信頼していたメンバーに、刺さる一言を言われた。
経営をしていると、いろんな言葉をもらう。
褒められることもある。感謝されることもある。厳しいことを言われることもある。
でも、あの言葉は別格だった。
「高野さんにリードで引っ張られている感覚があります。」
みんなでやっているつもりだった。
同じ方向を向いて、同じ熱量で走っているつもりだった。俺はそう思っていた。
でもそのメンバーには、違う景色が見えていた。
ショックだった。正直に言う、かなりショックだった。
でも、他の誰かに言われたショックとは種類が違った。そのメンバーのことを、誰よりも信頼していたからだ。こちらのことをわかってくれていると思っていた。だからこそ、重かった。
怒りじゃない。悲しみでもない。
「俺はそんなふうに見えていたのか。」
その一点だけが、ずっと頭の中に残った。
強いリーダーを演じていた。
今思えば、わかる。
俺はずっと「引っ張る側」でいようとしていた。迷いを見せない。弱さを見せない。常に前を向いて、答えを持っている人間でいようとしていた。
メンバーに心配をかけたくなかった。頼りになるリーダーでいたかった。
でも、それが裏目に出ていた。
「この人は無理をしている。」メンバーの目には、そう映っていた。完璧に見せようとすればするほど、人間味が消えていく。距離が縮まらない。本音が出てこない。
俺がチームに求めていた「本音で生きる」を、俺自身ができていなかった。
俺が選んだのは、自己開示だった。
怒るという選択肢はなかった。
言い訳するという選択肢もなかった。
俺がやったのは、自分の弱かった頃の話をすることだった。
幼少期のこと。うまくいかなかった時期のこと。24歳で人生の底にいた頃のこと。電車が止まれと祈りながら通勤していた朝のこと。誰かのせいにしながら、惰性で生きていた自分のこと。
経営者としての高野じゃなく、人間としての高野を、初めてちゃんと見せた。
チームが、変わった。
自己開示した後、メンバーの反応が変わった。
「この人は本心で言っている。」そう伝わったらしい。
それまで俺のことを「まっすぐすぎて、どこか無理している人」と見ていたのが、「本音で生きている人間」として見えるようになったと言っていた。
するとどうなったか。
メンバーが、本音を言うようになった。思っていることを、言葉にして持ってくるようになった。相談が増えた。議論が深くなった。
あの一言を言ってきたメンバーとの関係性は、今も続いている。むしろあの出来事の後から、ずっと深くなっている。彼からの相談を、今もよく受ける。
弱さを見せた瞬間、チームが動き始めた。
組織づくりで、一番大事なこと。
強いリーダーがいれば、組織は動く。
でも、リーダーが強さだけを見せていると、メンバーは「ついていく」だけになる。自分で考えなくなる。本音を出さなくなる。
俺が作りたいのは、そういう組織じゃない。
全員が本音で動いていて、全員が自分の頭で考えていて、全員が「この組織で自分の人生を実現できる」と思える場所。
そのためには、まずリーダーが本音をさらけ出すしかない。
弱さを見せることが、信頼の入り口だった。
最後に、あなたへ。
move onに来てほしい人間に、完璧なキャリアは求めていない。
ただ一つだけ、持ってきてほしいものがある。
本音。
うまくいっていない過去でも、自信がない部分でも、まだ言語化できていない夢でも、全部持ってきてほしい。
ここはそれを、さらけ出せる場所にする。
リーダーがそうしているから。