【Interview】デザインを続けながら、ディレクターの道へ。その中で見つけた「良いディレクター像」とは?

ひとりの人間が、複数の職域を横断する。
たとえばプロデューサーだけどディレクターでもあったり、ディレクターだけどデザイナーでもあったり……FICCでは、そういったスタッフは珍しくありません。
今回の話し手はそのうちのひとり、京都オフィスの森江里奈です。

デザイナーとして長年働いてきた森はある時期、
「ずっとデザイナーとして働いているけれど、自分は本当に成長しているんだろうか?」
と、疑問や焦りを感じたと言います。
そんな彼女が選んだのが、デザインを続けながら「ディレクター」にもなる、という選択肢。デザインの道を深堀りするのではなく、広げる方向へと歩み始めた彼女は、現在そのふたつの職域を行ったり来たりしています。

デザイナーからディレクターへとキャリアの道を広げていった森は、その中でどんなことを学んだのでしょうか。実務経験の活かし方や、そこで言語化された「良いディレクター」像など、いろいろな話を聞きました。

(インタビュー・文:土門蘭、写真:岡安いつ美)

〈プロフィール〉
森江里奈
1989年大阪生まれ。大阪市立デザイン教育研究所卒。制作会社、デザイン事務所での勤務を経て、2013年FICCにデザイナーとして入社。現在はデザイナー職とディレクター職を兼任しながら、案件に応じて制作・進行管理を担当している。

自分が良く変えていける余地を広げたかった

もともとはデザイナーとして入社したので、ディレクション業務はしたことがありませんでした。FICCではひとつの案件に対して、プロデューサー・ディレクター・デザイナーがついて回す、という感じなんですけど、私はデザイナーとしてジョインしていてディレクターは常に別にいたんです。当時の私ができることは、デザインとコーディングを少々、という感じでした。

ただ、デザインをしていると時々、「なんでこれを作るんだろう?」「なんでこれをここに配置しないといけないんだろう?」と疑問に思うことが多くて。だけど、クライアント側で決まったことを前提に作らなくてはいけなかったので、「そこはそう決まったから」っていうのがデザイナーにとってのスタート地点でしただから、「もっとこうしたら?」と良く変えていける余地が狭く感じていたんです。

でもそんな中で、たとえばデザイン業務の一歩手前にある「ワイヤーフレーム(ウェブサイトの設計図)」から自分が作れるのであれば、そこからデザイナー的観点を入れられるかもしれない、とまず思ったんです。もともとはディレクターの領域だけど、その段階から自分が作ることができたら、もう少し改善できる幅を広げられるかも……と。

そこからぬるーっとディレクション業務をするようになっていきました。ワイヤーフレームを作れるようになったら、次は「進行管理もやってみる?」「やってみます!」みたいな(笑)。それで自然と、ディレクション案件も徐々に増えていったという感じですね。

今は、ディレクションとデザインの比率は6:4くらいです。とは言えそのふたつの境目は曖昧で、両方が混在している案件もあります。繁忙期には、自分で見積りもワイヤーフレームも作って、デザインしてコーディングして納品するっていうこともありましたし(笑)。ただひとりでできることにはもちろん限界があるので、今はチームの一員として機能することを意識しています。

デザイナーとしての成長に行き詰まった時期

ディレクターとしての仕事を始めたと言っても、デザインから離れたかったわけではありません。自分が成長するためには、こっちを進んだほうがいいなと思ったからなんです。

うちの会社では、年に4回個人面談があるんですよ。成長目標を立てて、それを達成するために、アドバイザーや事業部長と話し合うんですね。そこであるとき「今の段階で深くデザインを追求しなくてもいいんじゃない? 一度広げてみたら?」って言われたんです。

その頃って、私の中で辛い気持ちもあったときで。デザイナーとして目標を決めても達成できなかったり、忙殺されて目標を追うこと自体できなくなったり。「ずっとデザインを続けているけど、本当に成長しているのかな、伸び代あるのかな?」って。自分でもそう思っていたし、周りの人から見ても「んー」っていう感じだったんだと思います。

だけどその面談で、「他のところでは成長が見込めそうなことがまだまだあるし、そっちに進んでみたら」というようなことを言われて、確かになって思ったんですよね。

身も蓋もないことを言えば、外部にも優秀なデザイナーっていっぱいいらっしゃるんですよ。的確なディレクションさえできれば、いいものは作れる。FICCにしか作れないものを作ろうとしたときに、求められるディレクター像があるだろうし、それを目指してみるのもいいかも、と思ったんです。

私の中で、自分が手を動かすことに重きを置いていたわけではなく、ただ、良いものを作るために自分ができることをしたいと思っていました。だからディレクターとデザイナーの線引きもきっぱりとは分けてはいなかったし、自分が成長できるようなことをしてみようと思ったんです。

初めて自分でディレクションをした案件は、化粧品のブランドサイトの運用業務でした。そのときには、クライアントに自分から提案して採用してもらったり、自分が作っているものに対していくらの対価が支払われているのかを知ったり、クリエイティブ以外にも多くの学びがありました。見積りから公開まですべてひとりで経験して、デザイン以外の領域で提案や改善をできたのは、とても嬉しかったですね。

デザイン経験があるからこそ、「作る人」の気持ちがわかる

デザインだけをしていた頃は、疑問や憤りを感じることも多かったんですけど(笑)、今思えばそれらは全部、ディレクター業務に活きているなって思います。

まず、話が早いということ。実務経験があると、打ち合わせの段階から制作を想定できるので、「これはできる」「これはできない」というのが判断できます。結果、早い段階から現場に無理強いしない形で詰めることができるんですよね。

もうひとつは、戦略段階でクリエイティブからのアイデアを出せること。プロデューサーが戦略を考えているときに、「こういうのが作れるよ」とか「こうしたらクライアントも喜びそう」とか、クリエイティブとしてできる現実的なアイデアを伝えることができます。

でも、中でもいちばん大きいのは、作る人の気持ちがわかるってことでしょうか。「無茶振りしないようにしよう」とか、「嫌な気持ちにならない言い方をしよう」とか。作る人に対してどのような言い方をすればいいのか、自分が作る人だったからわかるんです。良いものを作るためにどういう進行管理をすればいいのか、それが肌感覚でわかるのは大きいと思います。

「その人の答え」の種を育てるのが優秀なディレクター

逆に、ディレクターの業務をやり始めて大変だったことは、人に仕事を渡していくのがなかなかできなかったことですね。人とものをつくるときにどう動くのが正解なのか、わからなくなる時期がありました。

自分で作りたい気持ちもあるし、指示出しやフィードバックの仕方にも慣れていないしで、「自分でやっちゃった方が早いな」とか思っちゃって、結果、自分のリソースがなくなってしまったこともあります。そのときは面談で、「チームでリソースを分け合うことを覚えてほしい」という指摘をもらいました。

どうしてできなかったかと言うと、「私の答え」にこだわっていたからだと思うんですよね。自分がデザイナーとして手を動かしているときには、「私の答え」だけがあるんですよ。でも、誰かに手を動かしてもらっているときには、「その人の答え」がある。そこに「私の答え」を押し付けてしまうとその人にやってもらう意味がなくなってしまうのに、どうすればいいのかわからなかったんですよね。

だけどそんなふうに悩んでいるとき、ふとまわりを見てみたら、上手にディレクションをしているスタッフがいたんです。たとえば、事業部長はもともと制作もできる人なんですけど、人を説得してデザインを改善させるフローがすごく効率的なんです。私は「ここはこうだから、こういうふうに直してください」と口数多くフィードバックをしてしまう癖があったんですけど、彼は「ここ、こうしたら?」ってくらい言葉少なで。でも、そのシンプルな指摘でどんどんデザインが良くなっていくんですよ。それを見ていて、何が違うんだろうって考えるようになりました。

それで思ったのが、彼はそのデザインに「その人の答え」の種を見つけているんだろうなってことだったんです。その種をぴっと掬い上げて、「これを使おう!」と言って、水をやって育てていく。それができる人が、良いディレクターなのだなと思いました。

その種が見えないと、永遠に私の視点だけでフィードバックしてしまう。とは言え、自分とは違う答えに対して、「ここがいいから伸ばしなよ」って言うのは勇気のいることです。でもそれを言わないと私は変わらないんだなって、彼を見ていて思いました。

そのときようやくデザイナーとディレクターの違いがわかって、自分自身、変わり始めたのかもしれません。

クオリティを上げるために、デザイン以外でできることを

今仕事で大事にしていることは、「違和感のあることはそのままにしない」ということです。ディレクションを始めて改めてわかったんですが、最終的なアウトプットの品質って、デザインだけによるんじゃないんですよね。クライアントとのやりとり、進行管理、見積もりなど、進め方ひとつで良くも悪くもなる。クオリティのためにできることって、デザイン以外にもいっぱいあるなと思いました。

それに気づいてからは、こちらの伝え方で伝えるんじゃなくて、相手にちゃんと伝わるように伝えることを意識しています。以前あったことなんですが、ある写真をSNS広告で使いましょうという話で進んでいたのに、「Instagramは聞いていたけど、Twitterは聞いていませんよ」と言われて掲載できなくなったんです。資料にも書いてあるし、打ち合わせでも言っている。だけどそうなってしまったのは、ちゃんと伝わっていなかったからなんです。すると、できるはずだったことができなくなってしまったんですよね。最終的な実現のために、「進め方」「伝え方」はすごく大事なんだなって身に沁みて学んで、それからはいつも意識するようにしています。

今後チャレンジしていきたいことは、もっと外のデザイナーさんと一緒にコンテンツを作りたいなってことです。このあいだ、カラーコンタクトの広告案件で、イラストレーターさんにイラストを描いていただいたんですが、それがすごく楽しかったんですよね。アウトプットにはこういうやり方もあるんだなって、純粋な感動があって。

やっぱり私は「自分の手で作りたい」よりも、「より良いものを作るために自分のできることをしたい」の気持ちが強いようです。だから、良いものを作るために良いチームビルディングをするというのにも、最近興味が出てきました。今後はそういう面でも、自分から提案していけたらいいなって思っています。

募集している職種

ディレクター
京都:ブランドのマーケティングから施策まで携わりたいディレクター募集
FICCは東京と京都にオフィスを構え、主に日本のナショナルクライアントのマーケティング戦略の構築から施策の実行まで、幅広い領域でマーケティング活動を支援しています。 京都オフィスのチームは、東京だけではなく関西の企業やブランドに対してもFICCの価値提供を行っています。 現代のマーケティング課題を解決するために、私たちは価値を創造する「ブランドマーケティング」と、再現性を高める「データドリブンマーケティング」の融合を目指しています。パーセプションフロー・モデルなどのフレームワークを活用し、心の変化を定量的に検証する私たち独自の手法は、多くのリーディングブランドに採用され、ブランドの成長に貢献しています。 6年前に発足された京都オフィスでは、東京オフィスとの連携を密に、より多くの価値を提供するために東京メンバーと共に学際的に学び、変化し続けています。プロデューサー、ディレクター、デザイナーが同じ知識を共有し、さらに一人ひとりが持つ能力をフルに発揮する環境と、デジタルマーケティングの分野における革新性を京都オフィスでも実現していきます。
FICC inc.
プロデューサー
京都:デジタルマーケティングでブランドの課題を解決するプロデューサー募集!
FICCは東京と京都にオフィスを構え、主に日本のナショナルクライアントのマーケティング戦略の構築から施策の実行まで、幅広い領域でマーケティング活動を支援しています。 京都オフィスのチームは、東京だけではなく関西の企業やブランドに対してもFICCの価値提供を行っています。 現代のマーケティング課題を解決するために、私たちは価値を創造する「ブランドマーケティング」と、再現性を高める「データドリブンマーケティング」の融合を目指しています。パーセプションフロー・モデルなどのフレームワークを活用し、心の変化を定量的に検証する私たち独自の手法は、多くのリーディングブランドに採用され、ブランドの成長に貢献しています。 京都オフィスでは、東京オフィスとの連携を密に、より多くの価値を提供するために東京メンバーと共に学際的に学び、進化し続けています。プロデューサー、ディレクター、デザイナーが同じ知識を共有し、さらに一人ひとりが持つ能力をフルに発揮する環境と、デジタルマーケティングの分野における革新性を実現していきます。
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