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障がい者福祉への果てなき挑戦 ──走り続ける中で見つけたやりがいとは

農業で障がいのある方の雇用を創出し、企業の障がい者雇用を支援するエスプールプラス。そこで働くひとりの女性、伊藤 美奈子。母の影響を受け、障がい者福祉に興味を持った彼女が仕事を通じて出会う働く障がいのある方、クライアント、一緒に働く仲間から得たものは一体なんだろうか。これまでの伊藤の軌跡を振り返る。


重度の知的障がいや精神障がいのある方を採用し、定着させることは非常に難しい。

しかし、そんな中でも貸農園事業を展開するエスプールプラスは、そこで雇用される障がいのある方の定着率が92%と非常に高い数字を維持している。

この理由のひとつとして挙げられるのは「雇用継続アドバイザー」の存在であり、伊藤 美奈子は雇用継続アドバイザーとして活躍しながら、その採用も担う中途入社3年目(2020年2月現在)を迎える社員である。

2017年4月にエスプールプラスへ入社した伊藤は、前職でも障がいのある方の就労支援を9年間勤め、現場勤務からサービス管理責任者までを経験した後にエスプールプラスへと入社した。

そんな業界一筋の彼女が障がい者福祉に関わるようになったのは、母親の影響が大きかった。

伊藤 「社会福祉法人の理事を務めている母親の姿を高校生のころから見ていたこともあり、自然と母の取り組みに興味を持ちました。そんな環境の中で自分でも障がいのある方の就労について調べ、母親に質問していく中で自然と自分も学んでみようと思い、福祉大学への進学を決めました」

大学入学後も勉強のかたわらで母親の仕事の手伝いをしていた伊藤は、実際に精神障がいのある方々と触れ合う機会もでき、その経験から就職までを考えるようになっていった。

伊藤 「障がいのある方と健常者が交流する場をつくる事業の手伝いを行っていました。実際に一緒に働いてみると、とくに抵抗を感じることもなくて。ただこの人たちが働ける場所をつくりたいという想いが強くなっていきました」

こうして母親と同じ道へと進むことを決意した伊藤は社会福祉法人に入社した。

入社後は一般企業への就職を目指す障がいのある方に必要な知識やスキル向上のためのサポートを行う「就労移行支援事業所」や、働く機会を提供する「就労継続支援事業所」といった現場での経験を経て、障がい福祉サービスの中心的存在であるサービス責任管理者になった。

9年間、現場からサービス管理責任者までを一通り経験し、部下からの信頼も厚い伊藤であったが、彼女の頭にはあるひとつの疑問が浮かんだという。

それは「もっと自分にできることがあるのではないか」ということであった。

エスプールプラス農園で働く障がいのある方の笑顔に、衝撃を受けた

               ▲農園で働く方々と(一番右が伊藤)

事業の立ち上げから運営までを行い、今もなお理事として障がい者福祉で活躍している母親をずっと見てきた伊藤は、「今の仕事は一通りやりきった、もっと自分にできることを探したい」という想いから思い切って転職を決意したのであった。

転職を決意した伊藤は、これまでの経験を生かしつつこれまで以上に社会に貢献でき、自分の活躍できる場所を探していた。そんな伊藤の目にとまったのがエスプールプラスであった。

伊藤 「エスプールプラスのことは前職のころから知っていました。重度の障がいのある方を受け入れられる企業は少なく、書類や面接ですぐに落ちてしまうことが多い中で、エスプールプラスの農園で実際に働いている方々が、非常にいきいきとしていたことがとても印象的だったので。

営業担当も農園で働いている方のお名前を一人ひとり覚えていて、サポート体制もしっかりしているなと。

ここで働いて、これまで自分が紹介した障がいのある方も一緒に支えていきたいと思い、応募することにしました」

前職の経験から障がいのある方が安心し、いきいきと働く場所をつくることがいかに難しいかを知っている伊藤だからこそ、農園で働く方々が見せる笑顔には驚いたという。

いざ、選考が始まると伊藤の最初の面接者は和田 一紀社長であった。

伊藤 「面接が最初から社長だったことは非常に驚きましたし、緊張しました(笑)。緊張していたこともあって詳細までは覚えていませんが、とてもフランクで明るいお人柄であったのと風通しの良さを感じたのが印象的でした。ここで働きたいという気持ちが120%になりましたね(笑)」

こうして2017年4月、伊藤はエスプールプラスに入社した。

伊藤が最初に配属されたのが障がいのある方の採用を行う「障がい者就労支援事業部」だった。農園での体験実習の案内、就労継続支援事業に営業活動を行う部署である。

そして2018年12月には「わーくはぴねす農園事業部農園サポートグループ定着支援チーム」へと異動し、半年後には最もチーム内で活躍した人に贈られる優秀貢献賞を受賞し、その後はチーフという立場になったのである。

しかし、農園サポートグループ定着支援チームに異動した伊藤が社内で表彰を受けるまでは、決してすべてが順調にいったわけではなかった。

優秀貢献賞受賞、自分のありたい姿を見つけた瞬間

     ▲2019年には優秀貢献賞を受賞した(中央:伊藤、右:和田、左:藤原)

定着支援チームとは、各農園をラウンドし、働く障がいのある方々の定着状況の管理や、農場長へ定着のためのアドバイスを行うところである。ここでの業務は、これまで、直接的に障がいのある方の支援を行ってきた伊藤にとって新しいチャレンジだった。

伊藤 「アドバイザーは障がい者従業員の支援者ではなく、あくまで農場長や企業へのアドバイスを行う立場。想いの方向が偏り過ぎてしまうと、立ち位置もズレてしまい、アドバイザー本来の在るべきかたちが崩れてしまいます。

これまで直接的な支援を行ってきた私にとっては、アドバイザーという立ち位置をうまく見つけることができなかったんです」

そんな慣れない業務で戸惑うことも多かった伊藤を支えていたのが、上司の藤原 宝樹であった。

伊藤 「雇用する企業や障がいのある方にとっての最善を考えた時に、どこまで関わるのがいいのか。藤原さんと一緒にラウンドする中で気付きがありました。それは、『バランサー』であること。

そして重要なことは話を聞く能力だな、と。これまでは自らが主体的になって施策を行わなければならない立場だったので、どうしても『何かしなきゃ!』が先に立ってしまっていたんですね。でも、藤原さんはお互いの意見をすり合わせることに注力していて。

本当にお互いが抱えている課題感を引き出した上で、それをまとめているからうまくいくんだという気付きを得ました。今でも頼りにしていますし、本当に出会えて良かったと思っています」

目の前の課題を一つひとつ上司と取り組んできた伊藤のひたむきな努力は、半年後に優秀貢献賞という形で評価された。

伊藤 「驚きと嬉しさの半分半分でした。与えられるミッションはもちろん楽ではないですが、苦しくても頑張ってやってきて良かったと心から思えました」

チーフになって見えてきた新たなやりがい──その影に藤原あり

                     ▲伊藤 美奈子

上司の藤原から教わった『バランサー』であることは、今の伊藤の仕事に対する価値観にも影響を与えている。

伊藤 「雇用継続アドバイザーの採用においても、数字に対する意識と障がい者福祉への理解のバランスが取れていることが非常に大切であり、採用の重要な基準です。企業と働く方の間に立つお仕事なので、このバランス感覚はどんな状況でも必要になると思います」

エスプールプラスに入社し、目の前の障がいがある方の雇用を創出するだけでなく、その後の働き方や向き合い方まで強く意識するようになった伊藤。

チーフという立場になった今、新たなやりがいが見つかったという。

伊藤 「日々のタスクに追われ、いっぱいいっぱいになることはありますし、不平不満が出てくることも周りが見えなくなることは今でもあります。

そんな時に、『なんのためにこの仕事をしているのか?』を考える時間はつくるようにしています。障がいのある方々の役に立ちたいという想いは今も変わりませんが、同時に上司や仲間のために頑張りたいという意識も出てきたのは、藤原さんのおかげだと思いますし、自分もこういう人になりたいと思うようになりました」

仕事を通じて得た知識、経験、仲間とともに今後はさらなる事業の拡大を目指している。

伊藤 「今後も障がいがある方のためのフィールドをつくっていきたい!さらに事業を拡大することで、保護者の方の『うちの子は働けない』という意識をつぶしていきたいですね」

エスプール プラスでの経験を通し、成長し続ける伊藤。障がい者雇用という難題に、これからも向き合い続ける。

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