はじめに
AI時代のSESエンジニアには、異業種の経験でドメイン知識が身につく、大規模プロジェクトに若手から参画できる、環境を変えながらスキルを更新し続けられるといった利点があります。
しかし、同じ機会・同じ現場数を経験していても、数年後に市場価値を大きく伸ばしているエンジニアと、スキルセットがほとんど変わっていないエンジニアに分かれるのが実態です。この差は、才能や運ではなく、キャリアの捉え方と行動の違いから生まれます。
今回は、複数の現場を見てきた中で見えてきた、着実にキャリアアップしていくエンジニアに共通する3つの特徴を、具体例を交えてご紹介します。
1. 専門性を「1本」ではなく「複数の掛け合わせ」で持っている
ひとつの技術を深く極めることは大切ですが、AIによるコーディング支援が当たり前になった今、「Javaに詳しい」「AWSが使える」というだけでは、同じスキルを持つ人が大勢いる中で埋もれてしまいます。
キャリアアップしていくエンジニアは、専門性を1本ではなく、2本以上掛け合わせて持っています。たとえば、次のような組み合わせです。
- バックエンド開発 × 金融業界の勘定系業務知識(与信・決済フローが理解できる)
- インフラ構築 × 医療業界の法規制知識(個人情報保護法や医療情報ガイドラインを踏まえたシステム設計ができる)
- フロントエンド開発 × 物流業界の業務フロー理解(倉庫管理・配送最適化の仕組みがわかる)
技術力だけなら他にいくらでも代わりがいますが、「特定業界の複雑な業務ルールを理解した上でシステムが組める人」は市場に多くありません。この掛け合わせがそのままエンジニアの希少価値になります。
SESで複数業界の現場を経験できることは、こうした組み合わせを作るうえで大きなチャンスです。ただし、ただ現場をこなすだけでは掛け合わせは生まれません。「今回の金融の現場で学んだ与信の仕組みは、次に医療の現場に行ったときにも“業界特有のルールを素早く理解する型”として活かせる」というように、現場ごとの学びを意識的につなげていく視点が大切です。
2. 経験を「経験した」で終わらせず、言葉にして残している
同じプロジェクトを経験しても、それをうまく言語化できる人とできない人がいます。「大規模システムの開発に携わった」というだけでは、面接や単価交渉の場でその価値はうまく伝わりません。
キャリアアップしていくエンジニアは、プロジェクトが終わるたびに、次のようなレベルまで具体的に書き残しています。
- 「1日100万件のアクセスが集中する会員登録機能で、レスポンス遅延が発生していた問題を、キャッシュ設計の見直しとDBのインデックス最適化で、処理時間を3秒から0.5秒に短縮した」
- 「月次バッチ処理が朝までに終わらず業務に支障が出ていた課題を、処理を並列化する設計に変更し、8時間かかっていた処理を1時間半に短縮した」
こうした「何が起きていて」「自分が何を判断し」「結果どうなったか」がセットになったエピソードは、面接官や発注元の担当者に対して、再現性のある実力として伝わります。逆に「大規模プロジェクトに参画しました」で終わってしまうと、実際に何ができる人なのかが伝わらず、単価交渉でも不利になりがちです。
3. 現場を「技術の新しさ」だけでなく「学べる中身」で見極めている
若手エンジニアの多くは、「最新技術を使っているかどうか」だけで現場の良し悪しを判断しがちです。しかし、キャリアアップしていくエンジニアは、もう少し深いところまで見ています。
たとえば、次のような視点です。
- 最新のクラウド技術を使っていても、設定変更が特定の1人しかできない「属人化」した現場なのか、それとも複数人が同じ手順で作業できるよう仕組み化されている現場なのか
- テストやリリースが手作業中心で、毎回夜間に担当者が張り付いて対応しているのか、それとも自動化されていて日中に安全にリリースできるのか
- 古いシステムの現場であっても、「なぜこの仕組みは今の形になったのか」を先輩社員に聞ける環境があり、過去の失敗から学べるのか
古いシステムの現場であっても、こうした背景を理解できれば、それは立派な学びになります。逆に最新技術を使っていても、特定の人にしかわからない仕事の進め方をしているチームでは、身につくスキルは限られてしまいます。この見極めができると、次にどんな現場を選ぶべきかを自分で判断できるようになります。
まとめ:機会をきちんと「自分の力」に変えられるかどうか
SESという働き方は、異業種の経験、大規模プロジェクトへの参画、環境を変え続けられる自由など、キャリアアップにつながる機会に恵まれています。しかし、その機会を実際の力に変えられるかどうかは、一人ひとりの意識と行動次第です。
「金融×バックエンド」「医療×インフラ」のように専門性を組み合わせて自分にしかない強みを作ること、成果を数字と具体的なエピソードで言葉にして残すこと、そして現場を表面的な技術の新しさだけでなく仕組みや文化の中身で見極めること。この3つを意識できるエンジニアこそが、どんな環境でも成果を出せるプロとして評価され続けます。
ユニサーブでは、こうした意識を持つエンジニアの皆さまが、経験を着実にキャリアへとつなげていけるよう、案件選定やキャリア支援の面から今後もサポートしてまいります。