今回は、2025年11月にグリッジにジョインしたハンナさん(Hanna Szabo/東京在住・ハンガリー出身)に話を伺いました。
ハンガリーで生まれ育ち、日本・オランダ・ハンガリー・ドイツと様々な国を渡り歩き、10年近く”SNS×文化"の研究を続けてきたハンナさん。
2025年7月、日本での就職を目指して東京に移住。J-POPが好きで、日本のアーティストを世界に届けたい——そんな想いでグリッジと出会い、現在は海外ファンダムの調査を担当しています。
5ヶ国語を操り、研究者の視点でSNSを見つめてきたハンナさんに、日本の文化との出会いから、これまでのキャリア、そしてグリッジでの挑戦について話してもらいました。
名古屋でのホームステイから始まった、日本との出会い。
▍まずはハンナさんのご出身と、日本のカルチャーに興味を持ったきっかけを教えてください。
ハンガリーで生まれ育って、特に大学以降はハンガリー以外の国で過ごすことが多かったです。
具体的には、大学はオランダで、大学院はハンガリーに戻っていますが、その後の博士課程はドイツ、そして去年から東京にいます。
日本のカルチャーとの最初の出会いは、15歳の時のホームステイでした。
両親が「海外を見てきてほしい」という気持ちが強くて、小学生の頃から「大きくなったら留学してね」とずっと言われて育ちました。
そして小学校6年生の時、友達が夏休みに参加していたグローバルキャンプの話を母が聞いて、私も参加することになったんです。
最初はスウェーデンに行く予定だったのですが、それがキャンセルになってしまって、「代わりに日本はどう?」と提案をされました。
ただ、日本のことは本当に何も知りませんでした。ポケモンとセーラームーンをなんとなく知っているぐらいで(笑)
それでも「留学に行きたい」という気持ちが強かったので、日本に行くことにしました。
▍偶然、日本に行くことになったんですね。
そうなんです。
実は留学をする前の年に日本人の同い年の女の子がうちにホームステイに来てくれていたこともあり、今度は私が1ヶ月間、彼女の家にホームステイをすることになり、名古屋に行きました。
その友達がアニメと漫画のオタクで、彼女の家で「花より男子」を見せてもらったんですね。
ドラマの主題歌を歌っていた「嵐」がミュージックステーションで曲を披露していて、それを見てJ-POPが好きになりました。
友達と振り付けまで一緒に覚えて、踊ったりしていました(笑)
そこから嵐にハマって、他のJ-POPもどんどん聴くようになりました。
▍その翌年には、広島に1年間の留学もされているんですよね。
名古屋での1ヶ月がすごく楽しかったので、「もう一度日本に住んでみたい」という気持ちが強くなって、16歳の時に広島の高校に1年間留学しました。
語学学校などではなく、日本の普通の高校に通っていたので日本語の勉強は大変でしたね。
▍日本語はどうやって身につけられたのですか?
広島に行った時点では、本当に自己紹介しかできないレベルでした。
なので、日本に来てからとにかく毎日必死に勉強しました。
単語や漢字などを覚えながら学校でも日本語で積極的にコミュニケーションを取りました。
大変でしたが、1年間で日本語能力試験のN2を取ることができました。
オランダ、ハンガリー、ドイツ。研究者としてSNSを見てきた10年。
▍高校卒業後は、オランダのユトレヒト大学に進学されていますよね。日本の大学に行こうとは思わなかったのですか?
実は、日本の大学に行きたくて、文部科学省の奨学金試験を2回受けたんです。ただ、ハンガリーからの推薦枠は1人しかなくて、どちらも通りませんでした。
海外に行きたい気持ちは変わらなかったので、奨学金を出してくれるオランダの大学に進学をすることにしました。
ユトレヒト大学ではリベラルアーツを学びながら、政治、メディア、文化を専攻していました。
▍そういったテーマを専攻したのはなぜだったのですか?
まず10歳の頃からずっとポップカルチャーに興味がありました。
10代の頃はイギリスのあるボーイズグループの大ファンで、HTMLを独学で覚えてファンページを作ったりするほどでした。
なので、大学でもポップカルチャーに関することを学びたい、研究したいと思っていましたが、ポップカルチャーという専攻はありません。
ただ、音楽などのポップカルチャーは「文化」であり、政治や社会と結びつけて考えることができます。
当時はそこまで言語化していたわけではありませんが、自分の関心のあるポップカルチャーとアカデミックな領域の接点がそこだったので、そういった分野を専攻することにしたんだと思います。
▍その後も、ハンガリーの大学院、ドイツの博士課程と、アカデミックなキャリアが続いていきますが、一般企業への就職は考えなかったのですか?
ヨーロッパでは大学院に行くのが当たり前で、学士だけだと仕事が見つかりにくいので、大学院に行くのは一般的なことなんですね。
あとは、新しいことを学んだり、未知のことについて研究していくことが好きだからですね。
▍修士課程と博士課程では、どういったことを研究されていたのですか?
修士課程では「Instagramのティーンカルチャー」というテーマについて研究し、博士課程ではTikTokを対象に「Z世代のアイデンティティとSNSの関係」について研究していました。
どちらもInstagramとTikTokの人気が出てきたタイミングで研究を開始しており、同じような研究をしている人がほとんどいなかったこともあり、「これはチャンスだな」と思いました。
もちろん、自分自身がSNSというものに興味を持っていたということもありますが、研究もある意味ビジネスなので、まだ誰もやっていないテーマを見つけるのが大事なんです。
▍ハンナさんにとってSNSの面白さはどういった点にあるのですか?
みんな使っているのに、みんなが見ているものが全然違うところ、ですかね。私が見ているSNSと、皆さんが見ているSNSは、全く違います。
それはユーザー自身の動きだったり、アルゴリズムだったり、その時のトレンドだったり、いろいろな要素で決まっている。
そこにブランドやお金、政治まで絡んでくる。すごく複雑で、それがどう動いているのかを見るのが面白いんです。
ある意味、SNSを社会学的な視点で捉えているのだと思います。
▍研究者としてのキャリアを続けようとは思わなかったのですか?
もちろん研究者になりたいと思っていました。ただ、4年間研究してみて、アカデミックな世界はスピード感が少し遅いなと感じるようになったんです。
それに現実的な話として、研究者として一生仕事を続けていくのは本当に難しいです。
ポジションが少なくて、契約も不安定です。そういった背景もあって、企業で働くことも視野に入れ始めました。
"好き"を仕事にするために、再び日本へ。
▍アカデミックな話が続きましたが、10代の頃に嵐にハマってから、日本の音楽はずっと聴き続けているのですか?
研究が忙しい時期もあったので波はありますが、ずっと"推し活"は続けています。
博士課程の頃には今も大好きなあるグループのDiscordグループに入って、海外のファンとやり取りするようなこともありました。
そのファンダムの運営に日本語ができる人が少なかったこともあり、私が最新の情報を翻訳して発信したりするようになって、そこからコアメンバーになって、ファンアカウントの運用にも関わるようになりました。
博士2年の頃には、「アカデミック以外の領域で仕事をするなら、SNSとJ-POPに関するものが良いな」と、なんとなく思うようになっていました。
▍博士課程を終えた後は、コンサルティング会社で働かれていたんですね。
教授の紹介で、フリーランスとしてサイエンスコミュニケーションと呼ばれる領域のコンサルティングをやっていました。
アカデミックな研究を、一般の人にどう伝えるかがテーマで、SNSの運用やポッドキャストのプロデュースもやっていて、国際的なプロジェクトが多かったので、いろいろな国に行っていました。
▍そこから、日本に来るというタイミングがあったんですよね。
フリーランスだったこともあり時間や場所に縛られない働き方をしていたこともあり、3ヶ月間、日本に旅行で来たんです。
当時は研究で疲れていたこともあって、息抜きをしながら、今後のキャリアについても考えたいと思って日本に来ました。
▍そこで、音楽業界で働きたい気持ちが強くなったと。
そうなんです。
やっぱり音楽が好きで、日本の音楽業界で働けたらいいなと思うようになりました。
ただ、それがどのくらい現実的かは全然わかりませんでした。
とは言え、ヨーロッパからリモートで就職活動をするのも難しかったので、「まずは日本に行って就職活動をしよう」と決めました。
ビザを取る必要がありますが、一番簡単なのは日本語学校に入ることだったので、日本語学校に入学して、そこから就職活動を始めました。
「8ヶ月で仕事が見つからなかったら、ヨーロッパに戻ろう」と思って挑戦しました。
「ここしかない」と思った、グリッジとの出会い。
▍いろんな選択肢がある中で、グリッジに応募しようと思った決め手は何ですか?
まず音楽業界以外は見ていませんでした。
それに加えて、グリッジの行っているJ-POPのグローバル展開という事業であれば、グローバルな経験を多く積んできた経験を活かすことができるのではないかと思い、まさに自分が求めていた環境だと思いました。
自分自身が海外のJ-POPオタクだったので、そういったバックグラウンドを持つ人間であれば、絶対に何か貢献できるはずだと思って応募しました。
見た瞬間に「ここだ」と思いましたね。
▍現在、グリッジではどんな業務を担当されていますか?
海外ファンダムのリサーチをメインでやっています。
あるアーティストの海外のファンダムに入って、どんな会話が交わされているのか、どんなコンテンツがファンによって作られているのかなど、ポジティブ・ネガティブ両方の反応をピックアップして、分析しています。
ファンダムの全体像を見ることもあれば、新曲リリースや海外ツアーのタイミングに合わせてピンポイントで調査することもあります。
▍これまでの経験の中で、今の仕事に活きているなと感じることはどんなことがありますか?
約10年間ずっとZ世代の文化やポップカルチャーを研究してきたので、「どういった点に着目して、何を見るべきか」がわかっているのは大きいと思います。
あとは、自分自身の"推し活"の経験もそのまま繋がっています。
ファンダムの中に身を置いて、SNSの運営もしていたことから、どういった場所で何が語られているのか、何が刺さるのか、といったことが体感でわかります。
▍働き始めてから感じたギャップは何かありましたか?
ギャップではありませんが、ビジネスの世界で働くのが初めてなので、KPIやお金のことをちゃんと考えるのがすごく新鮮です。
これまでは研究者としてのキャリアでしたので、分かりやすく言うと公務員のような立場でしたので、KPIなどの数字面はあまり意識する必要がありませんでした。
難しい部分もありますが、同時にすごく勉強になっています。
▍研究とビジネスで、大きく違うと感じるのはどんなところですか?
一番違うのは"so what"の部分だと思います。
研究者としては、データを踏まえてその事象を理解したら「こういう背景があって、こういうことが起こっています」という結論を出せば終わりなんです。
しかし、グリッジでは「それを踏まえてどうするか」という次のステップまで自分たちで考え、クライアントに戦略的なアドバイスをしたり、グリッジ側で実行するといった具体的なアクションまでが必要になります。
そこはビジネスならではで、私にとってはこれまで経験してこなかった領域なので、毎日がとても新鮮です。
国が違えば、"推し方"も違う。世界を渡り歩いたからこそ見える視点。
▍様々な国で生活をし、様々な文化を知っていることも強みになっているのではないかと思います。ちなみに、ハンナさんは何ヶ国語を話されるんですか?
母語のハンガリー語、あとは英語、日本語、オランダ語、ドイツ語で、5ヶ国語です。
学校で6年間フランス語も勉強していたので、フランス語も読解くらいは可能です。
▍海外ファンダムの調査は、いろいろな言語で行うのですか?
そうですね。
プロジェクトによって、英語のコミュニティのこともあれば、南米のスペイン語、アジアの中国語や韓国語のコミュニティを見ることもあります。
中国語と韓国語は私は話せないので、他のメンバーと協力しながらやっています。
▍様々な国で暮らしてきた経験はどう活きていますか?
言語よりも、文化の違いを肌で知っていることが大きいと思います。
国が変われば、考え方やユーモアの出し方も全然違います。それを複数の国々で体験してきたので、「文化は違って当たり前」というのが自分の中にはあります。
なので、例えば、香港の文化に詳しくなくても、「多分こういう部分が違うだろうな」となんとなく想像がつきます。全然違う反応を見ても引っかからないというか、「なるほど、そういう見方もあるんだ」と受け止めることができます。
▍1つの国だけを知っていると、その国のものさしが世界の全てだと思ってしまう部分がありますよね。
そうですね。様々な世界を見ているから、違いがあることが当たり前になっているのだと思います。
特にSNSは、国ごとの文化差が出やすい世界なので、そこはこれまでの経験が活きているなと感じています。
「日本人と同じ」を目指さなくていい。「違い」が強みになる環境。
▍これから、グリッジで挑戦してみたいことは何かありますかね?
まだ入社して間もないので、わからないことがすごく多いので、まずは足元のことをちゃんとやっていきたい、というのが正直なところです。
その上で、クライアントとのフロントのやり取りやプレゼンテーションを頑張っていきたいと思っています。
研究者としてのキャリアが中心だった私からするとすごく難しい領域なのですが、そこができるようになりたいです。
▍最後に、グリッジに興味を持っている方、特に外国籍の方に向けてメッセージをお願いします。
日本に来た時、私は「できるだけ日本人と同じように働かないと、役に立たない」と思っていました。
日本語も、仕事の進め方も、全部日本人に合わせなければいけない、そういった考えを持っていました。
でも、グリッジに入って、その考えが変わりました。
自分が日本人じゃないこと、日本とは異なる文化で、違う言語で、違う経験をしてきたことが、むしろ強みになっていると今では感じています。
自分自身が経験してきたことや、育ってきた文化の「違い」を、そのまま強みにできる環境はそう多くないと思いますが、グリッジはまさにそういった環境です。
日本語も完璧じゃなくて大丈夫です。私はこの1年間でN1を取りましたが、それでも毎日困っています(笑)
でも、自分が言いたいこと、伝えたいことを、できるだけ自分の言葉で表現していけば、ちゃんと伝わります。
少なくともグリッジにいる皆さんは理解しようと耳を傾けてくれます。
ですので、日本の音楽業界に興味のある方、J-POPが大好きな方は、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。
いかがでしたでしょうか?
10代の頃に偶然出会った日本の音楽を、10年以上「推し活」と「研究」という視点で見てきた先で、それを仕事にする道を選んだハンナさん。ハンガリー、オランダ、ドイツと国を渡り歩きながら培ってきた研究者としての視点は、今、海外ファンダムの調査という新しい領域で活きています。
ハンナさんのインタビューを通して、
「日本のエンタメを世界に届ける仕事に興味がある」
「自分のバックグラウンドや語学力を活かして、日本の音楽業界で働きたい」
そう感じた方は、ぜひお気軽にエントリーいただければと思います。
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