SEVENRICH GROUP(以下、セブンリッチ)では4月の新入社員の入社に向け、着々と受け入れの準備を進めています。
セブンリッチでは、新入社員が自発的に行動し、成長できるように育成プログラムを用意しています。今回の記事でご紹介するメンター制度もそのひとつです。
メンター制度は、経験や知識のある先輩社員(メンター)が、新入社員や後輩を継続的にサポート・指導する仕組みのこと。
セブンリッチのメンター制度では、メンターがただ答えを与えるのではなく、対話や問いかけを通じて新入社員自身が課題に気づき、改善していくプロセスを重視しています。
メンターに選出されるのは、仕事やキャリアの手本となるような、第一線で活躍する社員たち。配属が想定される、株式会社SEVENRICH Accounting、株式会社BPIO、株式会社BOXなどの事業部から選ばれます。
メンター陣もまた、自身の新入社員への向き合い方や対話スキルの向上など、人を育てるプロとして学びを深めています。その一環として実施したのが「メンター向けコーチング研修」です。
新入社員の主体性を育み、自発的な成長を促すためには、どのような対話が必要なのか。思考と行動を引き出すスキルの習得と向上に励む、メンター陣の準備の裏側をお伝えします。
2日間にわたるメンター向けコーチング研修
研修は2日間にわたる、計11時間の濃密なプログラム。約20名のメンターが参加しました。
講師紹介 THE COACHとは?
今回のメンター研修にお迎えしたのは、THE COACHでプロコーチを務める早川滋(はやかわ しげる)さんと、コーチングスクールの責任者として活躍する武智美里(たけち みり)さん。
2019年にセブンリッチよりローンチしたTHE COACHは、「コーチングマインドを社会に広げる」をミッションに、コーチングスクール事業(THE COACH Integration Coaching Program 以下ICP)、コーチングプラットフォーム(THE COACH Meet)、法人向けの組織開発事業(THE COACH for Business)を展開。
特にコーチングスクール「THE COACH ICP」は、国際コーチング連盟(ICF)認定を受けた国際基準のプログラムを提供しており、約6年間で20代から60代まで1000名以上が受講しています。
講師陣は全員が国際コーチング連盟(ICF)の認定資格プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)を取得。PCC保持者は日本に574名(2024年12月時点)のみ。
早川滋(はやかわ しげる):2018年に株式会社SEVENRICH Accounting入社、ウェルネス事業部を経て2024年プロコーチとして独立。学びの中でコーチとしての在り方が自分の人生の目指す方向だと感じるようになり、プロコーチのキャリアを本格的にスタートする。心だけでなく身体との繋がり(心身一如)を大切に「人と組織がヘルシーにあるためには」を探究中。
【保有資格】
THE COACH ICP 認定資格 CICP™
国際コーチング連盟認定 Professional Certified Coach(PCC)
武智美里(たけち みり):看護師として大学病院の周産期医療に従事。約2,000組の母子のケアを行う中で、価値観の相違による衝突や、動けるのに動けない人の認知に触れ、認知を学びたいと思うようになり、THE COACHでコーチングを学ぶ。2023年3月にコーチとして独立。現在は、THE COACHの運営するスクールの責任者を担う。有償クライアントは累計70名、有償セッション数は1,500時間にものぼる。
【保有資格】
THE COACH ICP 認定資格 CICP™
国際コーチング連盟認定 Professional Certified Coach(PCC)
「THE COACH」独自のコーチングプログラム
今回の研修では同社が独自に体系化されたコーチングモデルをもとに、プログラムを設計。
Day1はコーチングに対する理解やメンター自身の内面の深堀りを行い、基本スキルをインプット。Day2では学んだスキルを実践していきます。
以下では、プログラムの内容やワークの様子を一部ご紹介します。
DAY1
メンターとは?役割とマインドを学ぶ
DAY1で学んだのは、「メンターとしてのあり方」。テクニック以前の、マインドのお話です。
コーチングマインドを用いてメンターとして関わる上で大切なのは、「対話を通じて新入社員自身が無意識下にある自分に気づけるよう、伴走すること」だといいます。
私たちが普段、自分で意識できている思考は、実は全体のわずか数パーセントにすぎず、残りの大部分は、自分でも気づいていない無意識の領域にあります。
仕事での悩みや、一歩踏み出せない原因は、この無意識下にある「大切にしている価値観」や「思い込み」に隠れていることが少なくありません。メンターと対話することで、新入社員自身が無意識にある「価値観」に気づき、自発的な成長を促すことが狙いです。
このとき重要となるのが、新入社員の可能性を誰よりも信じ抜くマインド。
つい自分の経験から「正解」を教えたくなってしまうのが人間ですが、それでは本人が自ら気づき、成長する機会を奪いかねません。だからこそ、自分の色眼鏡を一度外し、相手の内側にある自ら答えを見つける力を信じて待つ姿勢を徹底します。
「新入社員は自分の力でどこまでも成長できる」
メンターは、そんな揺るぎない確信を持って新入社員の隣に立ち、すべてを個性として受け止め、本人が気づいていない強みに光を当て続ける。
その一貫した眼差しこそが、新入社員が安心して自走し、自身の枠を超えていくための最大の原動力になるのだということを深く刻みました。
認識のメカニズム:自身のバイアスを自覚する
マインド面では、専門性や経験があるからこそ陥りやすい「認知バイアス(思考の偏り)」についても学びを深めました。
医療現場の実験で、特定の異常を探すことに集中している検査技師が、画面に映り込んだゴリラの絵の存在に全く気づかなかったという有名な例があります。
▲右上にゴリラ(赤丸)
これと同様に、メンターも「こうあるべき」という思い込みや過去の成功体験に囚われすぎると、目の前の新入社員が見せている大切な変化や、別の可能性を見落としてしまう危険性があります。
思い込みを自覚し、固定観念を外して向き合うこと。それが、相手の多様な側面を正しく理解し、本来持っている力を引き出すための第一歩になります。
心に好奇心を向ける
後半では、相手の成長を促すための具体的な関わり方として、「心に好奇心を向ける」ことの重要性を学びました。
通常の会話では「いつ、どこで、何が起きたのか」という状況の把握に意識が向きがちです。しかし、メンターとしての対話では、その出来事の裏側にある「その時、どんな気持ちだったのか」「そこにはどんな願いがあるのか」という本人の内面へ好奇心を向けます。
例えば、相手が「大変でした」と言ったとき、「あなたにとってその大変さは具体的にどんな感覚ですか?」と一歩踏み込んで問いかける。
ここで、自分のこれまでの経験に基づいた「正解」を見ようとすると、相手の心に好奇心を向けることはできません。
認知バイアス、つまり「自分の知っている答え(眼鏡)」を一度外して、まっさらな状態で相手を見つめること。そうした好奇心から生まれた問いは、単なる情報整理にとどまらず、気づきにつながる問いとなるのです。本人は自分が大切にしている価値観に改めて気づき、自発的な行動の変化へとつながります。
DAY2
DAY1で学んだメンターのあり方をベースに、DAY2では実践的なスキル習得へと移っていきます。中心となったのは、コーチングの真髄とも言える「傾聴」です。
相手をまるごと受け止める「受容的傾聴」
コーチングにおける傾聴は、単に話を聞くだけではありません。「自分は大切にされている」と相手が実感できるほど深く聴く「受容的傾聴」では、相手が自分の言葉を自分で聞き、新たな気づきを得る状態を目指します。これは、オートクライン効果とも呼ばれます。
講師によるデモンストレーションを通じて「コーチングスキルを用いた傾聴」と「コーチング的ではない傾聴」の違いを体感しました。
前者の傾聴は、相手に意識が向いている状態。相手の心に純粋な好奇心を向け、耳だけでなく五感すべてを使って聴く姿勢です。表情や声のトーン、呼吸のリズムまでも相手に合わせ、相手が考えにふけっている「豊かな沈黙」を安易な問いかけで邪魔せず、本人の答えが出るまでじっと待ちます。
この深い受け入れがあるからこそ、新入社員は「本音で自分と向き合っても大丈夫だ」という安心感を持つことができます。
一方で後者の傾聴は、メンター自身に意識が向いている状態。相手のサインを見落としてPCに目を向けたまま話を聞いたり、沈黙の気まずさに耐えられず質問を投げたりしてしまいます。また、相手が話している最中に「それは〇〇が原因だね」「私ならこうするよ」と自分の頭で解決策を出してしまうことも、相手が自走する機会を止めてしまう要因になります。
対話のプロとして、いかに自分の都合を脇に置き、相手の世界に没入できるか。その難しさと重要性を、実演を通じて深く理解しました。
鏡のように事実を返す「反映的傾聴」
傾聴にはもうひとつ、メンターが鏡のような存在になり、本人の表情や言葉の癖を率直にフィードバックする「反映的傾聴」があります。
これは、誰が見ても間違いない事実を、気づいた瞬間に鮮度を保ったまま伝える手法です。
ここでのポイントは解釈ではなく、ありのままを伝えること。例えば、相手が溜息をついた際に、「今、少しふぅと息を吐かれましたね」と事実を伝える。
「疲れているみたいですね」のような解釈を伝えてしまうと、無意識にメンターの言葉に引っ張られてしまいます。
この傾聴によって、新入社員は自分でも無意識だった感情の変化や大切にしている価値観に自ら気づくことができるようになり、深い自己理解を促すことができます。
実践と振り返り
ここまでのポイントを意識して、ペアワークを行うメンター陣。まずはやってみるマインドで試し、学びを深めます。
相手を直視し、五感を使って受容的傾聴をしながら、気づいたタイミングで率直に、そして簡潔に反映的傾聴で伝える。そして、心に好奇心を向けた問いかけも行い、相手の気づきを促します。
▲楽しみながら、実践と通してスキルを習得するメンター陣
ワーク後には、気づいたこと、感じたことを自由に場に出して振り返る「全体シェア」。そこでは、沈黙をじっくり待つことでもたらされる効果の大きさや、解釈を入れずありのままを受け取ることの難しさなど、実践したからこそ得られた実感が次々と共有されました。
また、傾聴をしてもらう役からも気づきが。
「ただ話を聴いてもらっただけなのに、不思議と『絶対にやろう』と自分の中で答えが固まりました。強制されたわけでも、アドバイスをもらったわけでもないのに、自然とやる気が湧いてくる。とても新鮮な体験でした」
この変化について、講師の早川氏はこう解説します。
「一言も強制されていないのに、自分自身と向き合うことで『やろう』と決まる。まさにコーチングが機能している状態です。 メンターが答えを与えてしまうと、それは本人の答えではなくなってしまう。しかし、答えは本人の内側から生まれるもの。メンターがただ事実を反映して、相手が自分で自分の声を聴くことで、『あ、私これやりたいんだ』と内側から答えが出てくるんですよね。これが傾聴の効果です」
本人の答えが出るまで聴き、気づきを得られるよう伴走する。そんなメンター像が、11時間の研修を経て、より鮮明に形作られていきました。
研修後の参加者のコメント
研修を終えたメンターからは、「2日間で自己の考えが整理された」「ありたい姿が明確になった」など、変化を実感したという声が多く寄せられました。
一部コメントを紹介します。
「受講前は、メンターの自分が間違った対応をしてしまうことで、新卒社員の人生を変えてしまったり、変な道に進ませてしまったらどうしようという、強いプレッシャーを感じていました。内省や傾聴のワークを通して、『対応の仕方に100%の正解はない。目の前の人に集中し、実践と気づきを積み重ねることが大切なんだ』と思えるようになり、やるべきことがクリアになりました。受けてよかったです」(株式会社BPIO Sさん)
「自分に多くの顔があるように、相手が見せてくれている顔も一面に過ぎないということにハッとしました。もっと多様な面があるという前提で接していきたいですね。」株式会社BOX Aさん
「事業部としてコーチングを研修という形でしっかり受けられる環境がすごく素敵で、ありがたいと感じました。本質的にやりたいことを引き出すための、問いの設定など、どうやったらいいかわからなかった部分を具体的なスキルとして学べる時間になりました。とても楽しかったです」(株式会社BPIO Hさん)
講師のコメント
今回のコーチング研修の講師を務めたおふたりにもお話を伺いました。
早川さん:
「新入社員にメンターをつけるだけでなく、そのメンターのための研修までしっかり準備できるのは、貴重で素晴らしい取り組み。2日間にわたって実施した研修でしたが、DAY2には点と点が線で結ばれるように、受講者の中で腑に落ちている様子が見受けられました。行動のきっかけは見出してもらえたと思うので、ここからぜひ一歩踏み出してみてほしいですね。」
武智さん:
「参加者が、「メンター×新入社員」という役割や肩書を越え、目の前の人間の人生に、ひとりの人間として向き合っていく姿勢が見えてきたのがとても良かったです。また、メンター自身が自分の強みや弱みに気づいていくプロセスも素敵でした。自己理解が深まることで普段の業務や1on1にも活かしやすくなるはずです」
おわりに
セブンリッチでは、新入社員にメンターをつけるだけでなく、メンター自身が新入社員にどう深く関わるかを学べる環境づくりを大切にし、今後も研修を実施していきます。
新しい仲間が加わる4月に向け、目の前の人を信じ、その可能性をどこまでも引き出していく。そんな確固たるマインドを宿したメンター陣が、新入社員の挑戦を力強く支え、一人ひとりの確かな成長に真摯に向き合っていきます。