大学では材料工学を学び、卒業後は大手はんだ製造メーカーで新規事業開発に携わっていた浜野 晃暉さん。そんな浜野さんが次の職場として選んだのは、河川やダムに設置する水質計測機器を手がける株式会社クレストでした。入社するまでは、水質計測の世界について「何も知らなかった」と話します。
それでも、先輩の仕事を手伝うところから経験を重ね、入社3年目の現在は工場整備の中心を担うまでになりました。機械の構造を学び、小型船舶免許を取得し、次に見据えるのはハードウェアとソフトウェアをつなぐシステム設計だと話します。
入社3年目、いま急成長の途上にいる浜野さんに、これまでの歩みとこれから挑みたいことを聞きました。
(この記事の登場人物)
計測器事業所 技術部
浜野 晃暉
東京大学工学部マテリアル工学科を経て、同大学大学院工学系研究科を修了。学生時代は鉄などの材料研究に取り組む。新卒で大手はんだ製造メーカーへ入社し、既存技術を生かした新規事業開発に従事した後、2024年に株式会社クレスト入社。現在は水質計測機器の工場整備を担当しながら、電気・プログラミング・システム設計など幅広い知識を学んでいる。
「あまのじゃく」だからこそ惹かれた水質計測の世界
—学生時代の浜野さんは、どんなことを学んでいたんですか?
マテリアル工学を専攻し、研究室では鉄などの材料を研究していました。そうした学びをつなげる形で、卒業後は国内の大手はんだ製造メーカーへ入社しました。
—前職ではどんな仕事を担当していたんでしょうか?
はんだを開発・製造する過程で培われた技術や考え方を、別の事業へ応用する仕事です。既存の技術を新しい領域でどのように生かせるか、日々考えていました。
その仕事にはやりがいを感じていたのですが、社員数の多い会社だったので、どうしても組織や仕事は細かく分けられていました。私は次第に「決められた範囲の仕事だけを担当するよりも、自分の意志で幅広い業務に関われる環境で働いてみたい」と思うようになり、転職を考え始めました。
—クレストは前職とはまったく異なる業種だと思いますが、どうやって見つけたんですか?
転職サイトで偶然見つけました。水質計測機器のメーカーがあること自体、それまではまったく知らなかったんです。でも、知らない世界だったからこそ興味を持った部分もあります。
振り返ると、私は就職活動の頃からそうでした。誰もが知っているような分野より、扱う領域は狭くても、専門性を持ってさまざまなことに取り組んでいる会社に興味を持っていたんです。根が「あまのじゃく」なのかもしれません(笑)。人と同じような選択をするより、あまり知られていない分野に進むほうが面白そうだと感じるんですよね。
—だからこそ、それまで何も知識がなかったクレストの仕事に惹かれたんですね。入社の決め手も知りたいです。
水質計測の業界は歴史が長く、限られた企業が長年取り組んできた面もあります。その中で、クレストは比較的新しい会社でありながら、先進的な技術や仕組みを取り入れて事業を広げている点に魅力を感じました。
また、社長の平澤さんの存在も大きかったですね。入社前に平澤さんと話したとき、「大学時代にお世話になった指導教授に雰囲気が似ている!」と思ったんです。平澤さんは、良いことも改善すべきことも、はっきりと言葉にして伝えてくれる人。学生時代、教授から「社会人になると、正面から指摘してくれる人は意外と少ない」と言われたことが頭に残っていたので、平澤さんのもとで働けることも入社の決め手になりました。
先輩のお手伝いから始まり、専門機器1台を任される技術者へ
—入社後は、どんな仕事から始めましたか?
最初は、先輩のいろいろな仕事を手伝うところから始めました。見積書の数字を直したり、お客さまへ提出する書類の作成を補助したり、簡単な作業を手伝ったり。
そうしたお手伝いを通じて、現在担当している「工場整備」の仕事に必要な技術を少しずつ学んでいきました。
—工場整備では、具体的にどんな作業をするのでしょうか?
工場整備は、河川やダムに設置されている水質計測機器を定期的に回収し、社内の工場で点検・整備して、再び現地へ戻す仕事です。
水質計測機器は水中に設置するものなので、使い続けるうちに貝や藻などが付着します。それによって測定値に影響が出たり、内部の配線や金属部分などに不具合が生じたりするんです。
そのため、回収した機器はまず水につけて動かし、不具合がないかを調べます。必要があれば部品を交換したり、測定値を調整したりした上で、現場へ戻す前にもう一度テストし、問題なく動き続けるかを確認します。
1台の整備にかかる期間はおおむね1カ月。そのすべての時間を1台だけに費やすわけではなく、複数の機器を並行して整備します。年間で扱うのは20台前後です。
—こうした工場整備の仕事を浜野さん1人で担当しているんですか?
2026年度からは、通常の整備であればほぼ私が担当しています。
工場整備はもともと、先輩の小田さんが中心になって担当していました。私は小田さんの作業を手伝いながら機器の構造や検査方法を教えてもらい、入社2年目からは少しずつ、任される仕事が増えていきました。
完全に壊れている機器など、通常とは異なる対応が必要なときには、今でも小田さんや他の先輩に頼ります。それでも、入社した頃には全然わからなかった機械を自分で確認し、整備の進め方を判断できるようになったことには、我ながら成長を感じますね。
—仕事は、どのように教わってきたのでしょうか?
工場整備については、主に小田さんから実務を通して教わってきました。外部の講座で学ぶというより、実際の作業をしながら一つずつ覚えていく形です。
今後、プログラミングなどソフトウェアの領域については、別の先輩から教わる予定です。担当分野ごとに先輩から学びながら、少しずつできることを広げています。
—これまでに特に大変だった仕事には、どんなものがありますか?
通常は1カ月ほどの期間を見込んで進める整備を、期日の把握が十分ではなく、1週間ほどで終わらせなければならなくなったことがありました。比較的簡易な機器だったので、何とか間に合わせることができたものの、このときは冷や汗をかきました。
整備というと、機械を扱う技術だけが必要な仕事に見えるかもしれません。しかし、実際には複数の案件を同時に進めるので、それぞれの納期や作業状況を管理することも重要なんです。技術以外にも、まだまだ身につけなければいけない力があると感じた経験でした。
いざ黒部の山奥へ! 現場で初めて体感した仕事の意味
—河川やダムなど、機器が実際に設置されている場所で作業することもあるんですか?
はい。社内へ機器を持ち帰って整備するだけでなく、現地で測定値を確認したり、簡単な保守作業をしたりすることもあります。現在は先輩に同行して出張することが多いですね。
特に印象に残っているのは、富山県内のダムでの仕事です。トロッコ列車に機材を載せて山奥へ入り、設置されている水質計をメンテナンスしました。基準となる液を使って正しい数値が出るかを確かめたり、機器を水中へ吊るす設備が正常に動くかを確認したりといった工程もありました。
このダム周辺は観光地としても有名ですが、普通に生活していたら、仕事で訪れるとは思わないような場所だと思います。クマに出くわしてもおかしくないような山奥なので緊張しましたが、こうした場所へ行けることは、この仕事ならではの面白さだと思います。
クレストの機器が活躍しているダムは、全国各地にあります。水は生活や産業に欠かせないもの。水質を監視する仕組みが機能しなくなると大きな影響があるんです。目立たないところから社会を支える「縁の下の力持ち」のような仕事は、自分の性格にも合っていると感じます。
—浜野さんが学生時代に学んでいた化学系分野の知識が生かされることもあるんでしょうか?
意外と、直接的に役立つ場面も多いですね。たとえば、水質を測る「pH計」が正しく動いているかを確かめるには、基準となる液を用意しなければなりません。スポイトやビーカーなどの実験器具を扱う場面もあり、学生時代に身につけた知識や経験を生かせています。
入社前は、材料工学と水質計測にそれほど接点があるとは考えていませんでした。でも、異なる分野へ移っても、それまで学んだことが思いがけない形で役立つことがあるんだと実感しています。
機械もソフトウェアも、お金の流れも理解できる存在になりたい
—これから浜野さんは、どんな仕事へ挑戦したいと考えていますか?
まずは工場整備を通して、機械の構造をさらに理解したいです。その後は、プログラミングなどのソフトウェアについても先輩から学ぶ予定です。
水質計測機器には、機械としての構造だけでなく、機器を動かすプログラムや測定した数値を扱う仕組みもあります。将来的には、ハードウェアとソフトウェアの両方を理解し、装置全体をどのようなシステムにするか設計できる技術者になりたいと思っています。
現場で必要になる資格もいろいろあります。たとえば入社2年目には、湖上の設備へ向かうために必要な二級小型船舶操縦士免許を取得しました。今後は電気工事士など、電気に関する勉強にも取り組みたいと考えています。
—学び続けることが求められる仕事なんですね。ちなみに、システム設計だけでなく、さらに仕事の幅を広げていきたいという思いもあるのでしょうか?
はい。機械やソフトウェアの専門性を高めるだけでなく、営業や事務、お金の流れなど、会社を動かすために必要なことも少しずつ学んでいきたいです。
クレストは少人数の会社なので、自分の担当分野以外の動きも見えます。朝と夕方のミーティングでは、それぞれが取り組む仕事を共有。技術部門にいても、営業がどんな案件を進めているのかを知ることができるんです。これは、仕事が細かく分かれていた前職との大きな違いです。
せっかく幅広い仕事に挑戦できる環境があるので、私も一つの専門分野だけに閉じこもらず、さまざまな業務や役割を理解できる存在になりたいと思っています。
—浜野さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「自分はこれしかやらない」と決めつけず、いろいろなことを試してみたいと思える人です。
大学で何かを専門的に学んだ人が、「この知識を生かせる仕事がしたい」と考えるのは自然だと思います。でも、その知識があるがゆえにキャリアの可能性を狭めてしまうのは、もったいないとも感じるんです。
私は水質計測について何も知らない状態で入社し、機械の整備を覚え、小型船舶免許を取り、これからプログラミングや電気についても学ぼうとしています。入社前には想像していなかった分野にまで知識や技術が広がり、手応えとやりがいを持っています。
同じように、一つずつ新しいことを覚え、できる仕事が増えていく過程を面白いと思える人なら、きっとクレストが合っているはずです。