執筆・構成:Wednesday Tokyo編集部
初回面談で、生徒からよく出てくる言葉があります。
「私、書けるようなことが何もないです」
部長でもない。全国大会にも出ていない。留学もしていない。起業もしていない。だから、総合型選抜では戦えないと思っている。
でも、話を聞いていくと、本当に何もない人はほとんどいません。
本人が、自分の経験をまだ経験として見つけられていないだけです。
派手な実績があれば受かる、という入試ではない
総合型選抜では、活動実績が注目されます。
ただ、活動の大きさだけで合否が決まるわけではありません。
なぜ始めたのか。途中で何に困ったのか。誰と関わったのか。うまくいかなかったとき、何を変えたのか。その経験から、自分の考えがどう変わったのか。
一つの経験をどこまで考え、自分の言葉で説明できるかで、見え方は大きく変わります。
家族の手伝い、部活動での失敗、学校のルールへの違和感、趣味で何年も調べていること。本人が「こんなの普通です」と流している話の中に、進路へつながる材料が残っていることもあります。
最初の志望理由書は、うまく書けなくていい
碧推薦学院では、早い段階で一度、志望理由書を書いてもらいます。
完成させるためではありません。
むしろ、うまく書けないことを確認するためです。
「この問題に関心があります」と書いたけれど、なぜ関心を持ったのかが弱い。「大学で研究したい」と書いたけれど、自分ではまだ何も調べていない。「社会に貢献したい」と書いたけれど、誰のどんな困りごとなのかが見えていない。
頭の中では分かっているつもりでも、文章にすると止まります。
その止まった場所が、次にやることを教えてくれます。
書いたら、足りないものが見える
碧推薦学院のカリキュラムでは、経験資産を「執筆する」「設計する」「実践する」の3つで扱います。
まず書く。そこで空白を見つける。次に、その空白を埋める経験を設計する。そして、実際に動く。
大学のアドミッション・ポリシー、学部の授業、教員の研究、選考方法、出願条件。志望先を調べながら、本人の現在地と照らし合わせます。
追加で調査が必要なのか。専門家へ話を聞くべきなのか。現場を見に行くべきなのか。小さな企画を試すべきなのか。それより先に、英語資格や評定を優先するべきなのか。
活動を増やすことが目的ではありません。
志望理由を本物にするために、必要な経験だけを選びます。
活動は、書類を盛るためではなく、考えを確かめるため
インターネットで調べただけでは、自分の経験にはなりません。
誰かに話を聞く。現場を見る。企画をつくる。試してみる。失敗する。なぜ失敗したかを考える。
動いてみると、最初の考えが間違っていたと分かることがあります。
興味があると思っていたテーマが、実はそこまで好きではなかった。志望していた学部より、別の学部の方が自分に合っていた。社会問題を解決したいと思っていたけれど、自分が向き合いたい相手はもっと身近にいた。
これは失敗ではありません。
出願直前に借り物の志望理由をつくるより、早い段階で気づけた方がいい。総合型選抜の準備は、進路を決めるための時間でもあります。
もう一度書くと、言葉が変わる
実践した後は、もう一度書きます。
最初は「興味があります」だけだった文章に、実際に見たものや、聞いた言葉が入ります。
「解決したい」という大きな言葉の前に、自分が試したこと、うまくいかなかったこと、そこから考え直したことが入ります。
文章が急に上手になるわけではありません。
でも、言葉の中身が変わります。
書いて、足りないものに気づく。設計して、動く。動いた後に、また書く。新しい疑問が出たら、もう一度設計する。
この往復を繰り返します。
受験が終わっても残る経験をつくる
合格のためだけにつくった活動は、受験が終わると使わなくなります。
私たちが残したいのは、自分が何に関心を持ち、どう調べ、誰と関わり、どう判断したかという経験です。
大学で研究を始めるとき。就職活動で進路を考えるとき。新しい企画を始めるとき。その経験は、もう一度使えます。
出願書類は大切です。
ただ、書類を完成させることだけをゴールにすると、本人の中に何も残らないことがあります。
だから、碧推薦学院の指導は、添削だけでは終わりません。
その人が持っている経験を見つけ、足りない経験をつくり、次の選択肢へつなげる。私たちは、それを「経験資産のアセットマネジメント」と呼んでいます。