目次
創業ストーリー:テクノロジーで、法をもっと「届くもの」にする
1. 原点となった新聞記事との出会い
2. 弁護士としての葛藤と、構造的な限界の発見
3. 構造を変えるための挑戦──生成AIとの出会い
4. 起業の決断と、仕組みの構築
5. 目指す未来──法が届く社会へ
創業ストーリー:テクノロジーで、法をもっと「届くもの」にする
1. 原点となった新聞記事との出会い
高校時代のある朝、私は一枚の新聞記事を読んで、人生の進路が決まりました。
記事には、多重債務に苦しむ男性が弁護士に相談し、「消滅時効」によって借金が帳消しになる様子が描かれていました。男性は制度を知らなかったがゆえに自ら命を絶とうとしていた。それを救ったのが、たった一通の内容証明でした。
法律が、人の命を救うことがある。
強い感動とともに、記事の後半に書かれていたある言葉が私の心を射抜きました。
「法律を知らないのは市民の責任ではない。なぜなら、日本の義務教育では法律を教えないからだ。だからこそ、弁護士が法を社会に届ける必要がある。これが“リーガルアクセス”という使命である。」
その瞬間、私は決意しました。「法を知らないことで苦しむ人を、救える存在になりたい」と。
2. 弁護士としての葛藤と、構造的な限界の発見
2014年、私は弁護士になりました。依頼者に寄り添い、法を届ける仕事にやりがいを感じていました。しかし、ある時ふと疑問が湧いたのです。
「目の前の依頼者は救えている。でも、社会は変わっているだろうか?」
どれだけ真摯に働いても、法が届く範囲はあまりに限定的でした。企業法務の分野に転じ、四大法律事務所で多忙な日々を過ごす中でも、その問いは消えませんでした。
そんなとき、統計に出会いました。年間1500万人が法的トラブルに直面している一方で、実際に弁護士に相談できるのはわずか2割にすぎないという現実。いわゆる「2割司法問題」です。
つまり、8割の人には法が届いていない。
この構造そのものを変えない限り、いくら個人が頑張っても、社会に法を届けるという理想には辿り着けない。そう気づいたとき、私はある決意をしました。
3. 構造を変えるための挑戦──生成AIとの出会い
弁護士を増やすことは、制度的にも現実的にも時間がかかる。でも、もう一つの選択肢がありました。
「弁護士一人が支援できる依頼者の数を、テクノロジーの力で増やすことはできないか?」
そんなとき、生成AIの急速な進化を目の当たりにしました。最初は懐疑的でしたが、「正しい使い方」を徹底的に学び、試行錯誤を重ねた結果、弁護士業務でも実用できる領域が見えてきました。
たとえば、ChatGPTを使って訴状のドラフトを自動生成する。Difyというノーコードツールで証拠整理のワークフローを自動化する。こうした取り組みによって、単純作業の時間が3分の1以下に圧縮されたのです。
「これは、構造を変えられるかもしれない。」
私は、ずっと探していた答えを見つけたような気がしました。
4. 起業の決断と、仕組みの構築
そして2025年1月、四大法律事務所を退職し、「テクノロジーの力で2割司法問題を解決する」というビジョンのもと、リーガルアクセス株式会社を設立しました。
起業にあたり、法律事務所と株式会社を明確に分けるモデルを採用しました。法律事務所は弁護士としての専門性に集中し、株式会社がマーケティング、事務局、システム開発を担うことで、法務以外の業務を徹底的に支援する構造を整えたのです。
現在は、未払残業代請求のような定型化しやすい分野から着手し、生成AIの実務運用を進めています。弁護士とパラリーガルが協働し、AIによって生産性を最大化しながら、依頼者一人ひとりに向き合う体制を築いています。
5. 目指す未来──法が届く社会へ
私たちが本当に目指しているのは、生成AIを活用することで「法が届く社会」を実現することです。
もし全国の弁護士が生成AIを本気で使いこなしたなら、1人あたり5倍の依頼者を支援できるようになります。弁護士にリーチできなかった残りの8割の人たちにも、法を届けることができるでしょう。これは、単なる効率化ではなく、構造の変革です。
さらに、私たちは「生成AIを使いこなせる弁護士」を育成し、いずれ独立して地域に根ざしたリーガルサービスを展開できるよう支援しています。
この仕組みが広がれば、日本全国の至るところで、法がもっと近く、もっと届くものになるはずです。
「届ける法」を、社会の当たり前にする──
それが、私たちの挑戦です。