📌インタビュー📌
今村不動産株式会社代表 今村則永
セミの声が聞こえるようになり、いよいよ夏本番の足音が聞こえてきました。1年って本当に早いですね。気がつけば僕たち今村不動産も12期がスタートして1ヶ月が経ちました。
会社では毎年期が変わるタイミングで売上や利益目標について、社内で共有する時間を設けています。今年も例年通り発表を行ったのち、11期のお疲れ様会と称して全社員で近くのビアガーデンにうかがいました。スタッフが増えてくるとなかなか全社で集まるのが難しくなってきますが、スタッフみんなの笑顔を見ていると、もっといい組織にしていかないと…と、改めて感じることができ、とても良い機会でした。
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さて、そんなこんなで迎えた12期なんですが、先の発表でも今回は「今期の売上目標はいくらか」という話だけでなく、会社としていまどのような局面にいるのか、そしてこれから何を大切にしていくのかを、改めて整理して話すようにしました。
目次
市況の変化に向き合う1年
創業から今期までは利益も毎年着実に積み上がり、社員数も増え、事業の幅も広がってきました。振り返ると本当に多くの方々に支えていただきながら、会社として一歩ずつ成長してこれた実感があります。一方で、これからはより慎重に会社の舵取りについて考えなければ…と、最近は感じるようになっています。というのも、昨今の市況の変化で不動産業界を取り巻く環境が大きく変わりつつあるからです。事業の前提そのものが変わる局面に差し掛かっている、と言っても過言じゃないかもしれません。
これまでの不動産市場は非常に恵まれた環境にありました。日本では長く低金利の時代が続き、資金調達がしやすく、投資マインドも高く、結果として不動産価格も上がりやすい。極端に言えば、資金力があって上手く物件の仕入れさえできれば、販売出口がある程度見込める&時間の経過とともに物件価値そのものも上がっていく状態でした。もちろん、不動産の仕事は仕入れにも企画にも販売にもそれぞれ専門性や経験が必要です。ただ、外部環境としては比較的追い風が吹いていたのは事実です。
この1年で金利の上昇、インフレ、円安、海外情勢の不透明さなど、会社の外側にある大きな経済環境が、以前とは明らかに変わってきました。不動産業はどうしてもこうしたマクロ経済の影響を受ける業種です。金利が上がれば、買う側の資金調達に影響します。金融機関の融資姿勢も変わります。保有している資産の価値や、在庫を持つリスクも変わってきます。これまでと同じように物件を仕入れたとして、同じように売れるのか。同じような利回りで買い手がつくのか。そういったことを、これまで以上に慎重に見極めていく必要がある。
だからこそ、今期は「売上をどんどん伸ばしていく」というよりも、会社の中身を強くすることを重視する1年にしたいと思っています。
経営指標としての純資産がますます重要になる
会社として成長していくためには、売上も利益も必要です。ただ、僕たち不動産開発業が売上を作るには、その前段階に必ず仕入れが発生する、つまり在庫を持つ必要があります。市場が安定していて、出口も見えやすく、資産価値も大きく崩れない環境であれば、仕入れは成長のための投資として前向きに捉えられます。けれど、現在のような市況が変わる局面では、在庫を抱えることはそのまま経営のリスクにもなり得てしまう。仕入れ時点では良い条件だったとしても、売却までの間に金利が変わる、買い手の融資がつかなくなる、出口価格が変わる…となると、会社の財務に大きな影響を及ぼしかねません。
売上が大きい会社は勢いがあるし、前年比で伸びていれば順調に成長しているように見えます。とはいえ、どれだけ売上が大きくても、その裏側で負債が膨らみすぎていれば本当に強い会社とは言えません。僕は経営判断を行ううえで常々B/Sを重視しています。売上の伸び方は抑えながらでも、純資産を着実に積み上げ、在庫量をコントロールし、財務の安定性を高めていくことができれば、会社としての基盤は強くなる。そう考えて、今村不動産は毎期利益を積み上げながら純資産を増やしてきました。これは会社にとってとても重要な土台です。
たとえば、大きな仕入れ在庫を持っている状態で不動産の市場価格が下がれば、その分だけ会社の資産価値は目減りします。数字上は売上規模が大きく見えていても、市況が変わった瞬間に、これまで積み上げてきたものが一気に毀損する可能性もある。そう考えると、いまはやみくもに資産を膨らませる時期じゃない。仕入れの量を見極める必要があると考えています。
事業部ごとに最適解を見極める
例年通り、不動産開発事業については、期首の時点で今期売上目標の半分以上にあたる在庫はすでに抱えられています。だからこそ、必要以上に仕入れを増やすのではなく、在庫量を調整しながら次の期以降にどうつなげていくかを慎重に判断していきたいと考えています。規模が大きすぎないか。販売までの期間が長すぎないか。流通性はあるのか。出口は本当に見えているのか。金利や融資環境が変わった時にも耐えられるのか。そうした視点をもとに取捨選択していく必要があります。
数年後の市況を正確に読むことは誰にもできません。規模の大きな案件については単独で抱えるのではなく、大手企業との共同事業にするなど、資産を軽く持つ方法も選択肢のひとつだと考えています。
一方で、弊社独自の投資用アパート事業であるOMI(オーダーメイド型不動産開発)については、開発事業とは少し考え方が異なります。
OMI事業では、直接顧客=ご相談いただいている投資家という販売出口を見据えたうえで仕入れ開発を行います。金利が上がる環境においても、出口がある程度見えていることは大きな意味を持ちますし、仮に想定していた出口が変わった場合でも、長期で保有できるような収支設計にしているため、ある程度のリスクヘッジが効きます。売り手が付かず自社保有したとしても、家賃収入から金融機関に対して返済できる目処がある、安全性が高い事業でもあります。
もちろん、OMI事業も市場環境の影響を受けないわけではありません。ターゲットとなる買い手の融資条件が変われば、出口の考え方も変わります。サラリーマン大家さんのように、これまでフルローンに近い形で購入できていた層が、今後も同じように融資を受けられるとは限りません。自己資金を求められる比率が高まれば、買い手の数や動き方も変わってくる。短期で売ることもできるし、長期で持つこともできる。その両方を見据えながら事業を組み立てていくことが、これからのリスク管理になると思います。
人材育成と組織化が今期の大きなテーマ
今期はこうした事業面の判断に加えて、人材育成と組織化にも力を入れていきたいと考えています。むしろ、今期の大きなテーマはここにあると言ってもいいかもしれません。
会社の人数も増えてきました。数年前は十数名規模だった組織が、いまでは二十名を超え、中期的にはさらに増員を予定しています。人が増えること自体は、会社にとって前向きなことです。新しい人が入り、新しい役割が生まれ、事業の幅も広がります。けれど、人が増えると、これまで感覚で共有できていたことが少しずつ共有しづらくなります。部署が分かれ、役割が増えてくると、属人的なやり方だけでは限界が出てきます。
前期でキャリア評価制度を刷新したのも、今後の組織化を見据えたひとつの取り組みでした。
テスト導入を経て、管理部門については評価軸やキャリアの考え方も少しずつ形になってきように感じます。一方で、営業職の評価や育成は、正直まだまだ課題が残ります。
不動産開発業の営業は、どうしても属人的な側面が大きい仕事です。仕入れができる人、企画をつくれる人、販売出口をつけるのが得意な人。それぞれに強みがあります。これまではそれらをひとまとめに「営業職」として役割分担してきましたが、組織化によってある程度の分業制ができるようになったことにより、考え方を変える必要が出てきました。
一般的な不動産営業によくある、営業成績=売上数字だけで判断していては、今後さらに組織拡大していくうちに、どこかで齟齬が生まれる。これは、僕自身が不動産営業をしていた時にも、ずっともやもやしていた部分でもあります。
一人ひとりの仕事の中身を正しく判断し、それぞれのキャリアビジョンと照らし合わせながら、納得感のある仕組みにしたい。完璧な評価制度なんて存在しないとは思っていますが、それでも今村不動産らしく個々人が強みやキャリアを発揮できる制度設計に向けて、今期中に素案をつくり運用検討を進めていく予定です。
それとは別に、組織内コミュニケーションの今期のキーワードのひとつです。今村不動産ではフリーアドレスを導入していますが、気づけば座る場所や話す相手が決まってくる。業務上部署ごとに固まる、いつも同じ人と話すようになる。そうした小さなことの積み重ねが、組織の空気に影響します。
最近では、定期的に席の入れ替えを進めたりと、現場からも少しずついろいろな意見が出てきています。決算発表会の後にビアガーデンを企画してくれたり、社員同士が自然に交流できる場も増やしてくれています。こうした動きは、数字には直接表れにくいものですが、会社の文化をつくるうえではとても大切だと思っています。
良い組織というのは、制度だけでできるものじゃない。評価制度やルールはもちろん必要だけど、それだけでは人は動かない。そこにいる人たちが、自分で考え、声を上げ、良いと思ったことを形にしていく。そうした風土があって初めて、制度も生きてくるはずです。
変わらず大切にしたい「正しく考え行動する」姿勢
部署や職種によって評価の軸が変わるとしても、会社として変わらず大切にしたいものがあります。それは「正しく考える」こと。
ただ考えるのではなく、正しく考える。努力するにしても、努力の方向が間違っていれば、望む結果にはつながりません。仕事で起きた出来事を表面的に捉えるのではなく、なぜそうなったのか、何を変えるべきなのか、どう行動すべきなのかを考え抜くこと。そして、考えたことを実際に行動に移すこと。そこまでできて初めて、自分の仕事に責任を持てると僕は考えています。
責任を持って考え、行動できる人が増える。その集合体として会社も成長していける。これは営業職でも管理職でも、経験者でも未経験者でも変わりません。評価制度はもちろん、その前提にある考え方として「正しく考え、行動する」という姿勢は、これからも大切にしていきたいと思っています。
より「社会」に向けた企業活動を目指して
最近印象に残っていることがあります。企業版ふるさと納税を通じて、徳島市長と面談させていただく機会がありました。市長室でお話しさせていただき、会社としてどのような事業をしているのか、今の経済環境が不動産業界にどう影響しているのかといった話をさせていただきました。もともとは銀行さんからご紹介いただいた取り組みでしたが、実際に行政の方とお話しする中で、会社として地域や社会とどう関わっていくかを改めて考えるきっかけになりました。
店舗を構えて地域のお客様と日々接する業種とは違い、我々のような不動産開発業が地域貢献や社会との関わりを持つのは簡単なことではありません。ただ、不動産という仕事は街や地域と切り離せない仕事だと思います。
いますぐに地方創生や行政との連携でなにか具体的な動きを取れる訳ではないけれど、将来的に民間企業だけではできない開発や地域に関わる取り組みまで会社として携わることができれば、それはとても素晴らしいことです。
まだ見ぬ会社のこれからを思い描きながらも、ひとまずは目の前の変化への対応や改善に、変わらず真摯に取り組む12期にしていきたいと思います。