経営者になりたい。
その気持ちは、学生時代からずっと変わりませんでした。
20代で独立し、売上をつくることにも本気で向き合ってきました。
でも、走れば走るほど、「この仕事は本当に社会の役に立っているのか」という違和感が大きくなっていったんです。
そんな葛藤を経て、会社員としてキャリアを積み直す中で出会ったのが、まちづくりに関わるさまざまな仕事でした。
不動産・建設だけではなく、インフラ、行政、金融、地域産業、スポーツなど、多様な立場の人たちが関わり合いながら、まちは形づくられていく。
その世界に触れたことで、自分が本当に向き合いたいものが、少しずつはっきりしていきました。
そして、その方向に踏み出そうとしたタイミングで、熱量を持って「一緒にやりたい」と言ってくれる仲間が現れた。
今回は、steer株式会社代表・佐藤広大が、創業までの道のりを振り返ります。
株式会社steer 代表取締役 佐藤 広大
大学卒業後、通信インフラ事業で起業。 その後、求人広告営業・人材紹介エージェントとして経験を重ねる中で、まちづくりに関わる領域に出会う。
2022年にsteer株式会社を設立。
「まちづくりの、一番近くに。」を掲げ、まちづくりに関わる人たちの挑戦を、人の力で支えている。
「いつかは自分でもやってみたい」
経営者への興味が自然と育った学生時代
ー学生時代から経営者への興味があったそうですね。
何かきっかけがあったのでしょうか?
佐藤: 親が商工会議所に勤めていたこともあって、子どものころから地元の経営者の話を聞く機会がわりとありました。その影響もあってか、学生のころからなんとなく「いつかは自分でも事業をやってみたい」という気持ちがあったんです。
同世代の友人と過ごす時間ももちろん好きでしたが、一方で、社会で働いている大人や経営者の話を聞くのも好きでした。自分の知らない世界を見せてもらえる感じがして、純粋に面白かったんだと思います。
学生時代は、部活や勉強で思うようにいかないこともありました。
そんな経験もあって、将来は自分の力で何かをつくる側に回りたい、という気持ちが少しずつ強くなっていきました。
就職活動の時期は、リーマンショックの影響もあって、かなり厳しいタイミングでした。
ただ、自分の中では「とりあえず就職して、何となく毎日を過ごす」という未来があまりしっくりこなくて。それよりも、自分で道を切り拓いてみたいという気持ちの方が強かったんです。
そんな中で、大学時代のアルバイト仲間が独立するタイミングで声をかけてくれて、通信インフラ事業で起業することになりました。
売上はつくれていた。
でも、ずっと心に残っていた違和感があった。
ー実際に独立してみて、いかがでしたか?
佐藤: 事業としては、ありがたいことに売上もつくれていました。
かなり必死にやっていましたし、自分なりに結果も出していたと思います。
ただ、走れば走るほど、自分の中では別の気持ちも大きくなっていきました。
ちょうどその頃に起きたのが、2011年3月の東日本大震災でした。
社会の土台が揺らぐ出来事を目の当たりにして、自分の中でも仕事に対する価値観が大きく変わっていきました。
次第に「もっと社会の根幹に関わる、本質的な価値を提供したい」という想いが決定的になりました。その後、数年間は事業を継続したものの、経営陣から退き、次なるステップへ進むことを決意しました。
売上をつくる力はもちろん大事です。
でもそれ以上に、自分が本当に納得できる仕事をしたい。
この経験が、その後のキャリアの方向性を決める大きな転機になりました。
「人」が、事業のいちばん大きな変数だと思った。
だから人材業界に進んだ。
ー会社立上げの経験を経て、なぜCDCへの入社を決められたのですか?
佐藤:当時は、がむしゃらに売上を追う一方で、「この事業は本当に社会や顧客のためになっているのだろうか」という葛藤が大きくなっていました。
最終的には、数年間ともに走った仲間に事業を引き継ぎ、私自身は次のステージへ進む決意をしました。
次の一歩を考えたとき、ビジネスにおいて最も重要であり、かつ最大の変数となるのは「人」であると痛感したんです。
同じ市場でも、同じサービスでも、誰が担うかで結果は大きく変わる。
企業の成長も、事業の未来も、結局は「人」で決まる部分がとても大きいと感じるようになりました。
そこで、「人の可能性を最大化する人材ビジネス」に挑戦したいと思いました。
加えて、形のないサービスを提案する無形商材の法人営業を通じて、ビジネスパーソンとしての地力をきちんと鍛えたい。そして、早い段階から組織を牽引するマネジメントにも挑戦したい。そう考えて、キャリアデザインセンター(CDC)への入社を決めました。
広告営業を経験したからこそ見えた、次の課題。
もっと深く企業に入り込む仕事がしたかった。
ーCDCではどんな経験をされ、そこからどうステップアップされたんですか?
佐藤:CDCでは、求人広告の法人営業からマネジメントまで、幅広く経験させてもらいました。本当に多くのことを学ばせてもらいましたし、営業としても社会人としても、大きく鍛えられた時間だったと思います。
ただ、いろいろな企業の採用課題と向き合う中で、少しずつ別の想いも出てきました。
それは、広告という手法だけでは、クライアントの本質的な経営課題の解決にまで踏み込みきれないことがある、ということです。
もちろん、広告には広告の大きな価値があります。
一方で、企業の成長に本気で向き合おうとすると、「どんな人を採るべきか」「その採用によって事業がどう変わるのか」というところまで、もっと深く入り込みたくなったんです。
そんなときに出会ったのが、経営層やハイクラス人材の採用に深く関わる、いわゆるヘッドハンティングの世界でした。
自分が支援した人材が加わることで、企業が前に進む。
ときには、大きなプロジェクトそのものが動き出す。
「人」の力で経営課題を解決していくこの仕事に、大きな可能性を感じました。
そこでパーソルキャリアへ転職し、企業と求職者の双方に深く入り込む両面型のエージェントとして経験を積むことになります。
そして、その先で出会ったのが、まちづくりに関わる領域でした。
正直、最初は想定外だった。
でも、まちづくりの見え方が大きく変わった。
ー担当領域に向き合う中で、最初の印象はどう変わっていきましたか?
佐藤:正直に言うと、最初は少し戸惑いました。
当時の自分は、もっとITやスタートアップのような領域をイメージしていたので、今につながるような領域の担当は完全に想定外だったんです。
しかも、そのころの自分は、まちづくりに関わる仕事に対してかなり表面的なイメージしか持てていませんでした。でも、実際に経営層の方々や、現場を動かしているプロフェッショナルの方々と会って話していく中で、その印象は大きく変わっていきました。
この世界が担っているのは、単に建物をつくることだけではありません。
インフラを整え、地域の産業を支え、金融の立場からプロジェクトを動かし、行政や地域住民も関わりながら、長い時間をかけてまちや暮らしの基盤を形にしていく。
さらに、そのまちに人が集まり、にぎわいや熱狂が生まれていく。
そうした多くの人の仕事が重なり合って、初めて“まちづくり”は成り立っているんだと気づいたんです。
自分たちが普段当たり前に使っている建物や交通、エネルギー、地域のにぎわいも、こうした方々の仕事によって支えられている。
それを知ったときに、すごく純粋に「かっこいい仕事だな」と思いましたし、自然とリスペクトの気持ちが生まれました。
「このタイミングを逃したら、一生できない」
そう思って、起業を決めた。
ーなぜ、このタイミングで起業を決断されたんですか?
佐藤:起業したいという気持ちは、ずっと持ち続けていました。
ただ、現実的には簡単なタイミングではなかったんです。結婚して、子どもも生まれて、コロナもあった。正直に言えば、「今、本当に踏み出すのか」と迷う要素はいくつもありました。
そんな中で大きかったのが、小山の存在です。
当時、彼と人材紹介事業について具体的に話を進める中で、私以上に強い覚悟を持って「本気でやりましょう」と言ってくれたんです。
どんな事業でも、結局は「何をやるか」以上に「誰とやるか」が大きいと思っています。
もちろん、構想やタイミングも大事です。
でも、本気で同じ方向を向ける仲間がいるかどうかは、それ以上に大きい。
だからこそ、そのとき思ったんです。
このタイミングを逃したら、自分は一生起業できないかもしれないと。
そうして2021年、小山とともにSPCという会社を買い取り、人材紹介事業を本格的にスタートさせました。
まずはやってみる。
その中で、見えてきたことがあった。
ーSPCでの立ち上げは、どんな時間でしたか?
佐藤: まずはやってみる、という感覚に近かったですね。
もちろん、事業として成立させる覚悟はありましたし、本気で向き合っていました。
その一方で、最初からすべてが明確だったわけではありません。
でも、実際に動き出してみたことで見えてきたものがありました。
それは、自分たちがやりたいのは、単に人材紹介の仕組みをつくることではない、ということです。
自分たちが本当に向き合いたいのは、もっとその先にあるものだった。
人を通じて、まちづくりに関わる企業や、その先にある社会を支えること。
その想いが、事業を進める中でどんどんはっきりしていきました。
同時に、会社そのもののあり方についても考えるようになりました。
どういう価値観で集まり、どういう言葉で仕事をし、どんな文化をつくっていきたいのか。
そこまで含めて自分たちでつくりたい、という気持ちが強くなっていったんです。
SPCからsteerへ
新しく会社を立ち上げた理由
ーSPCからsteerへ。新たに会社を立ち上げた理由を教えてください。
佐藤: SPCで事業をやる中でも手応えはありました。
ただ、その一方で、自分たちの理念や文化をゼロから自分たちの手でつくりたい、という想いがどんどん強くなっていったんです。
会社員時代からずっと感じていたことでもあるのですが、自分が心から愛着を持てないものを、人に伝え続けることにはどうしても違和感がありました。
誰かがつくった言葉を借りるのではなく、自分たちの言葉で仕事をしたい。
自分たちが本当に信じられる価値観で、仲間と一緒に会社をつくりたい。
その気持ちはずっと根っこにあったと思います。
だからこそ、理念から文化まで、自分たちで一つひとつつくっていこうと決めました。
関わる一人ひとりが、自分の人生の舵を自分で取れる組織にしたい。
そんな想いを込めて、「steer」という社名を掲げ、2022年12月に創業しました。
「まちづくりの、一番近くに。」
steerで実現したいこと
ーsteerという会社で、これから何を実現したいですか?
佐藤: 一番にあるのは、steerという会社を通じて、関わる人がそれぞれ自己実現できる組織でありたい、ということです。
メンバーが自分の言葉で顧客と向き合えて、自分の仕事に誇りを持てる。
そんな環境をつくり続けたいと思っています。
その先に目指しているのが、「まちづくりといえばsteer」と言ってもらえる存在になることです。
ただ、それは単に人材紹介会社として認知されたい、という意味ではありません。
私たちが向き合っている“まちづくり”は、不動産・建設だけを指しているわけではないんです。
インフラを支える人がいて、地域の産業を動かす人がいて、金融の立場から支える人がいて、行政がいて、そこににぎわいや熱狂を生み出す存在もいる。
そうした多様な人たちの仕事や想いが重なって、初めてまちは形づくられていく。
私たちは、その一連の流れの近くで、人を通じて価値を出していきたいと思っています。
人材紹介だけで終わらせない。
もっと広く、まちづくりに関わっていきたい。
ー今後の挑戦についても教えてください。
佐藤:人材紹介は、私たちにとってとても大事な事業です。
でも、それだけがすべてだとは思っていません。
人を支援することを起点にしながら、もっと広く、まちづくりに関わっていきたいと考えています。
その象徴のひとつが、「machi-zuku」です。
machi-zukuで伝えたいのは、建物やインフラそのものだけではありません。
その裏側にある人の想いや、どういう背景でプロジェクトが動いているのか、どんな立場の人たちが関わっているのか。
そうしたことを、もっと正しく、もっと魅力的に伝えていきたいんです。
まちづくりの仕事って、社会にとって欠かせない仕事なのに、まだまだ十分に知られていない部分が多いと思っています。
だからこそ、その仕事の価値ややりがいをきちんと届けていくことにも意味がある。
人材紹介という「人」の支援だけでなく、情報発信という「場」の支援も通じて、まちづくりに関わる人を増やしていきたいと思っています。
steerでつくりたいのは
“自分の仕事を誇れる人”が増えていく未来
ー最後に、これから仲間になるかもしれない方へメッセージをお願いします。
佐藤:steerで働くうえで大事にしたいのは、自分の仕事にちゃんと意味を見出せることだと思っています。
誰かに決められた役割をこなすだけではなく、自分の意思で考えて、自分の言葉で顧客と向き合っていく。そういう働き方をしたい人には、すごく合う会社だと思います。
もちろん、簡単なことばかりではありません。
まだまだこれからつくっていく会社ですし、整っていないこともたくさんある。
でも、だからこそ面白いとも思っています。
会社を大きくするだけではなく、どういう文化をつくるか、どういう価値を残すかまで含めて、一緒に考えながら進んでいける人と働きたいです。
まちづくりに関わる人たちの仕事には、本当に大きな価値があります。
その価値を人の力で支え、もっと多くの人に届けていく。
そんな挑戦を、これから一緒につくっていけたら嬉しいです。
さいごに
ここまで振り返ると、自分の中でずっと問い続けてきたのは、
「自分の仕事は、誰のどんな役に立っているのか」
ということだったんだと思います。
その問いの先にあったのが、人を通じてまちづくりを支えるという仕事であり、steerという会社でした。
steerは、まだ完成された会社ではありません。
これから事業も組織も、もっとよくしていける余白がたくさんあります。
だからこそ、自分で考え、自分の言葉で顧客と向き合いながら、会社づくりそのものにも関わっていきたい人にとっては、すごく面白いフェーズだと思っています。
もし、
「自分の仕事にちゃんと意味を持ちたい」
「まちづくりに関わる人たちを、人の力で支える仕事に興味がある」
「決まったレールではなく、これからの会社を一緒につくっていきたい」
そんな気持ちが少しでもある方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お話ししたいです。
まずはカジュアルにでも構いません。
steerでどんなことを目指しているのか、どんな仲間がいて、これから何をつくっていきたいのか。
率直にお話しできたら嬉しいです。
まちづくりの一番近くで、人と想いをつないでいく。
その挑戦を、これから一緒につくっていける仲間と出会えることを楽しみにしています。