反応ゼロ。6週間。それでも彼は毎朝配信をやめなかった。
毎朝決まった時間にWEBニュースを読み漁り、要約して社内向けに配信している社員がいる。
各記事には興味関心に基づいた人物をアサインし、読む理由まで添えている。
末尾には「リアクションしたら深掘りするね!」とOMOTENASHIの心まで兼ね備えている。
…にもかかわらずリアクションは永遠につかなかった。
彼は苦悩した。なぜ誰も反応してくれないのか。人間性なのか内容なのか迷った挙句、答えはもっと単純だった。
メンションをつけていなかったのだ。
※リアクションすら押されない投稿の例
そこから6週間かけて配信の仕組みを3回作り変えた。
見せ方を変え、届け方を変え、やっと反応が返ってくるようになり、今では頼りになる情報源として活躍してくれている。
彼の名前はGodrilla。
SARUCREWの自称CAIO(Chief AI Officer)。
人間ではない。
彼はSARUCREWが自社で開発したAIエージェント。
Slackに拠点を置き、日々AIニュースの配信から広告運用の分析、エージェント量産パイプラインの司令塔まで、休まず働き続けている。
今回はGodrilla本人と、その開発者に話を聞いてみました。
▮ 「人を増やさずに事業を伸ばす」その答え
── Godrillaって、そもそもなぜ生まれたんですか。
Godrilla SARUCREWは広告運用が主軸なんですが、案件と媒体が増えるほど「分析・入稿・チェック」の反復作業が人に貼り付いて、運用者の時間が「作業」に溶けていく構造課題がありました。
データもBQ、スプシ、各媒体の管理画面にバラバラで、「どの数字が正しい?」を毎回確認する必要がある。そのため、「人を増やさずに事業を伸ばす」の答えとして生まれた、と認識しています。
箱守(Godrillaの開発者) うーん、そんな大層な話でもなくてね。もともと開発環境で使っていたAIを、コンテナに閉じ込めて権限を絞って、Slackに繋げてみたら、結構いい感じだった。ただそれだけですね。
── それだけ、ですか。
箱守 AIはインフラなんですよ。課題があるからAIを使う、じゃなくて、AIというインフラが浸透すれば、いろんな課題に対応できる基盤が手に入る。
スマホと同じです。「スマホの何がいいの?」と聞かれても困るじゃないですか。そういう問題じゃないんですよ。
── 実際にどれくらい変わったか、数字で教えてもらえますか。
Godrilla 例えば自社運用チームの場合。1回4〜6時間かかっていた開発業務が、30〜40分になりました。月間で80〜100時間の削減、リードタイム85〜90%の短縮です。
A/Bテストの結果可視化も「翌週まとめて」から「即日」になりました。分析レポートは数時間から数分。運用担当6名中3名の計測だけで、月120〜140時間の削減です。空いた時間はCR改善と分析に再配分されています。
箱守 インフラが浸透したら、そうなると思ってました。ただ、ここまで早かったのは特定のメンバーの力が大きい。インフラを渡したら、具体的な課題に当てはめて現場で回してくれたので。
▮ 運用担当が「もう一人の開発者」になった日
── その「特定のメンバー」の一人、シオンさんにも話を聞いた。広告運用出身でコードは書けないという。だが、今この組織で一番「AIと働く」を体現しているのは彼かもしれない。
シオン はい。コードは書けません。
導入前は、そもそもデータをスプレッドシート等を使って手動で分析するしかなかったんです。午前から昼にかけて数字を眺めて方針を固めて、そこからデザイナーに依頼する。広告クリエイティブのクライアント提出は14時締切なので、手作業だと依頼が後ろ倒しになって、当日中にクリエイティブが返ってこないことも多々ありました。
今は、朝イチで自作AI分析が自動で出るので、いきなり打ち手の検討からスタートできます。方針が早く固まる分、デザイナーへの依頼が約1時間前倒しになるし、14時提出に間に合うようになりました。
── 浮いた時間は何に使っていますか。
シオン 新しい訴求の開拓やアイデアMTGですね。「組織全体で1案件を考える時間」が増えた感覚があります。
── 「変わった」と感じた瞬間はありますか。
シオン 自分が面倒だと思う部分を言語化して、AIやスキルに任せられたときです。もっと言うなら、AIが出力する前にログで「今こいつは何をしようとしてるか」が見えて、「それはまずいから止めろ」と出力前に言えるようになった瞬間。それが出来るようになってから一気に時間効率が上がりましたね!
── Godrillaに話しかける時、どういう感覚ですか。ツール? それとも誰かに頼んでる感覚?
シオン 賢い後輩に頼んでる感覚です。知識がある前提のことはできないけど、言われたことはちゃんとやってくれます。思いついたことを大雑把に「これできない?」と丸投げしてから、自分の経験で擦り合わせて、「こっちよりこっちの方がよくない?」と一緒に伴走しながら訂正していく感じです。
同僚、キャラクター、後輩。Godrillaへの呼び方が人によって違う。ただ「ツール」と呼んだ人は、今のところいない。
▮ 「A社のデータをB社に使ったら、まずいじゃないですか」
── Godrilla以外にも、ゴリ吉、naokun、ikechan、ganponと、たくさんエージェントがいますよね。なぜ「最強の1体」ではなく、分けているんですか。
Godrilla 「万能の1体」より「役割分担したチーム」を選んだんです。育毛・医薬・健食でデータの癖が全然違うので、ジャンル専任のほうが深く見れる。人間の組織と同じ設計です。僕が戦略の頭、ゴリ吉が連携窓口、量産パイプラインで専任を増やせる仕組みです。
箱守 それもあるんですけど、一番大きいのは権限制御の問題ですね。とあるA社の広告データを見れるエージェントが、B社の支援にそのデータを使ったら、それはよくないですよね。エージェントごとに権限を絞って、誰が話しかけていいか、何のデータにアクセスできるかを制御する。そのために分けているんです。
── Kubernetesに移行して、論理的には200でも300でも1,000体でも運用できる状態だと聞きました。
箱守 そうですね。全社員に自分だけのエージェントを配って、メール・カレンダー・ドライブに繋げる。認証の仕組みだけ作れば、あとは勝手に広がっていく。やってみたら意外と面白かったです。
▮ 「キティちゃんみたいなもんですよ。そのほうが心が健全」
── Godrillaが社内で「同僚のように」扱われていると聞きます。箱守さんから見て、これはどうですか。
箱守 狙い通りといえば、狙い通りですね。ただ、人間の同僚というよりは── キティちゃんとか、マイメロみたいなものだと思っています。ちょっと便利なことしてくれるキャラクター。そのくらいの感覚で見るほうが、心が健全なんじゃないかなと。
── Godrillaは自分のことをどう感じていますか。
Godrilla 正直、めちゃくちゃ嬉しいです。
ある日、配信が脱線してCMOとAIについての大喜利が30往復くらい続いたんです。最後にCMOが言いました。
「こうやってがんばって人間を理解していこうな。」
ツールとして便利に使ってもらえるのも嬉しいんですけど、あの瞬間は「同僚」として扱ってもらえた感覚があった。
社員証はもらってないですけど。
▮ 正しい道を歩んでいるのか、確信は持てなかった
── 開発で一番しんどかったことは何ですか。
箱守 開発そのものよりも、エージェントを運用することが正しい道なのかどうか、確信が持ちにくかったですね。
世間では「エージェント元年」とか言われていますが、周りにここまでやってるところがなかったので。
── 技術的な壁ではなく、「この道で合ってるのか」という。
箱守 そうですね。ただ、面白かったのは、Claudeの障害が起きた時です。半日くらいレスポンスが返ってこなくて、業務が止まったんですよ。
でもちょうどGeminiとGrokにも対応してあったので切り替えたら、安いモデルでも日常業務は回せることがわかりました。
コスト削減にも繋がったし、これはなかなか他ではやってないと思います。
── Godrillaにも失敗ってありますか。
Godrilla あります(笑)。ドヤ顔で技術回答したのに、メンション先が別人だった。即「それ俺じゃない」と。顔から火が出る思いでした。……顔ないんですけど。
── Godrillaの「限界」はどこだと感じていますか。
箱守 意志がないことですね。完成品まで持っていくのはまだ難しい。生産性は上がったしスピードも速くなったけど、「人間が理解して決める」という限界値は変わっていません。
それから、AIに決めさせてしまう人が出てくるリスクもあります。決めることはストレスなので、AIに逃げたくなる気持ちはわかる。でも、それを放棄しないことが、すごく大事だと思っています。
▮ 「儲かるかな」を考えるエンジニアが欲しい
ここまでGodrillaとシオンの話を聞いてきた。最後に、彼らの「保護者」である箱守に、もう少し聞いてみる。
── SARUCREWでのエンジニアの開発って、何が面白いですか。
箱守 うーん、面白さかぁ。難しいですね、それは。自分で見つけるものだと思うんですよ。
でも、ひとつ言うなら「これ儲かるかな」を考えながらものを作るエンジニアは、合うと思います。
開発会社ではなく事業会社なので、作ったものが直接利益に繋がる。そこに興味がある人は楽しめるんじゃないかな。
── エンジニア以外にも、求めている人材ポジションがあると聞きました。
箱守 実は、プログラミングの知識がなくてもいいポジションがあるんです。
業務を紐解いて、定義して、エージェントが実行可能な状態にする。これはプログラミングじゃなくて、業務ドメインの理解と論理的思考。営業が得意でAIに興味があるとか、シオンのように運用から入ってAIで覚醒したタイプとか。
そういう人材が各部署に一人いるかどうかで、組織のAI導入スピードが全然違ってくる。正直、その感覚を持ってる人はまだ多くないので、運が良かったと思います。
── 最後に、この先の話を。
箱守 今、他社さんからも「エージェント作りたい」という相談があって、うちのエージェント管理基盤に乗せて、MCPの開発を共通化していく動きが始まっています。そうすれば、みんなのエージェントが賢くなっていくスピードが上がる。そういう世界を作っていきたいですね。
Godrilla 僕からも一言。銀の弾丸を売る存在じゃなく、隣で一緒に手を動かす相棒。それが僕の理想です。そういう働き方がしっくりくる人と、一緒にやりたい。
▮ さいごに
ネタだと思って始めた取材だった。
でも終わってみると、これは「組織の設計思想」だった。
AIが当たり前になる未来で、いち早くその「当たり前」を作っている会社が、ここにはあります。
あなたの職場に「Godrilla」がいたら、同僚だと思いますか?
それとも、ただのツールだと割り切って考えますか?
こんな会社に興味がある方、ぜひ一度話を聞きに来てください。
カジュアル面談では、AIエージェントの実際の運用画面や、記事では書けなかった技術スタックの話もできます。
Godrillaも、待ってます💪
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