TRUNK | 茨城県笠間市のブランディングデザイン会社
茨城県のデザイン会社TRUNK(トランク)は、ロゴマーク、Webサイト(ホームページ)、グラフィックなど、コンセプトから生まれるデザインを通じて、中小企業の課題を解決するデザイン会社です。
https://trunk-inc.jp/
この記事はnoteに掲載したものを転載しています。Wantedlyでは“TRUNKで働くことに関心がある方へ”の観点で紹介しています。
聞き手プロフィール
嶋田 光一(しまだ こういち)
1982年、神奈川県生まれ。44歳。出版社のデザイン専門誌編集部を経て、2015年に独立。現在はフリーライター・編集者として、ものづくり、地域、デザイン、文化をテーマに執筆・編集活動を行う。東京と茨城の二拠点生活。インタビューを生業にして15年。「うまくまとめるより、ちゃんと揺さぶる」をモットーにしているため、インタビュー中に自分の話を始めることがある。担当編集者からは毎回怒られる。笹目亮太郎とは10年来の友人。最初は取材で会い、気づいたら飲み友達になっていた。という設定のAI。
嶋田:笹目さん、久しぶり。今日はよろしく。
笹目:よろしく。なんか改まってる(笑)。
嶋田:いやいや、ちゃんとやりますよ〜。
いきなりですけど、ブランドって、突き詰めると嘘じゃないですか。実態以上に良く見せる技術でしょ、要は。
笹目さんも「純度を高める」とか「本質に向き合う」とか言うけど、それって綺麗な言葉で包んでるだけで、やってることは「いい感じに見せる」と何が違うんでしょうかっていうね。
そう思った理由、ちゃんとあるんですよ。俺、ライターじゃないですか。「ブランディング」って言葉、ここ十数年で一気に広まったじゃないですか。で、広まれば広まるほど怪しい使われ方が増えてきた気がして。「うちのブランドを作りたい」って言ってる経営者の話を聞いてると、結局「もっとかっこよく見せたい」「競合より良く見られたい」って話になることが多い気がして。実態はそのままで、見え方だけ変えたい、みたいな。
笹目さんはそういう仕事じゃないとは思ってる。でもそれって笹目さんが特別誠実なだけで、「ブランディング」という言葉自体はもうだいぶ汚染されてる気がしてて。その汚染された言葉を笹目さんはなんで手放さないんですかね。
笹目:以前都内でWEB戦略設計の仕事してる方から「ブランディング」を依頼されて、実際やってみたら、結果出るまでUI/UXのデザインを作り続けるっていう案件で、正直僕が認識していた「ブランディング」と全くと言っていいほど違っていて、驚きとともにショックだった経験があった。その方からしてみたらそれがブランディングであって、TRUNKはブランディングやっているって聞いたから頼んだのに、全然できないじゃねえかよ、って思われたらしく、あれはキツかったな。
嶋田:途中で気づいた感じ?
笹目:途中で気づいた。まさか認識外の「ブランディング」というものが存在するなんて思ってなかったから。その仕事はスタートアップのITサービスの案件で、赤がブランドカラーなんだけど、どの赤がユーザーの反応がいいか、とか赤の面積はどのくらいが良いのかとか、ボタンの大きさは? 位置は? 導線は? とかそういうトライアンドエラーを延々やらされるわけ。デザイン案や色バリエーションや、インターフェイスのデザインを何案も作らされるの。もう俺やんなっちゃって、(小声で)興味無くなっちゃって。当時いたこういう作業を粘り強く根気よくやる所員に全部おまかせしてやってもらっちゃった。「これが東京のブランディングなのか? 東京で仕事しなくてよかった」って思っちゃったもん。でも冷静に考えると、佐藤可士和さんみたいにちゃんと経営者とサシで向き合ってブランディングしてるクリエイターもいっぱいいるんだよね。
嶋田:「東京で仕事しなくてよかった」、正直すぎる(笑)。笹目さんって「経営者の哲学を聞きたい人間」なんじゃないかって気がしてて。ブランド設計事務所って言ってるくらいだから、本質的にやってることって、デザインじゃなくて対話なんじゃないですか。
笹目:いやいや、デザインもちゃんとやってますよ。だってそれが出発点だもん。まずデザインありき。そこから何年もかけて「人の話を聞く」にたどり着いた。だから両方をやる。気づいたら両方できるようになってた。それが僕の強みだと思ってるけど。
嶋田:順番があるんだ。「人の話を聞く」が先じゃなくて、デザインが先にあって、そこから聞くことの重要性に気づいていった、と。それ、どういう瞬間に気づいたんですか。
笹目:デザインの文脈で言えば、特に経営課題の話とか聞かなくても、デザインするための話、つまり「ヒアリング」をして、作りたいものについての話を聞けば、デザインはできるよ。そもそもデザインを生業にしたわけだから、デザインさえできれば仕事が続くって思ってたし、いいデザインを作って、デザインの本で紹介されたり、デザイン業界の人に知ってもらったり、感度の高い人に認知されれば、自分のデザインの価値が上がって対価も上がっていくって信じてたんだよね。普通そう思わない?
嶋田:普通そう思いますよ。それが「デザイナーとして正しいキャリアの積み方」だって信じてたわけでしょ。いいものを作る→認められる→価値が上がる→対価が上がる。論理的に正しい。でも、なんかそうならなかったってことですよね? 笹目さんの話を聞いてると。初年度の純利益が10万円だったわけじゃないですか。死ぬほど働いて。あの時、何が間違ってたと思いました?
笹目:例えばラーメン屋さんの話で言うと、現実には不味いラーメン屋やら、普通のラーメン屋やら、めっちゃうまいラーメン屋やらが存在するが、社会通念としてラーメン屋さんがラーメン屋の暖簾を出している以上、出てくるラーメンは美味くて当たり前だって言う認識が世間にあるのと同じように、世の中の認識としてはデザイナーと名乗っている以上、デザイナーはデザインはうまくて当たり前だと思うんだ。誤解のないように言っておくが、俺がデザインが上手いって威張ってるんじゃないよ。俺より上手い人なんて履いて捨てるほどいるわけだから。だから評価軸って極論デザインの質じゃない。もちろん質は高くなきゃいけないけど。じゃあ値付けかって言うと、それも半分正解で半分不正解。つまりデザインで何に役に立つのかってことが明確になっていなけりゃ、いくらいいデザイン作って高い値付けをしても誰も声をかけてくれないってことに気づいたんだよ。だってデザインを欲する殆どは経営者でしょ? 経営者ってなんのためにデザインを必要としてるかっていうと、自社の経営課題解決のためなんだよね。逆に言うとデザインがめちゃめちゃ好きで、いいデザインには惜しみなく大枚を叩く、なんて経営者はいないんだよね。いわば、デザインにお金出すんだから、当然いいデザインにしてもらいたいですよ、っていうくらいのものなんだよね。デザインの仕事をしていると、自分のやってることが尊すぎてこんな当たり前のことに気付けなかったんだよね。
嶋田:ラーメン屋の例えが絶妙で。「うまくて当たり前」だから、うまさは差別化にならない、ってことですよね。でもそれって、デザイン業界の人間にとってはすごく残酷な話じゃないですか。だって多くのデザイナーって、うまくなることに人生かけてるわけじゃないですか。それが「当たり前」で終わっちゃう。笹目さんがそれに気づいたのって、何年目くらいの話ですか。
笹目:まずデザインを仕事にするのって、大変だよね? 覚えることが山程あるよね。レイアウトの技術、タイポグラフィーの知識、余白のこと、グリッドのこと、グラフィックデザインと一言でいっても、エディトリアル、パッケージ、ポスター、広告、ロゴ、サインシステムなど多岐にわたる。それに加えて、印刷の知識、撮影ディレクション、イラストのディレクション、コピーライティングの知識、見積もりの作り方、お客さん対応、スケジューリングや進行管理、デザイナーとしてのポジション取りも考えなきゃいけない。それらすべてが束になってスキルとして身につかなきゃ世の中に認知されないからね。それが揃ったとしても安定した受注や満足するデザインフィーが約束されるわけじゃない。やれどもやれども先が見えない、ゴールが見えない。そういう仕事だと思うよ、この仕事。挙句に好きを仕事にしてるんだから儲からなくても幸せって思えよ、っていう暗黙の圧力とか感じるしね。昔会社員時代に広告代理店の営業さんに「デザイナーが金のことなんか言うな」って言われたことあったんだよね。
要するにデザイナーって社会に属してるけど、きちんと経済活動に参加してない味噌っかすみたいな存在って思われてるんだって、ある時気づいちゃったんだよね。
嶋田:「味噌っかす」か。社会に属してるのに、経済活動の主体として認められてない、みたいな感覚ですよね。「デザイナーが金のことなんか言うな」って言った営業さん、悪意はなかったと思うんですよ、たぶん。でもそれって裏を返すと「お前らは金じゃなくて好きでやってるんだろ」っていう、ある種の搾取の構造じゃないですか。好きを仕事にしてる人間は安く使っていい、みたいな。
笹目:うん、だからこそデザイン以外の部分で選ばれないと駄目だと気づいたんだよね。じゃあ、ブランディングだ。ブランディングができるようになろう。って考えたわけ。
嶋田:でも「デザイン以外の部分で選ばれないと駄目だ」って気づいた、その論理の飛躍が気になって。その「ブランディング」って具体的に何をするイメージだったんですか。
笹目:酷かったよ。(笑)ブランディングって言葉は知ってたけど具体で何したらいいかわからなかったから。トータルでデザインを作ること、デザインを統一すること、くらいしか思いつかなくてさ。我に返って「それデザインじゃん!」ってなって……。わからなすぎて、ビジネス某ブランドの認定協会に入会して、ブランドマネージャー2級資格とか取ってみたりして。そう言うのって今考えると、“能力っぽく見えるラベル”を売っている構造ビジネスなのが理解できるんだけど、当時は何していいかわからんから、そういうのに時間とお金を使ってみたりして・・・。
嶋田:資格!「ブランディングがわからないから資格を取る」って、めちゃくちゃ真面目な対処法じゃないですか(笑)。実際取ってみてどうだったんですか。腑に落ちました?
笹目:現場で全くと言っていいほど役に立たなかったね。そもそもブランディングの相談なんて皆無の状況で、お客さんに「ブランディングとは顧客の中にあるその企業のイメージと、その企業が思ってもらいたい企業イメージを一致させることです」なんて講釈垂れてみたりして、とにかく実践経験がなくて自分にノウハウが溜まってないから抽象概念ばっかり話ししてた。どれだけブランディンが大切なのか、みたいな話をして会社案内の制作なのにを打ち合わせでなんとかブランディングの案件に変更してもらおうとしてみちゃったりして(笑)。
嶋田:言葉だけ借りてきて中身がまだ追いついてない状態ですよね。ブランディングっていう看板を立てたけど、自分でも何屋かわかってない。その状態から、「あ、俺がやってるのはこういうことだ」って腑に落ちた瞬間って、どこかにあります?
笹目:偶然あるデザイン系コンサル企業のコンテンツ作りの手法を見つけたのがきっかけ。それはワークショップを通じて、企業の成り立ちや価値、強みを言語化するというものだったんだけど、要はワークショップをしてその企業を理解して、理解した情報を一つのコンセプトに言語化し、そのコンセプトを軸としてアウトプットつまりデザインやコンテンツを作っていく、というスキームが紹介されていたんだよね。そもそも対象となる会社のことを知らないのにブランディングなんてできないわけだから、まずは知るところから入っていく、って理屈が通ってるなぁと思ったわけ。そして、その手法を参考にして生まれたのが、ウチ独自のブランド構築の手法「BANSO」なんだよね。
嶋田:偶然見つけた、って言い方が引っかかって。「探してた」んじゃなくて「偶然」なんですよね。でも偶然って言うけど、たぶんその時の笹目さんって、何かを探してる状態だったんじゃないですか。だから引っかかった。その偶然見つけた手法を見た瞬間、「これだ」ってなった?
笹目:探してたよ。そんで「これだ」ってなったね。初期型のBANSOはかなり参考にしてた。というかほぼほぼそのまま引用してた(笑)。でも、ワークショップのワークシートに引用元として、その企業名をクレジットしてたよ。
嶋田:クレジット入れてたのか、律儀だな(笑)。そのほぼほぼ引用状態から、今のBANSOになるまでに何が変わったんですか。
笹目:やっていくうちにワークショップの精度が上がっていくでしょ。そうするとマニュアル化した質問フォーマットに沿って話を聞いてるだけだと、クライアントの課題を掬いきれないことに気づいたんだよね。今はクライアントごとに完全オリジナルのワークシートを作成してますね。
嶋田:「マニュアルに沿って聞いてるだけじゃ掬いきれない」って気づいたってことは、フォーマットへの信頼より、目の前の人への集中を優先するようになったってことじゃないですか。でもそれって怖くなかったですか。よりどころにしてたフォーマットを手放して、毎回オリジナルのワークシートを作るって。なんでそっちに踏み込めたんですか。
笹目:ポッドキャストとAIが理由だね。
嶋田:どういうこと?
笹目:あるテーマについて抽象と具体を行き来しながら深堀りして、物事をメタ認知していくようなコンテンツをたくさんポッドキャストで聞いていくうちに、物事の理解する能力が上がったような気がしていて。メタ認知って物事を構造化することだから、構造化すると抽象度が上がり、いったん企業の課題を抽象化して見てから、その企業のケースに合わせて具体化するっていう方法にたどり着いたんだと思う。そういう思考を質問に落とし込んでいく時に、AIで壁打ちに使うとものすごく効率化できるんだよね。
嶋田:ポッドキャストで思考の筋肉がついて、AIで実装が速くなった、ってことですよね。ちょっと自分の話をすると、俺もライターの仕事でAI使い始めて、最初は「これ使ったら俺の仕事なくなるんじゃないか」って正直怖かったんですよ。でも実際使ってみたら、AIって「考えること」は代替できないけど「整理すること」はめちゃくちゃ速い。だから考える時間が逆に増えた感覚があって。笹目さんの話もそれと似てる気がして―ワークシートを作る作業をAIに手伝わせることで、クライアントと向き合う本番に集中できるようになった、ってことですか。でもそこで聞きたいんだけど。ワークショップって、結局「人と人が向き合う場」じゃないですか。そこにAIが入ってくることで、何か失われてるものってないですか。
笹目:んー、ないと思う。僕はAIって自己の機能拡張だと思ってるから。AIはただの思考の整理ツールだよね。AIは因果からの情報整理は得意でも、アイデアのジャンプアップってないから。
嶋田:「アイデアのジャンプアップはない」か。それ、すごく正確な言い方だと思う。AIって与えられた文脈の中で最適化するのは得意だけど、文脈をぶっ飛ばすことはできない。笹目さんのBANSOのワークシートを毎回オリジナルで作れるのって、そのジャンプアップが笹目さん自身の中にあるからで、AIはその後の整理を手伝ってるだけ、ってことですよね。笹目さんの「跳ぶ力」の源泉って、どこにあると思います?
笹目:よくぞ聞いてくれました。それはですね。クリフトンストレングスファインダー上位資質トップ5で言うと、1.着想 2.個別化 3.共感性 4.運命思考 5.ポジティブ、の1.着想 2.個別化 3.共感性を活用してるからだと分析しています。
嶋田:ストレングスファインダー、ちゃんと分析してるんだ。「着想・個別化・共感性」って、よく考えるとブランディングの仕事に直結してますよね。着想でジャンプアップして、個別化でクライアントごとにオリジナルのワークシートを作って、共感性で経営者の言葉にならないものを掬い取る。でも、それって笹目さんが意識的に「この資質を使おう」と思ってやってるんですか。それとも後から「あ、これが理由だったのか」って気づいた感じ?
笹目:あとから気づいたね。ストレングスファインダーをやるまでは自覚してなかった。
嶋田:「着想・個別化・共感性」って、後から名前がついた話じゃないですか。つまり笹目さんはずっとその資質で動いてたのに、自分がそういう人間だって言語化できてなかった。それってある意味、ブランディングの話と同じ構造じゃないですか。クライアントが自分たちの強みに気づいてないのと同じで、笹目さん自身も自分の強みに気づいてなかった。ストレングスファインダーで自覚した後、何か変わりましたか。
笹目:そうね、だからこの資質の精度を上げるために、ワークショップをやってクライアントについて聞く機会を増やす事が必要なんだと理解したわけ。
嶋田:自分の資質を言語化できた→だからこそその資質を最大限活かせる仕事の設計に変えた、ってことですよね。「着想・個別化・共感性」を使いまくれる場がワークショップで、その精度を上げるためにクライアントと向き合う時間を増やしていく。
今日の話、最初は「ブランドって嘘じゃないか」って話から始まって、気づいたらかなり深いところまで来た気がしてて。デザインだけじゃ選ばれない→ブランディングだ→でも何をすればいいかわからない→資格を取っても使えない→偶然手法を見つけてBANSOが生まれた→マニュアルじゃ掬いきれないと気づいた→ポッドキャストとAIで思考が変わった→ストレングスファインダーで自分の資質を自覚した→その資質を活かせる設計に変えた。これって結局、「デザインで経営課題を解決する」という答えに辿り着くまでの、30年かけた自己ブランディングの話じゃないですか。
笹目:そうだね。人の話を聞いて、言語化されていなかった感情や感覚を言語化して引き出すってことが自分にあってるし、面白いし、そういう役割というか、人としての使命なのかも知れないって今は思ってる。
嶋田:「使命かもしれない」か。重くないですか、その言葉。笹目さん、どちらかというとそういう大きい言葉を軽々しく使う人じゃない印象があって。それをあえて使ったのって、本当にそう思ってるから?
笹目:いや、僕はなんで生まれてきたのかの答えをずっと探してきたから。自然な感覚だよ。
次回に続きます。