これは確かにイケそうなブランドコンセプトだ。
市場も成長しており、既存のプレイヤーとの差別化ポイントもある。
ーーでも、本当に売れるのか?
売れないかも知れない理由を探そうと思えば、いくつも思いつく。
お金と時間をかけて、本当にこのブランド事業に投資するべきなのか?
これは、多くのブランド起業家や経営者、また新規事業担当者が悩むポイントですし、そもそもどんな天才でも百発百中で当てられる領域ではないです。それでも、僕たちV inc.は複数のブランドをつくり、育てていく、支援していく会社です。
打席に立つ数を増やしながら、できる限り成功確度をあげるために、社内で常に白熱した議論やリサーチをしています。
今回のnoteでは、そんな社内議論の一部を公開します。
皆さんも知っているであろう、「実際に売れているブランドのコンセプトが、もし当時社内で企画案として上がってきていたら良い事業判断ができたか?」という観点でも書いているので、ぜひご一読ください。少しでも読者の皆さんのプラスになれば幸いです。(僕も日々勉強中、進化過程です)。
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■ 事業コンセプトのスタート地点
新しい事業やブランド、新商品を企画するとき、多くの場合はファクトや感覚に基づく「コンセプト」から始まります。
・「最近、世の中の人の動きや興味関心がこうだよね」
・「こういう商品が売れているけど、ここにはまだ課題がありそう」
・「一部だがこんなものを買う・体験する人たちがいて、これからもっと広まるんじゃないか」
そういった肌感覚や市場の空気を捉えて、既存の市場や商品から「ずらした」コンセプトを打ち出すところからスタートします。
もちろん、定量的なデータが揃っている市場において、市場の一部で年商数億円程度を目指す、というのであれば検証ステップはシンプルです。たとえば市場ニーズが顕在化しているAmazonブランドや、フィットネス系の店舗など「先攻プレイヤーがどれくらい売れているか?」がわかりやすい場合です。
例えばAmazonはツールで分析をすることで売上予測を立てやすい。一方で、時間をかけて10億円、100億円を目指すブランドづくりを目指すチャレンジをする場合、「売れるかどうか」の判断材料は揃えきれないことがほとんどです。
(例えば、TENTIALのリカバリーウェア市場がどこまで伸びるのか、を事前に予測することは難しかったのではないかと思います。)
「リカバリーウェアが伸びる」を当初から確信を持って言えた人は非常に少ないと思います。完全に予測することは誰にも出来ませんが、可能な限りリスクを減らしながら挑戦し続ける。そのための判断材料をどう集めるかが、新規事業を作る上で非常に重要な議論になります。
僕たちも、まず自分たちの「強み」や「世の中の変化」を掛け合わせることを意識していますが、無用な失敗を避けるため、どんな事業でも共通する判断基準は設けています。
・「伸びている市場・カテゴリーであること」
・「"Winner takes all"の市場ではないこと」
・「価格競争に巻き込まれづらい戦い方ができそうか」
など、自分たちの強みを活かしてどうしたら新しい価値が生まれるか、から議論をスタートさせています。
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■ CaseStudy①海外で流行中の「STRONG Pilates」
ここからは、具体的な事例で考えてみましょう。
最近社内会議であがったのがピラティス市場における「STRONG Pilates」という事例です。
今、ピラティスの市場は日本でもものすごく伸びていますが、同時にプレイヤーが増えすぎてレッドオーシャン化しつつあります。一方で、海外では新しいコンセプトが生まれています。その1つが「STRONG Pilates」です。
いわゆるピラティスのイメージとは異なるのではないでしょうか
STRONG Pilates(ストロングピラティス)とは、ピラティスをベースに筋力トレーニングと有酸素運動を融合させた、低負荷かつ高強度な、オーストラリア発のハイブリッド型フィットネスです。
既に世界10ヵ国で約150店舗以上(2024年時点)を展開しており、普通のピラティスでは物足りない人や、ブランド哲学として重視しているコミュニティ性に共感した人、今までピラティスに入りづらかった男性層にも人気を博しているそうです。
さて、これを参考に国内で事業展開を行いたいときに浮かぶ問いは以下です。
「従来のピラティスに満足していない層に、より高強度のトレーニングを交えたハイブリッドなプログラムを提供することで、既存のピラティスユーザーのスイッチングや、ピラティス未利用ユーザーの利用を促せるのではないか?」
「確かにピラティス市場の一部を取れそうだ」
とポジティブな展望も見える一方で、
「従来のピラティスに満足していない層は本当にいるのか?」
「男性が本当にピラティスに通うのか?」
というネガティブな懸念も当然浮かびます。
まず一般論的に行うことは「コンセプトの背景を一段階抽象化して見るべき観点をMECEに整理する」ことです。
例えば、今回の例だと
・市場環境:ピラティス市場は既に伸びており、飽和(レッドオーシャン化)しつつある。
・ターゲットの潜在ニーズ:ピラティスに興味はあるが、参加していないというギャップがある男性が存在するのではないか?従来のピラティスに物足りなさやを感じている女性がいるのではないか?という仮説。
・ポジショニング:既存の「女性向け・ソフト」なピラティスではなく、「ハードなトレーニング」という要素を掛け合わせることで、上記のギャップを埋め、飽和した市場の中で独自のポジションを築けるのではないか。
このように整理をした上で、検証すべきポイントを見極めて事業検証に入ります。
■ 事業検証のアプローチは大きく「2つ」
いざ事業検証を行うときのアプローチは大きく2つあります。
①大企業的な「確率論」のアプローチ
例えば今回であれば健康意識の高い男性や、ピラティスに通う女性などの対象セグメントに、アンケートやコンセプトテストなどの調査を行います。このような調査で得られた定量的なデータに基づいて意思決定をする方法です。
もちろん量的調査を実施したとして、その回答と実際の購買行動は異なるケースは多く、その調査をすべての判断基準に置くわけではないです。
「欲しい」といったのに「買わない」ことなんてザラにあります。
有名なサラダマックの失敗
一方で、実際に大企業ではこのような方法を用いて新商品の開発などが進められていることも多く、ヒットも生まれているため、合理的な判断軸を持つ上で重要なアプローチであることは間違いないです。
②起業家的なN=1の熱量を重視したアプローチ
「調査よりも、1人の熱狂を重視する」という考え方です。
例えば今回であれば、既にストロングピラティスは国内にも展開されているので、すぐに自分自身でも体験しにいくべきでしょう。海外ですでに流行っているモデル(タイムマシン経営論的なもの)であれば、実際に現地で体験し、「なぜ流行っているのか」「日本市場に合わせたらどうなるか」を肌感覚で掴むことも非常に有効です。
そこで実際に通っている人がどのような人なのかを観察する、話を聞いてみる。自分自身が体験してみて、他のピラティスやフィットネスと比べてどう感じるのかを言語化する。この「一次情報」を取りに行く泥臭いプロセスこそが、確度を上げる鍵になります。
AIのお陰でボタン1つでデスクリサーチが完了する時代。一次情報をいかに、泥臭く掴めるかが大事。
僕たちのV inc.としては、両方のアプローチを行いますが、基本的に後者のアプローチをまず行い、初期仮説を立てた上でマクロ視点でデータ確認を行い、勝率を高められると考えています。
なぜなら、ライフスタイル領域において、消費者の変化や流行を一歩先で掴むために欠かせないプロセスだと考えているからです。さらに、事前の調査や検証でポテンシャルを感じられたのであれば、何千万円もかけて店舗を作る前に、リーンにテストすることも可能です。
例えば、実際にピラティススタジオを借りて、週末だけイベント形式で「ストロングピラティス」を開催してみる。そこで友人や知人を集めてお金を払ってもらい、リピートするかどうか、熱量を持って広めてくれるか、満足してくれているか、を肌で感じる。
一歩踏み込む際にも、こうしたプロセスで事業のリスクを最小限に抑えながらトライすることも可能です。
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■ CaseStudy②"黒だけ"のブランド「Macqlo」
もう一つの事例として議論したのが、「Macqlo」というブランドの例です。
Macqlo(マックロ)は、"黒 × 高機能"に特化したメンズアパレルブランド。スーツ型作業着「WWS」などを展開する株式会社オアシスライフスタイルグループの新ブランドで、初年度年商2億円を売り上げた。
気を抜くと服装が真っ黒になってしまう男性も多いのではないでしょうか。男性であれば、黒を着こなす方は多いでしょうし、正直なところ似たようなコンセプトを考えたことのある人は大勢いるのではないかと思います。
しかしもしこの企画が、実際に会議に出てきたらどうでしょう?
🤷「ほとんどのブランドで、既に黒のカラーはメイン展開されているから需要は満たされているのでは?」
🤷「カッコいい黒が欲しいなら、ギャルソンとかYohji Yamamotoとか、また、もう少し価格が低いブランドも既にあるのでは?」
🤷「特徴的でもないのに、わざわざ知らないブランドで買うのかな?」
このような反論はすぐに考えつくでしょう。
僕自身も正直、企画段階なら難しそうだと判断してしまったかもしれません。しかし、結果として初速売上は立っている。ここから学べることは多くあります。
もちろん、このブランドがこれからどんな成長をしていくのかはまだ誰にもわかりませんが、「初年度からこのコンセプトで買いたい人が多くいることを証明した」という意味で学ぶべきだと捉えています。
ここで重要な論点は「想起率」です。
確かにどのブランドにも黒い服はありますが、「黒いTシャツが欲しいな」と思った時に、真っ先に思い浮かぶブランドになれているかどうか。
「私たちは黒好きのためのブランドだ」
そう言い切ることで、強烈なインパクトを残し、選択肢の第一候補に入る。この「尖らせ方」による一点突破が、初年度の主な成功要因だと考えられます。
本音は全部黒にしたい人の背中を押すようなコピー
さらに、ターゲットの「ずらし」も考えられます。
「ギャルソンの黒」を好むようなハイファッション層ではなく、そこまでではないが「服にはこだわりたい」という中間層のインサイトを突いたのではないかと考えられます。
徹底的な"黒"重視のコミュニケーションに、"高機能"を掛け算したことがターゲットに刺さっていそうです。
例え、一見するとマーケットに存在する既存の商品と同質化してしまいそうなコンセプトだとしても、「誰に、どう届けるか」というコミュニケーション設計まで含めて企画することで勝てる可能性を、この事例は教えてくれます。
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■ 最後は「熱量」が理屈を超える
ここまで、市場の読み方や検証方法、論理的な勝ち筋の話をしてきました。しかし、会議の最後に行き着く結論は、意外にも論理的ではないことが多いです。
もちろんリスクを避けるため、合理的に抑えるべきポイントは抑えます。しかし、最後にその事業をGOすべきかどうかは、その人が「これは絶対にやるべきだ」「この課題をどうしても解決したい」という熱量を持ってやり抜けるかどうか、にかかっています。
なぜなら、失敗は予測できても、成功は多くの場合予測できないからです。
理屈で確度を高めつつ、最後は熱量で決める。
僕たちは、
人が事業を創り、ブランドは、人で決まる
と信じています。
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■ 共ににブランドビジネスをつくり・育てませんか?
いま、V inc.には熱量を持ったメンバーが集まりはじめ、ブランド事業をつくり・育てるためのアセットも日々拡張しています。ブランドビジネスをつくり、育てるための最高の土台づくりとなるよう日々研鑽し、進化していきます。
・2026年、新たにブランド事業にチャレンジしたい経営者の方
・今の自身で運営しているブランドを真の意味で成長させたいブランド事業者の方
・自分のクリエイティブで、世界を熱狂させるようなブランドを作ってみたいクリエイターの方
もし今、あなたがブランド事業の成長に壁を感じているなら、あるいはこれから本気でブランドを作りたいと考えているなら、ぜひお話しましょう。
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この記事は、V inc.のnoteから転載しています。
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