SES業界で働くエンジニアから、繰り返し聞いてきた不満がある。「給与がどう決まっているのか分からない」。査定の月になって初めて金額を知らされる。上司の裁量で変わる。案件の単価が上がったのに、給与には反映されない。ミラスタDS事業部は、この「決め方が見えない」構造そのものに向き合ってきた。今回は、給与がどう決まるのかを、社内ルールの構造ごと公開する。
業界の構造課題と私たちの取り組み
SES・フリーランス市場では、職種別の平均年収や案件単価の相場を公開する動きが広がっている。フリーランス向けのプラットフォームは毎月、職種別の年収データを公表し、「相場感」を可視化している。候補者にとって有益な情報だが、それはあくまで市場に出ている数字であって、「自分の給与がなぜその金額なのか」という個別の意思決定までは説明してくれない。
求人を見渡せば、「単価連動」「高還元」「年収UP実績」といった言葉は珍しくない。しかし、制度の名前が似ていても、その中身、つまり誰が、どんな基準で、どのタイミングで判断し、結果を本人にどう伝えるのかまで公開している会社は多くない。ミラスタが見せたいのは名前ではなく中身だ。
もう一つ、私たちが意識的に仕組みにしていることがある。「単価が上がれば給与も上がる」という一方向の話だけでなく、「単価が下がっても、それを理由に給与は下げない」という約束まで含めて、制度として明文化していることだ。相場の透明化の次に必要なのは、個々の意思決定プロセスの透明化だと考えている。
制度の中身
ミラスタの給与は、次の4段階で決まる。
① 等級を判定する。6つのキャリアパス(インフラ設計構築/データ/業務自動化/Webバックエンド/モダンフロント/PMO・PM)それぞれに、Lv1からLv6までの等級表がある。各等級には「役割定義・期待される成果・スキル要件・昇格条件」が文章で定義されていて、査定ではこの表に照らして等級を判定する。判定するのは事業部長と営業マネージャー。根拠に使うのは、スキルマップ・KPIの実績・1on1の記録・案件での実績だ。顧客への請求単価では判定しない。
② 等級ごとの給与レンジが決まる。等級とキャリアパスの組み合わせごとに、想定する給与のレンジが定められている。
③ レンジの中での位置を決める。等級に到達した直後はレンジの下限から始まり、半期ごとの査定で習熟度(次の等級の昇格条件をどこまで満たし始めているか)を確認して、上限に向けて段階的に引き上げる。習熟が確認できる限り、半期ごとに必ず昇給する。
④ 最後に、事業として成り立つかを確認する。決めた給与が、その人の案件単価・粗利で成立するかをチェックする。ただしこれは健全性の確認であって、単価を理由に給与を下げることはしない。成り立たない場合に打つ手は、減給ではなく、単価交渉・案件の見直し・等級と単価のずれの是正だ。
査定は半期ごと(9月と3月)で、結果は翌月から反映される。そして査定月の1on1では、本人に「自分の請求単価・粗利・還元率・給与原資の内訳」を必ず提示する。自分がいくらで売られていて、いくら戻ってきているのかを知らないまま働くことはない。あわせて、入社から一定期間は「給与UP保証」(半期ごとの昇給を最低ラインとして保証し、減給はしない仕組み)を運用している。
なぜこの制度を作ったのか
きっかけは、SES業界で働くエンジニアから聞いてきた「気づいたら条件が変わっていた」「誰が決めたのか分からない」という声だった。エンジニア自身のキャリアと生活に直結する意思決定が、本人の見えないところで完結する構造に、以前から違和感があった。
正直に言えば、ミラスタ自身も以前は「半期の粗利×還元率」で昇給を判定していた。単価と連動するので一見わかりやすい。だが粗利は案件の単価で決まり、単価は本人の力量だけでは動かない。それでは「頑張ったのに上がらない」が構造的に起きてしまう。そこで判定の主軸を「等級=役割・成果・スキル」に移し、単価と粗利は「事業として成り立つかを確認するガードレール」に位置づけを変えた。
ミラスタのバリューの一つは「透明性。還元率・評価基準・キャリアパスを見える化する」。そして「やらないこと」として明示しているのが、本人不在での案件決定、説明のない評価の変更、単価を理由にした減給だ。決め方を隠さない、という方針を制度として運用に落とし込んでいる。
実際の運用エピソード
今年の半期査定では、本人ごとに「いまの等級・次の等級に上がるための条件・そのために推奨する資格や研修」を1枚にまとめた資料を用意し、1on1で本人に渡している。査定の結果だけでなく、そこに至った理由と、次に何をすれば上がるのかをセットで渡すためだ。
その準備の途中で、営業マネージャーからこんな指摘が出た。「この人の昇給幅は、いまのレンジ表では本人に説明がつかない」。実際の給与がレンジの想定と噛み合っておらず、査定の理由を1on1で説明できない状態になっていた。
そのとき採った対応は、その人の査定結果を調整して辻褄を合わせることではなく、レンジ表の設計そのものを見直すことだった。説明がつかない結果が出たら、直すのは制度の側。制度は「公平である」ことより先に、「説明できる」ことを重視している。判断が本人にとって腑に落ちるかどうかを、運用の中で確かめ続けている。
毎月の1on1をどう回しているかは、以前の記事「毎月1on1を全員に。ミラスタが育成を仕組みにする理由」で書いた。査定は、その1on1の積み重ねの上にある。
こんな人にミラスタを薦めたい
「なぜこの評価なのか」を上司に聞いても曖昧にされてきた人。案件の単価が上がったのに、給与が動かなかった人。案件が本人の知らないところで決まってしまった経験のある人。そういう方には、一度カジュアル面談で話を聞いてみてほしい。面談では、この記事に書いた4段階をそのまま説明する。制度の名前より、決め方の中身を見て判断してもらえたらと思う。
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