こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表取締役の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は前職で、50名から4000名まで成長した企業の人事役員を務め、節目ごとに生まれる“人”と“組織”の課題に向き合ってきました。
現在は、成長企業向けの戦略人事コンサルティングと、ミドル・ハイレイヤーに特化した人材紹介に取り組んでいます。
このシリーズでは、僕の経験をもとにしながら、40代からの「キャリア中盤」の戦い方をお伝えしていきます。
第8回のテーマは「市場価値に委ねないキャリアの作り方」です。
目次
はじめに
前回は、自分が持っているものを捉え直し、価値に変えていくための方法として、「資源・資本・資産」の考え方を紹介しました。
キャリアの中盤戦略 Vol.7|経験を資産に変える方法 | 株式会社シンシア・ハート
日々の時間や経験、感情、熱量は「資源」になります。それを見落とさず、捉え方や使い方を変えることで「資本」にする。さらに、その資本を必要としている相手に届く形にすることで「資産」にする。
これができれば、キャリアにおけるチャンスは広がり、レバレッジを効かせることもできます。だからこそ、自分の中にある資源や資本を埋もれたままにしないことが大事なのだとお伝えしました。
ただ、僕はもう一つ大事だと思っていることがあります。それは、自分の「資源・資本・資産」をどう見るかを、誰かに委ねないことです。会社や市場に任せてしまえば、与えられた役割や一般的な相場の中で、自分の価値が決まっていきます。でも、自分が何を持っていて、それをどう組み合わせ、誰に届けるのかは、自分で考えるべきなんです。
そこで今回は、自分の「資源・資本・資産」の見方を人に委ねないとはどういうことなのかを整理しながら、改めて自分自身の価値を見出す方法を考えていきます。
「好き」も立派な資本になる
今回の記事で最初にお伝えしたいのは、「好き」も資本になるということです。「知識や経験が資本になるのはわかるけど、自分の好きなものや好きなことまで資本になるの?」と思う方もいるかもしれません。でも僕は、「好き」こそ大切にしてほしいと思っています。
ちょっと前までの世の中は、みんなと同じことをして、その中で1位を目指すことが、わかりやすい正解でした。いい大学に入って、いい会社に入って、早く出世する、などが典型的な例です。
ところが今は、多様性の時代です。それぞれの好きなものやライフスタイルが認められるようになってきています。たとえば昔は、「オタク」という言葉がもっとネガティブに使われていたように思います。でも今は、「僕はこれが好きです!」と平気で言えるようになりました。むしろ、「私、◯◯オタです」みたいな感じで、ポジティブに使う人も増えた印象があります。
さらに、「好き」を発信する場もできました。代表的なのはSNSです。自分の好きなことを言葉にし、発信し続けられる人ほど、見つけてもらいやすくなっていると思います。実際、一部の人に嫌われても、強い表現をしていても、「やっぱりこれが好きやねん」と訴え続ける人には、一定数のファンがついているように思います。
つまり、好きなものがあること、そして、それを表現できること自体が武器になるのだと、僕は考えています。
「好き」を仕事にするなら、生み出す側に回る
では、どうやったら「好き」を資産化できるのでしょうか。そのために大事なのは、消費するのではなく、生み出す側になることです。
世の中には「好きなことを仕事にしたい」と考えている方は多いと思います。ですが、本を読む、映画を見る、音楽を聴くといった趣味は、基本的には「消費する側」なので、そのまま資産化することは難しいものです。
一方で、文章を書く、動画を制作する、歌や楽器で音楽を奏でるといったように、自分が「生産する側」になると、人の目に触れるものが生まれます。すると、その商品やサービスが売れる可能性も出てきます。
もし歌が好きなら、YouTubeに動画を出してみることで、人数は少なくても応援してくれるファンが付くかもしれません。それに、歌に関わる仕事は歌手だけではありません。好きで続けてきたことを活かして、ボイストレーニングの講師を副業でやってみるという道もあります。
ただ、多くの人は「好きなことを仕事にしたい」と思いながらも、新しい趣味を探すときには、消費する側に回ってしまいがちです。だからこそ僕は、「好き」を資産化したいなら、絶対に生み出す側に回ることを考えた方がいいと思っています。
仕事で資本を増やせているかを考える
趣味に限った話ではありません。自分の資本を増やしたいなら、日々の仕事でも、何かを生み出すこと、アウトプットすることに向き合うべきです。
仕事である以上、基本的には何かを生み出しているはずなので、多くの人は一旦安心していいと思います。「私は何も生み出せていない」という方も、資料の作成や人との調整、文章を書くなどの仕事をする中で、新しくできるようになったこと、以前よりも得意になったといえることはあるはずです。
ただし、同様の業務の繰り返しや、決裁を回すだけの仕事は要注意です。こうした仕事を続けていても、自分の中に資本は貯まっていきませんし、今は給料をもらえていたとしても、いずれ必要とされなくなってしまいます。
「この仕事を続けていていいのか」「自分のやっていることに疑問がある」という方は、「この1週間で、自分の資本は増えたかどうか」を考えてみてください。
何か一つでも得たものがあるなら、その仕事では資本が増えています。逆に、どんなに視点を変えても資本が増えていないと感じるなら、それは「生産する側」に回れていないということです。その状況を変えられないのであれば、転職という選択を視野に入れた方がいいと思います。
資本の価値は「組み合わせ」と「見せ方」で変わる
自分の知識や経験、そして、好きなもの・ことや日々の仕事から得た資本が見えてきたら、次は、それらを一度並べてみましょう。
ここで厄介なのは、多くの人が、自分の資本を過小評価してしまうことです。日本人らしい謙虚さの表れなのかもしれませんが、転職の相談を受けていると「自分にはスキルがない」とか、「これまでの経験は役に立たない」とか、ネガティブに捉えてしまう人が多いと感じます。
でも、見る人によっては、そうやって自分が低く評価しているものが、価値になり得るんです。そのために大事なのは、自分が持っている資本をどう組み合わせるか。そして、組み合わせた資本を、誰に向けて、どんな形で届けるかを考えることです。
ここで、二つの例を紹介します。
ケース1:メーカー勤務の転職希望者
一つ目は、新卒からずっとメーカーで働いていた方のケースです。その方は、「新しい仕事に挑戦してみたいと思うけど、私自身は何も持っていない」と言っていました。ところが、詳しく経歴を聞いてみると、海外駐在の経験が長く、ビジネスレベルで英語を使えることがわかりました。
本人は「他にも英語を話せる人はたくさんいるし」と謙遜していましたが、実際に海外で暮らしたことのある人、取引先と英語でやり取りできる人、まして、メーカーで使うような専門用語まで英語で話せる人はそうそういません。
そんな経験やスキルを持っていることは、他の候補者との大きな差別化になりますよね。これは、資本と資本を組み合わせることで、価値が変わる例といえます。
ケース2:コンビニの「たくさん野菜がとれるスープ」
実は、資本の価値を高める参考になる事例は、転職市場に限らず、世の中のいろんなところにあります。
二つ目の例は、よくコンビニで見かける「たくさん野菜がとれるスープ」です。この商品の中身をよく見ると、細々した野菜しか入っていないですよね。僕は内心、他の商品を作った後に残る野菜をうまく集めて作っている可能性もあるのではと思っています。
実際の製造工程はわかりません。ただ、僕がこの例で言いたいのは、単体では値段がつきにくいものでも、パッケージで「たくさん野菜がとれる」と打ち出すことで、日頃から野菜不足を感じている人に買ってもらえる商品になるということです。しかも、スープという食べやすい形になっている。これも、組み合わせ方と見せ方によって、価値が変わる例だと思います。
資産化に必要なのは、相手を見ること
この二つの例から言えるのは、自分が持っている資本を整理して組み合わせ、相手が必要とする形にすることで、価値あるものに変えられるということです。僕は、これこそ資産化だと思っています。
ただし、組み合わせ方は、自分勝手なオリジナルではいけません。相手やマーケットを見て考える必要があります。相手が何を求めているのかを見るからこそ、気づける組み合わせがあるからです。
転職活動でいえば、職務経歴書を通して、自分が持っている資本を、応募先が必要としている価値として提示します。ところが、エージェントとして職務経歴書を見ていると、その人が持っている資本を並べることも、誰に向けて書いたものなのかも見えないものが多くあります。
逆に言えば、持っている資本を全部出して、組み合わせて、応募先に合った形で書くことができれば、「この人はウチに必要な人だ」と思ってもらえます。だから、職務経歴書を雑に扱ってはいけないんです。
自分のキャリアを誰かに委ねない
ここまで話してきた通り、転職にあたって自分の資本を資産化することは本当に大切です。ただ、多くの人は、自分の資産化を人に委ねすぎているように思います。もっと言えば、自分のキャリアそのものを人に委ねてしまっているとも思います。
会社員の場合、自分の資本をどう生かすかを自ら考えるというより、会社側から「あなたの資本はここでこうやって使ってください」と差配されることがほとんどです。しかも、給料を決めるのも、自分ではなく会社ですよね。
ちなみに、新卒が総合職として採用されやすいのは、ある意味で理にかなっています。学生は、若さや元気さといった資源は持っていますが、働いた経験がないので、資本として磨かれているわけではありません。だから、会社がその人の可能性を読み取って、配属していくんです。
一方で、中途採用の場合は、すでに磨かれてきた資本があります。にもかかわらず、使い方や見せ方を会社や市場に任せてしまうと、本来つくはずの価値まで、自分で手放してしまうことになりかねません。
自分の値段は自分で決める
転職にあたっては、多くの方が「自分の市場価値」を確認しようとします。「今の業界・職種でこの経験だと、約800万円か。なるほどな」と納得している人もいますが、僕からすると、「それ、自分の価値決めを他人に任せちゃってるやん」と感じます。
市場価値を知ること自体が悪いわけではありません。ただ、相場に合わせるだけでは、自分の資本をどう資産化するかまで考えたことにはならないんです。
フリーランスであれば、値決めをするのは自分自身です。同じスキルでも、誰に向けて、どんな形で売るかによって、値段は変わります。顧客が多い場所に行けば仕事が取りやすそうに見えますが、供給する人も多いので、差別化できなければ安く買われやすくなります。
一方で、必要としている人がいて、供給できる人が少ない領域なら、高く買ってもらえる可能性があります。資産化がうまい人は、単に運がいいわけではありません。自分の資本を、価値として受け取ってくれる相手を見つけているんです。
これは、会社員でも同じです。自分の資本をどう組み合わせ、誰に向けて見せるかによって、転職先として選べる企業も、任せてもらえる仕事も変わります。だからこそ、市場価値に納得して終わるのではなく、自分の資本に自分で値をつけにいく感覚が必要なんです。
おわりに
前回のVol.7、今回のVol.8と、「資源・資本・資産」の考え方をベースに、キャリアの捉え方についてお伝えしてきました。
キャリアの中盤戦略 Vol.7|経験を資産に変える方法 | 株式会社シンシア・ハート
ここまで読んでも、やっぱり「自分には何もない」と思う方もいるかもしれません。でも、日々の経験や好きなこと、仕事の中で身につけてきたことを見直してみると、資本になり得るものは必ずあります。まずは、キャリアを人に委ねること、自分の値決めを人に委ねることから脱却してみましょう。
また、「とはいえ、今の会社にいる方が安定しているし」と考える方もいると思います。ただ、会社や周囲に自分のキャリアや価値を委ねているということは、「雇われる・雇われない」「年収が上がる・下がる」といったことも、相手側の判断に委ねているということです。僕は、その状態に本当の安定があるとは思いません。
僕たちは、「全世代がときめくAgelessな社会を創る」をPurposeに掲げています。僕が考える「Agelessな社会」とは、見方を変えることで、年齢の意味が変わっていく世界です。40代だから遅い、50代だから選択肢がない、という話ではありません。自分が持っている資本の見方を変えれば、同じ経験でも価値のつき方は変わります。
だからこそ、いろんな見方を変える訓練を、皆さん自身にもしてほしいと思っています。自分では難しいと感じるなら、僕たちのような伴走者を使えばいいんです。シンシア・ハートは、見方を変えることで、一人ひとりの人生の資本を増やす会社でありたいと思っています。
次回は、自分という資本から少し視野を広げて、チームやサービスなど、さまざまな資本をどう生かしていくかについて考えていきます。
これからのキャリアを考える方へ
40代、50代になると、今の延長線上を進むべきなのか、これまでの経験を別の形で活かすべきなのか、自分一人では判断しづらい場面が増えてきます。
シンシア・ハートでは、ミドル・ハイレイヤーの方を中心に、これまでの経験や強みを整理しながら、次のキャリアの選択肢を一緒に考えています。
転職を前提にしている必要はありません。「今のままでいいのか」「自分にはほかにどんな選択肢があるのか」「この記事の話を、自分の場合はどう考えればいいのか」。そうしたことを一度整理したい方は、ぜひご相談ください。
SiNTEN | 新規事業転職に特化した転職エージェント | 株式会社シンシア・ハート
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