「もう学生でいられるのは、あと数ヶ月」
ひとつのビジネスコンテストから、すべては始まった。
大学最後の思い出、だったはずだった。
思い出づくりのはずが
当時、川原宗珠(弊社COO)は早稲田大学人間科学部の4年生。就職活動を終え、内定もすでに手にしていた。レールは敷かれ、あとは卒業を待つだけ——はずだった。
残された学生生活を、ただ消費して終わらせたくはない。何かひとつ、記憶に残ることをしておきたい。そう考えた彼が「最後の思い出」として選んだのが、大学が主催するビジネスコンテストへの出場だった。
一枚のスライドに込めた、先輩の想い
ピッチの題材に選んだのは、学生時代の先輩だった松本和寅(現・代表取締役)が、コロナ禍の中でひそかに立ち上げていた「授業の口コミサイト」。
対面授業が失われ、誰もが画面の向こうで孤独に学んでいたあの頃。「どの授業を取ればいいのか」さえわからない学生たちのために、リアルな声を集めようとしたサービスだった。
川原は、そのアイデアを胸に抱えてピッチの舞台へと上がった。
思いがけない、SAP賞
結果は、受賞。ピッチは高く評価され、川原はメンター権として「SAP賞」を手にした。
学生最後の思い出のはずだったステージが、この瞬間、思いがけない「始まり」へと姿を変えた。
表には出なかった、もう一人の存在
実はこのとき、松本はまだTesla Japanで働いていた。表舞台には立たず、川原に指示を出しながら、賞を取らせるために裏方でアイデアを磨き上げていった。
二人三脚でつかんだその賞は、いま思えば、二人の進路を静かに、しかし確実に動かし始めていた。
そして、二人は踏み出した
それから間もなく、AIが世の中に一気に押し寄せてきた。時代が動く音が、はっきりと聞こえた。
松本は、勇気を振り絞ってTeslaを辞めた。安定したキャリアを手放してでも、賭けたい未来があった。
一方の川原はIBMへ。それぞれが違う現場で武者修行を積み、力を蓄えていく。
そして——こうして私たちの会社は、静かに、しかし確かに、スタートを切った。