好きを貫き未来を拓く、プロの哲学。
steer株式会社と福島ファイヤーボンズ主催のお仕事体験の締めくくりとして開催された座談会には、チームのゼネラルマネージャー(GM)である渡邉拓馬氏と、通訳兼アシスタントマネージャー兼練習生としてチームを支えながらプロを目指す福留ウィリアム氏が登壇。イベント参加者の中から抽選で選ばれた小学生5人とその保護者が集まり、座談会は夢の舞台で挑戦を続ける渡邉氏と福留氏の自己紹介から始まった。
福島市出身の渡邉氏は、地元福島への恩返しとバスケットボール文化の定着という使命感を持って、チームの編成や運営の責任者となるGMを務める。プロのバスケットボール選手としてトヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)などで活躍した経験をもつ。
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「身長は190cmで、現役の時の体重は83kg、今は90kgぐらいです。小学校から高校ぐらいまでは一晩で米を5合食べていました」と話し、会場からは驚きの声があがる。
「バスケ一家に育って、バスケを始めたのは7歳のときです。はじめから プロを意識していたわけではなく、小中高の時はただうまくなりたいという気持ちで毎日練習していました。自分が全国レベルで通用すると気づいた18歳の頃に、プロで生きていこうと考えたんです。部活が終わってチームメイトが遊びに行く時も、残って練習をしていましたね。目指したいものがあるときは何かを犠牲にしなくてはいけないこともあります」
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福留氏は6歳から日本に来て、漫画『SLUM DUNK』の影響を受けて11歳からバスケを始めた。当初からプロへの思いはあったが、大学を選ぶときに将来の目標を決断。現在はプロを目指しているが、身長167cmとバスケ選手としては小柄なほうだ。
「身長が180cmくらいあったらと思うことは日々あります。でも、小柄でもプロで活躍できることは河村勇輝選手などが証明してくれています。自分もプロになって活躍できるようコーチや小柄な選手にアドバイスを求めながら、ご飯をいっぱい食べて体をケアし、一日一日を大事にしています。バスケが大好き。僕の本気や覚悟を見て周囲も応援してくださるので、その応援に応えたいという気持ちもあります」
「自問自答」と「仲間との絆」
困難を乗り越えるプロの思考法。
この日、最初に手を挙げたのは小学生の男の子。「夢をどう叶えましたか?」という質問に、渡邉氏は「自問自答を大事にしていた」と話す。
「自分はちゃんとお父さんやお母さんに感謝の気持ちを持てているか、謙虚に頑張れているか 、ちゃんと練習に励んでいるか、と自分で自分に話しかけるんです。そういう習慣を子供の頃からつけていると、色々な角度から物事を見られるようになります。中にはミスが起きたときに、戦術やコーチのせいにする人もいる。でも、自分がちゃんとしていれば何事もうまくいきます。うまくいかない時、悔しくても矛先をいつも自分に向けられることが大事なんです」
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福留氏は、家族が日本にいる中で単身イギリスに渡った当時の経験を話し、「大事なのは、自分が成長できる環境に飛び込んでいくこと。あえて自分がやったことがない、もっと難しいことに取り組む。 今ここにいるのも同じ理由です」と語った。
続けて渡邉氏は、困難な状況を乗り越える力について「仲間」の存在を挙げた。
「バスケの良いところは、一人ではできないところです。僕も自分の成績ばかり気にしている時期はありました。負ければ当然辛いし、勝っても自分のパフォーマンスが良くなかったら悔しい。そんな時でも、仲間は励ましてくれて、トレーナーやマネージャーもいろいろ気遣ってくれました。そういう優しさに触れて、『自分一人では何もできない』と教えてもらったんです。辛い時も周りに仲間がいるというのをしっかり学んだし、そういう人たちに恩返ししたいと思っていました」
また、 福留氏は「ちゃんと勝つまでやることが大事だ」と子供たちに伝えた。
「自分がしんどい時も、お父さんやお母さんはいつも頑張ってねと声をかけ続けてくれました。家族にはとても感謝しています。応援してくれる人のためにも、絶対に諦めずに、がむしゃらに頑張ることが大事だと思います。絶対に諦めない人が最後に勝つから」と、粘り強さの重要性を強調した。
組織を率いるGMの哲学:謙虚さと覚悟を持つ人材
渡邊氏は選手引退後、コーチではなくGMの道を選んだ意外な理由を語った。
「選手は自分が一番だと思っているし、わがままなものです。そう思っていないと勝てないですから。そんな選手たちをまとめるのは大変だし、自分は怒ることが苦手なので絶対に向かないと思ったんです。そこで、コーチ以外でバスケに携われる仕事はないかと考えて、 GMを選びました。引退後3つのチームのマネジメントを経験し、その経験を活かして地元福島を盛り上げたいと思い、福島ファイヤーボンズに来たんです」
座談会当日、福島ファイヤーボンズは10連勝を続けていた。座談会に参加した父母からは「今季、チーム編成を大きく変えて、短期間で連勝できるチームに育てた秘訣を教えてください」という質問も飛び出した。その理由を渡邊氏はこう語った。
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「10連勝は過程でしかありませんが、今回のチーム編成で大事にしたのは、『もっと自分はできるし、チャレンジしたい。絶対に福島でやりたい』という覚悟を持った人たちを選んだことです。そして、ヘッドコーチを務めるライアンのチームをまとめるコーチングが素晴らしい。多くのチームスタッフも日々頑張ってくれているからこそ、選手の活躍があるんだと思います」
強い思いを持って練習・試合に臨む選手と、選手と同じ目標を持ってその活躍を支えるチームスタッフ。それぞれが役割を果たし、同じ目標を追いかけている結果が、今の戦績につながっている。
二人が今、叶えたい未来
最後に、福留氏は今後の目標について、「あきらめずに頑張り続ける人が勝つことを証明したいので、プロ契約を目指し日々頑張りたい。自分と同じ低身長の選手にも夢を与えたいし、応援してくれた人たちに恩返しがしたいです」と語った。
渡邉氏は「自分も福島県に育ててもらったので、何か一つでもいいものを後輩に伝えて道を譲っていきたい。今日皆さんがチームグッズを身につけていただいているように、週末にスポーツを楽しむ文化を福島県に根付かせたいと考えています。自分一人ではできないことなので、皆さんの力が必要です」と話し、座談会を締めくくった。
座談会での二人の言葉に、子どもたちはもちろん保護者たちも真剣に耳を傾けていた。
今回の座談会では、夢をかなえるための心構えや困難を一緒に乗り越える仲間の大切さ、諦めない覚悟が語られた。バスケだけに限らず、仕事や人生にも通じる話だった。
本記事の著者:久保 佳那
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