「まちづくりに興味はあるのに、参加するきっかけがない」――そう感じている若者や子育て世代は少なくありません。
また、まちづくりを推進する側である行政や企業・団体にも、若者・子育て世代の参加に課題を感じている方が多くおり、当社にも多くの相談が寄せられています。
今回は、なぜそうした状況が生まれているのか、デジタルとリアルを組み合わせることでどう参加の裾野を広げていくことができるのかを、my grooveの実践事例をもとに紹介します。
当社がどのようなことに取り組んでいるのか、それによりどういった課題解決につなげているのか、をぜひ知っていただく機会になればと思います!
1.行政が主催する市民参加の場の課題とは?
住民主体のまちづくりを進めていくためには、日頃から市民がまちづくりに参加しやすい場を充実させていくことが重要です。
しかし実際には、 行政等が主催する市民参加の場への参加の少なさや、そこへ参加するメンバーの固定化などが全国的に課題となっています。
特に、若者や子育て世代については、ライフスタイルの多様化や自治会への参加減少などの変化を背景に、ますます参加を促すのが難しくなっているのが現状です。
さまざまなテーマのワークショップを開催しても、同じメンバーばかりが集まって議論しているというのは良く見る光景ではないでしょうか。
「対面での参加の場」であるワークショップは、深い対話で、関係性を育てるためにとても有効です。
しかし、多様な声を聴き、政策形成やまちづくりに活かしたい場合、「その場に参加できる方の意見である」という限界もあります。
また、ワークショップの場が盛り上がっても、その場の一過性の熱量で終わってしまう、もしくは、参加者だけが盛り上がっている、ということも起きやすくなります。
こういった状況が続くと、周囲からは「自分には関係なさそう」「自分が参加しても場違いかも」と感じられやすくなり、新たな参加者の獲得がより難しくなるという悪循環が生じてしまいます。
2.なぜまちづくりへの若者・子育て世代が少ないのか
若者や子育て世代のまちづくりへの参加が少ない理由は「興味・関心がないからでは?」と考えられがちですが、一概にそうとも言い切れません。
実際に弊社らが 実施した地域への関心についての住民向けリサーチでは、約40%の人が「手伝いたいという漠然とした意欲はあるが、現状はできていない」と回答しています。
またインタビューやヒアリングでは、若者や子育て世代からの「まちづくりには興味があるが、参加のきっかけがない」という声をよく聞きます。
ではなぜ「参加するきっかけがない」と思われてしまうのでしょうか。その理由は、市民参加機会の“設計”にあります。
現在の行政等が主催する市民参加の場は、先ほど触れたように、“対面・時間固定”のワークショップなどが中心となっています。
ただ、平日の日中だと学生や社会人にとっては学校や仕事を理由に時間が取れず、夜や休日の場合でも、子育て世代にとっては子どもを預けられずに参加が難しくなっている例が少なくありません。
どうしても、「参加したい層」と「実際に参加できる層」にギャップが生じやすくなります。
住民参加において、自治体・住民が抱える課題
3.デジタルプラットフォーム「my groove」を活用した参加機会拡充の可能性
このように、参加意欲はあるものの、市民参加の場の設計を理由に参加が難しい層に対して、地域に関わり、まちづくりの主体として一歩踏みだすためのきっかけや支援が必要となっています。
そのために当社Groove Designsが提供しているのが、地域エンゲージメントのためのデジタルプラットフォーム「my groove」です。
「my groove」はデジタルの力も活用することで、若者や子育て世代などを中心にまちづくりへ参加するプロセスを変革することを目指しています。
■my grooveの2つの特徴
「my groove」のサイトイメージ
- 若者中心のユーザー構成:
会員登録者は40代以下の若い世代が70%超 - 地域のエンゲージメント プラットフォームとしての役割:
意見聴取にとどまらず、政策形成プロセス全体の可視化、地域の共創・まちづくり活動への協力者募集・マッチングなど、人々と地域の関係性をより強化する(エンゲージメント)のために必要な機能がある。
ここからは、デジタルを活用することで若者・子育て世代の参加を広げていったmy grooveの好事例を2つご紹介します!
4.栃木県小山市での事例:デジタルが“生活者の声”を引き出した「小山駅周辺エリアまちづくりプラン策定」
小山市では、小山駅周辺の活性化に取り組むにあたり、民間と行政が共通のビジョンのもと “自分事”としてまちづくりに取り組んでいくための指針が必要であると考えていました。しかしワークショップに若年層を招くなどの取り組みを進めていたものの、参加者の裾野を広げることには苦戦していました。
そこで「小山駅周辺エリアまちづくりプラン」の策定に際して、若者や子育て世代も含むより多様な住民意見を取り入れながら進められるように導入したのがmy grooveです。
my grooveを活用した主な取り組み
①わかりやすい情報発信(プロセスの共有)
my grooveでは、現時点の検討状況だけでなく過去の経緯も含めた策定過程を公開。プロセスが可視化されていることで、「途中からでも参加してみよう」という機運を醸成し、参加の間口を拡大することに寄与しました。
さらに将来像のイメージをイラスト化したものを、my groove上で掲載。
②策定過程での複数回の意見募集(双方向コミュニケーション)
my grooveで意見募集ページを立ち上げ、意見募集を実施しました。デジタルで意見募集をすることで、ワークショップなどリアルの場に足を運ぶことが難しい人も気軽に参加しやすくなりました。
また通常、一般市民向けの意見募集はパブリックコメントの機会1回となりがちなところを、策定途中の柔らかい段階で意見を聞くことができたために、策定プロセスの中で方向性の確認や、抜け落ちていた視点の確認ができました。
my grooveがもたらした成果:多様な層のリアルな声の拾い上げ
3週間弱の意見募集期間で多くの熱量ある意見が集まりました。
■具体的な成果(数字)
- 意見募集期間中のページビュー1万超
- コメントやリアクション:700件超
- my grooveに参加した後、活動にも参加したい回答した人の割合:90%超
特筆すべきは、その8割以上が20〜40代であること。若者や子育て中の方から、地元を離れた方まで非常に多様な方々から意見をいただくことができたのです。
その結果、「夕方の駅前が暗くて不安」「ベビーカーで動きづらい」といった“生活者の声”の可視化ができました。
また、その後の意見をもとにした検討過程を可視化することで、ただ声をあげるだけでなく、それがどう取り入れられているかというプロセスの可視化も行うことができました。
より詳細が気になる方は、ぜひこちらもご覧ください!
https://note.com/groovedesigns/n/n0dd5c96105ea
5.北海道札幌市宮の沢での事例:リアル×デジタルで参加拡大・継続 を生んだ「歩いて楽しい宮の沢へ。まちを歩いてみんなで考えよう!」
札幌市宮の沢の「居心地が良く、歩きたくなる宮の沢」の取り組みにmy grooveを取り入れた事例です。札幌市ではこれまでも様々な場面でワークショップを取り入れていましたが、若年層や女性の参加者が少ないこと、また単発的な参加に留まり継続的な参加者が少ないことに課題感をもっていました。
そこで札幌市宮の沢をモデル地区としたウォーカブルシティの取り組みにmy grooveを導入。取り組み全体の情報発信や意見募集に活用しました。
my grooveを活用した主な取り組み
①ワークショップやフィールドワークにおける意見募集(リアルとデジタルの融合)
ワークショップの開催前にmy grooveで意見を募集したり、まち歩きのフィールドワーク参加者にmy groove上で意見を書き込んでもらったりと、リアルでの参加とデジタルでの参加の融合を意識した取り組みを実施しました。
これにより、リアルな場に参加できない人も、デジタルでの意見募集があることで参加しやすくなるという効果を生みました。またデジタルで意見を出した人がリアルな場にも参加し、その後もデジタルで継続的に参加するなど、リアルとデジタルが融合した継続的な関わりが生まれたことも特徴です。
②インタビュー記事の公開
合計3回、キープレイヤーへのインタビューを実施し記事を公開しました。インタビューの公開後にはアクセス数が上昇。
市からの一方向的なお知らせではなく、身近な地域のプレイヤーの取り組みや思いを「読み物」としても楽しめることで共感を生み、参加の輪を広げました。
my grooveがもたらした成果:デジタルがリアルを補完し、関わりしろを生む
「ウォーカブルなまちづくり」というテーマにおける市民参加は、ワークショップやフィールドワークなどリアルな参加が重要です。
しかしmy grooveを通じてデジタルとリアルを融合することで、リアルな場にはなかなか参加できない子育て世代・働く世代などの層を広く取り込むことができました。
■具体的な成果(数字)
- 意見募集への若い世代の参加: 20-40代からの回答が75%
- 2回の意見募集両方に回答した割合:39%
注目すべきは、デジタルプラットフォームが“継続的な参加”に寄与していること。例えば2回のワークショップに参加した人の割合が14%だったのに対し、2回の意見募集両方に参加した人の割合は39%となっています。また、まち歩きとmy grooveを同時に活用することで、「オンライン参加→リアル参加→再びオンライン参加」という“循環型参加”の仕組み構築にも成功。単発的な参加で終わりになることなく、my grooveを通じて継続的な参加につながっています。
これはリアルとデジタルを融合することで、「関わりしろ」が生まれていることに起因しています。「フィールドワークの場には参加できないけれど、興味はあるから意見を出したい」「意見募集がないときも、読み物として楽しめる」。
my grooveがさまざまな濃度の“参加意欲”の受け皿となって幅広い層を取り込み、持続的な参加の場として機能しているのです。
同じく、より詳細が気になる方はこちらもご覧ください。
https://note.com/groovedesigns/n/n425ebbf000ee
6.my grooveが生んだ変化とは?
はじめに述べたように、若者・子育て世代の中には「興味はあるけれど、参加できない」と感じている方が多くいます。そんな方にこそ必要なのが、「関われる」インクルーシブなまちづくりの設計。
2つの事例からわかるように、my grooveは単に意見を集めるだけでなく、プロセスの可視化やさまざまな形での参加機会の確保によって、若者や子育て世代の参加の可能性を広げています。
先ほど触れたように、小山市では参加者の90%以上が「今後も活動に参加したい」と回答し、札幌市ではオンラインとリアルを行き来する継続的な参加につながっています。
my grooveは、まちづくりを「誰かが決めるもの」から「みんなで考え、動かすもの」へと変えていく、そんなエンゲージメントの土台となるプラットフォームです。
もちろん、デジタルを使えばすべての課題が解決するわけではありません。
対面(リアルの場)での議論や関係づくりが不可欠な場面も多く存在します。
これまで対面で、地域に密着してまちづくりの現場に関わってきた当社だからこそ、ツールを提供しているだけの企業ではできないような設計・運営が可能となっています。
7.誰もが、自分たちの力でまちを変えられると思えるように
まちづくりへの無関心層ととらえられがちな若者や子育て世代。しかし決して無関心なわけではなく、これまで“届けるための機会がなかった”だけかもしれません。
デジタルも活用してまちづくりのプロセスを見える化することで、自分の興味・関心にもとづく、生活の延長としての関わりが生まれます。そしてその小さな声の積み重ねが、まちの未来を形づくる共創の原動力になるのです。
若者や子育て世代にそもそもどう参加してもらい、どうその声をまちづくりに活かすか。
その問いに向き合うことは、これからの市民参加のあり方を考えるうえで、避けて通れないテーマです。
こうした正解のない難しい問いに対して、一緒に悩みながらプロジェクトを進めていきたい思いのある方をぜひお待ちしています!