記事を読んでくださってありがとうございます。APEXグループの多賀です!
このシリーズでは、私たちAPEXグループが活動する業界がどのようなところなのか、またAPEXグループがどのような会社なのかを解説していきたいと思います。
さて、前回の記事「業界紹介①|サプライチェーンから読む、旅行業界ってどんな業界?」では旅行業界におけるサプライチェーンを見てきました。
今回の記事では旅行業界内ではどのような業界競争が繰り広げられているのか、またどのような経営戦略が取られ、企業が成長しているのかを解説してみたいと思います。
目次
旅行会社の業界競争①:垂直統合
APEXグループの「前方統合」戦略
JTB・HISの「後方統合」戦略
◯ HISに見る垂直統合のユニークな事例:ハウステンボスと変なホテル
なぜ、垂直統合が業界競争に影響するのか?
まとめ|「どこまで自社で担うか」が旅行会社の勝敗を分ける
次回予告|業界紹介③|旅行業界の「水平展開」競争
APEXについてもっと知りたい方へ
旅行会社の業界競争①:垂直統合
旅行業界には、サプライチェーンの中に「小売」「卸売」「地上手配」「サービス提供」といった複数の階層が存在します。
その中で、企業が自社の立ち位置よりも上流または下流の機能を取り込んでいく経営戦略を「垂直統合(Vertical Integration)」と呼びます。
垂直統合には大きく分けて2つの方向があります:
- 🔵 前方統合(Forward Integration)
→ 自社よりも「下流」の機能(販売・営業)を取り込む - 🔴 後方統合(Backward Integration)
→ 自社よりも「上流」の機能(手配・仕入)を取り込む
このように、旅行業界のプレイヤーは「誰がどこまでを担うか」をめぐって、サプライチェーン上で競争・再編を繰り返しています。
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APEXグループの「前方統合」戦略
私たちAPEXグループは、創業者の松岡修がタイのバンコクで1970年代、ランドオペレーター(地上手配会社)としてスタートしました。
現地での手配力とネットワークを強みに、旅行会社からの依頼に応じてツアーや送迎、ガイドなどを手配しています。一方でかつては日本国内における営業活動は、セールスレップと呼ばれる営業代行によって実施されていました。
しかし事業が拡大し、取り扱いツアーの質と量が向上する中で、販売や商品造成の部分にも自社で関与した方が柔軟性・利益率ともに高まると判断。そこで日本に1975年に「エーペックスインターナショナル株式会社」を設立し、ホールセラー(卸売)機能を自社内に統合するという前方統合を行いました。
この前方統合によって、以下のような効果を得られるようになりました:
- 商品造成から販売先への提案まで、一貫した営業活動が可能に
- 外注による営業マージンが不要に
- 顧客のニーズに対し、よりスピーディーかつ柔軟な対応が可能に
私たちのように、ランドオペレーターからホールセラーへと事業領域を拡大するケースは、特に新興国発の現地手配会社に多く見られる動きであり、競合のワールドコンパス、SAIトラベルなども同様な経営戦略を取っている会社です。
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JTB・HISの「後方統合」戦略
一方、日本の大手旅行会社JTBやHISは、かつては主にリテーラー(小売)およびホールセラー(卸売)としての立場を担っていました。
しかし、顧客に安定したサービスを提供するためには、現地手配の品質や対応力も重要になると考え、バンコクやホノルル、シンガポールなど、多くの日本人消費者が訪れる地域に自社のランドオペレーター(現地法人)を設立しました。
これは、自社でサービスの供給元を確保し、手配業務を内製化する後方統合にあたります。
後方統合のメリットは以下の通りです:
- 現地での手配品質をコントロールできる
- 突発的なトラブルにも即応可能
- 中間マージンを削減し、価格競争力を強化
- サービスの一貫性を保ち、ブランド価値を維持できる
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◯ HISに見る垂直統合のユニークな事例:ハウステンボスと変なホテル
旅行会社HISは、自社でサービス提供の現場そのものを所有・運営するという、ユニークな垂直統合を進めて成功を築いてきました。
代表的な例が、長崎県にあるテーマパーク「ハウステンボス」と、そこにホテルブランド「変なホテル」の運営です。
ハウステンボスは、HISが経営再建に関わるかたちで買収し、観光体験そのものを「旅行商品」に内包する形で事業化しました。また、「変なホテル」ではロボットによる接客や自動チェックインなどを導入し、旅行者にとって話題性と利便性を兼ね備えた宿泊体験を提供しています。
このような取り組みは、HISにとって以下のような垂直統合のメリットをもたらしています:
- 自社でサービス供給源を持つことで、旅行商品の独自性を確保
- テーマパーク・宿泊・交通などをパッケージ化した高付加価値商品の造成が可能
- サービス体験全体を自社で設計できるため、ブランディングが一貫
- 他の旅行会社には真似できない"目的地そのもの”の保有
つまり、HISは単に旅行を“手配する”だけでなく、旅行の“目的地”や“宿泊体験”そのものを事業の一部に取り込むことで、他社との差別化を図ってきたのです。
このように、「垂直統合」はJTBのような品質管理型の手配網強化だけでなく、HISのように観光資源そのものを自社化する戦略としても展開されています。
なぜ、垂直統合が業界競争に影響するのか?
垂直統合が進むことで、旅行会社は他社への依存度を減らし、より高い自由度を持って商品・サービスを提供できるようになります。
同時に、業界内に「仕入先・供給先でもあり、競争相手でもある」という複雑な関係が生まれることになりました。
たとえば、JTBは自社の現地法人の無い国においてはAPEXと協力先であるのに対し、JTBの現地法人がある国においてはAPEXと競合として向き合わなければならないことが発生しています。
旅行業界では、サービスの上流から下流までをどこまで自社で担うのかという戦略が、企業の競争力に直結します。
「垂直統合」は単なる経営手法ではなく、業界内のパワーバランスや再編に大きな影響を与える動きです。
まとめ|「どこまで自社で担うか」が旅行会社の勝敗を分ける
ここまで見てきたように、旅行業界では
- 小売・卸売・現地手配・サービス提供というサプライチェーンの階層があり
- その階層をまたいで機能を取り込んでいく垂直統合(前方統合/後方統合)が
各社の競争力やポジションを大きく左右しています。
APEXグループのように、現地手配から卸売へと機能を広げる前方統合もあれば、JTB・HISのように、小売から現地手配・サービス提供の領域に踏み込む後方統合もあります。
いずれのケースでも共通しているのは、「サプライチェーンの中で、どこまでを自分たちの守備範囲にするのか」という意思決定が、
- 収益構造(どこでどれだけ利益を取るか)
- ブランド戦略(どこまで自社の名の下でサービスをコントロールするか)
- パートナーとの関係性(協業と競合が入り混じる複雑なネットワーク)
に直結しているということです。
そしてその結果としてAPEXとJTBのように、ある国では「パートナー」、別の国では「競合」というような、ユニークな関係性が業界内に生まれています。
旅行はお客様から見ると一つの「体験」ですが、その裏側ではどこを自社で担い、どこをパートナーに委ねるのかという経営レベルの判断が、日々積み重ねられているのです。
次回予告|業界紹介③|旅行業界の「水平展開」競争
今回のテーマは「垂直統合」でしたが、旅行会社の競争戦略はそれだけではありません。
次回の【業界紹介③|旅行業界の「水平展開」競争】では、
- 新しいエリアや国への進出
- 企業研修・教育旅行・インセンティブ旅行など、取り扱うジャンルの拡大
- 旅行と親和性の高い周辺事業(教育、地域開発、MICE、スタートアップ支援 など)への展開
といった、事業領域を“横に広げていく”競争にフォーカスしてお話しする予定です。
なぜ多くの旅行会社が、単なる観光手配に留まらず、教育やビジネス、地域づくりといった領域に踏み出しているのか。東南アジアを得意とするAPEXグループが、どのような「水平展開」を行っているのか。具体的な事例を交えながら、旅行会社の第二の顔とも言える事業展開について解説していきますので、ぜひ次回もご覧ください。
APEXについてもっと知りたい方へ
APEXグループは、東南アジアを中心に
- 現地手配(ランドオペレーター)
- 卸売(ホールセール)
という両方の顔を持ちながら、
教育旅行・企業研修・視察旅行・一般観光など、さまざまな「旅のかたち」を支えています。
サプライチェーンや経営戦略の話は、一見すると少し難しく聞こえるかもしれません。
しかし現場レベルで言い換えると、「どんなパートナーと組み、どんな価値をお客様に届けるかを考え続ける仕事」が私たちの仕事だとも言えます。
- 東南アジアを舞台に、人や社会の変化につながる“旅”をつくりたい
- 業界の仕組みや戦略にも興味を持ちつつ、現場で汗をかく仕事がしたい
- 旅行=観光にとどまらない、新しいツアーやプロジェクトに関わってみたい
そんな思いを少しでも持っている方は、ぜひAPEXグループの他の記事や募集ページも覗いてみてください。