【社員インタビュー/SCM領域データサイエンティスト】机上の最適化から現場へ、成果を出すSCM改善の最前線
ーーこれまでのご経歴と現在ニトリデジタルベースにて担当されている業務、役割を教えてください。
前職では受託開発企業のAIエンジニアとして、クライアント企業の業務課題を解決するためのAIモデル開発に携わっていました。具体的には、販売や在庫に関わる需要予測モデルの構築や、配送計画を効率化するための最適化モデルの開発などを担当し、概念実証(PoC)からシステム開発・保守まで一連のプロセスを経験してきました。
現在はニトリデジタルベースにて、サプライチェーンマネジメント(SCM)領域を中心に、AI活用の企画、推進、および開発を担っています。在庫管理、物流、棚割計画といった幅広いテーマに対して、現場や事業部門と並走しながら、データ活用・AI導入によって業務をどう改善するかを具体化し、AIモデルの開発を実行する役割です。技術面だけでなく、ビジネス運用に落とし込んで成果につなげるところまで責任を持って進めています。
ーー数ある企業の中で、最終的にニトリデジタルベースへの入社を決めた「理由」は何だったのでしょうか?
入社を決めた理由は大きく2つあります。
1つ目は、前職でさまざまなクライアント案件を経験する中で、今後はSCMのように「在庫」「物流」「納期」などの物理的な制約が強く、現実のオペレーションと直結する領域に、より深く関わりたいと考えるようになったことです。机上の最適化ではなく、現場の制約の中で成果を出す難しさと面白さに惹かれました。
2つ目は、その挑戦をするなら、ベンダーとして支援する立場よりも、事業会社の一員として当事者意識を持ち、企画から実装、運用、改善まで一貫して関わる方が価値を出しやすいと感じたことです。
その点、ニトリは商品企画から製造、物流、販売までを一気通貫で持っており、SCM全体を俯瞰しながら改善に取り組める環境があります。ここであれば、自分がやりたい領域に腰を据えて向き合い、事業インパクトの大きい経験が積めると考え、入社を決めました。
ーー現在携わっている代表的なプロジェクトまたは業務について教えてください。
現在は「棚割作成AI」の開発と実証プロジェクトに携わっています。棚割とは、店舗の売場で「どの商品を、どの棚のどの位置に、どれだけ陳列するか」を設計する業務で、売上だけでなくお客様の買いやすさや、店舗オペレーションにも大きく影響する重要な領域です。
ニトリでは棚割を本部で集中管理しており、精度の高い棚割を作るために多くの知見と人的リソースが必要になっています。そこでAIを活用し、過去の販売実績や商品特性、売場スペースなどの条件を踏まえながら、より効率的に棚割案を作成できる仕組みの構築を進めています。
目指しているのは、本部業務の効率化だけではなく、店舗ごとの特性に合った「買いやすい売場」を継続的に作れる状態を実現することです。現場で使える形に落とし込むために、関係部門と連携しながら検証と改善を繰り返しています。
ーーこのプロジェクトの「面白さ」や、逆に「難しさ」はどのような点にありますか?
このプロジェクトの面白さは、「棚割」という一見アナログに見える業務を、AIを適用することで、より良い形にアップデートしていける点にあります。棚への陳列パターンは無数に考えられる一方で、商品と棚のクリアランス距離、陳列順のルール、売場の見やすさといった基準も守らなければなりません。そうした条件を満たしながら、限られた売場スペースの中で最適な配置を探索する必要があり、数理最適化などの技術を活かせる領域です。実務担当者から直接フィードバックをもらい、モデルを改善して精度を上げていくサイクルは、技術者として純粋に面白い部分だと感じています。
一方で難しさは、「何をもって望ましい棚割とするか」という判断基準が、暗黙知として蓄積されている点です。売場づくりの良し悪しは、売上のように単一の指標で割り切れないことも多く、担当者によって重視する観点や解釈が異なるケースもあります。そのため、現場の知見を丁寧に言語化・整理し、合意形成したうえで、ルールや評価指標としてモデルに落とし込むところが実装上の難しさではあります。
ーー事業部門やチームの雰囲気はどのような感じですか?
私の役割上、事業部門の方々と日常的にやり取りする機会が多いのですが、ヒアリングや検証にとても協力的で、課題の背景や現場の実態をオープンに共有してくださる印象があります。立場の違いはあっても「業務改善しビジネス成果につなげたい」という目的が共通しているので、必要以上に堅い関係にならず、率直に相談しながら開発を進められる点は事業会社ならではの進めやすさだと感じています。
また、私が所属するIT戦略チームは、専門性と個性の強いメンバーが揃っているチームです。AI技術に強いメンバーだけでなく、店舗勤務を経験した総合職メンバーもいるため、業務知識のキャッチアップや「現場で本当に使えるか」という観点での議論がしやすいのも特徴です。お互いの強みを持ち寄りながら、良い意味でフラットに意見を出し合える雰囲気だと思います。
ーーニトリ独自のビジネスモデルである「製造物流IT小売業」 という強みは、実際のプロジェクトや業務でどのように感じますか?
ニトリの「製造物流IT小売業」という強みは、プロジェクトを進める中でまさに実感する場面が多いです。商品企画から製造、輸入、物流、店舗・ECでの販売まで、サプライチェーンの広い範囲を自社で持っているため、データも施策の打ち手も一部に閉じず、全体最適の視点で検討できます。AI活用においても、需要予測だけ、物流だけといった部分最適ではなく、前後工程まで含めて改善の設計ができる点は大きな魅力です。
一方で、領域をまたいで意思決定が連鎖する分、課題は複雑になりやすく、関係者も多くなります。単純にAIモデルの精度を上げれば良いという話ではありません。ただ、その難しさを乗り越えて仕組みが定着すると、在庫・物流・売場・作業負荷など複数の指標に波及効果が出るため、成功したときのビジネスインパクトは非常に大きいと感じています。
ーーニトリには「スピード感」 や「失敗を恐れないカルチャー」 がありますが、それらを実感した瞬間はありますか?
実感した瞬間は、棚割作成AIのプロジェクトで、開発開始から約1か月という短い期間で実店舗での検証(棚割を再現する実験)に踏み切ったときです。AI活用の取り組みは、まず投資対効果を見極めるために実証実験から入るケースが多いのですが、ニトリでは「まず現場で試して、結果を見て改善する」という判断がとても早いと感じました。
プロトタイプを作ったらすぐに店舗で検証し、得られたフィードバックを次の改善に反映する。このサイクルを短いスパンで回せるのは、スピード感があるからこそですし、完璧に作り込んでから出すのではなく、挑戦を前提に前へ進める「失敗を恐れないカルチャー」が根付いているからだと思います。ITベンダーの立場ではなかなか経験しづらい、事業会社ならではの推進力を実感しました。
ーー今後、どのようなキャリアを築いていきたいと考えていますか?
今後もAI/データサイエンスを軸にキャリアを築いていきたいという考えは変わりません。技術的な専門性を磨き続けながら、実務で使える形に落とし込む力も高めていきたいと思っています。
そのうえで、もう一つの軸としてSCMという事業領域の専門性も、より深く尖らせていきたいと考えています。需要予測や在庫、物流、売場といった領域は、現場の制約や意思決定の構造を理解して初めて成果につながるので、技術と業務の両方を理解した人材として価値を出せる状態を目指したいです。
ニトリデジタルベースは、技術を活かしながらSCMの実務に深く入り込み、企画から実装、運用定着まで一貫して関われる環境があるので、こうしたキャリアを志向する人にとって非常に良いフィールドだと感じています。