写真:Vitaly Gariev/Unsplash
先週のコラムでは、見た目の重要さをお伝えしましたが、それを裏付けるような本があります。今から20年前に『人は見た目が9割』(竹内一郎著)という本がベストセラーとなりました。
外見がみすぼらしい人が店に入ると、店主が「あなたのような方が来る店ではありません」と追い返す。しかしその人物が実はすごい人で、店主が後にギャフンと驚く――そんなドラマのパターン、よくありますよね。
「人は見た目ではない」という教訓が定番ですが、この本のタイトルはその教訓へのアンチテーゼ。見慣れたドラマの構造に対する逆説的なタイトルが読者の興味を引き、ベストセラーになった一因だと思います。
この「見た目が9割」という主張の根拠は、いわゆる「メラビアンの法則」にあります。
メラビアンの法則では、コミュニケーションにおいて人に与える影響の割合は、視覚情報(表情や態度)が55%、聴覚情報(声のトーンなど)が38%、言語情報(話の内容)はわずか7%とされています。
言語情報は「バーバル」、視覚・聴覚情報は「ノンバーバル」と呼ばれ、ノンバーバルが93%を占めることから、「見た目が9割」と言われるのです。
ただし、メラビアンの法則には、私自身ちょっと苦い思い出があります。
以前、コーチングなどのコミュニケーション研修の講師をしていた際、相手に伝える時の態度の重要性を説明するためにこの法則を紹介しました。ところが研修後のアンケートで、「いまだにメラビアンの法則を紹介しているのはどうかと思う」と書かれてしまいました。
慌ててネットで調べると、「メラビアンの法則を使う講師は似非(エセ)講師と思ってよい」とまで書かれていました。
もちろん「似非講師」は言い過ぎですが、この法則が誤って使われることが多いのも事実です。私は「メラビアンの法則の詳細くらい知ってらーい」と内心ムッとしましたが、説明を端折ってしまったことは素直に反省しました。こういうネガティブなフィードバックも、今となってはありがたいものです。
実際のメラビアンの実験では、「好き」「嫌い」「普通」を示す顔写真(視覚情報)、言葉(言語情報)、感情を込めた音声(聴覚情報)を用いて、それらが矛盾した場合にどの情報を優先するかを調査しました。
例えば、怒った顔の写真を見せながら「好き」と優しい声で言われると、多くの人が「嫌い」と感じる――といった具合です。
つまり、矛盾した“限定された条件”のもとでは視覚情報が優先されるという結果です。
それ以来、この法則を紹介する際には、誤解されないよう丁寧に説明するよう心がけています。
例えば、「台詞が棒読みで表情がないと、その俳優は演技力がないと思うし、感情移入できないよね」とか、「愛情を込めて『愛してるよ』と言わないと伝わらないでしょ」といった具体例を交えて説明しています。
さて、話が少し脱線しましたが、「9割云々」はさておき、『人は見た目が大事』というのは確かだと思っています。
その見た目で好印象をもってもらうのに重要な役割を果たすのが「笑顔」です。「笑顔」については「#12:笑顔の使い方」で述べましたので、ぜひ再読していただければと思います。
今回は、その見た目にプラスすると最強になる武器――少しバーバルの範疇に入るかもしれませんが、「挨拶」についてです。
写真:Jonah Brown/Unsplash
人に会ったときに挨拶をするかしないかで、その人への印象は180度変わります。
挨拶をする人 ⇒ いい人、礼儀正しい人、信頼できる人、仲間
挨拶をしない人 ⇒ 嫌な人、社会人として未熟な人、敵
どんなに素晴らしいことを言っていても、挨拶をしないだけで「嫌い」という印象になってしまいます。
逆に、言葉がなくても挨拶があるだけで「好き」と感じることもあります。
これは皆さんも日常生活でよく感じることではないでしょうか。
以前、『社員を活かす現場のコミュニケーション』という特集を読んだことがあります。現場の生の声をもとに分析されているのですが、その中で「明るい挨拶」が、やる気を高める職場の要素として挙げられていました。
やる気をアップさせた職場のコミュニケーション
「明るい挨拶。朝、打ち合わせの前など顔を合わせたときに明るく張りのある挨拶を交わすと、気持ちもより前向きになるような気がします」
やる気を失わせた職場のコミュニケーション
「朝や帰る時、こちらが挨拶をしても無反応な態度をとられた時。挨拶の時は、たとえ業務で集中していたとしても、少し手を休めて挨拶すべき。最低限のコミュニケーションだと思う」
その中でも印象的だった意見がこちらです。
「以前の会社では、たとえ顔見知りでない社員同士が廊下ですれ違ったときでも『お疲れ様です』と挨拶をしていました。今はその風土がないなあと感じました。もちろん自分からという考えもありますが、一人で挨拶して広めていくのもなかなか大変です」
私も同じ感覚を持ちました。
「#29:先輩社員の背中」でも触れましたが、新入社員として入社した時、販売会社に行って営業実習を行いました。お客様に直接会うのが仕事なので、挨拶の大切さを徹底的に叩き込まれました。先輩や同僚が朝来れば、必ず大きな声で挨拶をしていました。
その後、開発部門に配属され、ドアの近くの席だったこともあり、来る人来る人に「おはようございます」と挨拶していましたが、反応がないことが多く、次第に挨拶を控えるようになってしまいました。
今思えば、こうして「挨拶のない職場」ができていくのだなと感じます。
それほど親しくない人でも挨拶されたら挨拶を返すのが最低限の基本だと思います。
繰り返しますが、
挨拶をしない人 ⇒ 嫌な人、社会人として未熟な人、敵。
とみられてしまいます。
先週のコラムでも述べたように、見た目は重要です。そして、そこに「笑顔」と「挨拶」をプラスすれば最強だと考えています。
皆さんもぜひ、この最強の武器を手に入れるために「笑顔」と「挨拶」を実践してみませんか?
と、ここで終わってもよいのですが、有効だと分かっていても、挨拶があまり行われていない現実があるのも事実です。
次回は『目指せアディオス兄さん』というタイトルで、その理由を分析するとともに、アディオス兄さんの謎にも迫ってみたいと思います。
※本記事に掲載している画像の一部は、生成AIを用いて作成したものです。
次回は7月20日(月)リリース予定です。