こんにちは、フリックフィットです。わたしたちは、日々の歩行データをスマートフォンと連携して記録・分析することで、ユーザーのライフスタイルに新たな気づきを提供するプロダクト「ardi」を開発しています。
2025年秋、わたしたちはクラウド購入型クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」でクラウドファンディングに挑戦し、780名のサポーターの皆さまから、59日間で総額2,074万円をご支援いただきました。
▲https://www.makuake.com/project/smartsole-ardi/
とくに、開始から24時間の間に1,000万円を超える支援が集まったことは、歩行データや姿勢の状態を可視化するウェアラブルへの期待の表れだったように思います。…と、これだけお伝えすると大成功の華々しいストーリーに見えるかもしれません。ですがその裏側にあったのは、「手元に届ける実物(ハードウェア)がない」「そもそも誰にどう届けるかが決まっていない」という、ハードウェアスタートアップならではの泥臭い課題と葛藤の連続でした。
今回は、このMakuakeプロジェクトを主導したPdMへのインタビューをもとに、フリックフィットが「研究開発(R&D)主体の組織」から「世の中に価値を届ける事業チーム」へとして進化していったリアルなプロセスをお届けします。
技術はあるのに届ける方法がない。PdM入社をきっかけに始まった事業化への模索
2025年春。当時のフリックフィットは、それまで展開していた複数のサービスやプロダクトを整理し、スマートインソール事業にリソースを集中させようという重要なフェーズにありました。
研究開発を重ねてきた技術があり、データ計測や歩行分析のアルゴリズムもある。他社と協力して作った試作品も存在していて、実際にインソールを入れて歩けばデータとなり歩行状態を解析・可視化できる。
そんな技術的なポテンシャルはあるものの、それをプロダクトとして世の中にどう展開し、どう売っていくかという具体像はまだ白紙に近い状態でした。当然、お客様に販売できるほどの大量生産にも至っておらず、R&Dとしては進んでいても、事業として社会に届ける仕組みやプロダクトとしての設計が描ききれていなかったのです。
そこで、新たなメンバーを迎え入れチームをビルドアップしながら、事業化に向けた模索をスタートしました。
ゼロベースで探った売り方とターゲット
当時チーム全体に横たわっていたのは、「どうやって売っていくか」という根本的な問いでした。
新規のIoTガジェットやハードウェアプロダクトにおいて、クラウドファンディングは定番の手法のひとつです。けれど、それがフリックフィットにとっての正解だとは限らない。売り方も提案の仕方も、ゼロベースで検証していく必要がありました。
さらに開発のタイムラインを精査していく中で見えてきたのは、「どう頑張っても2025年中にユーザーへ届く量産ハードウェアは完成しない」、つまり、一般販売は難しいだろうというスケジュール感でした。
しかし、そんな中でも検証できることはあるはず、とわたしたちは考えました。
それは、足元から取得できるさまざまな動作データのなかで、誰に向けて、どんな切り口でメッセージを届ければ熱量のあるコミュニティとマーケットが作れるのか。条件は、一定の市場規模があり、市場の中に小規模であったとしても“熱狂”が生まれること。そして、それが一過性のガジェットとしてではなくブランドへと育っていくかどうかでした。
そこで着目したのが、ピラティスなどの流行とともに、若年層の美容・ヘルスケアとして印象が変わりつつあった「姿勢」というテーマでした。
スマートリングが睡眠市場を開拓したようにフリックフィットの生み出すプロダクトが姿勢市場を席捲できるのではないか。こうしてわたしたちは、女性向けの「姿勢の可視化」「姿勢改善」という切り口を中心に据え、市場の反応を確かめるテストマーケティングとして、クラウドファンディングに舵を切ることになりました。
手元に「実物」がない中での、泥臭いMVP検証と開発の葛藤
2025年9月のプロジェクト開始に向け、春先から準備が本格化。Makuakeでのプロジェクトスタートに先駆けてLPを作成し、ardiに興味を持ってくれるお客様を集めるマーケティング施策を実行していきました。
しかし、開発の裏側では、あるもどかしさが続いていました。それは、「モノがない」ということ。通常ソフトウェアやアプリのMVP(実効最小限のプロダクト)検証であれば、試作品をユーザーに使ってもらい、フィードバックを受けてUI/UXを高速で改修していくサイクルを回します。
しかし、わたしたちの手元にはお客様に試していただけるだけのクオリティと数のハードウェアの実物がまだない。ハードウェアが完成し切っていないゆえに、アプリの体験も完璧にはブラッシュアップしきれない。そんなもどかしさがチーム全体にありました。
▲実際のアプリ画面
PdM率いる事業推進チームが頭の中でUI/UXの構想を膨らませる一方で、エンジニアチームは技術の仕込みと作り込みを進めていきました。
2026年5月までに必ず購入者の元へ届けるという動かせない締め切り。R&D期間が長く、研究機関のようだった組織に、「お客様のもとにプロダクトを届ける」という共通の目線が生まれた瞬間でした。
2,000万円達成の裏側と、発送後に見えてきたハードウェアの壁
2025年9月、Makuakeでのプロジェクトがスタートしました。
クラウドファンディングでは、最初の2〜3日間でどれだけスタートダッシュを決められるかが勝負と言われていますが、当日は強力な競合プロダクトも並ぶ中、見事にデイリーランキング1位を獲得。最終的にはサポーター780名、トータルで2,000万円の応援購入を集めることができました。
その裏側では、開発チームが粛々とプロダクトをブラッシュアップ。1月には最新サンプルが届き、「手元にモノがない」状態を解消し、社内メンバーが通勤や通勤や外出、日常のさまざまなシーンでardiを使い続けながら検証を行いました。製品お届け前の3月には、ハード・アプリの両面で最終調整の局面へ。
▲検品作業の様子
▲当時のパッケージ・外箱のサンプル
社員総出で検品作業、最終確認を行いながら、2026年5月、無事お客さまのもとへ商品を発送できました。
Makuakeを通して見えた壁
Makuakeのプロジェクト・テストマーケティングを行う中で、見えてきたことがあります。ひとつは、ユーザーが求めているのは、機能的価値だけではなく、体験価値なのではないか、という点です。
プロジェクトスタート時から私たちは、ユーザーからの問い合わせへの対応に加え、ユーザーインタビューや電話、ときにはユーザーとの会食まで実施し、定性的にユーザーのインサイトを深掘りしていきました。
そこで見えてきたのは、事前のマーケティングで打ち出していた「姿勢改善」の領域に留まらない、ユーザーのリアルな声でした。
製品発送からこれまでの約半年間で、ヘビーユーザーから上がってきたのは、「普段意識していない自分の姿勢や歩行のデータが勝手に蓄積されていって、自己理解が深まるのが面白い」という意見。
また、「整体で言われ続けていた『自分の身体の課題』について、データを見てようやく合点がいった」「自分の歩き方の癖や、疲労による変化が数値で見えるのが新鮮」など、単に姿勢を良くするという機能的価値以上に、自分の身体をデータで深く知るというセルフコーチングのようなUXにこそ、強い体験価値があることが分かってきたのです。
▲発送前にも「自分のことを知りたい」というコメントが寄せられていた
もうひとつ見えてきたのは、「データを取る」という、当たり前に思えるアクションの難しさ。足元という過酷な環境で、センサーを安定して動かし、データを欠損なくサーバーへ飛ばす。ハードウェア・ファームウェアとしてこれを完璧に成立させることが、いかに高度な挑戦であるかを痛感しました。
「研究機関」から「事業チーム」へ。私たちが今、エンジニアを求める理由
Makuakeへの挑戦を通して得られたのは、売上や認知度の向上だけではありません。最も大きかったのは「社内の意識と意思決定の変化」でした。
これまで技術探求・R&Dを中心に動いてきた組織が、「期限を決めてユーザーに体験を届け、ビジネスにする」という強い当事者意識を持つチームへと変わりました。分からなかった市場の反応や課題が明確になり、プロダクト開発の軸が定まったことこそが、最大の成果だと感じています。
また、Makuakeのプロジェクトを経て、フリックフィットは開発体制の内製化、つまりODMからの脱却を決めました。
Makuakeで多くのユーザーに製品を届けるにあたり、フリックフィットは社内で企画を行って設計を委託するODMの体制を採っていました。しかし、これでは社内に根幹となる技術やノウハウが蓄積されず、ハードウェアの“当たり前品質”を自分たちの手で向上させていくことができません。
「足元からの動作データ」という根幹の技術を泥臭く磨き上げ、本当に信頼できるプロダクトを自らの手で組み上げていく。そのために、私たちは今、設計から製造までを自社でリードできる開発体制への刷新を進めています。
フリックフィットでは、共に働く仲間を募集しています
今のフリックフィットは、決して「完成された会社」ではありません。足元という過酷な環境で、安定して動作・データ送信を行う基板・構造の開発。歩行や日常動作の癖から「疲労」や「感情」「自己理解」までを解き明かすアルゴリズムの構築。単なるグラフ表示に終わらない、日常に溶け込む体験のプロダクトデザイン。
どれも一筋縄ではいかない難問ばかりですが、「作って終わり」「仕様書通りのコードを書くだけ」の開発ではなく、「自分の作ったハードやコードが、どうユーザーの行動や体験を変えるのか」を泥臭く検証し、事業そのものを創っていく面白さが、今のフリックフィットには溢れています。
R&Dの殻を破り、ここから世界に向けた新しい動作データブランドを作っていく。この未完成で刺激的なフェーズを面白がってくれるエンジニアの参画をお待ちしております。
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