2015年創業の7gardenは、ホテルを中心に全国で20施設以上を企画・運営しています。12期目に入った今年、福岡への10施設以上の集中出店、東京での初の自社開発、HOTEL ON\OFFの開業と矢継ぎ早に動いています。11年続けてきた会社がなぜいま、このフェーズを「第二創業期」と呼ぶのか、CEO北野に話を聞きました。
7garden CEO北野 賢
伸びる市場で、長く戦う
— どのように事業を決めましたか?
Hotel Vintage目黒不動前
起業する領域は不動産と決めていました。あとは、日本のどの成長産業に賭けるか。
日本の人口は減っていく。でも、アジアを中心とした世界の人口は増えていく。日本に観光したい人が増えれば、ホテルには人が来る。オフィスも住宅も、移民が増えなければ伸びない。ホテルだけが違うんです。アリババ時代に日本の内需縮小を肌で感じていたからこそ、インバウンドが伸びるという確信は早くからありました。
これまで働いてきた、コスモスイニシアでは空間をつくることを、アリババではWEBサービスを、イタンジではオペレーション×テクノロジーを学んだ。その3社の経験が、ホテルの企画・開発・運営という事業に全部合致していた。事業の解像度は最初から高く、創業から構想はほぼぶれていません。
ホテルではなく、“場”をつくる
— もともと不動産・デベロッパーの出身ですよね。ホテルに向き合って、最初に感じたことは?
正直に言うと、強い違和感でした。量産型の企画、どこへ行っても似たような体験、一室単位の“投資商品”としてのホテル。この世界で、私が勝負する意味はどこにあるんだろう、と。
そこで辿り着いたのが、「一点モノのホテルを、我々の思想でつくる」という考え方です。
Hotel Mei福岡天神
土地を選ぶところから、企画し、建て、運営まで一気通貫で関わる。デベロッパー出身の私だからこそ、本気で勝負できる領域だと感じました。
— 社名の「7garden」には、どんな意味が?
「7」は地球そのもの。七大陸・七海洋、つまり世界そのものです。「garden」は“場”。公園のように、人が集い、語らい、寝転び、食事をし、それぞれの大切な人と時間を過ごす、余白のある場所。ボーダーレスで豊かな場をつくる、という想いを込めました。
私の原体験は、家族や仲間と何気ない時間を共有してきた、あの感覚なんです。だから7gardenは、「ホテルをつくる会社」ではなく、「大切な人と過ごす“場”をつくる会社」でありたい。ホテルは黒子でいい。主役はゲストと、その街です。「ホテルは街の縁側」と言っているのも、同じ思想からきています。
一点もので、差が生まれる
— 7gardenの利益率は、同業を大きく上回ると聞きます。なぜ成立するんですか?
土地情報の取得から、ホテルの企画設計、出口戦略づくりまでを高速で行っています。不動産選定、企画と建築費の調整、デザインとサービス設計、FFEとOSEの開発・選定、運営体制の組成と育成。あらゆる側面で、とことん数字と感性で向き合う。すべての工程で妥協しないことで、同じ土地でも完成後の数字は大きく変わってきます。
一気通貫で行うとは、“変数”を増やすということです。難易度は高まる。でも、その分だけ数字の“差”は大きくなる。ワクワクの大きさは、優位性の大きさでもある。だから、我々が熱くなれる案件だけを提案し続けてきました。
我々は「量産フィー競争」でも「借上げのリスクを抱える」モデルでもない。土地選定から企画・設計、運営までを一貫して担う、いわば“第三の道”です。それが収益性の差になって表れている。
そして創業以来、投資家にプロジェクト単位の不動産投資としてお金を出していただく構造で成長してきました。1件のプロジェクトで10億円〜を動かすわけですが、事業計画と収益シナリオをしっかり提示し、投資家にとってもリターンが見える形で進める。お互いにメリットのある構造だからこそ、財務を健全に保ちながら成長できました。まだ1棟も開業していない段階から複数案件が動き始め、コロナ前には10棟分の開業が決まっていたほどです。
この「資本を回す」という発想は、後で話す第二創業期の核心につながってきます。
空白の5年が、原点を照らした
— 創業当初は、どんな状態だったんですか?
スタートは私ひとり。物件取得、設計、内装、オペレーション、採用、資金繰り。すべてが同時並行で、穴がたくさんある、危なっかしい状態が続きました。一番苦しかったのは資金繰りで、キャッシュが尽きかけたこともある。それでも踏みとどまれたのは、「ここで逃げたら何も残らない」という覚悟と、何より仲間の存在でした。
— 順調に拡大していた中で、コロナが来た時は?
開業も契約も積み上がっていたところに、市場が一気に止まりました。会社として最大の危機です。
ただ、あの時間があったからこそ、問い直すことができた。「本当に、我々は何をつくりたいのか?」と。人と人がつながれなくなった世界で、改めて浮き彫りになったのは“場”の価値でした。ホテルは単なる宿泊施設じゃない。人が出会い、関係性が生まれ、記憶が積み重なっていく、人生の一部なんだと。
— 10年続けてきて、なぜ今「第二創業期」なんですか?
正直に言えば、「やっと再開できた」という感覚です。コロナが明けてホテルの企画に再注力したとき、大きなトレンドは何も変わっていませんでした。インバウンドの人は増え続け、案件がまた自然と集まってきた。
創業初期に描いていたビジョンに、ようやく戻ってこられた。実質5年間の空白があり、もっと早く成長したかったというのが本音です。
でも、止まっていた時間も無駄じゃなかった。AIの活用を深め、組織の基盤を整えた。そこに、10年積み上げた信用でようやく自社開発ができるフェーズに入ったこと、AIが実務で使えるレベルになったことが重なった。だから「第二創業期」は、単なる再開じゃない。パワーアップして戻ってくる、という感覚なんです。
福岡という、確信
福岡にOPEN予定のホテル
— いま、福岡に集中出店していますね。なぜ福岡に、これほど賭けるんですか?
実はこの判断、創業期からのものなんです。福岡の土地は、東京で最初のホテルが開業する半年前にはもう押さえていた。まだ1棟目の運営も開始していない中、福岡が先に動いていた。
理由はシンプルで、発想は“タイムマシン経営”です。東京でのホテル市場の成長を、一足先に福岡で展開する。参入するなら早いほどいい。宿泊単価は東京とそれほど変わらないのに、土地代は当時、その半分以下でした。その差が、ものづくりへの投資余力になります。
名古屋はインバウンドの成長性が弱く、京都は隙間が小さい。その点、福岡の中心部はアジアから近く、空港からも近い。東アジアの方から見ても、食事とショッピングの魅力がある。成長性が期待できる一方で、参入するプレイヤーはまだ少ない。全部揃っているのは福岡だけでした。エリアを面で押さえるほど、オペレーションも効いてきます。
無難を、抜け出す
第二創業期の拡張は、棟数だけの話ではありません。ブランドを一段上のレンジへ引き上げるフェーズでもあります。
— 今年8月、都内にHOTEL ON\OFFが開業しますね。
HOTEL ON\OFF
HOTEL ON\OFFはこれまでより単価を一段上げた、デザイン性と立地の掛け算による一棟です。銀座・築地にも近い中央区で、ゆとりある客室。魅力的なエリアに、これまでより上質な体験をつくりたい、と。
— 一点ものにこだわると、毎回ゼロベースで大変じゃないですか?
金太郎飴のように同じものをつくるより、ワクワクするものをつくりたい、というのが正直なところです。建築家もデザイナーも施工会社の人たちも、新しいチャレンジの方が楽しいはずなんです。ゲストにとっても、つくり手の思いとその土地のコンテキストが重なったホテルのほうが、豊かな体験になる。大変な方だけど、そっちをやろうよ、というシンプルな理由です。
— 来年には、東京・新川で初の自社開発も控えていますよね
今まで手がけてきたホテルは、正直に言うと割と無難な企画なんです。次はもう一段、プロダクトを尖らせたい。これまでにない価格帯に挑むには、土地の選定から設計・運営まで全部、我々でコントロールするしかない。10年かけて積み上げた信用があるからこそ、やっとそれができるフェーズに入りました。
噛み合わない、二つの論理
— ここまで聞くと順風満帆に見えますが、難しさはないんですか?
もちろんあります。むしろ、個別に交渉しても解決できない“構造的な難所”が二つある、と思っています。
ひとつは、人です。我々は一点ものにこだわる。それを複数棟、同時に立ち上げる以上、ものづくりも現場のオペレーションも、毎回が個別性の高い仕事になる。きれいにマニュアル化できない。そこに採用と定着の難しさが重なります。一点ものをスケールさせるとは、この矛盾に正面から挑むということなんです。
もうひとつは、お金と、その論理です。ホテル開発には大きな資金が要る。でも、資金の出し手、つまり投資家の論理は「収益の最大化」で、我々がゲストに届けたい「体験の最大化」と、短期では相反することがある。早く売って利益を確定したい資本と、腰を据えて場を育てたい運営者。このロジックは、根本的にかみ合っていない。
この二つは、根性で乗り切る話でも、個別交渉でどうにかなる話でもありません。構造の問題です。だから第二創業期は、この二つを、仕組みごとつくり変えにいくフェーズだと考えています。
受託する側から、つくる側へ
— では、その二つを、どう変えていくんですか?
Hotel Vintage目黒不動前
人の問題には、AIと組織と文化で。お金の問題には、ファンドで。まず、お金の方から。
第二創業期は、ホテルを増やすことそのものが目的ではありません。「つくること」から「循環させること」へ。資本が循環する仕組みを、会社の中につくり直すフェーズです。
これまで我々は「投資家にホテルを建ててもらい、運営を受託する」モデルでやってきました。ただ、投資家が投資資金の回収を迎えるたびに、運営者として我々が残れないリスクが伴う。場と仲間が育ち、収益が改善してきたところで、「ブランドを変えてほしい」と言われることも出てくる。誰が悪いわけでもなく、出口を求める投資家の論理と、長く育てたい運営の論理が、噛み合っていないだけなんです。
— それが、さっきの「相反」ですね。
そうです。だったら、噛み合う器を我々で用意すればいい。「7gardenが運営し続けることを前提に設計された長期ファンド」を、受託する側から、組成する側に回ってつくる。物件に長期の運営契約を埋め込み、ファンドが満期を迎えても運営は次の買い手に承継される。資本の出し手も、短期のリターンを追う層ではなく、長く腰を据えられるパートナーと組む。投資家の利益とゲスト体験を、契約の“構造”でアラインさせるんです。
— かなり長期の絵ですね。
はい。「運営」がホテルの収益と体験をつくり、「開発」が次のパイプラインを生み、「所有」が資産として保有して安定した資本を供給する。開発が運営実績を生み、運営実績が所有の価値を高め、所有が次の開発の元手になる。この循環を、我々の手で回せるようにする。
その先は、自社保有をポートフォリオ化し、アセットマネジメント機能を確立し、いずれは資産をREITや私募ファンドの形にして、資本市場で評価される永続的な循環へ。2035年までに1,000億円規模のホテル開業という目標は、創業期から変わっていません。いま組もうとしているファンドは、その道筋の一部というより、それを実現するための“器”そのものです。
エクイティを入れずに「資本を回す」やり方を、10年かけて磨いてきました。プロジェクト単位で投資家をパートナーに迎えてきたのも、その原型です。第二創業期は、その発想を会社全体のOSとして組み直す。そういう意味でも、これは“創業”なんです。目指すのは、「場づくり × 運営 × 金融」を一体化した“場づくりカンパニー”です。
両端は人が、中間はAIが
— もうひとつの難所、「人」のほうは?
AIと組織で向き合います。
ホテル事業でテクノロジーから最も遠いのは、土地×施工の「空間をつくる領域」と、フロント・飲食・清掃の「サービス領域」です。この両端、すなわち「不動なもの」と「人間の身体性」が伴うものを、自社で、最前線で捉え続ける。その間に存在する“機能”は、AIで代替できるようになっていくはずです。
— ちなみに、北野さん自身はAIをどう使っているんですか?
普段使うAIはほぼClaudeです。たとえば、土地情報のインプットだけで、開発計画から運営収支、運営モデルまで、あらゆる角度からアウトプットできる。以前なら1〜2週間かかった作業が、数時間で完了する。少人数で多くのホテルを回せているのも、その積み重ねです。一点ものを複数棟スケールさせるために、テクノロジーは欠かせません。
ホテルというリアルな現場と、AIの両方を理解して仕組みをつくれる人材。それが、いまの7gardenに最も必要な存在です。
最後に問われるのは、人間性
ー「文化」も、人の課題への答えだと。
7gardenでは、役職が上がるほど「スキル」より「人間性」が問われます。誠実であること、謙虚であること、短期の成果のために長期の信頼を壊さないこと。派手ではないけれど、会社を10年、20年と続けるために欠かせない価値観です。
実はこれ、私の挫折から学んだことなんです。昔、マネジメントで結果を出せず、降格を経験した。当時は「自分は頑張っているのに」と外に原因を探していた。でも後で気づいた。問題は能力だけじゃなかった。周囲の人の気持ちや状況を、十分に見ようとしていなかった、と。
「成果を出すこと」と「チームをつくること」は別物で、後者がなければ、どんな成果も長くは続かない。あの経験が、いまの7gardenの文化の根っこになっています。
未完成を、面白がれる人へ
ー 第二創業期、どんな人に来てほしいですか?
Mon Hotel 福岡
第二創業期。コロナを経て、もう一度パワーアップして、創業時のビジョンへ帰還する。そういうフェーズです。7gardenは、まだ完成された会社ではありません。仕組みも、組織も、文化も、つくっている途中です。だからこそ、一人ひとりの仕事や姿勢が、そのまま会社の形になる。未完成であることを、面白がれる人に来てほしい。
自社でホテルを開発し、AIで組織をスケールさせる。このフェーズを面白いと思える人に来てほしいんです。AIを使って新しい集客の仕組みをつくりたいマーケター、ホテル×AIの領域でエンジニアとして挑みたい人、サービスの本質を追求したい支配人。ポジションは違っても、新しいチャレンジへの欲求がある人に来てほしいと思っています。
目先の成果より、長く残る価値をつくりたい人。自分の仕事が社会に直接影響する環境で働きたい人。その欲求を持った人と、一緒にやりたい。
場をつくることは、人の人生の一部をつくることでもある。その重さと向き合いながら、我々はこれからも“誇れる場”をつくり続けます。この旅路に、あなたも加わってくれたら嬉しいです。
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