「私は、相手が発する言葉の表面的な部分だけを拾って、『こうしましょう』と解決策を提示することばかりに必死でした。でも、利用者さんが本当に求めてるのは、解決策以上に『自分の辛さや不安を、そのまま受け止めてくれること』だったんです。」そう振り返るのは、フィットネスジムのインストラクターからキャリアチェンジした浦 慶太さん。
これまでインストラクターとして培ってきたスキルを武器に入社した浦さん。しかし、そこで待っていたのは、当たり前だと思っていた「指導」というスタイルが通用しない、想像以上の壁でした。
支援の難しさに直面するなか、ある利用者さんからの一言が大きな転機となります。その出来事をきっかけに支援のあり方はどのように変わっていったのか。福祉未経験から専門性を磨き、「教える」から「寄り添う」へと成長していくリアルなストーリーをお届けします。
浦 慶太 / 就労支援員・インストラクター
前職ではフィットネスジムのインストラクターとして8年間勤務し、主に一般の方への運動指導を担当。グループレッスンおよびパーソナルトレーニングにも従事。2022年にインクルード株式会社へ入社し、新松戸センターに配属。2024年に五反田センターへ異動。現在は就労支援員兼インストラクターとして、前職で培った指導経験を活かしながら、運動プログラムや生活系プログラムを利用者さんに楽しく分かりやすく伝えている。支援業務において大切にしているのは、「利用者にとって安心できる伴走者であること」であること。
運動が心を変える瞬間を目の当たりに…
ーー前職のインストラクターとしてのご経験と、そこから障害福祉という新しいフィールドを目指したきっかけを教えてください。
前職では、お客様に運動を教えるフィットネスジムのインストラクターを担当していました。もともと体を動かすことが好きで、「自分の指導で誰かが健康になる」ことに大きなやりがいを感じていました。
転機となったのは、精神疾患を抱えながら通ってくださっていたお客様との出会いでした。その方は当初、まだ自信を取り戻している途中で、外出すること自体にも大きなエネルギーを要するご様子でした。それでも「走れるようになりたい」という目標に向けて、一緒にトレーニングを重ねていきました。
ある日、その方がマラソン大会に出場し、そして完走したその足で、私のところに報告に来てくれたんです。「これまで家で過ごすことが多かったのですが、体を動かすことで元気になり、外に出たいという気持ちが湧いてきました。浦さん、ありがとうございます」その言葉を受け取ったとき、運動が心身の健康に与える影響の大きさを強く実感ました。運動が心を変える、そんな瞬間を目の当たりにしました。
その経験が心に残り続けるなかで、「もっと深く、人生の再出発を支える仕事がしたい」と考えるようになりました。そして仕事を探す中で、精神障害のある方を対象にインストラクター経験を活かせるインクルードの募集を見つけ、挑戦を決意しました。
「伝える」から「伝わる」へ。関わり方を見つめ直した入社初期の気づき
ーー入社当初、フィットネスジムでの経験が活きたと感じる場面と、新たな学びが必要だと感じた場面はどんなところでしたか?
フィットネスジムのインストラクターは、「言葉で分かりやすく伝える」ことが非常に重要な仕事です。そのため、利用者さんとの関係づくりやコミュニケーションという点では、これまでの経験が活かせていると感じました。
一方で、働き始めて数ヶ月が経つ頃から、一人ひとりに合わせた関わり方の大切さを強く実感するようになりました。これまで培ってきた伝え方だけでは十分に届かない場面もあり、支援の難しさと奥深さを学ぶ機会が増えていきました。
こちらの意図がきちんと伝わっているのか悩んだり、同じ内容について改めて質問をいただいたりすることもありました。そのたびに、「どのような言葉なら安心して受け取っていただけるだろう」と考え続け、言葉の選び方や伝え方を試行錯誤しながら向き合っていきました。
ーー具体的に、フィットネスジム時代の関わり方が通用しないと感じた場面はありましたか?
以前は、お客様との距離が比較的近い関わり方が求められる環境でした。ただ、福祉の現場では、距離が近いことが必ずしも良い支援につながるわけではなく、伴走者として適切な距離感を保つことが大切です。
また、フィットネスジムのインストラクターは「指導する立場」として、こちらから「こうしてみましょう」と提案しながら進めていく場面が多かったのですが、就労移行支援やリワークの現場ではその関わり方だけでは十分ではありません。
利用者さんは一人ひとり異なる背景や思いを持っており、同じ言葉でも受け取り方が大きく異なります。良かれと思ってお伝えしても、相手の表情が晴れない。面談をしても、なんだか一方通行で、言葉が相手に届いていないと感じることもありました。「どうして伝わらないんだろう」と、正直、焦りと無力感でいっぱいの時期もありましたね。
「もっと人の痛みに目を向ける」転機となった、ある利用者さんからのメッセージ
ーーそんな葛藤の中で、ご自身の関わり方が変化する大きなきっかけがあったと伺いました。
はい。ある利用者さんが就職を決め、センターを卒業される際の出来事です。その方は、私自身も強く関わらせていただいた利用者さんの一人でしたが、最後に、こんな言葉をかけてくださったんです。
「浦さんはいつも熱心に関わってくれて明るい存在でした。これから、もっと相手の気持ち、特に『痛み』に目を向けられるようになったら、さらに素敵な支援員になると思います。」と…。
その言葉を受け取ったとき、頭を殴られたような衝撃を受けました。感謝の気持ちと同時に、「自分は本当に相手の思いに寄り添えていただろうか」「独りよがりの支援になっていなかったか」と気づかされました。
それまでの私は、相手が発する言葉の表面的な部分だけを拾って、「こうしましょう」と解決策を提示することばかりに必死でした。
でも、利用者さんが本当に求めてるのは、解決策以上に「自分の辛さや不安を、そのまま受け止めてくれること」だったんです。そのことに、卒業される瞬間まで気づけなかった。自分の未熟さを痛感しました。
ーーその経験を、どのように乗り越えていったのでしょうか?
そこからは、それまでの「自分が話して導く」「指導する」というスタンスを見直し、まずは徹底して「聴くこと」「理解すること」を意識するようになりました。相手の言葉だけでなく、その背景にある気持ちにも目を向けること。そして、沈黙が生まれたときも焦って言葉で埋めるのではなく、その時間ごと受け止めることを大切にするようになりました。
とはいえ、実践する中での難しさもありました。「何か解決策を提示しなければならないのではないか」と迷う場面も多く、自分の関わり方に悩む日々が続きました。そんなとき支えてくれたのが、当時在籍していた新松戸センターのメンバーの存在です。
もともと私は、自分の弱みや悩みを周囲に見せず、一人で解決しようとするタイプでした。しかしそのときは勇気を出し、上司や先輩に「支援方針について悩んでいる」と率直に相談しました。すると先輩方は悩みを否定することなく、「それだけ本気で向き合っていたからこそ、いただけた言葉なんだと思うよ。ここからどう活かしていくかが大切だね」と声をかけてくださいました。
そして一緒に、これからの支援のあり方を考えてくださったことが、大きな支えとなりました。
五反田センターで形になった「寄り添い」の支援スタイル
ーー現在は五反田センターへ異動されましたが、ご自身の支援スタイルはどのように確立されてきましたか?
新松戸センターでの経験を経て、今も「相手の背景を丁寧に理解した上での提案」を大切にしています。
最近の事例ですが、体力面への不安から通所のペースが安定しづらい利用者さんがいらっしゃいました。以前の私であれば、「体力をつけるために歩いてみましょう」と提案を急いでいたかもしれません。でも今回は、まず運動に対してどのような思いを持っているのか、日常生活の中でどんなことが負担になっているのかをじっくり伺うことから始めました。
お話を重ねる中で、ウォーキングのような単調な動きだと、楽しさを感じにくいことを伺うことができました。その一方で、「室内で少し体を動かす程度であれば取り組めそう」という前向きなお考えも聞くことができました。
そこで、運動プログラムの一環として行っているラジオ体操を、通所時間内に取り入れることを提案しました。すると、ご本人から「これならできそう」と前向きな反応があり、無理なく継続できる習慣として定着していきました。その後は、お昼の時間を利用して屋外でラジオ体操を行うようになり、徐々に体力の向上も見られるようになりました。また、気持ちの面でも前向きな変化が見られるようになり、最終的には就職に向けて一歩ずつ力強く歩み出されました。
この瞬間、かつてインストラクターとして感じた「運動の力」と、就労支援員としての「寄り添う支援」が、自分の中で一つの形になった気がしました。
ーー最後に、これから応募を考えている方へのメッセージをお願いします!
私自身も、これまでの経験が思うように活かせず、悩んだ時期がありました。でも今振り返ると、その壁があったからこそ、自分の関わり方や価値観と向き合うことができたと感じています。
インクルードの良さは、一人で抱え込まなくていいところです。支援は個人プレーではなく、チームで利用者さんを支えていくもの。困ったときには自然と「どう思う?」と声をかけ合える環境があり、私も何度も仲間に助けられてきました。
もし、「これまでの経験を誰かのために活かしたい」「人とじっくり向き合う仕事がしたい」と感じているなら、この仕事はきっと新しい気づきを与えてくれると思います。
「教える」だけではない、「共に歩む」支援の面白さと難しさを、ぜひ一緒に感じてもらえたら嬉しいです。
ありがとうございました!
インクルード株式会社では、「ソーシャルインクルージョンを実現し、全ての人が活躍する社会を創る」というミッションの実現に向けて、ともに歩んでくれる仲間を募集しています。
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※本インタビューの内容は、2026年3月時点のものです。