「トヨタグループの変革を支える組織へ。私たちの存在がその成功のエビデンスとなる」CIOが創業期の先に見据える“次のステージ”とは
KINTOテクノロジーズは2026年4月で設立から5年を迎えます。当初はわずかだったメンバーも、この5年間で大幅に増え、400名となりました。トヨタグループの内製開発組織として設立された当社ですが、ここ数年はクルマのサブスク「KINTO」以外の領域にも活躍の舞台が広がっています。2025年以降は、クラウドやAIといった先進技術の活用にも力を入れています。
今回のインタビューでは、節目の5年を迎えることもあり、取締役副社長兼CIOである景山均に話を伺いました。2024年春には、「組織のベースはできあがりつつあるが、理想とする姿にはまだ遠い」と、当時の状況を振り返っていた景山。それから2年が経過し、その現在地はどのように変化してきたのでしょうか。経営層ならではの視点をもとに、KINTOテクノロジーズのこれまでとこれからに迫ります。
▍景山均 取締役副社長兼CIO
楽天にて、楽天グループのデータセンター、ネットワーク、サーバーなどのインフラや、IDサービス、スーパーポイントサービス、メールサービス、マーケティングDWH、ネットスーパー、電子マネー、物流システムなどの開発を統括。その後、ニトリのIT/物流システムの責任者を経て、2019年6月にトヨタファイナンシャルサービスに入社。デジタルIT部隊の立ち上げをゼロから実施。2021年4月より現職。
グループに貢献できる開発組織へ。確かな足どりで歩み続けてきた2年間
――景山さんにはこれまでにも何度かお話を伺っていますね。
景山:はい。最新はコーポレートサイトに掲載されている、2024年春のインタビューですね。このときはCIOの立場から、KINTOテクノロジーズの組織づくりについてお話しました。
――それから約2年が経過し、KINTOテクノロジーズが置かれる状況も当時とは少し変わってきたように思います。景山さんは、その現在地をどのように捉えていますか?
景山:2024年当時、私たちの業務は、クルマのサブスク「KINTO」に関連する開発が大半でした。まだメンバーが少なかったこともあり、それ以外に手を回す余裕がなかったのですよね。しかし、その後は少しずつ人も集まり、トヨタグループ全体への貢献を考えられるようになってきました。この2年で社内の体制は整い、ようやく内製開発組織として思い描いていたような役割を担える状況となってきました。
また、これまでの実績や、Tech Blogなどを通じて続けてきた発信によって、私たちの技術力の高さがグループ内、グループ外に浸透しつつある実感もあります。
KINTOテクノロジーズは、AzureやAWS、New Relic、Splunk、Databricksなど、さまざまなツールを開発に取り入れています。これらを展開するパートナー企業の皆様とは、たとえば、プレビュー版をリリースに先駆けて提供いただき、ユーザーとしてフィードバックを行うなど、良好な関係性を構築してきました。今日、こうしたツールはKINTOテクノロジーズ以外のグループ内の企業でも利用され始めています。最近では、各社で問題が起きたときの解決策として、パートナー企業の担当者様を通じてKINTOテクノロジーズの名前が上がり、私たちが対応にあたるケースも増えてきています。
このように少しずつ私たちの力が求められる領域は広がりつつあります。創業期は脱したという見方もできるかもしれませんね。
――景山さんは当時から開発のスピードが重要になるとお話ししていました。置かれる状況が変わったことで、そのような考えにも変化がありましたか?
景山:開発のスピードを最優先とする考えは今も変わっていません。ここにはトヨタ自動車とクルマのサブスク「KINTO」、その開発を担う私たちとの関係性が影響しています。
トヨタ自動車にとってKINTOは、お客様に対し、自社でクルマを直接販売するECサービスのような存在です。他方、小売の業界を見渡すと、自社のECサイトを持つ企業の多くは、プロパーの社員としてエンジニアを採用し、内製かつアジャイルのような手法でサービスを開発しています。「できるかぎりミニマムな設計でサービスをリリースし、顧客のフィードバックを得ながら、少しずつ改良を重ねていく」というのが、自社ECサイトの運営における定石というわけです。
一方、トヨタグループの場合では、本来小売の企業が社内で賄っている自社ECサイトの開発/運用/保守を、母体であるトヨタ自動車、サービスを提供している株式会社KINTO、開発を担うKINTOテクノロジーズの3社で行っていかなくてはなりません。グループ内に優秀なエンジニアを抱えているとはいえ、組織をまたいだコミュニケーションが必須となるため、プロジェクトの推進には他社以上にスピード感が求められることになります。
このような座組となっているトヨタ自動車とクルマのサブスク「KINTO」、私たちにとって、スピード感のある開発は、いかなる状況においても最優先とされるべき至上命題のようなものです。創業期を脱し、さまざまなプロジェクトに携わる機会が増えてきている今だからこそ、「小さく産んで、大きく育てる開発」の重要度は増していると言えるでしょうね。だからこそ、私は2025年、開発のスピードをこれまで以上に意識すべく、「リリースファースト」という言葉をテーマに掲げました。
――なるほど。2025年の開発テーマの設定には、そのような背景があったのですね。一連の取り組みの効果、社員の反応を、景山さんはどのように感じていますか?
景山:すぐに結果が出ない取り組みであるにもかかわらず、全社員がポジティブに取り組んでくれたと振り返っています。2025年は、設立当初から私が掲げてきたテーマが一気に社内に浸透した1年でした。
実感しつつある他社との差。AIの活用では、蓄積された経験とメンバーの力が大きな武器に
――並行して2025年以降は、クラウドやAIなど、先進技術の活用にも力を入れてきました。2025年には「AIファースト」、2026年には「Agentファースト(Agentic AI)」「AIエンジニアリングファースト(AI-Native Dev)」という言葉を開発のテーマに掲げています。景山さんはなぜ、これらを旗印にしようと考えたのでしょうか。
景山:KINTOテクノロジーズを「新しい技術領域でトヨタグループに貢献する会社」と位置づけているからです。グループ内にはすでに、既存の領域で開発を行っている会社がいくつか存在します。後発である私たちが、彼らと同じようにそれらの領域を主戦場にしても、役割が重なってしまいますよね。KINTOテクノロジーズにできることは何なのか。その疑問に対する答えを考えたとき、自ずと湧いてきたのが「AIファースト」「Agentファースト(Agentic AI)」「AIエンジニアリングファースト(AI-Native Dev)」という言葉でした。
クラウドやAIといった先進技術は、スピード感のある開発の実現に欠かせません。特にAIの分野はここ数年で目覚ましく発展してきています。理想とする組織に近づくためにも、より実践的に活用していく必要があると考えました。
その一方で、現状では従来の技術に頼ってしまいがちな側面もあります。一連の取り組みで重要だったのは、「AIを用いずに開発が完結できるとしても、AIに果たせる役割があるなら、失敗を恐れずに積極的に使っていこう」としたことだと思います。現在でこそ、AIなしでも開発のスピードを担保できていますが、おそらく近い将来には、活用した場合とのあいだに差が生まれてくるでしょう。AIを活用しない選択肢はない。そう言い切って歩みを続けてきたことが、のちに振り返ったとき、私たちのターニングポイントとなっているはずです。
――AIに関連する取り組みを、景山さんは現時点でどのように評価していますか?
景山:AIの分野自体がまだ発展途上であるため、総括するには早いと考えています。今は立ち止まって振り返るのではなく、手を動かし続けるフェーズではないでしょうか。
とはいえ、成果を実感しつつあるのも確かです。他社ならセキュリティのチェックに時間がかかるようなケースでも、私たちなら即座に対応することが可能となってきているのですよね。
――なぜKINTOテクノロジーズと他社のあいだに差が生まれつつあるのでしょう?
景山:理由は主に2つあります。ひとつは、早い段階から意識を高く持って活用を推進してきたことで、すでに社内に他社以上の経験が蓄積されているから。もうひとつは、セキュリティの知見を豊富に持つ優秀なメンバーを抱えているからです。特に後者は、KINTOテクノロジーズの大きなアドバンテージになっていますね。
私はこのことをよくオートレースに例えています。プロのレーサーがアマチュアのレーサーより速く走ることができるのは、コーナーでギリギリを攻められるからなのですよね。スキルがない人は、事故を恐れてスピードを緩めたり、ゆったりとコーナリングしたりしてしまう。このことが速度の違い、ひいては走破時間の違いとなるわけです。
AIを用いた開発においてスピードを担保するためには、インシデントが起きないギリギリのラインでセキュリティを考える必要があります。厳しいルールにするほど、安全性は高まりますが、利便性は下がってしまう。このトレードオフから得られる結果を最大化するために必要なのが、社内に蓄積された経験の量、担当者の高いスキルです。スピードを落としてしまう多くの企業では、これらが不足しているため、万が一が起こり得ない、絶対に安全なレベルでセキュリティを運用せざるを得ません。ここに私たちとの差があります。
セキュリティを担当するメンバーは、一見すると目立たない存在かもしれませんが、私たちの開発生産性を陰で支えている縁の下の力持ちです。AIというまだ発展途上の分野だからこそ、彼らのような存在の重要度が増しているとも言い換えられるでしょうね。
個々の成長への意欲が組織の競争力を支えている。変化への適応が求められる時代、KINTOテクノロジーズに課せられた使命は
――2026年以降の方向性についても聞かせてください。おそらくこれから先も変化への適応が求められる時代が続いていくかと思いますが、KINTOテクノロジーズは今後、どのような組織を目指していきますか?
景山:どこにも負けないテックカンパニーを目指すというスタンスは変わりません。そのために必要なことには、コストを惜しまず、全力で取り組んでいきます。開発を通じてトヨタグループの成長に貢献するということは、それほどに覚悟が必要なことなのです。時には「そこまでする必要はない」と周囲に感じさせる場面も出てくるかもしれません。けれども、トップランナーであり続けるためには、手を緩めるわけにはいかない。常に一手先を見据えて歩みを続けていきたいですね。それが私たちに課せられた使命であると感じています。
私は昨年末に書いたTech Blogのなかで、2026年を「自律と拡張の年」と位置づけました。テクノロジー業界の潮流が、「対話するAI」から「行動するAI」へと急速にシフトするなかで、KINTOテクノロジーズはそのトップランナーとして、変化に敏感な集団である必要があると思います。
業界ではすでに「AI駆動開発」という新しいアプローチが登場し始めています。既存の「開発プロセスのなかにAIを取り入れる」という考え方は、すでに過去のものとなりつつあるのですよね。これからは、AIを活用して開発プロセスそのものを変えていく「AIネイティブ開発」が主流の時代になる。そこまで取り組んで初めて、私たちは与えられた役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。
――なるほど、トヨタグループの一員として業界全体に存在感を示し続けていかなければならないというわけですね。景山さんはどのような点にKINTOテクノロジーズの強みがあると考えていますか?
景山:個々の成長意欲の高さが最大の強みではないでしょうか。先ほど紹介したTech Blogのなかで私は、KINTOテクノロジーズの揺るぎない基本的価値として、「リリースファースト」「ユーザーファースト」「インテンシティ(MoveFast・OwnerShip)」という3つの言葉を挙げました。これらはメンバー一人ひとりのマインドセットによって支えられています。組織の取り組みを自身の成長とつなげて考えられる人間ばかりであるからこそ、KINTOテクノロジーズは高い競争力を持つことができるのです。
このことは、KINTOテクノロジーズがそのようなマインドセットを持つ人材を積極的に採用してきたこと、さらには、これからも採用していきたいと考えていることと表裏一体です。成分が希釈されることがなければ、推進力はさらに増していく。組織としては、彼らが満足できる場を提供し続けていかなければなりません。メンバーの成長意欲と組織の競争力のあいだにある好循環を止めるわけにはいきません。
私は、このような環境に身を置けることこそが、KINTOテクノロジーズで働く魅力であるとも感じています。変化に適応し続けていかなければならないため、決して平坦な道ではありませんが、トヨタグループという社会的に影響力のある企業の一員として先端案件に携われることは、きっとエキサイティングな開発体験になると思います。
――成長を支える環境という点では、この春から新しい人事制度がスタートすると伺いました。制度を刷新する背景や、そこに込めた想いについて詳しく教えていただけますか?
景山:はい。KINTOテクノロジーズでは2026年4月から、新しい人事制度の運用をスタートします 。これは単なる社内ルールの刷新ではなく、私たちがどのような組織でありたいかという「意志の表明」そのものだと考えています。
今回の刷新にあたって掲げたコンセプトは、「明確なルール × 成長と貢献が実感できる仕組み」です 。これまでの組織づくりを通じて、「評価の透明性や納得感を高めたい」「チャレンジして成長した社員が正しく評価されてほしい」という課題も見えてきました 。それらを解決し、一人ひとりが高いモチベーションで挑戦し続けられる環境を整えることが狙いです 。
「挑戦・評価・育成」の好循環を回していくことで、個人の成長が会社の成長に繋がり、その貢献がまた本人へと還元されていく。そんなポジティブなサイクルを、この新制度を通じてさらに加速させていきたいですね 。
――最後に、KINTOテクノロジーズは現在、エンジニアのキャリア採用を強化しています。応募を検討している方に向けて、メッセージがあればお聞かせください。
景山:自動車業界は今、変革の時を迎えつつあります。トヨタグループも決して例外ではありません。そのなかで、組織、個人として与えられた役割を全うしていくこと。KINTOテクノロジーズがトヨタグループの成長に貢献できているという状態が、トヨタグループのトランスフォーメーションが成功していることのエビデンスとなっていくはずです。
私たちの想いに共感してくれる方が仲間に加わってくれたらうれしいですね。みなさんのご応募をお待ちしています。