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【前編・福祉でITサービスを導入する価値】5年で600事業所に導入されたITサービスを展開する社長と「福祉×IT」を語る

今回は、「福祉×IT」の分野で事業を作っていこうとしている経営者2名の対談記事です。

トラストバンク株式会社・代表取締役の小柴さんをお招きして、弊社CLOVERファウンダーの野口と一緒に、「福祉×IT」について語り合ってもらいました。

二人の共通点は、「福祉分野で活用されるITサービス」を開発したこと。そして、それを少人数体制で行なっていること。

「福祉でITサービスを導入する価値」と「小さなチームでプロダクトを作っていく」ことについて語り合った話を、前編・後編に分けてお届けしていきます。

後編はこちら:【後編・小さなチームでプロダクトを作る】5年で600事業所に導入されたITサービスを展開する社長と「福祉×IT」を語る

<本日の”登場人物”と”登場ITサービス”>

トラストバンク株式会社 代表取締役 小柴義明

障害福祉サービス向け請求システム「ポチパス」を開発・販売。アフィリエイト、ヘルスケア、アプリ開発など、さまざまな事業の代表の経験を持ちながら、農業・養鶏にも7年間携わる。農業時代に関わった障害者との出会いをきっかけに、「障害者を応援するコンテンツを作ろう」と開発した「ポチパス」は、5年で利用事業所は600事業所にまで増加。現在も利用事業所が増え続けている。

ポチパス:https://trust-bank.net/


株式会社CLOVER ファウンダー 野口潔

福祉事業所向け請求・記録システム「Happy Care」を開発コンサルティング会社勤務、飲食店経営などを経験。2010年に株式会社CLOVERを、代表取締役・香丸と二人で共同創業。今後CLOVERの新規事業として、「Happy Care」の外部販売に向けて動き出している。

クローバーグループ:https://day-clover.com/

出発点は「障害者を応援するコンテンツを作りたい」

(野口)小柴さん、今日はよろしくお願いします。小柴さんとは、元々お互い農業をやっていた時代があって、SNSをきっかけに情報交換をしようとなったのが出会いですよね。農業をやる前のことや、「ポチパス」を作ることになった経緯、改めて教えてもらってもいいですか?


(小柴)実は農業をする前は、福祉ともITとも関係ない分野で事業をやっていました。大学を卒業と同時に、1990年代というすごい初期にアフィリエイトを募集する会社を起業して、4年で7億規模くらいになりました。


(野口)そんなに順調だったのに、なぜ農業に?


(小柴)組織が大きくなるにつれて苦しさも出てきたんですよ。それなりの社員数になって、ちゃんとした組織を維持していかなきゃいけないプレッシャーがある一方で、当時29歳、右も左も分からないまま上手くいきすぎてしまって、組織を保っていくための事業に対する次なるビジョンが持てていなかった。悔しさはあったけど、正直逃げたくなってしまって、社員たちには申し訳ないなと思いながら、会社を売ることにしたんです。結局その会社は、某情報通信系上場企業の会社に売却しました。


その後、今後のことを考えたら「農業や林業が大事だな」と思うようになり、全国の農的な暮らしをしている暮らしをしているところを見て周り、結局静岡で7年間農業をやってきました。実は「ポチパス」の出発点は、その農業をしていたときの経験なんです。


(野口)そうだったんですね。何があったんですか?


(小柴)そこで何人もの障害者を受け入れしていたんです。主に精神障害の方がメインでした。農業という環境で働くうちに、彼らの服薬の数が明らかに少なくなっていくんですよ。


(野口)それで障害福祉につながっていくわけですね。


(小柴)そうです。でも、すぐに今の事業に結びついたわけじゃない。東京に戻ってからも、ヘルスケア事業の会社、ゲーム・アプリ開発の会社と、続けて2社の社長を経験しました。色々やっていく中で、「本当にやりたいことってなんだろう?」とずっと考えていて。


その時、農業時代の経験を思い出した。当時、彼らと深い付き合いをしていく中で、「障害を持っていっても、実はこんなに能力があるのか」と驚いていました。彼らが社会の表舞台に出てこないこの世の中の仕組みは、なんとかしなきゃいけないって思ったんですよね。


(野口)そこからシステムに結びついたキッカケは?


(小柴)いきなり「システムを作ろう」から始まったわけじゃないんです。最初は「障害者を応援するコンテンツを作りたい」と思って福祉現場のことを少しずつ知っていって。その中で、「国に提出する書類が全部紙ベースだから、そこをシステム化したらニーズがあるんじゃないか?」というアイデアをもらいました。その事業がたまたま芽が出たのが、今の「ポチパス」です。

継続率99%!その鍵はお客様の声を定期的にアップデートしていく「柔軟性」

(野口)請求システムを作っていく中で、現場にどんな課題感を感じましたか?


(小柴)今はクラウド型のものが当たり前だけど、当時使われていたシステムはインストール型で、一台のPCしか使えない状況になっていました。だからスタッフ同士で情報のシェアがしづらい。他にも「スマホで使えない」「契約期間に縛りがある」「端末を増やすごとに追加費用がかかる」などの声が入ってきましたね。


(野口)世の中に福祉のシステムはたくさんあるけど、福祉の現場を知らないエンジニアが作っていることが多いから、結局「現場は使いづらい」というのは多いですよね。


(小柴)そうですね。「ポチパス」はお客さんを紹介してもらう度にヒアリングをして、現場の問題点を解消する機能をどんどん追加していきました。現場の声をたくさん集めて作ったのが「ポチパス」なんです。これはガッチリ作ったら「売れる」と思いましたね。


(野口)その上で、「ポチパス」は「こうやって売っていこう」という戦略はあったんですか?


(小柴)実はあんまりなかったんですよね(笑)今も売上目標とかもあんまり立てなくて。


(野口)小柴さんはあまり先のこと考えないタイプですよね(笑)


(小柴)そうなんです(笑)それに「良いものを安く売れば、売れる」ってシンプルに思ったんです。実際、ポチパスの利用数は、予想以上に増えました。その鍵は「柔軟性」だったと思います。


(野口)「柔軟性」ですか。


(小柴)アップデートや機能追加は、要望をしても、実現されないことがほとんどだと複数のお客さんから聞きました。だからうちのエンジニアには、「3社から同じ要望があったら、すぐに新しい機能を追加して」と言っています。2週間に一回は大きなアップデートをしていると思います。


(野口)実際、定期的にアップデートは構造的に難しいというシステムは多いから、そこは強みになりますね。


(小柴)そうですね。「ポチパス」の解約数は5年間で数社です。継続率でいったら99%以上。お客さんの声を定期的にアップデートしていくことは、本当に大事なんだと思った。

何より、既存顧客や、福祉事業所に関連サービスを販売する他社の営業マンが紹介してくれて、新しく利用がスタートするということがほとんどです。お客さんがお客さんを作ってくれている。これが一番嬉しいですね。

ITサービスではできないことを、人ができる環境を。「福祉」でITをやる価値

(野口)クローバーでも、自分たちが使いたいと思えるシステムが、調べても調べても出てこなかったんですよね。それなら「自分で作ってしまおう」と思って開発したのが「HappyCare」なんです。


(小柴)「Happy Care」を初めて見た時から、これは世に出たら面白いなとずっと思っていました。世の福祉経営者の9割が求めている「省略化、ペーパーレス化、ミスを防ぐ」という視点をカバーしながら、予約や売上の先行管理・未来予測も可視化されている。設計の段階からからその考え方が入っていたので、すごく革新的だと思う。


(野口)ありがとうございます。「HappyCare」の元々のコンセプトは「誰もが良いケアができるアシスタント」です。ただの記録・管理・効率化システムではなく、「できる人のケアを、誰もができるようにする」ことが開発の目的でした。


(小柴)スーパーマンがいるから実現できる世界ではなく、誰もが実現できる世界を作るという感じですね。


(野口)それです。例えば「他の利用者とコミュニケーションをとってほしい」というご家族の要望があるのに、「今日はお散歩しました」と報告をしても、ニーズとマッチしないですよね。

できるマネージャーなら、利用者一人一人の利用目的が頭に入っているから、自然とそれに合ったケアや情報を提供することができるんです。でもそれって、誰もが簡単に教育でできるようになるのは難しいかもしれない。それをITで解決しようと思いました。

記録用のiPadにいつも利用目的が表示されていたら、自然とそれに合ったケアができるんじゃないか?と。


(小柴)福祉の現場は、「利用者はどんな人物か」を知ることが、スタッフにとって大事だと思うんですけど、実際には事務作業に追われている。事務はITが代われるけど、利用者の支援はなかなか難しい。ITサービスが、もっと支援の質を上げていくために使えたら良いと思うんですよね。


(野口)そういう視点で言うと、やっぱりITサービスは「できる人は使いこなせる」ではなく、「誰もが使えるもの」が良いと思う。「HappyCare」も、「どんなサービス提供をしたり、どんな報告をしたら喜ばれるのかを教えてくれるから、現場に欠かせない!」という存在になったらいいなと思います。

【後編】では、両者の「ITサービス開発の裏側」についてお届けしていきます。

そしてそこから見えてくる、今後必要とされる人材像まで深堀りしていきたいと思います!

後編はこちら:【後編・小さなチームでプロダクトを作る】5年で600事業所に導入されたITサービスを展開する社長と「福祉×IT」を語る

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