「ベスト・プラクティス」の居場所

こんにちは。MNTSQ(モンテスキュー)というリーガルテック企業のFounder / CEOをしている板谷です。

MNTSQは最近までステルスで活動していましたが、本日、長島・大野・常松法律事務所とPKSHA Technologyとの資本業務提携を発表させていただきました。

私は、今回の提携によって、MNTSQが目指しているものの実現可能性をぐっと高めることができると考えています。その前提として、今回は、私が何を実現したくてMNTSQを創業して、そのなかでどうして今回の提携に至ったのかをお話ししたいと思います。

少しだけ自己紹介

私は、平成元年に産まれて、週刊少年ジャンプとB'zをこよなく愛し、ラグビーに育てられた人間です。全体的に暑苦しい趣味からそうなったのか、「自分の潜在的な能力を実現すること」を行為規範として信奉しています。

弁護士という職業に憧れはなかったのですが、東京大学法学部の3年生のときに、突如として、「法律の知識だけではなくて、クライアントの事業への理解、営業力、交渉力、語学力や人間力の全ての能力が求められる職業ってとっても面白そうだぞ」と思い至り、弁護士を目指しはじめました。翌年に予備試験に合格して長島・大野・常松法律事務所(NO&T)に入所しています。

NO&Tへの入所

NO&Tは、日本のいわゆる「四大法律事務所」の一角です。偉大な先人弁護士が50年以上も最高のクオリティのリーガルサービスを提供しており、日本で初めて所属弁護士が100名を超えた超大規模事務所でもあります。

私などが偉そうに言うことではありませんが、私は、NO&Tとその所属弁護士をみな尊敬しています。入所前にはドラマのような政治的空間を勝手に想像していたのですが、入所してみると全員があまりにも率直に「最高のクオリティ」のサービスのみを追及しているので、組織としてのクリーンさのようなものに私は胸を打たれました。

「ベスト・プラクティス」の居場所

NO&Tには「最高の契約書はこのような条項を含んでいなければならない」という長年の知恵の蓄積のようなものがあり、その膨大な体系を我々は「ベスト・プラクティス」と呼んでいます。NO&Tの弁護士は、その暗黙知を先輩から引き継いで、目を凝らして契約書の穴を見つけては手当てをしていきます。契約書の穴とは、以下のようなものです。

  • どちらかの当事者に著しく有利である(が、それが認識されていない)
  • 必要な条項が存在しない(後から解釈が分かれ、紛争に至る可能性がある)

上から目線に聞こえたら本当に申し訳ないのですが、はっきり言って、世の中のほとんどの契約書には穴があると思います。「ベスト・プラクティス」とは、その穴を埋めることで、契約を公平にし、無駄な紛争を防ぐための、偉大な先人たちによる長年の試行錯誤の結晶だと考えています。

無力感…。。。

私がNO&Tに入所したときには、そもそも「クオリティの高い契約書」と言われてもピンと来ませんでした。それでも、NO&Tを経由することで契約書が明らかによくなっているのがわかってくると、私はベスト・プラクティスに携われることに誇りを感じるようになりましたし、契約書を確認する作業にとてもやりがいを感じていました。

「最高のクオリティ」を追及するNO&Tでの生活は私に合っていたのですが、年次が上がるにつれて、だんだんと自分にできることの限界を感じるようになりました。契約書を何年も確認していると、だんだん、「この契約書、どこかで見たのと同じ『穴』がまた放置されているな…」という経験が増えてきたのです。

目の前の依頼者の助けになることはとても嬉しいのですが、どれだけレビューしても、同じ穴のある契約書が社会では無数に出回っています。いま思うと考えすぎだったかもしれませんが、「目の前の契約書の穴を一つひとつ埋めていっても、自分は社会をよくできてはいないのではないか…」という疑問や無力感のようなものがだんだんと産まれてきました。

つまるところ、「契約書」は、取引を行うために必須のフォーマットであるにもかかわらず、おそろしく難解です。この難しい「契約書」を最高のクオリティにするための「ベスト・プラクティス」は、ごく一部の専門家のみが持っていますが、当然ながらそのキャパシティーには限界があります。

私は、「ベスト・プラクティス」は、取引を公平にして、余計な紛争を防止するため、社会に必要なインフラストラクチャーだと考えています。一流の弁護士が持つ「ベスト・プラクティス」がより広く社会で活用されるために、自分にできることはないのでしょうか。

リーガルワークのためのテクノロジーの出現

私の頭のなかには「この問題に答えを出す人物かもしれない」という予感があった友人がいました。東京大学の同期である安野貴博です(現 MNTSQ取締役)。

彼は、大学時代から無数のソフトウェアを世に出しているエッジの効いた人間でしたが、卒業後は東京大学の松尾研究室で「自然言語処理技術」の研究をしていました。それだけではなく、彼はいつしか起業して、国内最大手AI企業であるPKSHA Technologyの自然言語処理チームのFounder / CEO をしていました。

「自然言語処理技術」とは、ものすごくざっくりと言えば、機械学習によりコンピューターが人間の言葉を理解する技術です。自然言語処理技術の近年の急速な発展についてはこちらをご覧ください。

私は、試しに、M&Aで頻繁に登場するある危険条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)をいくつか作成して、「これと同じ条項を検出するプログラムを作ってみてほしい」と安野に頼んでみました。彼が、いくつかの技術を組み合わせることで、実際にその危険条項を検出するプログラムを開発してみせたときに(小さいですが、当時の日本で初めての快挙だと思います)、私の心のなかでなにかが動きました。

リーガルワークは、ハンムラビ法典の時代から「言語」が支配する世界でした。弁護士が六法全書を片手に細かな契約文言を交渉する現代でも、「言語」が最も重要であることに変わりはありません。しかし、コンピューターが言語を理解する自然言語処理技術の実用化によって、ベスト・プラクティスを承継する土台となり、歴史のあるリーガルの世界を変革しうるテクノロジーが登場したことを感じたのです。

突然の起業

私はNO&Tで5年間働いていたので、海外留学をすることができる年次になりました。しかし、既に海外案件も多く経験させてもらっており、新しいチャレンジを探していた私は、今が自分にとって最高のタイミングなのだろうと思いました。

私はNO&Tの代表弁護士である杉本さんに突然のアポをお願いして、杉本さんの部屋でプレゼンを始めました。「リーガルテックの起業をしたい」というあまりに突拍子もない内容でしたが、拍子抜けするほどスムーズに「協力したい。やってみろ。」というお返事をいただきました。

MNTSQを法人として設立したのは2018年11月でしたが、そのときには身に余る優秀な仲間が集まってきてくれていました。安野以外の創業者・現役員である生谷や堅山についても、どこかで書ければよいなあと思います。

「ベスト・プラクティス」を承継したい

リーガルテックはいまは「新しい技術」であり、それだけで注目を集めていますが、いつかは社会に当然になければならないインフラストラクチャーになると思います。

私が実現したいのは、この社会のインフラストラクチャーであるリーガルテックが、先ほどお話しした「ベスト・プラクティス」をきちんと体現しているようにすることです。

いま、「ベスト・プラクティス」はごく一部の専門家に偏在しています。日本に新しく現れるリーガルテックは、この「ベスト・プラクティス」をきちんと承継し、社会に公平さをもたらし、無用な紛争を事前に防止できるものでなければならないと感じています。

だから、MNTSQはNO&T・PKSHAと提携しました

リーガルテックが、「ベスト・プラクティス」を承継するためには、その居場所を訪ねなければなりません。それが今回の提携に至った理由です。

つまり、NO&Tが「リーガル業界のベスト・プラクティス」を、PKSHAが「アルゴリズム・ソフトウェア業界のベスト・プラクティス」をそれぞれ体現する会社であり、未来の社会インフラとなるリーガルテクノロジーをかたちにするMNTSQは、それぞれ業界のベスト・プラクティスを併せ持つ会社でなければならないと考えています。

今回のNO&Tによる出資額である8億円というのは、法律事務所がリーガルテック企業に投資する金額としては世界的にも歴史上最大級なのではないかと思います。それだけでなく、NO&Tは、MNTSQの法的コンテンツのレビューや、人材交流を含めたかなり深いコミットメントをしてくださっており、PKSHAからも相当踏み込んだ技術支援をいただいています。「ベスト・プラクティス」の側からこのような深い支援をいただけるのは本当に幸運であり、これを社会に還元しなければいけないと感じています。

私は、MNTSQが、リーガル業界とソフトウェア業界のベスト・プラクティスを体現したサービスを生み出せるように、これからも力を尽くしていきたいと思います。

突然ですが、転職しませんか

MNTSQでは、今回の提携を通じてリーガルワークを変えるための準備が進みましたが、いかんせん設立からまだ1年も経っていない小さな企業です。組織はこれから急速に拡大するフェーズであり、我々をより強くしてくれる優秀な人材(特に、ソフトウェア・アルゴリズムエンジニア、セールス、リクルーター、弁護士、パラリーガル等々の方々)をお待ちしています。

是非、私たちと一緒にチャレンジをしてみませんか?ご連絡を心よりお待ちしています。

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