「SES業界でよくある『案件ガチャ』を完全になくしたい」――そんな強い思いから2023年に株式会社大阪システム開発を創業した平林悟志さん。業界15年の経験から見えてきた課題を、独自のマッチング手法で解決しています。「嘘をつかないスキルシート」「お客さんとエンジニア両方への丁寧なヒアリング」「信頼関係に基づく案件提案」――これらを武器に、エンジニアが安心してスキルアップできる環境づくりに取り組んでいます。
平林悟志さん プロフィール
- 株式会社大阪システム開発 代表取締役
- IT業界歴15年、SES事業の営業・マッチング、受託開発の営業
- 2023年創業、現在社員5名体制で売上高7,000万円を見込む
- 業務系システム開発を中心とした客先常駐サービスを提供
「案件ガチャ」が生まれる本当の理由
――SES業界でよく問題視される「案件ガチャ」について、実際に営業を担当されている平林さんはどう捉えていますか?
案件ガチャって言葉、最近よく聞きますよね。でも実際に営業やってる立場から言うと、これって3つの要素が重なって起きてるんです。
まず一番大きいのが、営業の能力不足。お客さんからの要件をちゃんと聞けてない、逆に自社のエンジニアの希望も確認できてない。これが一番多いパターンですね。
例えば、パートナー会社に「こんな案件どうですか?」と話して、「是非お願いします」って返事が来たとします。
でも実際に面談してみると、「えっ、これ駅から片道2時間かかるやん」「通勤きついです」って後から言われる。最初から確認しとけよって話なんですけど(笑)
二番目が、スキルシートの問題。同業他社から来るスキルシートを見ると、「要件定義から導入まで全部チェック入ってます」って書いてあるんです。でも実際に面談したら、要件定義の案件に参加してただけで、実際に要件を定義してたのはリーダーで、その人は降りてきた作業をドキュメント化してただけ、みたいな。「要件定義やってへんやん」って話になっちゃうんですよ。
三番目は、こればかりは運もあるのですが、現場の方との相性。こればかりは入ってみないと分からない部分もあるので、100%のガチャ撲滅は難しい。でも、スキルや条件のミスマッチは、営業がきちんと仕事をすれば絶対に防げるはずなんです。
――それらの問題に対して、どのような解決策を実践されていますか?
まず、嘘をつかないスキルシートを作ることですね。同業他社のスキルシートを見てると、本当にできることとできないことがごちゃ混ぜになってる。僕は面談で必ず「このスキルシート、実際にどこまでできるんですか?」って掘り下げて聞きます。
そして、お客さんに対しても僕が分かってる範囲で全部伝えるんです。例えば、技術力は高いけどコミュニケーションが苦手な子と、技術はまだまだやけど人当たりがええ子がおるとするじゃないですか。お客さんから直接要望を聞きながら進める保守開発の現場やったら、どっちが向いてると思います?
ーー後者の、人当たりの良い方でしょうか。
そうなんです。逆に、ドキュメントがしっかりしてて、リーダーの指示通りに黙々と開発を進める現場やったら、前者の方が活躍できるかもしれん。**その子の能力だけやなくて、性格とか、現場の雰囲気とか、全部含めて「合うか、合わへんか」を判断する。**これが僕の言う「マッチング」です。
顔が広いからできる、本当のマッチング
――具体的にはどのような流れで案件をマッチングされているのでしょうか?
未経験や経験の少ない子に関しては、基本的に知り合いのところにしか提案しません。知らないところの未経験者を受け入れてくれるお客さんって、正直ほとんどいないんですよ。「なんで知らんところの未経験を育てなあかんねん」ってなっちゃいますから。
でも知り合いのお客さんやったら「あそこの子やから、まあ育ててやろか」ってなってくれる。これが大きいんです。
経験者の場合は、まず本人とじっくり話します。「どういう案件がいいか」「将来的にどういうことをやりたいか」「5年後、10年後はどうありたいか」とか。その上で、こちらの持ってる案件とマッチするところを狙って提案していきます。
でも例えば「AIやりたいです」って言われても、「うち、業務系システムの会社やで?」ってなる。そういう場合は、正直に「それやったら、そういうのを専門でやってる会社を受けた方がええんちゃう?」って言います。お互いにとって、その方がええから。
僕らがやってるのは、あくまで業務を理解して、お客さんの課題を解決する仕事。だから、**技術だけじゃなくて、業務知識も身につけて、お客さんと話せるようになってほしい。**そうなったら、変な話、うちの会社が潰れても一人で食っていける技術者になれる。そこまで育てるのが僕の責任やと思ってます。
――お客さんとの信頼関係構築で大切にされていることは?
とにかく嘘をつかないことですね。嘘つくんて面倒くさいでしょ(笑)。できることはできる、できないことはできないって最初から言います。
あと、お客さんからも「あの子どうですか?」って聞かれたら、良いところも気になるところも全部お伝えします。「技術的にはまだまだですけど、素直で一生懸命やってくれます」とか「センスはあるんですけど、ちょっと確認を怠りがちなので、最初のうちは声かけてもらえると助かります」とか。
そうやってお互いの期待値をちゃんと合わせるんです。そうすると、後から「話が違う」ってことがなくなるんですよ。
未経験者への独自アプローチ:「当たり前」の徹底から始まる成長
――未経験者の育成について、特に力を入れていることはありますか?
まず、最初からプログラミングをやってもらうことですね。業界でよくあるのが、未経験者にコールセンターとかキッティングとか、開発じゃない仕事を長期間やらせること。僕はそれは意味ないと思ってるんです。
3年目、5年目になった時にほぼ未経験みたいな人が出来上がる方が怖いから、1年目は赤字でもええから技術をやらせるって決めてます。
そして、新人には必ず「親から言われるようなことをきっちりしといたら、まず大丈夫」と伝えています。挨拶、返事、時間を守る、一生懸命やる、失敗したらすいません、助けてもらったらありがとうございます。これができてたら、お客さんから嫌な評価をされることはまずないです。
――実際に未経験から入った方の成長事例を教えてください。
今いる子で、30過ぎで転職してきた未経験者がいるんです。正直、センスは普通、物覚えもそんなに良くない。でも本人もそれを分かってて、「みんなより一つ二つ頑張らなあかん」って自覚があるんですよ。
僕が提案したのは、毎日の振り返りノート。その日に指摘されたこと、教えてもらったこと、全部書いて、帰りの電車で15分だけでも振り返る。「次はこういう指摘されないようにしよう」「ここは次から自分で解決できるようにしよう」って。
それを半年以上、一日も欠かさず続けてるんです。お客さんからも「きっちり自分から動いて質問してくるし、着実に伸びてきてる」って評価もらってます。同じ失敗を繰り返さない、同じことを何度も聞かない。当たり前のことなんですけど、これができるかできないかで全然違うんです。人から指摘されたことを素直に改善できる子は、絶対に伸びます。
5年後のビジョン:受託開発企業への挑戦
――会社として今後どのような展開を考えていらっしゃいますか?
まずは30人から50人ぐらいまで、みんながお客さん先でも受託でもちゃんとやれるレベルにしたいですね。現実的には早くても5年はかかると思ってます。
受託開発って、お客さん先で評価高い人でも、実際に一人で品質を担保して納品できるかっていうと別なんですよ。お客さん先では他のメンバーがフォローしてくれてたけど、受託になったらそれも含めて全部やらなあかんから。
前職で受託を始めた時、3,000万で受けた案件が4,500万かかったことがあるんです(笑)。お客さん先で上流工程やってても、お金が絡んだ仕様の切り分けやってない。「この機能、見積もりより実は倍の工数かかります」みたいなことが後から分かって。
そういうノウハウも含めて理解してやってくれる人を育てるには、やっぱり時間がかかるんです。でも、それができたら変な話、うちの会社がなくても一人で生きていけるレベルになる。40歳で独立しますって言われても構わない。ただ、その時に恥ずかしい技術者になってほしくないんです。「さすが平林さんところでやってた人やな」って言われるぐらいまで育てたい。
一緒に働きたい人材像:素直さと成長意欲が何より大切
――どのような方に入社していただきたいとお考えですか?
一番大切なのは素直さですね。指摘されたことを改善していける人。「いやいや、それは違うんです」って言い訳ばっかりする人は、正直厳しいです。
あとは向上心がある人。技術でも業務知識でも、「もっと知りたい」「もっとできるようになりたい」って思える人。未経験でも全然構わないんですが、その気持ちがないと続かないです。
逆に、技術だけやってたいって人は合わないかもしれません。業務系システムやってる以上、お客さんの業務も理解してもらわないといけないし、年齢と共に上流工程もやってもらいたい。「55歳でプログラミングだけします」っていうのは、やっぱり長いこと生きていくのが難しいと思うんですよ。
――入社後のサポート体制について教えてください。
小さな会社なんで、僕が直接みんなとお話しします。月1回は必ず、お客さん先でどうか、何か困ってることはないか、ちゃんと確認します。
研修も、経験者は必要に応じて1日、未経験の方は1〜2ヶ月程度しっかりと基礎を固めてから現場に送り出します。外部の技術研修を受けてもらうことも可能ですし、資格の受験料や技術書の購入費用も全額補助します。
何より大切にしてるのは、報連相。特に「客先で嫌なことがあったけど、迷惑かけたくないし黙っとこう」っていう我慢は絶対にしてほしくないんです。早めに相談してもらえれば、必ず解決できるよう動きます。
いかがでしたか?
お話しを通じて強く感じたのは、平林さんの「嘘をつかない」という一貫した姿勢です。SES業界の構造的な問題を正面から見据え、小手先のテクニックではなく、信頼関係に基づいた本質的な解決策を実践されています。
「案件ガチャ」という言葉の裏にある、エンジニア一人ひとりの不安や希望に真摯に向き合う姿勢は、業界全体が見習うべきものだと感じました。平林さんのような経営者の下でなら、安心してスキルアップに集中できるのではないでしょうか。
興味を持たれた方は、ぜひ一度カジュアル面談でお話を聞かせていただければと思います!