2度の起業を経た取締役が考える「Cricoという会社を一緒に形作っていく」今の面白さ|Crico公式note
2013年に創業したCricoは、イラスト制作を出発点に、現在ではゲーム開発や漫画制作、人材支援など複数の柱を持つ会社へと成長しています。そんなCricoの制作チームを統括するのが、これまで2度の起業を経験し、ゲーム開発の現場で数多くの実績を重ねてきた取締役の福島です。 ...
https://note.com/crico_inc/n/n49cf538e5c54
Cricoは、2017年から10年弱に渡ってLive2Dによる制作を続けています。
ゲームのアニメーション、遊技機やPVなどの映像制作、そして近年拡大するVTuberモデルまで、Live2Dが使われる幅広い現場で制作に関わり、経験とノウハウを積み重ねてきました。
その中心にいるのが、Live2Dを中心にキャリアを築いてきたモーションチームの岡本です。情報系の大学から絵の道へ転身し、Live2Dとの出会いをきっかけにクリエイターとして歩み始め、いまではチームリーダーとして制作と育成の両方を担っています。
今回の記事では、岡本へのインタビューを通してCricoがLive2Dに強い理由、モーションチームの体制やチーム作りのこだわりについて紹介します。
― まずは、これまでのご経歴を簡単に教えてください。
私の経歴はちょっと変わっていて、Cricoが初めて入社した会社で、入社した時は29歳でした。
学生時代には情報系の大学から大学院に進んでいたんですが、在学中にイラストを描きたいという気持ちが強くなり、ソフトウェアエンジニアではなく絵の道に進むことを決めました。
元々ゲームやアニメが好きで、将来の夢としてゲームに関わる仕事を漠然と考えていたこともあり、大学院に在籍しながら独学で絵の練習を続けていましたが、絵の世界で生きていきたい気持ちが大きくなり、中退して制作に専念しました。
その後は収入を確保しながら描き続ける生活を続け、アルバイトをしながらフリーランスでイラストの依頼を受けていた時期もあります。
イラストの学習をしているなかでLive2Dを知り、自分の絵が実際に動くことに大きな楽しさを感じ、そこからLive2Dにのめり込むようになりました。
Cricoへの入社は、X(旧Twitter)でLive2Dデザイナーの募集をしていたのを見かけたのがきっかけです。入社してからはほぼLive2D一筋で業務に携わっており、ゲーム用の立ち絵アニメーションや映像案件など幅広い制作に関わってきました。
現在は入社から9年目になり、Live2DやSpineを使ったモーションやアニメーション映像制作に関わるモーションチームのリーダーとして制作とチーム運営の両方に取り組んでいます。
― 実際の制作業務以外で、Live2Dの書籍執筆に携わられたとも聞いています。
そうですね。『Live2Dの教科書』の応用編に執筆協力させていただきました。
日々の制作や案件の経験の中で得た知識をまとめて整理できる良い機会になりましたし、Live2Dに関する知見を外部に出せる形になったという点で、自分にとっても大きな経験だったと思っています。
Live2Dの教科書 改訂版 静止画イラストからつくる本格アニメーション
― 取締役の福島さんが「Live2Dでは業界一という自負がある」とおっしゃっていましたが、なぜLive2DがCricoの強みになっていったんでしょうか。
Live2Dが強みになっていった理由は、10年以上にわたる制作経験の蓄積はもちろんですが、Live2Dを開発しているLive2D社と直接関わる機会が多く、ツールに近い距離で制作してきたことが大きいと感じていますね。
Live2D社とは、Live2Dがゲーム業界で流行し始める初期の頃から制作でご一緒させていただいていました。当時からゲームへの組み込みに求められる仕様の中でも特に厳しい基準を保ってこられたLive2D社と、一緒にプロジェクトを進めていく中で、その基準が社内の標準として定着していき、Live2Dにおける制作クオリティが自然と高い状態で保たれているんだと考えています。
そういった意味では、今のCricoのモーションチームがあるのもLive2D社のおかげだと感じています。
先ほどお話しした『Live2Dの教科書』の執筆協力も社内の制作クオリティを高めるために役立ったと感じています。
書籍をLive2D社が監修していることで技術理解が深まったことはもちろんですが、経験してきた技術や考え方を整理しながら制作できるようになりましたし、それをチームに言語化して還元することに繋がりました。
― Live2Dでの制作を担当しているモーションチームの体制についても教えてください。
現在モーションチームは、8名体制です。Spineをメインに担当しているメンバーなどもおり、Live2Dでの制作に直接携わっているメンバーは6名。新卒からCricoに入社したメンバーが多いことも特徴です。
関わっている制作領域は大きく分けてゲーム用のLive2Dモーションと映像用のアニメーションがあります。ゲームでは、立ち絵が動くシナリオ部分のモーション制作を担当することが多いですね。映像用アニメーションの制作では、遊技機やPV素材、漫画のコマを動かすものなど、演出やカメラワークが必要な制作にも関わっています。
― Vtuberモデルの制作もモーションチームで担当しているんですか?
VTuber向けのモデル制作についてはモーションチーム内にさらに専門のチームがあります。モーションとVtuberモデルは求められる技術や制作フローが異なるため、チームを分けて制作にあたっています。私自身はモーションと映像制作を担当することが多いのですが、Vtuberモデル制作についても、必要に応じて相談やアドバイスに入っています。
― Vtuberモデルとモーション制作の違いについて詳しく教えていただけますか?
Vtuberモデルは、カメラで顔をトラッキングして動かすことが前提になっているので、モデルを作りあげれば、ある程度はそのまま動かせます。モーションのように細かい動きを組み立てることは基本的に必要ありません。一方でモデルの造形や見た目の綺麗さが重視されるため、1つのモデルを丁寧に仕上げることが求められます。
モーションはモデルを作ったうえでさらに動きを設計する必要があります。腕や顔の動きなど、細かい要素の積み重ねがアニメーションになるので、仕様に合わせて効率よく組み立てることが求められます。ゲーム用のモーションでは納期の制約もあり、Vtuberモデルのように1つのモデルを長期間にわたって制作できないケースが多くあります。
また、映像制作ではカメラワークを含めた演出の設計が必要な点、実機で正常に動作させるために仕様面での制約が多い点に関しても、Vtuberモデルとは考える対象が全く違うと感じていますね。
こういった違いがあるため、モーションとVtuberモデルの両方に手を出すと経験が分散してしまい、どちらのレベルも上がりにくくなります。CricoではVtuberモデルとモーションを担当ごとに分けることで、技術を深めやすくなるようにしています。
― 技術を深めやすくするためにチームを分けるというお話がありましたが、その他にチーム作りやスキルアップのために心がけていること、やっていることはありますか?
チームリーダーとして意識しているのは、チームが継続的に改善できる仕組みを作ることです。個人の頑張りだけに依存するのではなくて、業務の中で自然と成長につながるような仕組みを動かしたいと思っています。
具体的な取り組みはいくつかあるのですが、1つはYWTというフレームワークを使った振り返りですね。やったこと、わかったこと、次にやることを整理して、業務の中の気づきや知見がきちんと蓄積されるようにしています。最初はモーションチームで私が導入したのですが、現在は他のチームでも取り入れられています。
振り返りについてはプロジェクトが一区切りついたときは、事例報告という形で資料を作成し、共有することも定例化しています。振り返りを資料として残してもらうことで、個人に閉じずにチーム全体で経験が共有できていると感じていますね。
― 日常の中で成長につなげる仕組みがあるのは良いですね。
クリエイターは日々成長し続けないといけない職種だと思っていますが、プライベートの時間だけを使って成長するのは負担が大きいです。そのため、なるべく業務の中で学べる機会を作りたいという思いからこういった取り組みを大事にしています。
振り返りの他には、「モーション批評」という視点を鍛えるための施策もありますね。
まず、チームメンバーが交代で、モーション制作の参考になるゲームなどの動画をお題としてピックアップします。他のメンバーは、良かった点、改善できそうな点を事前に書いておき、ミーティングでディスカッションをしています。
モーション批評は、普段の業務でモーションに携わらないメンバーも含めて、制作していない時でも「見る目」を鍛えられるように、という想いから始めました。また、良し悪しを言語化する機会を増やすことで、人に伝える前提でモーションについて考えられるようになり、理解が深まると考えています。
モーションチームには新卒入社のメンバーも多いのですが、みんな向上心が高くて、プロ意識を持って業務に取り組んでくれています。人間関係の面でも居心地がいいと言ってくれるメンバーが多くて、今は自分の成長以上に、チームメンバーの成長を見ることが楽しいと感じています。
自分ができるのは、成長しやすい仕組みや環境を整えるところまでですが、その部分はこれからも最適化していきたいと思っています。
― 岡本さんが感じるCricoの面白さはどんなところですか?
Cricoの面白さとしては、いろいろな案件に関われて、飽きずに多様な経験を積めるところが自分には合っていると感じています。
大企業だと1つのことを長く続けるケースも多いと聞きますが、Cricoではゲーム用のモーションや映像案件など、案件ごとに求められることが違うので、その分だけ学べることも多いです。また、上から細かく指示されるというよりは、自分で「こうした方がいいのでは」と考えて動ける裁量も大きくて、問題解決や効率化が好きな自分にとっては、仕組みを工夫しながら試していけるのがやりがいになっています。
― 最後に、これからLive2Dクリエイターを目指す方、Cricoに興味を持っていただいた方へのメッセージをお願いします。
これからLive2Dクリエイターを目指す方や、Cricoで働いてみたいと考えている方には、業務で得た経験をきちんと振り返って次につなげていく姿勢を大事にしてほしいとお伝えしたいです。
そういった姿勢があれば、Cricoのように案件の幅が広くて裁量もある環境では、自然と成長の機会が増えていくと思いますし、こちらとしても仕組みづくりやチーム運営の面からできる限りサポートしていきたいと考えています。