ユニアム代表・杉本 亜衣 × 往診獣医師・安井 詩織
こんにちは。ユニアム代表の杉本です。
今回は、動物病院という枠組みを飛び出し、往診専門の獣医師として活躍されている安井詩織先生との対談をお届けします。
「病気を治す」ことだけが、獣医師の仕事なのか? ねこの健康を守るために、病院の外でできることはもっとあるのではないか──。
そんな問いを抱き、独自のスタイルでねことカイヌシに向き合い続ける安井先生。
実は大学の先輩・後輩という間柄でもある私たちが、獣医業界が抱える構造的な課題と、ユニアムと共に目指す「0.5次医療」の可能性について語り合いました。
安井獣医師
憧れの先輩と、現場の獣医師として
杉本: まず、しおり先生(安井氏)との関係性からお話しすると、大学の先輩・後輩の間柄なんですよね。私が2学年上でしたっけ?
安井: そうです! 学生時代から杉本さんのことは一方的に知っていて、「かっこいい先輩がいるな」ってずっと憧れていたんです。獣医師免許を持ちながら、臨床以外の道で起業して道を切り拓いている姿が、私にとっては衝撃的で。
だから今回、ユニアムから「往診を一緒にやりませんか」と声をかけてもらった時は、もう「え、私ですか!?」って。嬉しすぎて即答でした。
杉本: 嬉しいなぁ。私は獣医師の資格を持っていますが、今は経営者として事業を作る立場。だからこそ、臨床現場の最前線にいるしおり先生のような獣医師に、ユニアムの価値を認めてもらえるのは本当に心強いです。
安井: 評価というか、もう「信頼」ですね。
ユニアムは、単なるフードメーカーじゃない。「売上のため」ではなく「本当にねこを健康にしたいからやっている」という愛と熱量が、商品やエビデンスへの姿勢から伝わってくるんです。
だからこそ、いち獣医師として、そして同じ方向を向く同志として、一緒に業界をより良い方向へ変えていきたいと思いました。
3歳からの夢と、臨床現場での葛藤
杉本: しおり先生が動物病院での勤務医を離れ、往診専門の獣医師として独立された背景には、どのような想いがあったのでしょうか?
安井: 実は私、3歳の頃からずっと「獣医師になること」が夢だったんです。 物心ついた時から家には犬やねこがいて、兄弟のように育ちました。でも、彼らが亡くなる時、子供心に「もっと何かできたんじゃないか」「私が助けられるようになりたい」と強く思って。
杉本: 3歳から! 実は私も同じなんです。物心ついた時から動物が大好きで、獣医師になることしか考えていなかった。今でも獣医師という職業に対して抱く気持ちは「尊敬」と「憧れ」。根っこは一緒ですね。
ユニアム往診サービスの獣医師チーム
安井: そうなんですね! 嬉しいです。 でも……そうやって純粋な夢を持って憧れの臨床現場に出てみると、「理想と現実のギャップ」に直面したんです。
動物病院も存続のためには利益が必要です。 けれど、限られた時間の中で多くの動物たちを診なければならないだけでなく、論文発表、マーケティング、病院経営や組織のマネージメントまで。多くの実務を獣医師が担わなければならない……そんな「構造的な忙しさ」があるんです。 その中で、どうしても一件あたりの診療時間が短くなったり、カイヌシさんとじっくり対話する時間が取れなくなってしまったりすることがあって。
杉本: 時代が進むにつれ獣医師の仕事は変化し、医療以外にかける時間も増えてきていますよね。獣医師によっては病院のwebsiteも先生自ら作ったり。本当はもっと本質的な医療行為に時間をかけて飼い主一人一人としっかり向きあいたいのに、構造上それが難しい。
安井: そうなんです。例えば、原因がはっきりと特定できない症状に対して、これまでの臨床経験から改善が期待できる可能性を考え、ステロイドを使用する場合があります。
それ自体が間違いというわけではありません。ただ本来であれば、副作用のリスクや長期使用によるデメリットについて、カイヌシさんが十分に理解し、納得できるまで説明する「インフォームドコンセント」が必要だと考えています。ただ忙しさの中でそのプロセスがどうしても簡略化されてしまい、「とりあえず薬で症状を抑える」ことが優先されてしまう場面も少なくありません。
往診中の一コマ
個人的には、そうした薬の使用についても、症例の将来を見据えたうえで十分な説明を行い、他に選択肢がない場合や、明確に問題が特定できた場合に限って慎重に用いることが望ましいと考えています。
こうした状況が重なることで、カイヌシさんの不安が解消されないまま残ってしまったり、思わぬ副作用をきっかけに、獣医師への不信感につながってしまうこともあります。
私は、もっと一頭一頭の命と、カイヌシさんの不安に丁寧に寄り添った医療を届けたいと思っていました。「誠実な獣医療」を追求する中で、自分が大切にしたい医療のあり方を、より実現しやすい環境を求めて、今の病院のシステムから一度離れてみようと思ったんです。
栄養学の“空白”を埋める存在として
杉本: その「丁寧な対話」は、食事指導にも通じる話ですよね。
多くのカイヌシさんが「どのフードがいいかわからない」と迷子になっている中で、獣医師からのアドバイスを求めています。
安井: ええ。ただ、ここにも課題があって。
実は、獣医学部では栄養学の授業ってほとんどないんですよね。大学に6年間通っても、さらっと総論をやる程度。
日々の診療や手術の勉強に追われる若い獣医師にとって、栄養学を深く学ぶ時間を確保するのは至難の業です。
杉本: 獣医師という職業は、元々ニンゲンにとっての食肉文化の普及のため(欧米化に伴い牛肉や牛乳を摂取するようになり、それらが原因で人間に病気がうつらないよう検査・管理するため)に進化した職業ですからね。愛玩動物のための栄養学はまだ新しい学問で大学のカリキュラムまで落ちていないことがほとんど。獣医師なら栄養のエキスパートだと思われがちですが、実は学ぶ機会自体が少ないんですよね。
安井: そうなんです。結果として、メーカーさんのセミナーで得た知識に頼らざるを得ない現状があります。
だからこそ、ユニアムのように「獣医師チームが中心になって、エビデンスベースで開発している」という事実は、私たちにとって希望なんです。
マーケティング主導ではなく、科学的な根拠に基づいたフードがあるなら、私たちは自信を持ってカイヌシさんに提案できますから。
「往診」とは? 病院では見えない“真実”が見える場所
杉本: そうした「誠実な対話」や「正しい指導」をするために、しおり先生が選んだのが、物理的な病院拠点を持たずにご自宅へ伺う「往診」というスタイルだったんですね。 読者の中には「往診」と聞いてもイメージが湧かない方もいるかもしれません。改めて、どういうものなのか教えていただけますか?
安井: 往診は、文字通り「獣医師がカイヌシさんのご自宅に伺って診察するスタイル」のことです。 「聴診くらいしかできないんじゃない?」と思われがちですが、実はポータブルエコー(超音波)や検査機器を持ち込めば、レントゲン以外なら血液検査や超音波検査も、病院と変わらないレベルで詳しくできるんですよ。
往診中の安井獣医師
杉本: もちろん全てではないですが、カイヌシさんが想像している以上に、高度な医療が自宅で可能ですよね。
安井: はい。そして最大のメリットは、「愛猫の普段の姿」が見られることです。 病院に行くと緊張して検査数値が上がってしまう子も、自宅ならリラックスして検査を受けてくれます。 「病院に連れて行くのが大変」という多頭飼育の方や、移動手段がない高齢のカイヌシさん、そして「最期は住み慣れた家で」と願う終末期ケアの現場でも、往診は大きな役割を果たしています。
杉本: 病院に行くこと自体がハードルになっている子たちにとって、まさに「救い」となる選択肢ですね。
杉本: 一般的な動物病院での診断や治療を「一次診療」と捉えるならば、往診は病気になる前の予防や健康診断の間口を広げるという意味で「0.5次診療」として捉えることができると思います。
病気になってから病院へ行くのではなく、日常の中でのケアが健康寿命の延伸に繋がります。往診で生活環境や食事を見直すことは、まさにユニアムが目指す「0.5次医療」とも重なります。
安井: 生活環境や食事といった「日常」の中にこそ、健康を守るヒントがたくさんあるんですよね。
ポータブルエコーで簡易的な超音波検査も
「0.5次医療」が、ねことカイヌシの後悔をなくす
杉本: 最後に、しおり先生がこれからユニアムと一緒に実現したい未来を教えてください。
安井: 私は、「もっとできたことがあったんじゃないか」と後悔するカイヌシさんを減らしたいんです。
最期の時に自分を責めてしまうカイヌシさんを一人でも減らすために、最適な選択肢を提示し続けたい。
その中で、「最善の食事選び」は本当に重要です。
その一つの正解が、ユニアムのごはんだと私は思っています。
杉本: ありがとうございます。その言葉に応えられるよう、私たちも進化し続けます。
獣医師が正しい知識を武器に活躍し、カイヌシさんが自信をもって根拠のある安心を選べる社会へ。
しおり先生と共に、ねこの未来を「ユニーク」に変えていきたいですね。