連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第9弾は、「生成AIとの付き合い方、アップデートしました」です。
AIの話をするのは、Vol.1以来およそ1年ぶり。あの頃と今では、AIも、安武さんも、大きく変わりました。「便利な道具」として語っていた頃から、仕事の構造そのものを変えるものへ——。毎日AIを使い続けてきた経営者が、この1年で何を感じ、何を変えたのか。きれいごとなし、等身大のリアルを、本音で語ってもらいました。
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ー前回(Vol.1)から約1年。生成AIとの付き合い方、変わりましたか?
大きく変わりましたね。自分なりの感覚で言うと、Vol.1の頃はAIとの付き合い方がレベル1だったとしたら、今はレベル3くらいになったかなと思っています(笑)。
Vol.1の頃は「便利な道具」という感覚で話していたんですが、今はもう少し手前にあるというか、仕事の一部として当たり前に溶け込んでいる感じです。わかりやすい例で言うと、今の僕の朝は「Claude Codeに『おはよう』と打つ」ところから始まるんですよ。それだけで、前日のタスク進捗・今日の会議サマリ・検討すべき課題が整理されて返ってくる。最初はプロンプトをちゃんと書いていたんですが、今は「おはよう」の一言で動くようにカスタマイズしてある。その間に洗濯物を畳んで、米を研いで……みたいな朝ですね。
1年前は「AIに何を頼むか」を考えてから使っていた。今は「この仕事、AIに任せられないか?」が先に来るようになった。この感覚の変化が一番大きいと思います。
ーそのレベル1→3って、どんなきっかけで変わったんですか?
怖くなった瞬間があって、それが転換点だったかもしれません。
ある日、NotebookLMにRFP(提案依頼書)と自社資料をアップして、「回答を作って」と一行打ったんです。そうしたら、ざっと半日かかっていた作業が10分で終わったんです。便利だなじゃなくて、正直、怖くなりましたね。今までメンバーに頼んでいた仕事が丸ごとなくなった感覚で。AIすごいで終わらせられない何かが、そこにあったんです。そこから、AIを使うという意識が変わりました。便利なツールじゃなくて、仕事の構造そのものを変えるものだなと。
ー今は具体的にどんな使い方をしていますか?
Claude Codeをメインにほぼ一本化していますね。以前はChatGPT、Gemini、Perplexity、Claudeといろいろ使い分けていたんですが、ある時期から思考の断片があちこちに分散して、今どこで何をやっていたかが分からなくなってしまいました。これ、「ブレインフライ」っていう現象に近くて、AIツールを4つ以上使うと生産性が逆に下がるというデータもあるんですよね。自分でもまさにそれを体感していたので、思い切って一本化した。ツールを減らしてからの方が、明らかに脳の疲れ方が違います。
あとは業務プロセスごとAI前提で再設計するようになりました。今の仕事にAIを足すじゃなくて、「AI前提でどう仕事を組み立てるか」という発想に変わったというか。たとえば営業の提案でも、リードが入ったらまず企業調査と提案骨子の叩き台をAIに出させて、人間はそのレビューと価値判断だけに集中するフローにしています。
ーAIを使うようになって、仕事は楽になりましたか?
正直に言います。楽にはなっていないです(笑)。
アウトプットの量は明らかに増えました。以前は絶対無理だったような量を、1日でこなせるようになっている。でも体感的な忙しさは変わっていないし、むしろ脳は以前より使っている感覚があります。
以前は深夜に一人でタスクをこなす感じでしたが、今は日中から夜まで、ずっとAIとの対話を並走させている感じです。かなり有能なメンバーを何人も横に置いて、ずっと指示を出し続けているイメージです。体は動いていなくても、頭はフル稼働している。ただ、夜の時間の使い方は変わりました。以前は「溜まったタスクを消化する時間」だったのが、今は「明日以降をどう効率化できるかをAIと壁打ちする時間」になっています。単なる処理じゃなくて、仕組みを考える時間になった。これは自分の中でかなり大きな変化ですね。
ーAIの進化で、コンサルの仕事はどう変わると思いますか?
前回も少し話しましたが、より解像度が上がった感じがします。
一言で言うと、仕事をする量より判断の質が問われる時代になったと思っています。以前は情報収集・整理・分析が仕事の大半を占めていたけれど、それはAIがやるようになりました。コンサルタントが価値を発揮するのは、「どんな問いを立てるか」「AIの出した結果をどう評価するか」「クライアントの組織をどう動かすか」という部分になっていきます。
ただ、AIが仕事を奪うという話は僕は違うと思っていて。役割が変わる、という方が正確です。若手にとっては、むしろチャンスだと思っています。AIのおかげで、上流の仕事に早く触れられるようになっていると思いますから。
ーAIとの付き合い方で、失敗したことはありますか?
いっぱいありますよ(笑)。
さっき話したツールの使いすぎもそうですし、AIが出してくるものを「なんとなく正しそう」と思って使ってしまうことも最初はありました。AIって、もっともらしい嘘も自信満々で言ってくるので。数字や根拠が絡む部分は、必ず自分で確認する習慣を今はつけています。
あと、AIに任せれば解決すると思い込みすぎていた時期もありましたね。でも実際は、AIに渡す問い自体が曖昧だと、曖昧なアウトプットしか返ってこない。AIの質は、問いの質に直結する。これは使い続けて気づいたことです。
ー今後、メンバーにはどんなAIとの付き合い方をしてほしいですか?
前回と変わらない部分でいうと、「コミュニケーション力を磨いてほしい」という気持ちはずっとあります。AIが得意なことは任せればいい。でも「人と対話して、複雑な状況を動かす力」はやっぱり人間が担う領域だと思っているので。
変わった部分でいうと、最近は正確にAIを怖がってほしいとも思っています。なんとなく怖い…でも、なんでも使えばいいでもなく、何がリスクで何が使えるのかを理解した上で使ってほしいですね。AIリテラシーって、うまく使う力だけじゃなくて正しく判断する力でもあると思っているので。
そういう意味では、AIは今後も進化し続けるけど、「自分の頭で考えて判断する力」は、AIが進化するほど重要になっていくと思っています。AIを使いこなす人と、AIに使われる人の差って、ツールの知識より、この部分に出てくるんじゃないですかね。
安武さん、今回もありがとうございました。
「おはようの一言から始まる朝」という話、RITに入ったらどんな働き方になるんだろう、と少しワクワクしました。次回のテーマもお楽しみに!
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