学校改革を支えた、「生徒ファースト」の共感と対話
フェロー第12期生 山下大征さん × 勝間田貴宏 校長先生 対談
創立60周年を控え、学校改革を進める御殿場西高等学校。
ミッション・ビジョン・ポリシーの策定、ICT環境の整備、対話の生まれる組織づくり ―。学校が大きな転換点を迎える中で、フェロー第12期生・山下大征さんは、教室を越えて学校全体に変化をもたらしていきました。
「山下先生がいなかったら、今の学校はないと思います」
そう語る勝間田校長先生。
今回の対談では、山下さんと勝間田校長先生に、学校改革の過程や、生徒・学校全体へ広がった変化について伺いました。
ー現在の学校運営で大切にされていることについて教えてください。
校長先生:
創立から60年の中で培ってきたものに新たな価値が加わり、「不易流行」を実践している状況です。
大切にしているのは地域との関係性です。本校は私立校ですが、地域の要請によって設立されました。そうした背景もあり、これまで築いてきた信頼やつながりは今後も大切にしていきたいと考えています。
その上で、これからの時代に求められる新たなスキルや考え方も積極的に取り入れていきたいと思っています。

ー山下さんはどのようなビジョンで赴任されましたか?
山下さん:
人材系企業の営業職として勤務した前職での経験を踏まえ、「自分らしさと皆らしさが生きているクラス 」を学級目標として掲げていました。
自分らしさは、他者に受け止められて初めて認められ、自分自身も受容できるものだと感じています。そうした経験に自分も生かされてきたからこそ、それを授業や学校生活の中で体現していきたいと考えていました。
また、分断や格差が続く社会の中で、「他者あっての自分」という感覚を生徒たちに実感してほしいという思いもありました。高校生という時期に、周囲を思いやり、他者との関わりの中で自分が生かされていることを学んでほしい。その経験が、社会の中で他者と支え合いながら生きていく力につながると思っています。
―校長先生から見て、山下さんはどのような先生でしたか?
校長先生:
「共感力」が高く、生徒一人ひとりと対話しながら、その背景を理解しようとする姿勢がありました。
我々教員って、どうしても「指導しなければ」という意識が先に立つことがあって。そうなると、生徒に一方的に伝えてしまう場面も出てくるんですよね。
でも山下先生は、生徒一人ひとりの背景を理解した上で、「何を伝えるべきか」「何ができるか」を考えながら、丁寧に関わっていました。
その結果、クラスの生徒が山下先生に自然と寄ってくる関係性ができていました。これは、なかなか 1年目からできることではないと思います。 担当していたフロンティア探究コース(進学選抜)も、様々な生徒がいる中で「安心できる居場所」になっていました。
こういった関わり方が他の先生方にも広がり、一つの文化として根づいていけば、学校全体として、生徒の居場所づくりや、生徒が生き生きできる学校につながっていくと思います。
―部活動は、どのように関わられていたのでしょうか。

山下さん:
男子バスケットボール部の顧問でした。
生徒の中には、感情的になってしまったり、落ち込むとなかなか立ち直れなかったりするような姿を見せる子もいたんですが、それぞれがバスケットボール部の中に居場所を見つけていたんです。
私が新しく入って、それまでとは少し違う関わり方をしたことで、 時にはそういった生徒から「なんでこういうやり方なんですか」と感情的な反発もありました。 でも、そこで引くのではなく、一人の人としてしっかりと向き合うことを大切にしました。
卒業のとき、その生徒が「先生と一番ぶつかりましたけど、本当にお世話になりました。またバスケットしましょうね」と伝えてくれたんです。就職先も決まっていて「向こうでも頑張ります」と。
時に感情的にぶつかりながらも関係を築いてこられたこと、そして最後にそういった言葉を生徒の方から伝えてくれたことは、自分の中でもとても大切なものになりました。
校長先生:
本当に、最後の最後まで向き合ってくれましたね。山下先生とバスケットがあったおかげで、3年間やり切れたという子もいると思います。
―山下さんはICT部としても活躍されたそうですね。
校長先生:
当校はコロナを契機にハード面は整ったものの、活用や業務効率化が追いつかず、ツールも乱立している状況でした。
そこを山下先生が整理し、分かりやすく共有してくれたことで、業務が大きく円滑になりました。セキュリティ意識の向上も大きな変化です。
山下先生は、専門的な内容を分かりやすい言葉に変えてくれるんです。相手の背景まで考えて伝えてくれる、優れた翻訳家のような存在でした。
想像以上のかたちになったと思います。

山下さん:
高い専門性を持つ先生とチームで役割分担し、自分は伝え方や現場への落とし込みを担いました。チームの先生には「開発と営業担当だね」と言われて(笑)。前職の営業としての経験が生きたと思います。
使い手の視点で整理しながら、マニュアルを残すことも意識しました。属人化すると誰かがいなくなったときに止まってしまうので、「誰でも使える状態」を作ることを大事にしていました。
ー数年間で大きく学校改革を進められたと伺っています。
校長先生:
創立60周年を控え、これまで築いてきた信頼やつながりは大切にしながら、これからの時代に求められる新たなスキルや考え方も積極的に取り入れていきたいと考えていました。
その上で、学校のミッション・ビジョン・ポリシーを策定し、未来を見据えて方向性を整える取り組みを進めました。
ただ、その作業は想像以上に大変でした。先生方それぞれに異なる思いや価値観があり、私自身も揺らぎました。
そうした中で山下先生が間に入り、さまざまな場面で対話を重ねながら調整してくれたんです。
山下さん:
発言や意見の背景にある想い を丁寧に聞く・見る・対話することを大切にしていました。
本校は地域との関わりの中で成り立ってきたので、その歴史や地域からの期待をどう受け止めながら学校をつくっていくのかは、大きな論点だったと思います。
また、若手からベテランまで、本当にいろんな思いを持った先生方がいました。だからこそ、「なぜそういう発言になるのか」「その背景に何があるのか」を、ちゃんと聞きに行くことを意識していました。
対話も、ともするとお互いの意見を否定し合うような形になってしまうことがあります。でも、教員は皆、生徒のことを思っています。だからこそ、自分の意図も伝えながら、「守ること」「変えること」の合意点を探っていきました。
最終的には、「生徒ファースト」という視点を軸に対話を重ねていくことが大事だったと感じています。
校長先生:
教員同士の関係性もすごくよくなりましたし、職員室の空気も変わりました。
私自身も、以前に増して先生方と率直に語り合える関係になったと感じています。
山下先生がいなかったら、今の学校はないと思います!

ー2年間の実践を経て、いかがですか?
山下さん:
教員として初めてキャリアを積んだのがこの学校で、本当に良かったと思っています。
教員という仕事は、生徒のため、そしてその先の社会や世界のために何ができるかを純粋に考え、行動できる仕事だと感じています。
これからも、出会う先生方と学びを共にしながらつながっていければと思います。