株式会社Macbee Planet(以下、Macbee Planet)は2026年7月29日付で、代表取締役社長に正田氏が就任しました。前代表の千葉氏は取締役として、引き続き経営に携わります。
正田氏は、Macbee Planet生え抜きの経営者ではありません。自ら創業した株式会社AlphaのM&Aを経て、2021年にMacbee Planetグループへ加わった、いわば「外から来た起業家」です。
本記事は前後編の前編として、正田氏とMacbee Planetの出会いから、グループイン後に重ねてきた挑戦、そして代表取締役社長に就任するまでの歩みをたどります。なぜM&A先としてMacbee Planetを選んだのか。異なるカルチャーを持つ組織とどう向き合い、事業や次世代の経営者を生み出してきたのか。その軌跡を伺いました。
私がマクビーにいる理由。
超えたいと思える人と、一緒に仕事ができるから。
毎日のように新しい刺激があり、自分自身もまだまだ成長できる。
そこが、マクビーで働く面白さです。
株式会社Macbee Planet 代表取締役社長
正田
「M&A後も挑戦し続けたい」Macbee Planetを選んだ理由
─── 正田さんが立ち上げられたAlphaの事業内容と、M&Aを検討し始めたきっかけについて教えてください。
正田:2016年に「世の中をVR化する」というミッションを掲げ、株式会社VRizeという社名で会社を立ち上げました。当時は「VR元年」と言われたタイミングで、ソニーがPlayStation VRを出したり、Facebook社(現Meta)がOculus RiftというVR端末を出したりしていて、一気にVRが盛り上がり始めた頃でした。
ただ、その後はVR市場が当初期待していたほどの広がりを見せなかったんですよね。市場の成長を待ち続けるのは難しいと判断し、2017年に事業の方向性を転換しました。VRの要素技術として培ってきた3DCG技術を活かした、スマートフォン向けの3DCGアドネットワーク『3D AD』を2018年にリリースしたんです。
『3D AD』は順調に立ち上がり、2020年頃から本格的な成長期に入りました。同じタイミングで、社名もAlphaに変更しています。事業の成長とともに、広告業界でも一定の認知度を得られるようになり、複数の企業からM&Aのお話をいただくようになりました。それをきっかけに、M&Aという選択肢を具体的に考え始めたんです。せっかくなら自分たちでも候補を探してみようということになり、10社弱の企業と半年以上にわたって話を重ね、最終的にMacbee Planetに決めました。
─── M&Aの候補が多くあるなかで、Macbee Planetを選んだ決め手はどこにありましたか。
正田:まず、スピード感ですね。候補企業と交渉を進めるなかで、意思決定のスピードだけでなく、そもそものビジネスに対する時間軸が合わず、候補から外れていった会社もありました。そのなかで、Macbee Planetは圧倒的に"早かった"んです。当時、Alphaは十数人規模のスタートアップだったのですが、やり取りを重ねるなかで、違和感がありませんでした。細かな条件交渉もほとんどなく、こちらの希望をおおむね受け入れてくれたことも、決断を後押ししました。
それ以上に重視していたのが、「M&A後も働きがいを持ち続けられるかどうか」です。会社を大手企業へ売却したあと、大きな組織のなかで思う存分に力を発揮できず、仕事へのモチベーションを失ってしまう起業家の先輩を何人も見てきました。だからこそ、組織のなかに埋もれるのではなく、起業家人材としての価値を存分に発揮できる環境を選びたかったんです。
その点、Macbee Planetは上場こそしていたものの、まだまだ成長の途上にあり、組織に強いベンチャースピリットがありました。優秀な経営陣と一緒にこれからの会社をつくっていける。そんな環境にワクワクしたことが、最終的な決め手でした。いま振り返っても、この決断は間違いなく最善だったと思っています。
今だから言えますが、自分がここにいる意味を感じられなくなったら、いつ辞めてもいいと思っていました(笑)。逆に言えば、挑戦し続けられるのであれば、ロックアップ※の期間に関係なく、ずっとやっていきたいと思っていたんです。結果として今もMacbee Planetグループに残っていて、“社長”という、これまでで最も大きな挑戦を任せてもらうことになりました。
※ロックアップとは、企業の合併・買収後に、会社を売却したオーナー側が、売却後も一定期間その会社に残り、事業運営等を引き続き行うことを義務付ける契約条項のこと。
エンジニア文化をグループへ。Alphaを起点に進めた組織変革
─── カルチャーの異なる会社にジョインすることへの難しさは感じませんでしたか?また、そのギャップはどのように埋めていったのでしょう。
正田:僕自身はもともとMacbee Planetの広告代理店らしいカルチャーが好きだったので、比較的スムーズに馴染めたと思っています。一方で、当時のAlphaはメンバーのほとんどがエンジニアでした。広告代理店とは仕事の進め方や価値観も大きく異なるので、両社のカルチャーにはかなりのギャップがあったんです。
だからこそ、無理に一つにするのではなく、時間をかけてお互いのカルチャーを近づけていくことを大切にしました。例えば、オフィスも最初から統合するのではなく、最初の半年ほどは別々のままにして、交流の機会をつくりながら、段階的に人事PMI(買収後の統合作業)を進めていったんです。
その過程では、Alphaがもともと持っていたカルチャーをできるだけ尊重することも意識しました。制度や福利厚生なども一律にMacbee Planetのやり方に合わせるのではなく、活かせるものはそのまま残す。Macbee Planet側も、Alphaのカルチャーを無理に変えないよう、かなり配慮してくれました。
例えば、当時Alphaのオフィスにあったビールサーバーも、そのままMacbee Planetのオフィスに持っていったんですよ(笑)。今はもうないんですけど、そういう細かいところも含めて、Alphaらしさを残しながら少しずつ一つの組織になっていきました。
─── 特に残しておきたかったカルチャーと、それをどのように実現したのかを教えてください。
正田:どうしても残したかったのは、テキストコミュニケーション文化ですね。Alphaはエンジニア中心の組織だったこともあり、そもそも会議がほとんどなかったんですよ。
もちろん口頭でのコミュニケーションもありますが、基本的なやり取りはすべてSlack上で行っていました。オープンなチャンネルで発言すれば誰かが答えてくれるし、そのやり取りをほかのメンバーも見ることができる。会議室の中だけで情報が閉じることなく、自然と社内に共有されていく。そういう文化を大切にしていました。
一方で、広告業界は「飲みニケーション」という言葉に代表されるように、対面でのコミュニケーションを重視する会社も多く、Macbee Planetもそうでした。また、チャットツールも当時のMacbee PlanetではChatworkが中心だったんです。
そこで、Alphaのエンジニアメンバーが働きやすい環境を残すために、Slackを継続して使わせてもらいました。そこから徐々にMacbee Planet側にもSlackの活用が広がり、結果的にはグループ全体に浸透していったんです。
─── Alphaのカルチャーを残すだけでなく、Macbee Planet側にも広げていったのは、どのような狙いがあったのでしょうか。
正田:そもそも、「Alphaを軸にMacbee Planetグループ全体のテクノロジーレベルを底上げしていきたい」という考えがありました。なので、グループインした後に僕がかなり時間を使ったのが、「文化の橋渡し」でした。事業の統合を急ぐよりも、まずはお互いの働き方や価値観をどうすり合わせていくか。そこを飛ばしてしまうと、メンバーが働きづらさを感じたり、場合によっては組織を離れてしまったりします。
エンジニアにとって、情報がオープンに共有されていることはすごく重要です。会議室で決まったことが後から共有されるよりも、Slack上で議論のプロセスまで見えているほうが圧倒的に動きやすい。だから、単にAlphaのカルチャーを守りたかったわけではありません。Alphaの良い部分を活かしながら、Macbee Planet全体をよりテクノロジーに強い組織にしていく。そのために必要なことだった、という感覚ですね。
若手と立ち上げた新規事業。そこから生まれた次世代の経営者
─── グループイン後は、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。
正田:2021年8月にグループインし、その年の10月に執行役員プロダクト本部長を任せてもらいました。その後は、3Dアドグループや株式会社MAVELのメディア事業本部長など、本当にさまざまなミッションに携わらせていただきましたね。
そのなかでひとつ挙げるとすれば、株式会社Macbee Aimeという子会社の立ち上げです。社内新規事業として本当にゼロのところから立ち上げて、一定の売上・利益が出る規模まで成長させました。
僕が責任者となり、社内の3人ほどに声をかけて始めた事業なのですが、その一人が、現在Macbee Aimeの代表を務める藤村です。当時の藤村は入社してまだ2ヶ月ほどで、役職もない若手メンバーだったんですよ。ほかのメンバーも、いわゆるハイレイヤーの人材を集めたわけではなく、若手を中心としたチームで事業をつくっていきました。
─── そこから藤村さんを社長に抜擢したのは、どのような理由があったのでしょうか。
正田:メンバー同士を競わせながらやっていくなかで、藤村の能力がどんどん際立っていったんです。将来的には「僕を超えていくかもしれない」と感じるくらいのポテンシャルがありました。だったら、年齢や社歴に関係なく、どんどん大きな機会を与えたほうがいい。そう考えて、マネージャーをほぼ飛ばす形で部長に引き上げ、その後、入社3年目くらいで子会社の社長を任せました。
年齢や肩書き、これまでのバックグラウンドに関係なく、挑戦する人を思い切って抜擢する。実際に、Macbee Planetではそうした抜擢がいろいろなところで生まれています。これは、会社の強みの一つだと思っています。
M&Aから5年。新たな挑戦は、Macbee Planetの社長
─── 藤村さんをはじめ、挑戦する人への抜擢が多く生まれているなかで、今回、正田さん自身も代表取締役社長に抜擢されましたね。
正田:そうですね。僕自身も、Macbee Planetで大きな機会を与えてもらった一人だと思っています。
僕はもともとMacbee Planetでキャリアを積んできた人間ではなく、M&Aをきっかけにグループに加わった人間です。それでも、執行役員や事業責任者など、さまざまな機会を与えてもらい、今回、代表取締役社長を任せてもらうことになりました。
だからこそ今度は、僕が会社やメンバーに、これまで以上に大きな機会をつくっていく番だと思っています。Macbee Planetには、まだまだ伸ばせる事業もありますし、新しく挑戦できる余地もたくさんある。自分自身がそうしてもらったように、挑戦する人にどんどん機会が回ってくる会社にしていきたいですね。
M&AをきっかけにMacbee Planetへ加わり、事業を立ち上げ、若手を経営者へと抜擢してきた正田氏。そして2026年7月、自身はMacbee Planetの代表取締役社長に就任しました。
しかし、その就任は決して既定路線ではなかったといいます。なぜ正田氏が次の社長に選ばれたのでしょうか。そこには、何十回にもわたる経営陣との議論と、「本当に正田に任せるべきなのか」という率直な意見のぶつかり合いがありました。
後編では、代表交代をめぐって重ねられた議論と正田氏が就任を決意した背景から、新社長として託された役割、AI時代に目指す組織と求める人材、そしてこれからのMacbee Planetについて伺います。
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