「地域からハッピーシナリオを共に」をスローガンに、全国各地で地域に根ざした事業づくりに取り組むNEWLOCAL。
連載「We are NEWLOCALs」は、NEWLOCALに関わる一人ひとりに焦点をあて、その歩みや考えをたどっていくインタビューシリーズです。
今回話を聞いたのは、NEWLOCALに新たに加わった伊藤純也さん。都市をフィールドに学び、地域おこし協力隊として実践を重ね、マッキンゼーで経営の視点を磨いてきた伊藤さんが、いま「まちを経営する」という挑戦にどう向き合おうとしているのか。その背景にある思いを聞きました。
伊藤 純也
東京都出身。大学院で都市計画を学び、在学中に地域おこし協力隊として富士吉田市でのまちづくりを経験。大学院修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、公共性の高い領域を中心に経営戦略に携わる。2026年よりNEWLOCALに参画。現在は地域の実装現場で、「まちを経営する」という挑戦に向き合っている。
目次
- 原点は、生まれ育った「都市」への関心
- ローカルの現場で感じた「変わる実感」
- 「経営」を学ぶために、マッキンゼーへ
- スケールの大きな仕事と、自分の実感との距離
- 「関心ど真ん中」の出会い
- 迷い切った末に選んだ、NEWLOCALというフィールド
- 「まちを経営する」現場へ
- 地域に行くと、世界は広がる
原点は、生まれ育った「都市」への関心
ーまずは、これまでの歩みを聞かせてもらえますか?
僕は生まれも育ちも東京で、通っていた高校は新宿駅から徒歩5分。いわゆる「シティボーイ」として育ってきました。
大学に進学してから「都市社会学」という学問分野に出会い、自分は都市やまちに関心があるんだな、と改めて感じるようになりました。思い返すと、子どもの頃から自分が暮らしてきた「都市」への関心はずっとあったし、「シムシティ」という都市経営シミュレーションゲームもすごく好きだったんです。
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卒業論文では、東京湾岸の再開発地区を対象に、住民に寄り添いながらどんなまちづくりができるかを考えていました。最初から「地域」に強い興味があったわけではなく、自分が生まれ育った「都市」への関心が出発点だった気がします。
ただ、都市を「研究する」というよりも、実際にまちの中に入って、自分で手を動かしてみたいという気持ちが、だんだん強くなっていったんです。そこで、都市計画系の大学院に進学し、地域でのまちづくりプロジェクトなどに関わるようになりました。
大学院2年生のときには、その流れで地域おこし協力隊として山梨県の富士吉田市に移住しました。所属していた研究室が富士吉田でまちづくりのプロジェクトを行っていて、その延長線上で、実際に現地に住みながら活動することになったんです。授業はリモートが中心だったので、休学はせず、生活拠点だけを富士吉田に移しました。
ローカルの現場で感じた「変わる実感」
ー富士吉田では、どんな日々を過ごしていたんですか?
具体的に取り組んでいたことは、大きく二つあります。
一つは、オーバーツーリズムに悩む街における、暮らしと観光を両立するためのまちづくりです。特定のスポットに人が集中して、そこだけ見て帰ってしまう状況があったので、まちの中を「歩いて回ってもらう」ための仕掛けをいくつも試していました。
たとえば、通りの動線を整理してサインを分かりやすく置いたり、道路を歩行者が通りやすいようにして、露店やキッチンカーを出してみたり。歩きやすさや居心地を意識しながら、ハード面も含めて、より良いまちのあり方を模索していました。
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もう一つは、大学と地域をつなぐ活動です。富士吉田には大学がないため、東京などから学生を呼び込み、地域の人と学生をつなぐコーディネーターのような役割を担っていました。
実際、自分の住んでいた家も、半分は学生拠点のような形で使っていて。学生が集まって話したり、地域の人と顔を合わせたりする場として使っていました。ワークショップを開いたり、一緒にまちを歩きながらアイデアを出したりすることもありました。
こうした活動を続けるなかで、「ローカルって、こんなに面白いんだ」と感じるようになったんです。自分たちのちょっとした工夫で、人の流れやまちの空気が変わっていく。気づけば、どんどんローカルの沼にはまっていきました。
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「経営」を学ぶために、マッキンゼーへ
ー富士吉田での経験を聞いていると、そのままローカルの道に進みそうな印象も受けました。それでも、最初のキャリアとしてマッキンゼーを選んだのはなぜだったんですか?
地域に残ることも少しは考えました。ただ、そのままローカルに進むというよりも、いったん外の世界に出てみたい、という気持ちのほうが強かったんです。
「もっと広い視野で世界を見てみたい」という思いもありましたし、学生時代に留学を経験していたこともあって、グローバルな環境で働くことには以前から関心がありました。
それと同時に、特定の分野に絞るよりも、できるだけ多様な業界に触れながら、経営の視点で物事を考える力を身につけたいと思っていました。
僕がやりたいまちづくりは、「まち」というスケールで、都市や地域をどう持続させていくかを考えることなんですよね。感覚としては、「都市経営」という言葉が一番近いかなと思っています。
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地域での実践を通して、現場のおもしろさや手応えは強く感じていましたが、「これをどう経営的な目線で継続させていくか」「構造としてどう成り立たせるか」という部分には、まだ十分に向き合えていない感覚もありました。
そういう意味で、若い年齢から経営に真正面から向き合える場所として、マッキンゼーはすごく魅力的だったんです。
スケールの大きな仕事と、自分の実感との距離
ーマッキンゼーでは、どんな仕事をしていたんですか?
担当していたのは、エネルギーや資源、モビリティなど、インフラに近い領域のプロジェクトが中心でした。プロジェクトは基本的に自分で希望を出せるのですが、もともと公共性の高い分野に関心があったこともあり、自然とそうした案件を選ぶことが多かったですね。
働き方としては、基本的に一度に関わるプロジェクトは一つだけ。3〜4か月ほど一つの案件に集中的に取り組み、終わったら次のプロジェクトへ移る、というサイクルでした。
プロジェクト自体は1〜2年単位で続くことが多いのですが、その中でメンバーが入れ替わりながら進んでいきます。短期間で成果を出すことが求められる環境で、毎回まったく違う業界やテーマに向き合う。そういう日々を過ごしていました。
ーそんなマッキンゼーを離れることにしたのには、どういう心境の変化があったんでしょう?
マッキンゼーは、本当に刺激的な環境でした。関わるクライアントもプロジェクトごとにまったく違うので、そのたびに新しい業界を一から勉強する必要がある。すごく大変ではありますが、その分、理解は一気に深まりますし、得られる経験はとても大きかったと思います。
ただ、働くなかで、少しずつ“手触り感のなさ”を感じるようにもなっていきました。
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大学院時代の活動では、自分が動いた分だけ、まちの風景や人の関係性が変わっていく実感がありました。日々細かくPDCAを回すなかで、目に見える形で変化が生まれる。そのプロセスが、自分にとってはすごく楽しかったんだと思います。
その感覚と比べると、マッキンゼーで扱う仕事は、どうしてもスケールが大きい。数千万円、時には億単位のインパクトを生むプロジェクトに関わることもありますし、それ自体は間違いなく意義のある仕事です。ただ、「自分が動かしたんだ」という実感が得られるかというと、少し距離があるようにも感じていました。
コンサルタントはあくまで裏方で、最終的な意思決定をする立場ではありません。クライアントの課題解決に本気で向き合いながらも、自分は一歩引いた場所にいる。そこに、富士吉田での経験との違いを強く感じるようになっていった気がします。
「関心ど真ん中」の出会い
ーちょうど、ご自身の関心がもう一度まちづくりに向いてきていた頃に、NEWLOCAL代表の石田さんと出会ったんですよね。
はい。マッキンゼーの同期のつながりで紹介してもらいました。当時、同期が参加していた食事の場があって、そこから声をかけてもらったんです。
その同期が、僕が大学院時代にまちづくりをしていたことを知っていて、「もしかしたら話が合うかもしれない」と思ったみたいで。
そこでは、NEWLOCALについての話もありましたが、それ以上に、「一人ひとりが何をやりたいのか」を遼さんが丁寧に聞いてくれて、かなりフラットに会話をしたのを覚えています。
ーそのときすでに、ビビッときた感覚があったんですか?
そうですね。まず、自分の関心のど真ん中にあるテーマを、マッキンゼーにいた先輩が起業してやっている、という事実に衝撃を受けました。
それから、遼さんと会ってみて、すごく魅力的な人だなと思いました。エネルギッシュで前向きで、自分が描いているビジョンを「実現するんだ」という覚悟が伝わってくる。その本気度に触れて、「この人と一緒に働いてみたいな」と思った、というのは大きかったですね。
迷い切った末に選んだ、NEWLOCALというフィールド
ーそこから、すぐにNEWLOCALへの入社を決めたんでしょうか?
いえ、NEWLOCALは魅力的だなと思っていましたが、実は行政の仕事も含めて、最後まで悩みました。
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自分がやりたいのは、ひとつの建物やプロジェクトというよりも、もっと広い「まち」というスケールで考えること。その意味では、行政の仕事はすごく相性がいいとも感じていて、実際に真剣に選択肢として見ていました。
ただ、行政の場合は部署異動が多く、ひとつのテーマに腰を据えて関わり続けるのが
難しい側面もある。そこは、少し悩ましかったところです。
そんな中で、ある自治体が民間公募のポジションを募集していたんです。都市や地域でイノベーションを生み出すことを目的に、スタートアップの支援や、研究機関の技術をビジネスにつなげていく仕事です。
行政でありながら、関心のあるテーマに継続して向き合える点も含めて、かなり魅力的な選択肢だと感じていました。
ー最終的に、NEWLOCALを選んだ決め手はなんだったんでしょう?
まず大きかったのが、早い段階から事業を担う経験ができることです。
自分で事業を担い、日々PLを管理していく経験って、コンサルや行政ではなかなか得られないと思うんですよね。「なるべく早い時期からそうした経験を積んだほうが、実地で経営スキルを磨ける」という話を遼さんともしていて。その環境があることは、大きな魅力でした。
また、実際に入社を決めるまでの間も、遼さんが何度も親身に相談に乗ってくださって。話を重ねる中で、仕事の中身や会社の雰囲気が、かなり具体的にイメージできていました。
まったく未知の場所に飛び込むというよりも、「ここならやれそうだ」という感覚があったんです。その意味では、リスクは比較的小さいと感じていました。
あとは、民間のほうが自由度高く動けそうだ、という点も大きかったですね。
一方で、個別の事業だけでなく、もう少し広いスケールで「まち全体をどうしていくか」を考えられるのか、という点は少し気になっていました。
ただ、その点についても、遼さんと話す中で、地域全体に関わっていけるイメージが持てるようになって。「それなら、自分がやりたいこともできそうだな」と思えたんです。
これから関わる地域では、さまざまなプレイヤーと連携しながら、上流から携わっていける。それが、最終的な決め手になりました。
「まちを経営する」現場へ
ーNEWLOCALに入社されたばかりですが、今後のイメージについても聞かせてください。
NEWLOCALのスピード感って本当に早くて、日々が目まぐるしいんですね。なので、正直1年後の姿も想像できないくらいです(笑)。でも、未知数の未来に挑戦したいからこそNEWLOCALに入ったので、いまはとてもワクワクしています。
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これから立ち上げる新しい拠点では、まさにゼロから関われるので、地域やまちをどう捉えて、どんなビジョンを描くのか。その上で、どう事業に落としていくのか。そうした上流の部分から考えていく経験は、かなり積めそうだなと感じています。
また、“責任者見習い”のような立場で入ることになるので、拠点が軌道に乗ってきたら、数字を見ながら、経営的な判断も自分でしていくことになります。若いうちに、事業の数字や意思決定に向き合える経験は、なかなか得られないと思うので、そこもすごく貴重だなと思っています。
もう一つ楽しみにしているのが、いろいろなプレイヤーとの連携です。地域の中には、大企業をはじめ多様な関係者がいるので、そうした人たちと一緒に、どう地域を変えていくかを考えていく。そのプロセスは、かなりチャレンジングで、面白い経験になるんじゃないかなと感じています。
ー将来的に、起業したいという気持ちはあったりしますか?
正直に言うと、いまの時点では「起業したい」と強く思っているわけではないですね。ただ、NEWLOCALで事業を担う中で、結果的に、起業に必要なスキルや視点は身についていくと思います。
僕がやりたい「まちの経営」に携われるのであれば、どこで働くかはこだわりません。もし行政のほうがやりたいことを実現しやすいなら行政でもいいし、起業という形のほうが合っていれば、それもあり得ると思っています。
ー今は、手触り感のあるまちづくりに本気で向き合えるフィールドとして、NEWLOCALがいちばんしっくりきている、という感覚なんですね。
まさに、その通りですね。考えうる中では、いまの自分にとって、これ以上のポジションはないんじゃないかなと思っています。
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地域に行くと、世界は広がる
ー最後に、どんな人にNEWLOCALに来てほしいと思いますか?
正直、最初から「地域に強い関心がある人」じゃなくてもいいと思っています。
むしろ、これまでコンサルや大企業で働いてきて、自分の仕事が社会にどう影響しているのか、どこか実感しきれなかった人。培ってきたスキルや経験を、もう少し目に見える形で使ってみたいと思っている人には、すごく合う場所なんじゃないかなと思います。
地域の仕事って、課題が本当に目の前にあるんですよね。だから、自分たちのアクションが、そのまま変化として返ってくる。その感覚はきっと地域でしか得られないし、やりがいに直結する部分だと感じます。
もう一つ伝えたいのは、地域に行くことで、世界が狭くなるわけじゃない、ということです。
僕自身、最初にローカルに入ったときに感じたのは、「世界が一気に広がった」という感覚でした。これまで自分が知っていた世界は、実はすごく限られていたんだな、と。
地域に入ると、全国に仲間ができるし、思いもしなかった人や場所につながっていく。NEWLOCALは特に、いろいろな地域やプレイヤーと関わる機会があるので、その広がりはさらに大きいと思います。
自分の足で動いて、考えて、答えのない問いに向き合うことを面白がれる人。そんな人にとって、きっとNEWLOCALは、水を得た魚のようになれる場所なんじゃないかなと思います。
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取材・文 塩冶恵子