「どれだけ多くの人に影響を与えられるか、そして自分がやる意味があるか」
そんな一貫した軸を持ちながら、エンジニアからコンサルタント、そして事業会社の要職を経て、ラクスルへと辿り着いたのがサプライチェーンマネジメント(SCM)部長の須藤さんです。
一般的に「物流」や「在庫管理」といったコストセンターと捉えられがちなSCMですが、ラクスルにおけるその役割は全く異なります。それは、事業の利益構造をゼロから設計し、多くのパートナー企業と共に業界全体の仕組みをアップデートしていく、まさに「プラットフォームの心臓部」であり「攻めの経営参謀」としての役割なのです。
「自分の殻が割れる音が聞こえるほどの成長」がここにはあると語る須藤さん。彼がなぜ、キャリアの各ステージで挑戦を選び続け、どのような想いで巨大なサプライチェーンを動かしているのか。その挑戦の軌跡と、彼が信じる「三方よし」のプラットフォーム論に迫ります。
目次
支援者から当事者へ。12年の研鑽を経て見つけた「事業」の肌触り
「三方よし」を実現するプラットフォームの矜持
ラクスルのSCMは「事業家」である。求めるのは、混沌にレバーを見出す力
《編集後記》
支援者から当事者へ。12年の研鑽を経て見つけた「事業」の肌触り
── 須藤さんはエンジニアからキャリアをスタートされたそうですね。
須藤: はい。もともとビジネスそのものには興味があったのですが、学生時代は何から始めればいいかわからなくて。「IT業界のシステムエンジニア(SE)になれば、さまざまな企業の舞台裏を覗けるし、どこでも通用するスキルが学べるだろう」と考えたのが出発点でした。
4年ほど現場で開発を経験した後、海外のビジネスを学びたくなって、「海外に行きたい!」と周囲に相談していたらご縁をいただき、イギリスにある日系大手シンクタンクに現地採用されました。手厚いサポートなどはなく、家探しから生活の立ち上げまで全部自分一人。日常会話程度の英語はできましたが、若いうちに異国の地でなんでも一人で完結させなければならない環境に身を置いたことは、切り拓いていくことを学ぶ良い経験になりました。
その後、海外で学んだことを日本に還元したいという思いから帰国し、コンサルティングファームへ移りました。そこでの4年間は、ロジカルシンキングなどのビジネススキルを徹底的に叩き込まれる日々でした。結果的に20代から30代にかけて12年ほど「外部の支援者」としてキャリアを積むうちに、徐々に「自分自身の力で事業を動かしてみたい」という渇望が強くなっていったんです。
── そこから、なぜあえて未経験の「SCM」という領域に飛び込まれたのでしょうか。
須藤: エンジニアやコンサルタントとして、SCM領域のアプリ開発や業務支援などに携わった経験もあり、この領域に面白みを感じていたからです。さらに、もともと持っていた「IT」と「業務コンサル」のスキルに、現場の「SCM」を掛け合わせれば、自分だけの唯一無二のスペシャリティが築けるのではないかと考えました。
そこで出会ったのが、当時急成長中だったJINSでした。売上が100億から500億円超へ急拡大するフェーズで、私はSCM部門のヘッドとして50人規模の組織を率いていました。工場選定から貿易、国内配送まで、サプライチェーンの全工程を自らの手で設計し、ハンドリングする。この時の「当事者」としての強烈な手応えが、今の私のベースになっています。
「三方よし」を実現するプラットフォームの矜持
── 2019年にラクスルへジョインされた当時の状況を教えてください。
須藤: 一言でいえば「カオス」でしたね(笑)。売上の急成長に対して供給キャパシティが圧倒的に不足していて、組織も一人が何でもやるような状態。まさに「供給が追いつかない」というバタバタな現場でした。
── パートナー企業との信頼関係は最初からスムーズに築けたのでしょうか。
須藤: まったくそんなことはありません 。新たなパートナー候補として商談に伺っても「ラクスルなんて安売り屋だろ」と、門前払いに近い扱いを受けることもありました 。さらに、入社してすぐにコロナ禍に突入し、対面で会うことが制限されてしまったことで、既存パートナー企業様との関係構築にも苦戦しました。
── その壁を、どうやって打破していったのですか?
須藤: 地道な対話と、徹底した透明性です。コロナ禍をきっかけに、我々のビジョンや戦略をパートナー様に直接伝える「パートナー説明会」の定期開催をオンラインで始めました。
さらに踏み込んだのは、ただ発注するだけでなく、提携工場の経営状況を一緒に見ながら「どうすれば工場の利益が増えるか」を議論し理想の工程を模索し続けたことです。これまでラクスルが培ってきた“仕組み化”のノウハウを惜しみなく共有し、一緒になって工場の生産効率を上げることを泥臭く続けました。
── そのような活動を続ける中で、変化はありましたか?
須藤: 徐々にですが、パートナー企業の皆さんに、本当の意味で信頼していただけるようになってきた手応えを感じています。 実は以前、ラクスルの担当者が1年ほどで次々と変わってしまい、信頼を積み上げることが難しい時期があったというお話を伺ったことがありました。私がSCMに着任してからは、とにかく腰を据えて、逃げずにパートナー様と向き合い続けました。 気がつけば、もう7年。「ラクスルさん」ではなく「須藤さん」と名前で呼んでいただけるようになり、ようやく一人の人間としても、ラクスルの顔としても認めていただけた気がしています。
そして、2025年秋には、念願だったオフラインでのパートナー説明会を開催することができました。数多くのパートナー企業の経営に携わるメンバーが一堂に会した光景を目の当たりにした時は、言葉にできない感慨がありましたね。集まってくださった皆さんは、もはや単なる「取引先」ではありません。ラクスルと一緒に業界を良くしていこうという、同じ志を持つ「ラクスルファミリー」のような絆を感じています。
── 須藤さんにとって、ラクスルのSCMの醍醐味はどこにありますか?
須藤: 最終的には「人」と「信頼」に辿り着きます 。テックカンパニーでありながら、現場は驚くほどウェットで人間味が溢れているんです。お客様のビジネスを支え、パートナー企業もしっかりと潤い、結果としてラクスルも成長する。単に三者が利益を得るだけでなく、それがレガシーな業界全体の健全な発展と、持続可能性(サステナビリティ)に繋がっていく。この「三方よし」を、泥臭い信頼関係の上に築き上げ、維持し続けることに、プラットフォームとしての真の矜持があると思っています。
ラクスルのSCMは「事業家」である。求めるのは、混沌にレバーを見出す力
── 須藤さんにとってラクスルで働き続ける原動力は何でしょうか。
須藤: この年になっても、まだ自分の殻が割れる音が聞こえる瞬間があるからですね。厳しい議論や失敗を乗り越えるたびに、一回り大きな自分へと更新されていく感覚があります。このミシミシと軋むような「成長痛」こそが、ラクスルという変化の激しい環境で働くことの最高にエキサイティングな報酬かもしれません。
── 目下、チームを拡大されている最中と伺っていますが、SCMチームとして求めているのはどのような人材ですか?
須藤: 私たちは採用において「ワークサンプル」を非常に重視しています 。肩書きや経験年数以上に、「自分の手と頭をフル回転させて、目の前のカオスの中からどのレバーを引けば事業が大きく伸びるか」という本質を見極められるかどうかを知りたいからです。複雑に絡み合ったカオスの中からロジックによって正解を導き出すプロセスは、まるで難解な数式を解き明かすような知的な興奮に満ちています。
SCMは単なるコスト削減のための作業部隊ではありません。顧客体験という価値そのものを創造し、業界構造そのものをアップデートしていく「経営の心臓部」です。不確実な環境を楽しみ、事業を動かす「事業家」としての覚悟がある方に、ぜひこの刺激的な主戦場に飛び込んできてほしいですね。
《編集後記》
須藤さんのお話を伺って印象的だったのは、「カオス」や「困難」を、まるで自分自身の殻を破るための栄養素のように楽しんでいる姿でした。
コンサル時代に培った緻密な論理的思考という「武器」を持ちながら、それを現場の泥臭い人間関係や不確実な事業の荒波にぶつけ、一歩一歩信頼を積み上げていく。その姿勢は、まさにラクスルが掲げる「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを、最も過酷で、かつ最も人間味のある最前線で体現しているようでした。
もしあなたが今の環境で、自分のやりたいことが見えなくなっているなら、ぜひ一度私たちの扉を叩いてください。
💪この場所でしか味わえない、最高にエキサイティングな“成長痛”を、あなたも感じてみませんか?