響していたと考えられます。特に、ピッチの中で「NFT版たまごっちのようなもの」と説明したことで、技術に詳しくない人にも一瞬でイメージが伝わりやすくなったことは大きかったように思います。
「正直なところ、手応えはあまりありませんでした。まずは提出できたことに対する安心感の方が大きかったです」(山内)
完成度の高いプロダクトを作ること以上に、限られた時間で「形にする力」と「伝える力」の重要性が、今後に向けた課題として明確になった最初の挑戦でした。
2回目の挑戦で変わったこと
2回目の『XRPL Hackathon OSAKA 2025』では、1回目の経験を踏まえ、どのように進めるかを意識した状態で開発に取り組みました。
1回目は、仕様や実装方法を探りながら進める場面が多く、全体の方向性や優先順位も都度判断している状態でした。
一方で2回目は、プロダクトの方向性や対象とする課題を事前に整理したうえで開発に着手し、ピッチでの伝え方も含めて全体の構成を意識するようになりました。
プロダクトの決め方にも変化がありました。
1回目は、XRP Ledgerの機能のうち、これを使いたい!からアイデアを具体化していく形でしたが、2回目はより「どのような課題を解決するか」という観点から方向性を整理したうえでアイデア出しを行うことができたと思います。
実際のアイデア出しの場では、こんなやり取りもありました。
「サマーウォーズみたいな、ああいう“世界観があるシステム”って作れないですかね?」
私・山内から出たこの一言は、もともとAIエージェントとの対話の中で、「仮想空間と現実世界が接続された社会」をブロックチェーンでどう実現できるかを考えていたことがきっかけでした。
『サマーウォーズ』に登場する「OZ(オズ)」のように、デジタル空間の操作が現実世界の仕組みとつながる世界がつくれるのではないか。
OZが現実社会に実装されるとしたら、ブロックチェーンは「OZの致命的な欠陥を補う、最も重要なインフラ」としての役割を果たすのではないか(アカウント(ID)の分散管理、経済システム(資産)の分散化、インフラ制御の透明性と耐障害性などの側面において)。
そうしたイメージをもとに、「XRPでどこまでそれに近い体験を作れるか」という議論が広がっていきました。
そんな風に、技術から考えるというよりも、「どんな体験をつくりたいか」を起点にしながら、そこにXRPLの仕組みをどう組み合わせていくかを考える進め方へと変化していったような気がします。
その結果、生まれたのが地方創生DEXプラットフォーム 『LEMONEX(レモネックス)』 です。
DEX機能(仲介業者なしで、ユーザー同士が直接通貨を交換できる仕組み)やトークン関連の仕組みをベースにしつつ、地域課題や社会実装も視野に入れた構想へと広がっていきました。
私自身は、通貨トレード処理(DEX機能)を担当しました。
実装にあたっては、通貨コードやTrustLineまわりの設定(XRPL上で特定のトークンを使えるようにするための設定、信頼関係の登録)、細かなフラグの扱いなど、詰まりやすいポイントを一つずつ解消していく必要がありました。
また、チーム内での役割分担や情報共有の進め方についても見直しを行い、1回目と比べて開発の進行はスムーズになったと感じています。
一方で、デモ環境の準備や新しい機能に関する理解など、事前準備の面では課題も残っており、すべてが改善されたわけではありませんでした。実際、本番のピッチでは直前まで調整していたエラーが出てしまい、デモは想定通りには進みませんでした。
それでも、結果として2回目の挑戦でも受賞につながり、Main Track 1位 という評価をいただくことができました。
さらに印象的だったのは、終了後に他チームの方から「この仕組みを必要としている自治体関係者がいる。話をつなげたい。」と声をかけていただいたことです。プロダクトの構想が、単なるハッカソン作品としてではなく、社会実装の可能性を持つものとして受け止められたことを実感する機会になりました。
「私の意識としては、2回目で皆経験者だから、あまり口を出さないで大丈夫だろうと油断してました。問題をもっとキャッチアップできていれば、実装の質が上がったし、最終的に機能を全て実装できなかった一因だと反省しています。」(吉田)
進め方や意識には確かな変化がありましたが、結果と手応えの間にあるギャップは、今回もチームにとって印象的な学びとなりました。
この1年で見えてきたこと
この1年間の取り組みを通して、ブロックチェーン技術に対する向き合い方や、開発の進め方に変化がありました。
1回目の挑戦では、XRPLやNFTの仕様に対する理解が浅く、全体像を捉えきれない状態で開発を進めていました。
実装の正解や評価の基準も分からないまま、手探りで進めていたのが実情です。
一方で2回目の挑戦では、1回目で得た知識をもとに、「何を作るか」「なぜ作るか」といった目的を整理したうえで開発に取り組むようになりました。
評価されるポイントやピッチでの伝え方も意識するようになり、開発だけでなくアウトプット全体の構成を考えるようになっています。
また、開発の進め方においても、知識量の差を埋めるためのコミュニケーションや役割分担が整理され、チームとしてより組織的に動けるようになりました。
一方で、事前準備や新しい技術に対するキャッチアップ、デモ環境の整備など、継続的な課題も残っています。1回目で見えた改善点をすべて解消できたわけではなく、引き続き取り組むべき点があることも明確になりました。
この活動を通して実感したのは、新しい技術は一度触れただけでは理解しきれず、継続的に開発と検証を繰り返す中で初めて見えてくるものがある、という点です。
また、ハッカソンという期限のある形式でアウトプットを繰り返したことが、単なる知識習得ではなく、実践的な経験としての蓄積につながりました。
「やってみたい」が動き出す環境
今回の振り返りを通して感じたのは、個人の「やってみたい」という意思が、実際のプロダクト開発やアウトプットにつながっていく流れの価値です。
ハッカソンをきっかけに集まったメンバーが、プロダクトを開発し、結果として受賞に至る。この一連の経験は、個々人の関心を起点とした取り組みであっても、十分に価値を生み出せることを示していると私は感じています。
また、2回目のハッカソンの大阪遠征では、ハッカソン参加に加えて外部との接点づくりや、その先の採用活動まで視野に入れた活動も行いました。
(それを理由に、私は交通費を会社経費として出してもらいました。ただ行っただけではなく、やったこと・感じたこと・これからやってみたいことをまとめた出張報告書を作って、後できちんと提出しました。)
個人の提案に対して会社が投資を行い、挑戦の場を広げられたことも、LINKSらしい環境の一つだと感じています。
改めて1年を振り返ると、受賞という結果がありながらも、チームはまだ成長の途上にあります。
ブロックチェーンやWeb3は、ここ数年で注目される機会は増えてきましたが、日常に自然に溶け込んでいると言えるほど「当たり前」の技術には、まだなっていないと感じています。現役エンジニアであっても、用語や仕組みに対して難しさを感じる場面は少なくありません。
だからこそ重要なのは、仕組みの理解を前提にするのではなく、「どう伝えるか」「どう体験してもらうか」という視点なのだと思います。1回目のピッチで「NFT版たまごっちのようなもの」と説明したことで、プロダクトのイメージが伝わりやすくなったのも、その一例でした。
ブロックチェーン技術の活用においては、ユーザーに仕組みを意識させずに使ってもらえる形に落とし込むこと、そして使い続けてもらえる体験にすることが、今後の大きな課題だと考えています。
今回の経験をもとに、これからも検証と改善を重ねながら、より実用的な価値を生み出す活用を目指していきたいと思います。
最後に。完璧じゃないからこそ、補い合いながら新しいことに挑戦できる面白さがLINKSにはたくさんあると思います。次の1年でどんな『やってみたい』を形にしていけるか、今から楽しみです。