森の国Valleyは、一言で説明しにくい場所です。
宿であり、体験の場であり、地域とつながる拠点でもある。
その中で「食」を担っているのが、あっこさんです。
料理をつくるだけではなく、
どう体験として届けるかを考え、実践する。
その仕事の中身を聞いていくと、この場所の輪郭が見えてきます。
「食材に近い場所で料理がしたい」と思った
もともとは東京で料理の仕事をしていたあっこさん。
転機は、「食材との距離」でした。
「東京では、業者さんが仕入れてくれた食材を使うのが当たり前で。季節が変わっても、使うものはあまり変わらなかったんです」
味としては完成されている。
でもどこか、物足りなさがあった。
「もっと季節を感じながら料理したいと思って。食材そのものに触れられる場所に行きたいと考えました」
そうして出会ったのが、森の国Valleyでした。
農業や自然への関心もあり、「ここなら料理の手前から関われる」と感じたといいます。
「水が違う」と感じた環境
実際に来て、最初に強く感じたのは“水”でした。
「ここの水で育った食材って、力強さが全然違うんです」
味だけではなく、体への入り込み方が違う感覚。
さらに印象的だったのは、人との関わりでした。
「食材をつくっている方たちの向き合い方がすごく丁寧で。環境も人も、この場所の魅力だなと思いました」
森の国の価値は、風景だけではなく、
そこにある循環や関係性にあるといいます。
「料理を出す」から「一緒につくる」へ
現在の主な仕事は、水際のロッジでの食事提供。
ただし一般的なレストランとは少し違います。
「今は、ピッツァ体験を中心にしています。お客さんと一緒に作って、一緒に楽しむスタイルです」
最初は地元食材を使った料理を提供し、その後、畑で採れた野菜を使ってピッツァを一緒に作る。いわゆる“提供する側・される側”の関係ではなく、同じ場を共有する形です。
「すごく反応がよくて。特に子どもが、苦手な食材でも、自分で作ったものは食べる」
普段は野菜が苦手な子どもでも、「自分で作ったもの」は挑戦する。
そんな変化を目の前で見られるのが、この仕事の特徴です。
ピッツァ体験へのシフトは、小さなひらめきから始まった
最初から体験型だったわけではありません。
もともとは、料理をつくって提供するスタイルが中心でした。
そこから今の形へと舵を切るきっかけになったのは、あるゲストとのやり取りでした。
「ピッツァが大好きな子がいて、だったら一緒に焼いてみようか、となったんです」
やってみると、反応は想像以上でした。
ただ“食べる”だけではない時間が、その場の空気そのものを変えたといいます。
「一緒につくるって、こんなに喜んでもらえるんだと気づきました」
料理を完成品として出すだけでなく、
できあがるまでの過程に参加してもらう。
食材に触れ、香りを感じ、焼き上がりを待つ。
その時間ごと、思い出になる。
「ここでしかできないことって、こういうことなんだと思いました。都会ではなかなか難しいし、この規模、この距離感だからできることだなと」
水際のロッジは、大きな施設ではありません。
だからこそ、一組一組との関わりに手が届く。
その近さが、“体験”の質をつくっています。
食を通して「何を届けたいか」
あっこさんがやっているのは、料理をつくることだけではありません。
もっと言うと、「美味しいものを出すこと」だけでもない。
その背景には、ある体験があります。
2026年3月に開催されたイベント「シゼンタイ」では、自然栽培農家の佐伯さんと、料理家であり「咀嚼(そしゃく)メソッド」を伝えるミーカさんとのコラボレーションを企画しました。
「ミーカさんの料理を食べた時、大地と繋がっていくような、心がほどける感覚がありました。佐伯さんが土にこだわり抜いて育てた野菜を、ミーカさんの手でその可能性を最大限に引き出し、体に取り入れる。土の中の微生物と、私たちの腸の中の微生物が地続きであること。それを、体験を通して伝えたかったんです」
料理が、体に入るものとしてだけではなく、
感覚や思考にも影響するものだと実感した瞬間でした。
「大地とつながるとか、微生物とか、最初は難しく感じるんですけど、でも体験すると“わかる”感覚があるんです」
言葉で理解する前に、体が反応する。
そういう体験を、自分でも届けてみたいと思ったといいます。
畑で土に触れ、作物に触れたあとに、その食材を使った料理を食べる。
頭ではなく、身体で感じる流れをつくる。
「これが正解です、っていうものはないと思っていて。でも、参加した人の中に何か残るものがあると思ったんです」
忙しい日常の中では、気づかない感覚。
それが、自然と食を通してふっと立ち上がる。
「私自身がそうだったので、それをそのまま届けたかった」
説明するのではなく、体験として残す。
それが、この場所で食に関わる意味だと考えています。
シゼンタイも、日々の食事づくりも、根っこはつながっている
「シゼンタイ」のようなイベントは特別に見えるかもしれません。
でも、あっこさんの中では、日々の食事づくりとも地続きです。
宿で出す一皿も、ピッツァ体験も、朝食も。
その場限りのメニューではなく、「この土地のものを、どう届けるか」という問いの延長にあります。
朝食では、地元の野菜をせいろで蒸し、自家製納豆や麹を使った料理を提供しています。
豪華さを競うというより、素材そのものの力をまっすぐ感じてもらう方向です。
また、レシピを考えるときも、最初にあるのは“つくりたい料理”より、“ここにある食材”だといいます。
「この食材をどう生かせるかな、から考えることが多いです」
決まったレシピに食材を当てはめるのではなく、
その日、その季節、その場所にあるものから組み立てていく。
少しずつ調整しながら、その時の一番いい形を探る。
その積み重ねが、森の国Valleyの食になっています。
仕事の手応えは、「日常」の中にある
仕事の楽しさについて聞くと、あっこさんは少し考えて、こう話してくれました。
「特別な楽しみがあるというより、日常の中で感じています」
メニューを考える時間。
食材と向き合う時間。
お客さんと話す時間。
その中で、お客さんの表情が変わったり、「おいしかった」と言ってもらえたりする瞬間が、いちばんの手応えだといいます。
「やっぱり、喜んでもらえたときが一番うれしいですね」
料理は、出すまでわからない。
だからこそ、反応が返ってきたときの喜びは大きい。
この場所では、その距離がとても近く感じられます。
派手ではないけれど、日常の中に確かな手応えがある。
その実感が、この仕事を支えています。
森の国Valleyで働くことは、「役割」を超えて関わることかもしれない
森の国Valleyの仕事は、職種名だけでは表しきれません。
料理をつくりながら、体験をつくる。
食材を届けながら、この土地の魅力を伝える。
目の前のお客さんと関わりながら、地域や自然ともつながっていく。
その重なりが、この仕事の特徴です。
決まったことをこなすだけではなく、この場所だからできることを考え、形にしていく余白があります。
もし「食」に興味があるなら。
人と関わる仕事がしたいなら。
地域や自然と地続きの働き方に惹かれるなら。
まずは森の国Valleyスタッフとお話してみませんか?
週末はレストランで働き、平日は食の未来を考え農を。新しい働き方の提案です!