「走りながら考える感覚をもう一度味わえて、楽しいんです」
地方銀行で初のインターンシップを企画するなど前例なき世界を切り拓き、35年の銀行員人生の先で常務にまで登り詰めた、苦難を楽しむ山男! 毎週更新するクラフトバンクのメンバー紹介、第7弾の今回はCMOの宇野さんです。
地方銀行とベンチャーという一見真逆の世界への転職でも、あっという間に馴染んで活躍中の宇野さんが、唯一ギャップを感じたこととは? 金融機関と建設業界を繋ぐ日々の面白みと共に語ってもらいました。
原点は「前例ないけど、やってみれば」の文化
自己紹介をお願いします!
宇野 寿人と申します。2025年5月にクラフトバンクにジョインしまして、CMOとして金融機関の新規開拓を担当しています。
ジョギングや山登りが好きな生粋のアウトドア派で、ついこの前も休みをもらって2泊で九州の山を登ってきました。長い距離を走ったりがっつり山を登ったりすると、苦しくて苦しくて、現実を忘れられるんですよ。定期的に外に出ないと心が壊れるタイプですね(笑)。
山形に生まれ、大学まで山形で過ごし、平成元年(1989年)に山形県に本店を置く地銀「荘内銀行」に入行しました。ずっと山形一色でしたが、東京支店に配属されてはじめて東京に出てきた人間です。
そのまま35年間、荘内銀行と、そのグループ会社であるフィデアホールディングスでお世話になり、いろんなことをやらせてもらいました。
前職でのお仕事について教えてください
特に印象に残っているのは、採用担当として人事・研修を担当していた時のことです。荘内銀行の魅力を学生にできるだけ早い段階で知ってもらう方法を模索していました。そこで見つけたのが企業がやっているインターンシップの取り組みです。
当時は、地方銀行でインターンシップをやっているところなんてなかったんですよ。でも荘内銀行には「田舎の小さい銀行だからこそ変わらなきゃダメだ」って空気があって。担当の役員や部長に企画を持っていった時も「インターンシップなんて聞いたこともないけど、役に立つんだったら」と言って、ポンとやらせてくれました。
それだけじゃなく、荘内銀行版の人生ゲームを作って配ったり、音楽CDを作って配ったり、連携企業と一緒に楽しいアイデアを次々実現していって。
そうしたら一橋大学、東北大学、北海道大学、早稲田大学などの優秀な学生の応募が来るようになったんです。田舎の小さな地方銀行に、ですよ!
荘内銀行でこういう前例のないことにたくさん挑戦できたのは、頭取が作った空気があったからなんですよね。「結果がわからないなら、やっちゃえ」「走りながら考えた方がいいや」って文化もそうですし、若手の平社員が頭取室にスタスタ入って相談できるムードもあって。ガチガチの安定した銀行員人生というよりは、風通しのいいベンチャー気質の中で育ててもらった感覚です。
ただ、経営が安定し、組織が大きくなるにつれて、意思決定がとにかく慎重になっていきました。昔は「面白そうだし、やってみれば」というラフさがあったけれど、全体の足並みを揃えるためにはそうもいかなくなってきた。まぁ当然の変化ですけどね。
35年間、荘内銀行一筋でやってきて、常務取締役や関連会社の社長もやらせてもらいました。部下への責任感から来る葛藤もありつつ、やれることは一定やり切ったかなという思いで卒業を考えていた頃に、クラフトバンクが現れたんです。
クラフトバンクとの出会いのきっかけは?
田久保さんと韓さんが荘内銀行にクラフトバンクオフィス(CBO)を売り込みに来て、その対応をしたのがきっかけです。その時から「この会社、変だぞ」と思いました。他のITベンダーやシステム提供会社との毛色の違いが際立っていたんですよ。
現場のお客様に対するサポート体制とか、販売方法とか、とにかく他の会社にはないことをやっているし、お金は広告宣伝ではなく営業を増やすために使うという話も面白くて。いろいろ不思議に思いつつ質問すると、すべての回答が論理的で説得力があった。だから「なるほど」の繰り返しで、すごく興味を持ったんです。
決定的だったのは、ふたりから「こんな話を喜んで聞いてくるなんて、宇野さんって銀行員っぽくないっすね」って言われたこと。多分そのタイミングでは、どこか一味違った存在でいたいっていう願いがあったから、すごく嬉しかったんですよ。
こういう会社に入ったら、昔楽しんだ「走りながら考える感覚」をもう一度味わえるんじゃないか。今の自分なら、金融業界と建設業界の橋渡しをする通訳係になれるんじゃないか。そんなことを生意気に考えたりして。
周囲の人からは「もったいない」とか「勇気ある決断だ」とか言われましたが、自分としては勇気を振り絞ったつもりはなく。ただ楽しそうだなと思ったんです。
金融機関と建設業界を繋ぐ「通訳係」
今はどんなお仕事を?
CMOとして、金融機関向けにパートナーセールスをしています。地銀・第二地銀を中心に新たなパートナー契約をいただくために、3ヶ月で50行くらい訪問してますね。
地方銀行は、各地域の企業と密接に関わっています。つまり地域にとって大切な業界・企業は、地方銀行にとっても大切なお客様。その中で昔から絶対的なポジショニングを持っているのが、地域にとって不可欠な建設業界なわけです。
クラフトバンクがターゲットとしている「地方・建設業・中小企業」というのは、地銀の重視するターゲットと全く同じキーワード。しかも、リーチしにくい中小企業に全国満遍なく入り込むことができるサービスと、建設に特化した知見やパイプを持っている。だから銀行にとって「組む価値のある存在」なんですよ。
それと、お客様のリクエストに応える開発スタイルや、アナログで現場にじっくりとタッチするCSの姿勢も、地方銀行と似ています。事業内容は違っても考え方やスタイルは同じ。だから相性が悪いはずがない!
とはいえ、地方銀行の考え方や役割を理解してる人はクラフトバンクの社内には多くありません。だからこそ自分の役割は「通訳」だと思っています。各行の歴史や文化を踏まえて話すと、お互い首を傾げてた部分がポンと腑に落ちるようになるんです。
お仕事のやりがいは?
これまで分かり合えなかった人たちの会話を通訳して話がまとまっていくのを見ると、転職してきてよかったなと思いますね。全国各地の地銀の特徴・メガバンクや信用金庫との違い・担当者の本音などを深く知っている強みを活かせている感じがします。
あとは久々にやる営業が楽しいんですよ。韓さんが「出張多くて大変ですよね? 大丈夫ですか」って心配そうにしてたんですけど「なんか自分、営業が好きなんだって思い出しました!」って言ったら大笑いされました。
全国を飛び回るのって楽しいし、興味なさげだった銀行さんが「へぇ、クラフトバンクってそういうことか」って顔をしてくれたら、それだけで嬉しいんです。
ちゃんと話をすれば「創業間もないベンチャー企業なのに、なかなか会えないあの社長とパイプがあるのはどういうことだ?!」って、銀行員もびっくりの実績があるのがクラフトバンクなんですよ。メンバーのこれまでの積み重ねはすごいなと、日々感じながら喋っています。
働いてみて、ギャップを感じた部分はありましたか?
ゼロ。全然ないです。時代も業界も違うけど、昔の荘内銀行と似たような空気を感じているので、むしろ懐かしい感じすらしてますよ。
入社前には韓さんと田久保さんから「稚拙な会社でダメダメなところいっぱいあるから、驚くかも」って言われてたんですけど、そのダメなところも想像の範疇。「うん、だろうね」みたいな感じです。
強いて言うなら……。社内での韓さんの扱いが、ものすごく軽いことに戸惑いました(笑)。最初はかしこまって「社長」って呼んでたんですけど、メンバーから「誰も社長なんて呼んでないですよ。本人も嫌がると思います」と言われたんで、あ、そうなのかと思って。勇気を出して「韓さん!」って呼び始めました。
こういう「さん付け運動」をやってる会社は結構ありますけど、日本文化的には定着し切らないところがあると思うんですよ。けど、クラフトバンクでは完全に慣れちゃってて、みんな抵抗を感じてない。あえて社長を社長らしく扱わないっていう文化が徹底されてるのが、なかなか新鮮でした。
自分が入社した時に、息子より下の世代のメンバーたちが気さくに話しかけてくれたのは、そのせいかもしれません。話を聞いてくれる感じも嬉しいし、気軽にいろいろ話せる環境ってのはいいもんですね。
限界に挑戦する楽しさを、もう一度
今後の目標は?
日本全国の地銀とのパートナーシップ契約の拡大を、ピッチを上げて進めていきたいですね。ただ、これは単純に提携先の数を増やしたいという話ではなくて。商品を売ってもらうための関係じゃなくて、地方の建設業を本当に活性化させるために、真の意味でパートナーになりたいんです。
そのために重要なのは、銀行を主役に立て、我々はあくまで建設業のノウハウを用いたサポートに徹するということです。銀行が行う中小企業向けの経営コンサルティングの流れの中で、業務効率化の手段としてCBOが適切であれば、自然と導入が進んでいくはずですから。
ここから1〜2年で銀行との提携を深めて、上場基準や経営財務の目標クリアに繋げていきたいところですが、直接的には数字を追いません。数値目標から逆算しても、皮算用の約束になってしまう。だから自分は銀行時代から、部下にノルマを振ったことがないんです。個人が持つ数字目標の達成・未達成よりも、チーム目標への貢献度でメンバーを評価した方が説得力が出るでしょう?
メンバーの貢献度を上げ、より銀行と近い距離で話せるようになるために必要なのは、やはり金融業界や銀行に関する知識理解を向上させること。地銀と第二地銀の違い、本部と営業店の違い、企画セクションと推進セクションの違いを含め、「銀行ってこんなところ」を丁寧にお話ししていこうと思っています。
どんな人と一緒に働きたいですか?
いろんな職種があるので一概には言えませんが、今みたいなステージはがむしゃらに突っ走れる人が合うでしょうね。反面、もうちょっと段取りとか手順を大事にすればとも思いますけど(笑)、やっぱり多少のストレスがあっても思いっきり走れる人は強いですね。
自分自身、銀行員としてのキャリアの中で「無理ですよ、そんなの」って悲鳴を上げながら仕事してきました。「できるわけないじゃないですか!」って喧嘩したこともある。でも限界を超えて無謀な目標をクリアすると、かっこいいんですよね。無理をひっくり返して褒められたいし(笑)。
だから、転職やキャリアチェンジに躊躇っている人がいるとするなら「思い切ってやってみれば」と言いたいです。こういう会社で思いっきり自分を動かして限界に挑戦するのは、楽しいかもしれないよって。
これまでの武器を使って、新しい景色を見てみたい方。がむしゃらに走った先で、笑えるくらいの達成感を味わいたい方。ぜひカオスの中でご一緒しましょう。
(執筆・撮影:青柳ゆみか https://x.com/aopan_na )