東京の未来をDXで切り拓く:DXのスペシャリストが民間から行政に飛び込んだ理由
2024年11月に、GovTech東京の業務執行理事兼CIO(最高情報責任者)に中野 啓太が就任しました。中野はファーストリテイリングや日清食品、西友などの情報システム部門でデジタル化を主導し、GovTech東京に参画。
その後、デジタルサービス基盤開発本部長として3つのグループを束ねた後、CIOに昇格しました。
今回は、民間企業時代のDXの取組や、民間からGovTechの領域に飛び込んだ経緯についてインタビューしました。
目次
東京の未来をDXで切り拓く:DXのスペシャリストが民間から行政に飛び込んだ理由
DXのスペシャリストが民間から行政に飛び込んだ理由
グローバル展開やシステム共通化を牽引
ひとりあたりの年間総労働時間を243時間削減、DXの力を実感
東京都のシステム共通化を加速度的に進める
東京都の仕組みはダイナミック、ほかでは得られない経験ができる
DXのスペシャリストが民間から行政に飛び込んだ理由
グローバル展開やシステム共通化を牽引
― GovTech東京での役割を教えてください。
これまで、デジタルサービス基盤開発本部の本部長として三つのグループを束ねてきました。今回理事に昇格し、CIOという立場から財団内の情報システムはもとより、東京都内自治体と連携したシステムやデジタルツールなどの共同化やクラウド化などのデジタル基盤の構築をリードすることになりました。身が引き締まる想いであるとともに、しっかりと役割を果たしていきたいです。
― GovTech東京に入職するまでも、内部管理やセキュリティ系のシステムを担当されていたのですね。
新卒で外資系コンサルティング会社のアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社しました。同社は当時、ITコンサルティング事業を中心としていたため、主に官公庁や事業会社に対するシステム基盤の構築やプロジェクトマネジメントの業務に約10年間、従事しました。
その後、2001年12月にユニクロをグローバル展開しようとしていたファーストリテイリングに転職しました。当時のユニクロは、"フリースブーム"の少し後、海外輸入服を販売する会社からオリジナル製品を製造販売するビジネスモデルに進化して売上が急増していたのですが、その反動もあってか、私の入社直後の3年は売上が約1000億円ダウンするなど、周囲からは「大失敗の転職」と言われましたね。世界的企業になった今では、「先見の明があった」とも言われますが。
英国のユニクロ事業も最初はうまくいかず、2003年に事業を縮小して再構築する際に、日本で構築中であったシステムを英国にも展開するプロジェクトの責任者を務めることになりました。国内約600店舗で使用していたシステムをスモールコピーして、当時5店舗の英国に導入したのです。その後、そのモデルが世界各国のユニクロでコピーされ、グローバルで売上を可視化できるようになりました。そして、各国の売上をより詳しく可視化できるダッシュボードもつくりました。2012年にはフランスオフィスにも出向、現地のブランドとのシステム統合などに関与しました。
ひとりあたりの年間総労働時間を243時間削減、DXの力を実感
― 日清食品でもDXの力を実感する経験をされたとか。
入社当時の日清食品では旧来型のメインフレームが使われており、海外事業とのやりとりについては、現地から届くレポートでしか事業実績を知り得ない状況でした。国内の工場やグループ企業でもそれぞれ異なるシステムが使われていたため、コミュニケーションシステムを標準化し、ERP導入の際にデータを統一化したことなどにより、全社で情報を共有できるようになりました。
また業界全体で見ても、もともと、労働時間の長さが課題視されていましたが、古い仕組みを捨てて新しい仕組みを取り入れていった結果、ひとりあたりの年間総労働時間が約243時間短縮されたという結果にもつながったと考えています。
― では、どうしてGovTech東京に参画したのでしょうか。
これまでも業種は様々ですが、生活に密着したサービスに携わることにやりがいを感じてきました。次に携わるのもそのようなサービスがいいと考えていた矢先に、GovTech東京からオファーをいただき、検討する中で「公共こそ、生活に密着した究極のサービスではないか?」と気が付いたのです。
GovTech東京が2023年9月に発足したばかりであり、これから仕組みをつくっていく段階であることにも惹かれ、チャレンジさせていただくことになりました。
東京都のシステム共通化を加速度的に進める
― 従来型の企業のシステムを変革していくうえで、大切にしてきたことは。
はじめのうちは、現場にヒアリング資料を送るだけで抵抗感を持たれることも珍しくありません。それでも諦めず、時間をかけて丁寧に説明していくことを地道に繰り返してきました。これは行政においても同じで、まずは東京都庁の各局や自治体の皆さんと対話し、理解してもらうことが改革への入り口だと考えています。
そして、大半のプロジェクトにはゴールが設定されています。不思議なことに、達成するために設定されたゴールであっても、「できない」と感じる人も多いものです。それでも実行していくと意外とできる。私自身もこれまで何度も心が折れそうになりましたが、すべてやり遂げることができました。「できないことはない。やるんだ」という、強い気持ちを持つことが大切です。
― 東京都のシステム共通化はどのように進めていきますか。
これまで東京都にある62の区市町村の皆さんと情報共有する手段が限られてましたが、宮坂さんの舵取りのもと、メーリングリストやプロジェクト管理ツールで課題の進捗を共有できるようになり、自治体の皆さんにも「共同調達に参加をお願いします」と情報発信をしてきました。
2023年のGovTech東京発足から約半年間で、28の自治体が共同調達に参加されていて、直近6カ月でさらにお声掛けをしたことによって、現在は50を超える自治体が共同調達に参加されています。(2025年2月現在)
このほかにも月に数回、各自治体のシステム担当者との座談会なども通じて、共同調達への理解は少しずつ深まっていると感じます。ここから、東京都と62区市町村のシステム共通化が加速度的に進んでいくことを期待しています。
― 行政と民間企業とで通ずる部分もありますか。
例えば、これは私の成果ではありませんが、日清食品と伊藤園は組織の垣根を越えて、物流の共同化を行っています。効率化を図ることで、コスト削減と環境負荷の軽減を実現されました。
具体的には、伊藤園の原料の茶葉を運ぶトラックが復路で日清食品の即席麺を運ぶ「ラウンド輸送」を導入することで、トラックの使用台数を約19%削減し、CO2排出量も約17%削減されています。異なる企業文化や業務プロセスを調整しながら、共通の目標に向かって進むことでより大きな成果を得られるという素晴らしい事例ですよね。
これはGovTech東京が大事にしている「車輪の再発明はしない」という思想とも通じるものがあります。既存の技術やシステムを最大限に活用し、無駄な再発明を避けることで、効率的かつ効果的なソリューションを提供することができるのです。
GovTech東京の思想を表したステッカー「Don’t reinvent the wheel. =車輪の再発明をしない」
東京都の仕組みはダイナミック、ほかでは得られない経験ができる
― GovTech東京で働く魅力について教えてください。
デジタル基盤として考えると、1400万人を支える東京都のシステムは非常にダイナミックな規模です。これほど大規模なシステムを、都民の方々の生活インフラを止めずに、デジタルへ移行していく。こうした経験は民間企業ではなかなか得られませんし、私以外のメンバーも皆、やりがいを持って取り組んでいるのではないでしょうか。
GovTech東京には刺激的なメンバーが揃っています。最先端企業でセキュリティ責任者をしていた、ネットバンキングの仕組みをつくったというメンバーもいて、「こんな人がこんなところに?」と驚くような出会いも少なくありません。20代、30代の若手層も多く活躍しています。こうした仲間たちと共に働けるだけでも、GovTech東京に来た価値があると感じています。
―― 最後にCIOとしての意気込みをお願いします。
GovTech東京は、東京の未来を創る組織です。東京都のシステム共通化を加速度的に進めることもそうですが、情報技術を駆使し、都民の生活をより便利で快適なものにしていくことを目指しています。
私たちの取り組みは、単なる技術革新にとどまらず、区市町村を含めた東京全体のDXを推進し、未来の東京を創り上げるための重要な一歩です。これからもGovTech東京のメンバーと共に、行政のDXをリードし、より良い未来を創造していきたいと思います。
※このストーリー記事は2025年3月28日 12:18公開の一般財団法人GovTech東京の公式noteからの転載です。