第7回:遊ぶように働く、働くように遊ぶ|僕らが見つけた「タイニーハウス」という新しい住まい方

「遊び以上、仕事未満」が未来を変える

 今は株式会社にしている「YADOKARI」ですが、本当のところ始めのうちは、会社にする気などありませんでした。そもそも、僕らは「YADOKARI」でお金を儲けようとは全然思っていなかったですし、むしろ自分たちでお金をつぎ込んでいたくらいでしたから。

 僕らは「身の丈に合った住まいをつくる」という理想をしっかりと掲げたかっただけ。自分たちが理想に向かって行動する姿をウェブを通して発信し、シンパシーを感じてくれる人とアイデアを共有する。その結果、世の中が少しでも動いて、自分達が目標とする小さな暮らしの実現に近づいていければけばいい……というシンプルな気持ちしかなかったのです。

 ところが実際に活動を始め、規模が大きくなってくると、そうとは言えない状況になってしまいました。小さな家のプロジェクトに興味を持ってくれた企業から声をかけられ、何か共同で事業をしようとすると、対個人とは取引ができない、会社化していることが前提です、と言われたり。そうでなくとも、いつも最初に「会社化はしている?」と聞かれてしまう。だから、自分たちが望んでというよりは、必要に迫られて、会社にしたのです。非営利団体であるNPOにする選択肢も考えたのですが、NPO法人になるためには時間もお金もかかることを知り、一番簡単にできる合同会社にしました。いわば「なし崩し」です。

 そのとき僕らは、「YADOKARI」が会社化したことを公にはしませんでした。

特にSNSで僕らのファンでいてくれる人に、起業目的でこの活動をしているとは思われたくなかったから。もちろん会社にするのが悪いのではありません。でもよく言われる起業ブームという言葉には、そこには、まず儲けありきのような匂いもあって、同じように見られたくないという気持ちもありました。なぜなら、僕らにはお金を稼ぐための本業が別にあって(今は「YADOKARI」が本業になっていますが)、もしも金持ちになりたいのだったら、それだけをやっていた方が効率がよかったぐらいです。

 「YADOKARI」を始めた頃には、僕らは、それぞれの道でかなり稼げるようになっていました。さわだはウエスギと一緒に務めた会社を辞め(実はリストラされたのですが…)デザイナーとして独立していましたし、ウエスギはその会社で持ちこたえて、役員になっていました。

 当時の稼ぎは、それぞれ月収で120万円ぐらい。好きなモノを買って、恵比寿や二子玉川など、都内で人気の街に住むという、かつて抱いていた夢も実現していました。だから、お金が欲しいという欲は既に満たされていたのです。

 それでも「YADOKARI」の活動をせずにいられなかったのは、仕事で稼ぐことが、自己実現のための活動とは本質的に違うと実感したから。仕事には、クライアントがあり、納期があり、競合他社がいます。そのなかで最適解を見つけるのがビジネスというもの。誠実に取り組んでも、どうしても妥協する部分が出てきます。

 IT業界で勝ち残っていくのは、本当に苛烈です。

 東京にはウェブの制作会社が2000社以上あります。そのなかで他社に比べて最短の納期で、最高の品質のウェブサイトを作って成果をあげていくには、寝る間も惜しみ、家族との時間も削って働き続けなければいけない。もちろんウェブの仕事にも、クライアントに満足してもらえる喜びや、選ばれる優越感はあります。でも、上手くやればやるほど、仕事が認められて忙しくなればなるほど、虚しさが募って、他者と利害なしに向き合う温かみが恋しくなってきました。

 僕らにとって自己実現とは、沢山のお金を稼ぐことではないのだと、お金を稼いでみたからこそ、分かったのです。

 だから「YADOKARI」の活動を「お金を稼ぐ」ためのものにしてしまっては、元も子もないのです。より良い未来を求める場所は、利益を得る場所であってはならない、と。金銭のためではなく、会社やクライアントの意向に左右されず、思いの丈をぶつけて他者と関わり、自分が思い描いた未来のために邁進する。そういった「仕事以上遊び未満」の場を作りたいと思った。それが僕らの願いです。

仕事でないことに、どれだけ情熱を傾けられるか。

 「YADOKARI」を始めた頃、本業としてさわだはウェブデザイン、ウエスギは営業の仕事を同時並行で行っていたので「YADOKARI」としての活動時間を捻出するのには苦労しました。

 まず、僕らが運営するウェブメディア「未来住まい方会議(現 YADOKARI)」では、毎日最低ひとつ、コンテンツを更新する目標を立てました。2人で交互で担当すると、一日おきに一記事を書かねばなりません。記事の質にもこだわっていましたから、1本書くのにも、かなり時間もかかります。当時は外部のライターもアシスタントもいません。取材も執筆もデザインも、全てを自分達でやるしかない。

 ただでさえIT業界は拘束時間が長いので、本業の仕事が一段落つくのは深夜0時ごろ。そこから「未来住まい方会議」にアップする記事を書くと、終わるのは朝の3時や4時になることもしばしばです。もちろん、朝から仕事がありますから、ほとんど寝れません。それでもFacebookで反応があったりすると、うわーっとアドレナリンが出て、パワフルに取り組むことができました。

 本業のクライアントワークでクタクタになっているのに、「YADOKARI」の活動だと力が出るのは、なぜなのでしょう? きっとそれだけ人間は、自分のストレートな思いを受け止められることに、飢えているのだと思います。

また、より良い未来を作るのは、企業的な利害の枠組みから生まれた発想ではなく、仕事の枠組みから離れても、無給でもやりたいぐらいの強い思いが必要なのだという矜持が、僕らにはありました。

 もちろん、私的な場で始めた活動が、結果的に仕事に繋がっていくこともあるでしょう。でも最初の原動力は、個人の胸の内から生まれたパッションである方が周囲の人を巻き込める。それは今でも同じように考えています。「YADOKARI」は「お金になる、ならない」という基準で活動を選ぶのではなく、「自分の思いを全力でぶつけられることだけをやっていく」。その気持ちは、会社化した今でも同じです。

 とはいえ、今は2人ともほかの仕事は辞め、「YADOKARI」に専念していますから、ある程度のお金をここで稼ぐ必要があることも確か。実際のころ、いくら僕らの作った「小さな家」に引き合いが多くあるといっても、ここまで来るのに相当なお金を自分たちで投資して、蓄えは激減しています。家族にも、心配をかけているかもしれません。

 それでも儲け主義に走ることは絶対にしたくない。今は「YADOKARI」としての思いを広く伝えるために活動に専念していますが、お金がなくなったら、またウェブの仕事をすればいいと、腹をくくっています。

 ありがたいことに「YADOKARI」の活動や「250万円の小さな家」が注目されて、大手企業からコラボレーションの話をいただいたり、大手メディアに取材してもらったりすることも多くなりました。でもそのたびに、やはりお金について頻繁に聞かれます。

「こんな小さな家を作って儲かるのですか?」

「今後の事業計画は?」

「マネタイズはどうするのですか?」

 正直、答えに困ってしまいます。もちろん失礼でないようにできるだけ具体的な話をしますが、最終的な結論の部分でどうも今一歩伝わらないことも多いのです。理由は多分、根本の部分で僕らが収益を度外視しているから。それはこの世の中では、余程特殊なことらしいのです。

「いざとなった必要なお金を、IT業界で稼げばいい」スキルを持って、そんな風に考えている僕らは、一般的な感性と少しだけズレているのかもしれません。でも内心はもっと多くの人が、今抱えている仕事以外にも情熱を傾け、世に働きかける活動ができたらいいのにと思っていたりします。なぜならマーケティングやマネタイズありきで作られたものに埋め尽くされた世の中より、誰かの情熱に触れられる世界の方が、よっぽど楽しい世の中になるはず。甘いかもしれないけれど、そう信じているからなのです。

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◎YADOKARI株式会社について 日本のミニマルライフ、小屋、タイニーハウスムーブメントを牽引する“YADOKARI“。住まいと暮らし、働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニーです。 世界中の小さな家やミニマルライフを紹介する「未来住まい方会議」、全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」、ちいさな暮らしを実践する「TINYHOUSE ORCHESTRA」、新たな働き方を提案する「未来働き方会議」等々の提案型ライススタイルメディアを軸として、"仕掛けで賑わいを作り、新しい暮らしや住まい方のムーブメントを”創出しています。 主な活動は、住まいや暮らし関わる企画プロデュース、タイニーハウス小屋の開発、空き家・空き地の活用、まちづくり支援などを手がける。 <メディア> ・YADOKARI.net(旧未来住まい方会議)(http://yadokari.net/) ・空き家ゲートウェイ(https://akiya-gateway.com/) ・TINYHOUSE ORCHESTRA(http://yadokari.net/orchestra/) ・未来働き方会議(http://job.yadokari.net/) <施設> ・Tinys Yokohama Hinodecho(http://tinys.life/) ・BETTARA STAND 日本橋(http://bettara.jp/)※暫定期間終了 250万円の移動式タイニーハウス「INSPIRATION」や小屋型タイニーハウス「THE SKELETON HUT」など自社で企画販売するタイニーハウス小屋も展開。また、名建築の保全・再生の一環で黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」や動産で暫定地活用、まちづくり活性化支援を行う「BETTARA STAND 日本橋」などの施設を運営。 <販売しているタイニーハウス> ・YADOKARIオフグリッドタイニーハウス Tinys.mov ・YADOKARIタイニーハウス「INSPIRATION」(http://inspiration.yadokari.net/) ・YADOKARIタイニーハウス「THE SKELETON HUT」(http://skeletonhut.yadokari.net/) 「豊かさの再編集」をテーマにした著書・出版物に『ニッポンの新しい小屋暮らし』(光文社)、『アイム・ミニマリスト』(三栄書房)、『未来住まい方会議』(三輪舎)、リトルプレス『月極本1・2・3』を発行。 <著書> ・「アイム・ミニマリスト」(三栄書房) http://www.amazon.co.jp/gp/product/477962732X/ ・「未来住まい方会議」(三輪舎) http://www.amazon.co.jp/dp/4990811623/ ・「ニッポンの新しい小屋暮らし」(光文社) https://www.amazon.co.jp/dp/4334979408 ・「月極本1・2・3」(YADOKARI) http://tsukigime.yadokari.net/ またYADOKARIには建築士、デザイナー、編集者等、多種多様なライフスタイル人材含む登録サポートメンバー3000名、編集者ライター50名から構成されるYADOKARIサポーターズが様々な活動をプロボノ的に支援する。 ・YADOKARIサポーターズ(https://www.facebook.com/groups/yadokari.support/)
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