「計算尺」や「ドラフター」という道具をご存じでしょうか。計算尺は関数電卓以前の計算の道具で長らく使われていた物、ドラフターは図面の作図に使われていた物です。それらは設計の電算化と共に姿を消しつつある道具ですが、古いビルなどはそれらの道具で設計されたと思います。
さて、今は設計にしても計算にしてもPCで行う時代。PCもソフトウェアも驚くほどに進化し、過去には考えられなかった様な建築物を造り出しています。
しかも最近ではデジタルツイン、BIMといった物まで出現。新時代の足音が聞こえて来そうです。
では、デジタルツインやBIMは建設にどの様な発展をもたらすのでしょうか。

デジタルツインとBIM

まずはデジタルツインとBIMについて復習しましょう。
デジタルツインは様々なデータをPC上で再現する技術です。建設に関して言えば、図面や3Dパースなど、様々なデータを同一の空間に再現して、完成後の状態の分析が可能となる技術と言うことが出来ます。
また、BIMは造る上での設備なども入力することが可能。企画から完成までのストーリーを高精度でシミュレーションが出来ます。
この背景にはコンピューターの進化、構造などの技術計算の進歩、コスト管理など、多くの工程管理の発展がありました。ですから、デジタルツインにしてもBIMにしても、これらの今までの技術や考え方の集大成の技術と言えるでしょう。

デジタルツインとBIMの建設業への影響

では、デジタルツインとBIMは建設業界にどの様な影響をもたらすのでしょうか。
そこで、従来の建設の流れを振り返ってみたいと思います。
従来の建設は様々な工程が統一化されていませんでした。設計は設計の業務、積算は積算の業務、施工管理は施工管理の業務…といった感じで、バラバラだった訳です。そのため、全体の流れに滞りが発生しやすかったとも言えます。
しかし、今後デジタルツインやBIMの導入が進めば、これらの仕事が川下で統一化…しかも半ば自動的に統一化されるため、工程の進み方がスムーズになるとも考えられえます。
また、設計や積算に修正が入ったとしても、非常にスムーズに修正出来る様になるこでしょう。非常に大きい変革です。

最近の建設の例

さて、ここで最近の建築の例を考えてみましょう。例えば木造のビル建築です。
昨今の木造建築は驚く程の進化を遂げたと言えるでしょう。木造建築と言えば、在来工法やツーバイフォーなどしか見あたら無かった物が、木造ラーメン構造が出現し、更には木造ビルまで実現しています。更には、木造高層ビルの計画もあるとか…まさに進化は止まらないとも言えます。
これらの実現のためには　コンピューターをはじめとした設計や解析の発展がありました。ただ、しばらく前まではこれらの工程は別々に進められ、最後の段階で融合され、具現化されたと言えます。
しかし、これからの世代、つまりデジタルツインやBIMが更に普及すれば、これらの新しい建築物もスピーディーに考えられると言えるでしょう。まさに画期的な跳躍です。

建材とデジタルツイン・BIM

建設には積算が欠かせません。そして今の積算は確かに精度が高いです。しかし、意外に抜けている部分もあるのでは…とも思われます。例えば建材の価格です。
確かに建材の価格と数量はカウントされていることでしょう。建材メーカーの出す見積価格を積み上げて、高精度に計算され、価格の合わない場合にはメーカーと交渉される…など。
しかし、それが建材メーカーを苦しめているかも知れない…と言った場合はどう考えられるでしょうか。仮に建材メーカーが倒産したならば、建材レベルでのメンテナンスが難しくなり、本来持ち得るだけのパフォーマンスが持てないかも知れません。
しかし、仮に建材メーカーの体力に合わせた発注や協力が出来ればどうでしょうか。…そこには「共存」が生まれるのです。
そして、その背景にはデジタルツインやBIMは大きな貢献を図れるとも考えられます。と言うのも、建材メーカーの投資費用…例えば工作機械や金型、あるいは人件費なども積算に加えられる様になるからです。それこそ建設現場と建材メーカーとの共存が成立すると言えるのです。
この動きは楽しみです。と言うのも、これは社会への貢献度のアップだからと言えるからです。デジタルツイン、BIM、これらは建設を通して、社会に変革をもたらすかも知れません。面白い未来が待っているのです。

まとめ

デジタルツインとBIM、そして建設との関係を考えてみました。今の技術が面白い将来に結び付き得ることが分かったと思います。確かに未来は不確定要素の固まりとも言えるでしょうが、過去を見ても、テクノロジーがもたらした社会変革は数限りなくありました。デジタルツインにしてもBIMにしても、それらの1つになるはずです。これからの建設は更に面白くなるとも思われます。楽しみにしたいものです。